感動
2週間ほど海外行った後の白飯ってほんと感動したんですよね(実体験)
俺達は盗賊たちの一件をギルドに報告するため捕らえたキャロネロを連れて一度コジーンに戻った。といっても立花のゲートで一瞬でシルキーサリヴァンのとこに報告して、またすぐに戻ってきたのでほんの三十分程度の出来事であった。
「あの……そんな転移スキル個人でできるならわざわざ旅する必要があるのでしょうか?」
祐二のその疑問はもっともだ。
「周平との愛を育み記憶を取り戻す旅だから意味は十分あるわ。それに行ったことのない場所には自由に行けないの」
「その目的地に行くだけじゃなくそれまでの過程も大事なんだ。現に旅をすることでお前とも出会えたんだし」
こいつと会わなければ俺はまだ飢えていたに違いない。といってもまだありついてないが……
「確かにそうですね。この出会いに感謝です!」
「シルキーサリヴァンから報奨金で金貨八十枚頂いたわよ~」
「たった八十枚か……」
「金貨八十枚ってかなりのお金ですよ!」
確かに金貨八十枚あれば当分遊んで暮らせるが金貨百枚に相当する白金貨五二枚あるんだよな……お金よりもお金があってもなかなか手に入らないようなものがほしいとこだ。
「白金貨五二枚ほどあるからな。お金そんな必要ないんだ」
「白金貨五二枚って……貴族の取引とかでしか使用しない白金貨なんて見たことないんですが……」
「迷宮の素材の一部であそこまでになるとはな……迷宮最下層の素材売ったらいったいいくらになるのか……」
「フフッ、楽しみね周平~」
「ここに歩く国家がいますよお巡りさん!」
お巡りさんとはなつかしいワードを聞いたな。俺達が国家ならお前はその動力源になるかもな。まぁこの裕二の反応を見ると少し自重した方がいいのかもと思ってしまうな。
馬車に再び乗り込みアルマンゾールに向かう。もう馬車を引っ張る人間がいない為、俺が引っ張らないといけないがあの盗賊団の乗り手の動きをみて覚えたから余裕である。アルマンゾールまではあと一日ほどで着く。祐二がアルマンゾールまでの道のりは知っているので問題なくつけるだろう。
「そういえば周平、その仲の良かったクラスメイトに自身の生存伝えなくていいの?」
「少し迷ったけど今は知らせないでおこうと思う」
立花の転移魔法があればすぐにでも戻るのが可能だ。俺達はチート級の力を保有しているがまだ完全じゃない。下手に知らせてそれが何らかの形で漏洩して俺達の邪魔をされては面倒だし、俺達の力が完全になって、ある程度整ってからのほうがいいだろう。それに迷宮の特性がある以上今はあいつらに何かあってもどうとでもなる。いずれ時が来たら月島や杉原、ついでに忘れていたが尾形も助けてやるつもりだ。他は知らないけど。
「周平がそれでいいならそれでいいわ。再開するのは力が完全になってからのほうが何かと都合がいいだろうし」
「あれだけの力を保有しててまだ完全じゃない所が歩く国家の所以ですね」
「歩く国家とかなんかかっこいいな。よし白金貨一万枚集めて財力も国家レベルを目指すか~」
「ちなみに勇者は魔王を倒すために召喚されたんですよね?」
「一応はそうだな」
「お二人は魔王討伐とかは考えているのですか?」
魔王討伐か……ぶっちゃけ実際興味ないんだよな~はっきり言ってどうでもいい。
「たぶんしないかな。純粋に戦ってはみたいけどな。そもそも魔王は悪なのか?」
「まぁ人間と争いをしていることは事実ですね。でも魔族の冒険者もいるので魔族=悪とは一概には言えません。そもそも魔族を悪と決めつけた二つの国が頻繁に魔大陸に攻めているせいで争いが激化しているので、実際停戦協定を早く結んでくれれば平和になるでしょう。今は小競り合い状態ですが大きな戦争になったら……」
あれ、もしかして害悪は魔王よりも人間側にある感じか。すると世界の敵は人類になるのか?
「魔族は人間にどんな感情を抱いているんだ?」
「それもそれぞれですね。ただ無闇に人を襲うような種族ではなかったらしいです」
前世の記憶の中でも戦いは人間との方が多い気がする。魔族とはたいして戦ってない。
「もしかしてレダさんから聞いたのかしら?」
「はい、前に兵士になりたいっていったらなら冒険者にしなさいって言われて、その理由を聞いたら色々話してくれました。魔大陸を侵略して魔王を倒す理由は資源を奪い、人類が種族の頂点にたつことにあるからそんな国の兵士とか死んでもやめなさいって」
レダさん、さすが教育が徹底しているな。そもそも昔は魔大陸なんて呼ばれてなかったし種族間でもっと共存していた。この百年でいったに何があったのか……
「ただ魔族側も襲われて何もしないということは当然ないので、人間側が侵略する限りこの戦争は終わらない。なので魔族側も人間の排除を考えるものも増えたと言ってました」
大きな戦争になれば召喚された勇者たちが魔大陸侵攻に向かうのも時間の問題だな。迷宮攻略の仮ゴールである三百層が終わる頃には何かしろの対策を打たなくてはいけないな。
ただアルマンゾールに近づくにつれて俺の頭の中は別のことでいっぱいだ。海外旅行などで普段食べている物を食べていない状態で帰ってきた時にそれを食べるとよりおいしさを感じることができる。そう日本人には欠かせない大事な主食……
「そんなことよりも今は白飯だな」
周平たちは馬車に揺られアルマンゾールに辿り着いた。
落ち着いた雰囲気の田舎町の印象を受けるが王都のようなうるさい所よりもよっぽどいい。
「着きましたよ。ここがアルマンゾールです」
「いい街ね~」
「ああ、住み心地のよさそうな街だな。祐二の家はここから近いのか?」
「ここから五分です。もうすぐ日が沈みますしささっと行きましょう」
祐二に連れられ家へ向かう。祐二の家はそこそこ大きく田んぼもある。
「さてご両親に挨拶だな~」
「周平口から涎がでいてはしたないわ」
「そういう立花も目が血走ってるぞ。もっと落ち着きなさい」
「周平だけには言われたくないわ」
「二人とも落ち着ついてください。歩く国家ともあろう方がはしたないですよ」
祐二に諭されるとは……だが今は白米を目前にして欲求がより湧き上がっている。いかんいかん、平然を装わないと。
「ただいま~」
「祐二じゃないか!急に帰ってきて何かあったのか?」
「祐二おかえり、元気な顔が見れて何よりよ」
「二人ともただいま。今日はお客さんを連れてきたよ」
「どうも神山周平です」
「その婚約者の神明・フォルモサ・立花です」
「僕は二本柳俊樹だ、こちらが妻の二本柳美弥だ。二人ともよろしく」
祐二のご両親ともに優しそうな感じだ。祐二がいい顔立ちなのはお母さんが美人でそれを受け継いだからというのも納得だ。
俺達は今までの経緯を話した。
祐二を鍛えることとそれを引き換えに白米を食べさせてもらうこと、召喚された勇者であることやレダさんと知り合いのこと。二人には他言無用でいてもらうことを了承してもらった。
「事情はおおむね理解しましたよ。日本食に飢えた最強チートカップルが白米を餌に祐二を鍛えていただけるということですな。」
「お父さん、言い方が少しストレートですよ」
「そうですよ、確かにご飯と引き換えに鍛える約束をしましたが、祐二はもう友達なので見捨てるような真似はしないので」
「ハハッ、冗談だよ~ちょっとストレートに言ってみただけだ。それで君たちの食事だけど当分はここにいるみたいだし、その間の食事は面倒を見るし寝る場所も提供するよ」
「ありがとうございます!」
さてお待ちかねのご飯タイム。
この世界にきてからずっとこのどこか満たされないこの感覚に俺に何かを訴えていた。チートクラスに強くなって彼女と無双しても何か足らなかった。それが今満たされる……さて今夜は純粋に白米と味噌汁、できれば焼き魚もほしいとこだ。
「白米に味噌汁、焼き魚とかありますか?」
「フフッ、周平ったらいいチョイスね~」
「鯖の味噌煮とかでいいかな?」
「あなたは神か!」
「神殺しに神とか言われるうちのお父さんパネェ~」
相変わらずキレが増してきたな祐二よ。しかしなんで鯖の味噌煮が提供できるんだ?
鯖は地球の魚だが……
「なんで鯖の味噌煮があるんです?」
「それは僕の異能が地球食材を取り寄せる異能だからだよ。地球食材交換(A)そのかわり地球でもあるようなものを代わりにささげないといけないがね。金属的価値があるからかこの世界の金貨や銀貨は有効だ。ただ交換できるのは制限があり、食べれるものでも生きている生物や細かい物は無理だ。有名シェフの作ったコースに使われている高級食材は取り寄せられてもそのコース自体の取り寄せはできない」
「私の異能は地球の植物の種を取り寄せることができる地球種子採取(A)。この異能を使い地球の食品になる植物の種を採取。米や大豆を作りそれをお父さんの異能で別のものに交換したの。最初の色々な準備レダさんが色々やってくれたから困らなかったけどね」
ちょっ、そんな異能あっていいのか……なんで俺達にはないんだ……俺は落胆を隠せなかった。
それと二人から生まれたのに祐二よ、お前の異能はなんだ。
ご両親を馬鹿にしているのか?
お前は冒険者よりも違う道が……何かと葛藤をして数十分後にお待ちかねの鯖の味噌煮が机の前に運ばれる。
「いただきます!」
食べた瞬間俺や立花の目から涙が落ちる。そうか俺達はこの味をずっと求めていたんだな……そしてやっとありつけたんだ。この感動……かつて外国に長時間滞在して数週間ぶりに米を食べた時以上大きな感動が俺を包む。普通の一般家庭で溢れるこの食卓においしさ以上の何か感じた。
「祐二、そしておじさんにおばさん……ありがとう。この感動を俺は忘れない」
「私もです。日本食はこんなにもおいしいものなのですね」
そんな俺達を見た三人はにっこりと笑う。
「いつでも食べに来なさい。君たちなら歓迎するよ」
「おじさん……祐二はまかせてくれ。この神山周平と神明立花が責任もって鍛える。そんでもって三人のピンチには必ず駆けつける」
「ああ、よろしく頼むよ」
この後風呂にも入りさらに感動をしたのは言うまでもない話だ。今日は街にある温泉にはいかなかったが家庭用の小さめな風呂に入ったことで故郷の風呂をより思い出した。結論この街は最高の街である。
しばらく仕事しないで書き続けたい…
2019年10月3日修正




