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愛情の形2

 「何をする!」

 「今の発言はダーレー教に対して侮辱行為を働いたのです」

 「周平あれって……」

 「ああ、白金ランクのギルドマスターにして教団の息がかかっていたアニリンだな」


 前に見たのはギルドマスター会議でギャラントプルームに集まっている時だったな。確かここよりもっと東側の都市であるエストラペイドでギルドマスターをしていたはず。


 「ケッ、もうその上層部の大半がいないじゃないか。それに腐敗していたかつての上層部の悪口を言って何が悪い!」

 「どうやら少し罰が必要ですね……」


 アニリンは武器を手に腕を振り上げる。あれは出ないとまずいな。


 「やめておけ、みっともない!」

 「何……」

 「ギルドマスターともあろう者が店の中で殺人未遂とは怖いね~」


 アニリンの近くまで行き、周りの客を避難させる。


 「あなたは確か……」

 「ギャラントプルームで会ったよな」


 アニリンはバツの悪い表情を見せる。前にギャラントプルームで威圧された時に力の差を感じ取って素直に引いたのを思い出したのだろう。


 「総長の古い仲間ですか……」

 「ご明察、久しぶりだな~」

 「あなたに横槍を入れられる筋合いはないかと存じますが……」

 「店の中で剣を振り回す奴に言われたくはないね」


 ペブルスでの話を聞いてエストラペイドから来たのか。確かもう一人のトムロルフはレダさんにフルボッコにあったと聞いているが。


 「ここはダーレー教の聖地ペブルス、聖地で教皇達の悪口など許せません」

 「へっ、そいつら皆死んだけどな。死んだ奴等に大した忠誠心だな」


 こいつは放っておいたらそのうち障害になるかもしれないな。最悪消すか……


 「何とでも言うがいい。私は貴様等の支配など認めない。この世界を導いたのはダーレー教の信仰する主神ガロピンとその下についた神々だ」


 こいつの目……きっと生まれたその時からダーレー教を信仰し、その教えを忠実に守ってきたのだろうな。本当の歴史が証明されようともそれを認める事などないかもしれないな。


 「哀れね……あなたを見ていると可哀想に感じるわ」


 立花は横から哀れむかのように言う。


 「何だと……」

 「別にあなたが何を信じようと勝手よ。だけどね……」

 「うっ……」


 その瞬間アニリンが苦しむだす。


 「お店で物騒なモノを出すのは感心しないわね」

 「おい立花……」

 「現実を受け入れて分相応な暮らしをする事ね。次同じような光景を見たら壊すわよ!」


 立花が解除するとアニリンはその場で崩れ落ちる。


 「ハァハァハァ……」

 「あなたはもっと世界を見る事ね。一つの世界に盲信したって良いことなんかないわ」

 「私は……」

 「フフッ、ちょっと強く威圧し過ぎたかしら?」

 「もう少し加減が必要だったな」


 アニリンは暫くその場を動く事が出来なかった。それだけの威圧感と命の危機を感じたからだ。



 ◇



 「ちょっとやり過ぎたんじゃないか?」

 「むしろ命を奪わなかっただけ有り難く思ってほしいわ」


 もしあの時他の人がいなければアイツの命もわからなかったな。

 ダーレー教が立て直す方向に向かっているが、ああいう奴がいれば結局同じだ。生かしたままにしておいていいのかと言われると素直に首を縦には振れないな。


 「ハハッ、違いない。それで今度はどこに行く?」

 「そうね、ブラブラ歩いて色々見たいわ」

 「了解~」


 立花と一緒に色んな所を回った。

 ペブルスにはダーレー教団が長年かけて作った建造物がいくつもあり、中には歴史的な価値のあるモノもある。気に入らないがそれとこれとは別だ。


 「宗教の力って凄いわね」

 「下手に大きな国作るよりは、人々の支持を集められるからな。トップが人じゃなくて神様ってのもあるんだろうけどな」


 たが宗教間での争いは根強く闇が深い。地球にいた頃に学んだし、地球での宗教は聖地をめぐっての争いに終わりはなかった。だから俺は好きじゃない。


 「この戦いが終わったらこの世界をどうするのかしらね」

 「俺達を神とするバイアリー教の勢力を広げていく方向になるかもな。まぁ俺達の判断だけじゃ決められないところだけど、そっちが本来の在るべき姿だからな」


 魔大陸の魔族達も信仰しているし、人間に広がっていけば人と魔族の友好にも繋がっていくだろう。時間はかかるかもしれないが、いつかはそんな世界も実現できるはずだ。


 「早く終わらせて周平と色々やりたいわ。やりたいことが山積みなのよね~」

 「世界一周とかだっけ?」

 「それもやるけどまずは一緒に高校生やって高校生活を謳歌ね。中学の時のメンバーを無理矢理集めてもいいわね」

 「それは楽しそうだな。アイツら立花の顔見たらビックリするだろうな」


 立花の失踪でバラバラになって会いづらくなったっけな。当時現実を直視出来なかった俺を見てられなくなって、目を背けるようになってそれっきりになってしまったからな。雪や美里とつるむようになってからは同じ高校だった宮本にすら罪悪感があったからな。あいつらにも謝らないとだな。


 「私のせいで皆には迷惑をかけてしまったし、今更かもしれないけどね」

 「気にするなって、アイツらも立花が健在なのを見たらそんなの吹っ飛ぶさ」


 責任を感じているのも無理はないか。前に宮本から色々と聞いたのか申し訳なさそうに謝ってきたからな。


 「フフッ、そうね。楽しみだわ、クラス全員難関大学にストレートで入学させたり、私と周平がクラスを仕切って同級生達を色んな方向に導いてあげたりとやりがいがありそうね」


 中学時代は本当にそんな感じの事やっていたんだよな。中三の時のクラスでは皆に慕われ、全員偏差値の良い高校に進学させた。その反面、河内のような奴も出てしまったがあれは俺のせいでもある。


 「面白そうだな、あっち戻った時が楽しみだよ」


 クラスメイト達もきっとそういう想像している奴もいるんだろうな。アイツらが全員無事で戻れるかどうかはわからないけど、その為に戦っている奴もいるはずだ。


 「それで大学にも行ったらサークル作ってワイワイやりましょう」

 「何サークル作るんだ?」

 「指名手配犯を捕まえるサークルとか探偵サークルとか面白そうじゃない?」

 「入ってくる層がヤバそうな気がするんだが……」


 本当にそんなのを作って、俺達が指導して捕まえさせたりしたら、そいつらの将来が危ない方向に行くかもしれないからな。


 「勿論メンバーは慎重に集めるわ。将来的にそこで育成した人材を二十柱の下で働かせるつもりよ」

 「なるほど、まぁ二十柱はメンバーが揃ってルシファーが復活したら他の世界にも干渉していくだろうから、人は必要になるか」

 「メンバー同士で誰がより有能なメンバーを集められるかみたいな話になるかもしれないわ」


 色んな世界に干渉し始めたらより忙しくなりそうだな。まぁ今はそんな先の事より目先の事をこなさないといけないだが。


 「面白そうな話だ、そうなれば俺を敵視するクラスメイト達もほいほい付いてくるかもな」

 「あの子達も戻れば、地球で暮らすにはオーバースペックな力を得ているから、そのまま放置する事はあり得ないけど、私達が上だと分かっていたら従わない者も出てくるわね。そうなった時の対処とかはその時考えるんでしょうけどね」


 勇者召喚がこの先も他の世界で起こって地球に戻れば異世界帰りが増えていく。世界は色々と変わっていくんだろうな。


 「その展開はみたいな。それで従わなかった奴らがどういう風に世界に君臨するのか」


 ちょっとしたきっかけで思いもよらない結果をもたらす。クラスメイトの中からそういう動きを見せる者が出てくればそれはいい材料にもなる。


 「少し先の話をしすぎちゃったわね。まずは目先の事ね」

 「ハハッ、もしここでヘマしたらそれも妄想で終わっちまうからな~」

 「それはフラグかしら?」

 「まさか、神明立花はそれすらも壊して理想の道を行くと確信してるさ」


 そもそもアイツらは俺達二十柱に刃向かった時点でそうなる事は決まっている。


 「当然ね、今までそうしてきたんだから。それとあれはいつ頃に動くのかしら?今後の事考えたらあっちも必要不可欠になるし」

 「ああ、ちょっと時間がかかってはいるが、もう動ける事は動ける。今最終調整をやっていて、それさえ終われば完全に準備完了だ」


 あれが動いて勇者達の中でどういう変化があるか想像がつかないが、楽しみだ。前の件もちゃんと向き合い、ケリをつける事もできる。


 「それならいいわ。あなたに対して色々と過保護になるのは、私の悪い癖だけど、私がいなかった間に起きた事に対して深く掘る資格はない。だからあなたのあれは私にとっても良かったわ」


 立花が失踪してから再会するまでは立花のいない世界、立花はその間に起きた事に干渉したくてもする資格がない事にもどかしさを感じている。


 「ハハッ、そんな立花だから俺はこうして一緒にいるんだ。ケリはつけないといけないしな」

 「フフッ、ありがと。勇者達とケリをつけるのも近いだろうし」

 「今頃実と九十九が指導しているだろうが、そろそろ動きがあるかもしれないな」


 ケープヴェルディでの戦いで後退した傷もそろそろ癒えるはずだ。癒えて戦う頃にはちゃんと間に合わせないとだな。


 

 ◇



 立花との一日はあっという間に過ぎた。

 わざわざダウン街入って襲われるデートがあるかと言いたい所だが、ちゃんと撃退して危ないところも見て回るのは立花らしいといえばらしい。


 「まさかダウン街行くとは思わなかったぜ」

 「ゲートで常に行けるようにするには一度行く必要があるじゃない。でも一人でなんて怖かったからありがとう~」


 嘘つけ、絶対楽しんでたろ。

 襲われた時横でニヤニヤしているのを俺は見てたぞ。


 「そりゃビックリだ、楽しんでいる素振りしか見えなかったぞ」

 「変な薬嗅がされたり、後ろから触れてくるかもしれないでしょう~もしそんなの見たら周平が嫉妬して殺しちゃうかもしれないから怖くて怖くて~」

 「そこかよ!流石にそれぐらいじゃ殺さないぞ」


 全く要らぬ心配だな。

 まぁ手を出さない保証はないけど。


 「フフッ、今日は楽しかったわ。ありがとう」

 「こちらこそ、また色んな所行こうぜ」

 「当然よ、まだまだ行きたい所たくさんあるんだから~」


 立花は俺に抱きつき、その場でキスをする。


 明日から暫く会えなくなるからか、夜まで一緒に過ごして立花の出発を見送った。


次はクラスメイトの話です。

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