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VSグリフォン

 尾形とアスクの二人は洞窟の下層へと進んでいた。そして地上では夜になるであろうその時間に、大きな扉の前に辿り着いた。扉を見た二人は、その先がボス戦である事を察していた。


 「この先が……」

 「間違いないね。時折吹き荒れた風もここから出ていたのは間違いない」


 扉の前についた二人は闇雲に進むのではなく一度止まり、休息をとっていた。


 「何がでてくるかはわからないけど、弱点の見極めは大事になってくる。最初は下手に攻めずにこっちの魔法で探ろうと思う」

 「わかった、ならばこっちも最初は防御メインでいく」


 二人の作戦会議が終わると扉を開けて中に入る。


 「「ウッ……」」


 開けた瞬間大きな風が吹き荒れ、一瞬歩みを止めたが、二人はそれを振り切って闘技場のフィールドの真ん中まで足を運んだ。


 「まじか……」

 「これは厄介だな……」


 目の前に姿を現したボスクラスの魔物……獅子のような強靭な半身に鳥のような頭と翼。所謂グリフォンと呼ばれる種類の魔物が二人の前に立ちはだかった。



 「アスク、まずは俺の近くに」

 「わかった!」

 「アクアバレット!」


 尾形はまず水の魔弾を放ち、様子を見る。当然相手空を飛んでそれを避ける。


 「ちっ、まさか飛行系の魔物がボスとはついてないな」

 「あいつは魔物図鑑で見たことあるけどブラックグリフォンだ。グリフォン種の中でも特に獰猛な奴だ」


 グリフォンは空を飛び、翼を羽ばたかせて突風を放つ。


 「くっ……」

 「マジックシールド!」


 尾形はシールドを貼って攻撃をガードするが、攻撃によってシールドは破壊されてしまい、何とか相殺に持って行ったという感じだ。


 「どうやらあいつを叩き落とす必要があるね」

 「ああ、だが一人で行っても難しいだろう。身体強化の魔法をかけるから、隙を見てダメージを与えてほしい」

 「わかった」


 尾形は補助魔法をアスクにかけ、攻撃力、防御力、素早さを一時的に上げた。

 戦法としては、尾形が補助魔法と回復魔法のみに絞ってアスクをケアしつつ、囮兼攻撃役のアスクを前衛に置く戦法だ。


 「頼んだ」

 「ああ!」


 尾形は自身にシールドをかけて守りつつ、アスクは攻撃を始める。グリフォンもシールドで常にガードする尾形よりも、前衛で動き回るアスクに狙いを定めたので作戦通りとなった。


 「剣技……斬!」


 アスクは斬撃をグリフォンに向かって飛ばす。この技は剣士系のジョブを持つ者が習得する技で、レベルとして中の上に位置する。一部を覗けば専門的な流派で学んでいる者は皆無なので、大半がこの剣技を習得して技術を磨く。


 「おおっ、あれが出来るなんて流石はアスクだ」

 「ちょっと外したか……次は当てるよ」


 尾形がサポートをしつつ、アスクが斬撃を飛ばし続けると、そのいくつか被弾し見事にダメージを与える事に成功する。


 「よしっ!」

 「アスク、避けろ!」


 攻撃を当てて喜んだのも束の間で、上からかまいたちが飛んでくる。


 「おっと~」


 アスクは間一髪で避ける。


 「ふぅ~油断も隙もあったもんじゃないな」

 「大丈夫かい?」

 「ああ、光一は引き続き援護を頼む」


 アスクが引き続き斬撃飛ばすが、グリフォンには中々当たらない。だが斬撃による攻撃をメインにした事で、向こうに攻撃の暇を与えなくする事に成功。するとグリフォンもその状況に痺れを切らしたのか、上空からの直接攻撃を行うようになった。


 「降りてくるようにはなったが、あの爪の攻撃は厄介だな」

 「ああ、だけどこっちにも手がある。カウンターを狙ってくれ」

 「わかった」


 アスクは攻撃を避けつつ、グリフォンに近付き、向こうからの直接攻撃に対するカウンターを狙う体制に入る。だがグリフォンは諸に構えているアスクを警戒して、再び上に戻る。


 「また上か……」

 「こっちも支援するよ」


 尾形はアクアバレットを上空に向かって放つ。グリフォンに攻撃が避けられるものの、上空に攻撃を連発していた事を鬱陶しく思ったのか、上空から尾形に向かって直接攻撃を仕掛けてくる。だがこれは尾形の狙い通りだった。


 「アスクこっちだ!」

 「ああ!」


 尾形の補助魔法によって身体能力が強化されたアスクは、グリフォンが尾形に向かって急降下するタイミングで飛んで斬りかかる。


 「はぁぁぁぁ!」


 グリフォンもアスクか物凄い早さで斬りかかってくる事を予想出来なかった事で、アスクの斬撃が片翼を斬りつける事に成功した。


 「よしっ!」


 しかしアスクの攻撃ではグリフォンを完全に止める事が出来ず、強靭な爪が尾形を襲う。


 「光一!」

 「スライムオイル!」


 ベタつくオイルを拡散させる第五位階魔法だ。尾形の狙いはグリフォンから飛行能力を奪う事にあった。今回アスクの攻撃に当たろうが当たらまいが、自身が攻撃を喰らったとしてもこの魔法を当てようと狙っていたのだ。


 「グフォッ!」


 スライムオイルを諸に当てる事が出来たが、その代償として一発攻撃を貰った事で吹き飛ばされる。


 「光一!」

 「イテッ……こっちは大丈夫だ。それよりもこの隙に攻撃を当てるんだ!」


 「わかった!」


 尾形は攻撃は喰らったものの、急所は外していた。そもそも攻撃を受ける前提でのだった事もあり、軽症で済ます事が出来た。

 アスクは飛べなくなっているグリフォンに斬りかかる。補助魔法の効果でアスクのスピードが上がっている事とオイルによってグリフォンの動きが鈍くなっているのでそのまま追撃を加えた。


 「よしっ、剣技、斬!」


 オイルで飛びにくくなった事でグリフォンに直撃、加えて復帰した尾形も攻撃を加えた。


 「中々しぶといな……」

 「ああ、だからこれで大ダメージを狙うよ」


 尾形は予めスライムオイルとアクアバレットでグリフォンに水を浴びさせていた。その中で魔法剣サンダーを発動する。


 「雷……そうか今なら」

 「ああ、ブラックグリフォンは特別雷耐性の高い魔物ではないからね」


 加えて尾形は剣技を併せた。


 「剣技、斬!」


 雷の斬撃がグリフォンに当たると大きなうめき声を上げる。尾形はエミリアに魔法を教わり、カーリンに剣技も教わっているので、剣技そのものはそこら辺の騎士よりも高いレベルの技術を持っていた。


 「魔法剣と剣技の組み合わせか……凄い」

 「これで一気に畳みかけよう」


 二人で一気に畳みかけると、グリフォンはとうとう力尽きた。スライムオイルで動きを鈍くした段階で、翼をメインに攻撃していた事で飛ぶことが出来ず、最後の方は一歩的に攻撃を加えるだけとなった。


 「これで終わりなのか?」

 「ああ」


 少しすると下層に続くドアが開いた事で二人は安堵し、その場に座り込む。


 「クリアみたいだね」

 「ああ、思ったよりも大した事なかったね」


 尾形は拍子抜けしたような表情でアスクを見る。


 「それはたぶん光一が強いからさ。正直俺一人では切り抜けられなかった」

 「ハハッ、そんな事ないよ。それに俺一人ではあの作戦を実行できなかったし、こんなに早く倒す事も出来なかった。アスクがいてこそさ」


 グリフォンクラスの魔物であれば尾形一人でも対処できるレベルだ。だが尾形は今回の戦いにおいては、アスクとの連携を重視して戦い、結果そこまで大きなダメージを負うことなく倒す事に成功した。


 「そう言ってもらえると嬉しいよ。俺が騎士でなく冒険者だったらいいコンビになれたのにな」


 アスクは少し残念そうな顔を見せる。自身は騎士であり、今後国に身を捧げる身となるアスク、方や冒険者として自由に生きる尾形ではあまりにも違いすぎると実感していた。


 「別に今後も組めない訳じゃないし、そんな悲しい顔をするなって。またこういう所に二人で行けばいいし」

 「光一……そうだったね。また一緒に共闘してくれるかい?」

 「勿論さ」


 信頼できる仲間と共に力を合わせて戦うというのが、アスクにとっては初めての経験だった。加えて尾形の言葉が嬉しかったのか涙を流す。


 「嬉しくて涙が出て来たよ」

 「オーバーだな~それにまだクリアじゃないんだし、さっさと下行って証取りに行こうか」

 「ああ、地上に戻れば教官とのバトルもあるからね。油断は禁物だね」


 そう言って二人は下層へと向かった。



 ◇



 「ここが最下層か」


 ボス階層を抜けた次の層は祭壇のある層で、祭壇には何かが置いてある。


 「まぁここがゴールかな。向こうに転移装置みたいなのもあるからね」


 アスクはともかく、尾形はここが最下層だとは思っていない。迷宮に似たような造りに加えて、ボス層もあるとなれば、隠された層があってもおかしくないからだ。尾形自身は途中離脱をした事で三百層攻略をしていないが、エミリアや周平から隠し層の存在を聞いている。今回もエミリアから依頼という事もあり、この層にに最下層らしき道がないか周囲を見て確認していた。


 「どうしたんだい?」

 「ああ、静かだなと思ってね」

 「祭壇を見る感じ、俺達が一番最初のクリア者だからじゃないかな」


 近付いて祭壇を見ると、相当数のメダルが置いてあるのがわかる。今回の受験者の人数分のメダルが祭壇にはめ込まれていた。


 「なるほど、ボス戦までこなしたから他より時間かかったと思ってたけど、そうでもなかったみたいだね」


 アスクは参加者の中では強い方の部類に入る上、尾形は断トツで強い。元々一日かけてクリアする試験だけに二人のペースは特別速かった。


 「時間かけて安全にクリアする人が多いのかもしれないね。光一の強さだと時間をかける必要がなかったけど、駆け出しの騎士となれば全員が全員強い訳ではないからね」

 「そうなのかい?君基準で考えていたけど、そういう訳じゃないんだね」

 「僕は人より違う育て方をされたからね~同年代の奴らには負けないさ」


 祭壇にあるメダルを取る。するとそれぞれ手にしたメダルが光だし、他のメダルにバリアのようなモノが貼られる。


 「成程、これで複数の取得を防いでいるという訳か」

 「一人で複数取られたら全員分なくなっちゃうからね」


 尤も全員が合格できた時はないが、かといってその可能性がゼロではないので、建前上全人数分が置いてある。


 「さて後は地上に戻って教官と戦って倒せば確定合格だね」

 「ああ、だがその前にちょっと休憩しないかい?」


 尾形はこの場所の何処かに、下に繋がる道がないかを探そうとしていた。


 「ああ、構わないけど、他に探し物でもあるのかい?」

 「気づいていたのかい?」

 「光一がこの層に来てから、ずっとそわそわして周りばっかり見ているからね」

 「ハハッ、実はちょっとね……」


投稿が遅くなり申し訳ありません。


ブラックグリフォン

今回の戦った魔物で、強さとしては四大迷宮では

百五十層のボス程度

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