表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
254/280

二次試験と好奇心

 「洞窟の中はこんな感じか~」


 二次試験が始まり、洞窟の中に入ると、すぐに複数の道に別れる分岐点のある部屋があり、そこでランダムにいく場所を決められた。複数人で結託しずらくする為らしい。最終的に同じゴール地点に辿り着くが、分岐した後はそこまで会う事はほぼほぼない。


 「魔物も出るし、気をつけて行こう」

 「ああ」


 実際この試験には運要素も強く、事前に結託した人と同じ分岐に入れれば試験は有利になるし、強い魔物との遭遇も運が絡む。ただその運や周りと協力できるかどうかもこの試験では見ている。要は弱い人は力を合わせて頭を使って己の勘を信じろというメッセージでもある。


 「ここの広さってどれぐらいか知ってるかい?」

 「前にこの試験を受けた人の話だと、何階層かあってその一番下に行って証を取れば合格らしい」

 「なるほどね」


 制限時間は一日、それまでに最下層にたどり着いて証をとって転移装置に触れて帰ってきたら合格だ。


 「光一、敵だ!」


 目の前に石の魔物が現れる。


 「ストーンゴーレムか、援護を頼む!」


 アスクはストーンゴーレムに近づき、剣で一太刀浴びせる。


 「はぁぁぁぁ!」


 ストーンゴーレムは鈍いが防御力は高い。ただアスクの攻撃力が高いのかストーンゴーレムはその場で怯む。


 「やっぱり固いな……」

 「アスク下がって!」


 光一はアスクが下がると同時に水属性の魔法で攻撃した。


 「アクアバレット!」


 第四位階魔法アクアバレットがストーンゴーレムに当たったのを確認すると追加で雷の魔法を放つ。


 「サンダーボルト!」


 第四位階魔法のサンダーボルトか被弾するとストーンゴーレムはその場で悶えて崩れ落ちる。


 「止めだ!」


 アスクの一太刀でストーンゴーレムは身体は崩れた。


 「ふぅ~流石に固いね」

 「この程度なら問題なさそうだね」

 「ああ、流石は光一だな。強そうだなと思ってたけど期待通りだよ」

 「ハハッ、大した事ないよ。もっと強い人は世の中にたくさんいるからね~」


 尾形は周平達を見ているので自分が強いと全く思ってないが、アスクから見れば強い部類に入るし、そもそも勇者という事もあるので一般的に見ても強い方に入る。


 「そう謙遜しなくてもいいさ、だが今の自分に驕らないのも君の強さだね」

 「ありがとう、君も中々の太刀筋だったよ。特に二回目は狙いも的確だったし」


 アスクの二度目の攻撃は一度目と違い、石と石の縫い目から核を的確に狙ったのだ。


 「流石は光一だね、怯ませてくれたお陰で隙が出来たからね~ストーンゴーレムをあのスピードなら特にアクシデントかなければ問題なくいけるはずだ」


 アスクのいうアクシデントは二つ、ボスクラスと遭遇する場合ともう一つは妨害を受ける事。やった方は失格に追い込めるが、やられた方も証をとれなければ合格にはならない。二つ目は特に悪質で仮にあったとしても落ちたという烙印を押される事には変わりない。


 「今のところは近くに誰もいないかな。ボスというのは興味があるけどどういう感じで出てくるんだい?」

 「この先も分岐ルートがいくつかあって枝分かれするんたが、一つだけボスフロアに着いてしまうルートがあるらしいんだ」

 「試験じゃなければ興味あるけど今は避けたいね」

 「ああ、だがそもそもここは試験に使われている洞窟だから、普段入れないんだ」


 受験者には緊急用の魔道具が渡されており、もし自力で離脱できない場合はそれを起動させると、洞窟内に設置されてる別の魔道具と共鳴して試験管達が助けにくるようになっている。


 「ボスを倒した者はいるのかい?」

 「一応ゼロではないらしいね、ただ何種類かいるうちのどれか一体が出てくるって感じらしい。ちなみに大半がボスにやられそうになって引き返して、魔道具を起動して棄権のコースだ。どうも一定の範囲外にでると襲ってこなくなるらしく、死者は幸い出ていない」

 「なるほどね~というか魔物を倒してもまた復活する感じか」

 「ああ、この洞窟は特殊みたいでね。お陰でこうして試験会場にされてるんだ」


 尾形はこの話を聞いて引っ掛かる事があった。勇者として召喚され、攻略をした迷宮と性質が似ていたからだ。違う点としては最初から分岐ルートが複数あり、魔物のレベルも最初からそこそこ高い事だ。


 「今度聞いてみるかな……」

 「うん?」

 「いや、何でもない。ボスと当たらない事を祈っておこう」


 もしこの場所にも隠し階層があって、下層に何かあるとしたら、とても興味がそそられるものだった。だが今余計な事をして本懐を遂げられなければ本末転倒だと、光一は一旦頭をクリアにして先を進んだ。



 ◇



 「はぁぁぁぁ!」

 「フレア!」


 二人は特に邪魔をされる事なく、順調に下層へと向かっていた。道中の魔物も最初の層から、あまり強さが変わってない事から余裕で進んでいた。


 「アスク!」

 「ああ!」


 背後からの魔物の攻撃を避けて剣の攻撃で魔物はその場で崩れ落ちた。


 「ナイス!」

 「光一のサポートのお陰さ」


 進むと分岐点のある大きな部屋に辿り着く。


 「ここで少し休んでいこうか」

 「そうだね」


 誰もいないその場所に座り込み、食事をとった。この試験の制限時間的に元々食事や仮眠をとる事が前提とされている。ペアで組む事が推奨されるのもそれが理由だ。 


 「改めてありがとう」

 「いきなりどうしたんだい?」


 アスクが光一に対して頭を下げてお礼を言う。


 「今回の試験、光一がペアで本当に良かった。強さだけでなくこの出会いに感謝したい」

 「そう言ってくれて嬉しいよ。でもアスクは強いし、他にもたくさん組む人がいる気がするけど」

 「僕の家の話を少しすると、僕のシュモール家では祖父が昔国に対して反逆行為をしたんだ。当時騎士だった父は祖父と絶縁状態だった事もあって、父が騎士の座を追われる事はなかったけど、周りの目はそうでなくてね。結局今でも反逆者の家だって言われるんだ」


 アスク自身の能力が高い事がかえって悪目立ちした事もあり、気の許せる友人などいなかった。ただひたすら自身の強さを磨いて周りを見返そうとこの試験に臨んでいた。


 「そうだったんだ……それでああやって絡んできたんだね」

 「ああ……言わないのは後ろめたい気がしてね」

 「ハハッ、俺はそういうの気にしないから。でも騎士というのはその下の代まで汚名を着させられてしまうんだね。子や孫には罪はないのに理不尽な話だよ」

 「忠誠というのが注視されるから体裁的にも良くないんだろうね。だから力と忠誠心を見せて陛下に認めてもらいたいんだ。父は実績や忠誠を見せていたからこそ罰せられなかったからね」


 尾形はアスクのこの言葉を聞いて価値観の違いを実感していた。日本という国で育った尾形にとって国王に忠誠を誓って命をかけるという考えがないからだ。


 「でも折角そんな強いだからもっとそれを別の為に使ってもいいんじゃないかな。騎士道は立派な事だと思うけど、本当に自分の命を賭けてまで守りたい人かどうかって国王とかだと尚更わからないと思うんだよね」

 「しかし家の汚名は忠誠で示さないと晴れる事はない」

 「まぁそうなんだけど、おじいさんは何をしたんだい?」

 「祖父は高名な騎士だった。複数の騎士達が祖父に従い国を転覆しようとしたんだ。国に対して忠義を尽くしていた祖父が謀反を起こした事は当時大ニュースだった」


 アスクの祖父は十三騎士に近いと言われたぐらいの騎士だった。アスクの幼少期に起きたこの事件でアスクは幼少期から今に至るまで不遇な生活を余儀なくされた。いじめや嫌がらせ等も日常茶飯事で、何度も悔しい思いをしてきた。


 「なるほど、ちなみに何でおじいさんが謀反を起こしたかってのは聞いているのかい?」

 「えっ?」

 「ずっと忠誠を起こしてきたおじいさんが謀反を起こしたというのは何か理由があるんじゃないかなって思うんだよね」

 「何で祖父が謀反を起こしたかの理由は考えた事もなかった。確かに盲点だったかもしれない」


 忠誠という言葉に盲目的になっていたアスクにとって、祖父が何故謀反を起こしたかなど考えた事もなかった。


 「まぁそこら辺はこの試験が終わってから考えればいいさ」

 「ああ、色々相談してくれてありがとう」

 「俺でよければいつでも聞くよ。もう友達みたいなものだし」

 「友達か……そうか、こういうものなのか」


 アスクがニヤつく。

 今まで周りから虐げられ、友達が碌にいなかったアスクにとって、尾形のこの言葉は戸惑いと嬉しさがあった。


 「さてそろそろ……」


 すると分岐点の内の一つから大きな風が吹き荒れる。


 「あれは……」


 尾形とアスクの二人はそれを見て、ヤバいのを肌で感じた。あそこに進めばボスのいる層に行くであろう事を確信した。


 「光一、あそこに進まないか?」


 アスクから漏れたその一言はちょっとした好奇心だったのだろう。だがその一言で尾形も抑えていた感情が湧き出る。


 「まさかアスクがそんな事言うとは思わなかったよ」

 「いつもなら絶対避けたんだけどね。でもこのタイミングでああやって分かりやすい目印もくれたし、何より俺達二人ならいけるかななんて思ってさ」

 「ハハッ、なら行こうか。ボスを倒して合格したら箔がつくし」


 二人の好奇心は堅実に試験を合格するより、強い相手と戦う方を選んで進んだ。



 ◇



 「四大迷宮と似たような場所がいくつかあるんですね」

 「ええ、流石にあそこまで広大なのはないけど、各地にあるわ」


 ジャジルにいるエミリアはアドラーブルとジュエラーに迷宮について講義をしていた。


 「ではそれぞれの最下層にはお宝が……」

 「そうね、分かりやすい宝もあればそうでない宝もあるわね」


 迷宮のような場所を作ったのは二十柱であり、それらを作った目的はいくつかあるが、メインは修練場所としての意味合いと大事なモノを保管だ。前者はこの世界に住む人々の強さの平均値を上げる為であり、後者は二十柱が保管しておきたいモノの保管先だ。周平や立花のように二十柱の力の一部等、来るべき時に備えて保管していたモノだ。


 「四大迷宮では周平さんや立花さんの力の一部を保管していたみたいですけど、他の場所でもそういう特別なモノを保管しているのですか?」

 「ええ、流石にあれ程のモノではないけどね。光一が試験を受けている場所にもそれなりのモノがあるわ」

 「じゃあやっぱり光一さんを行かせたのも……」

 「フフッ、まぁ今回は彼も下まで行かないでしょうけど、きっと私の意図を気付いて興味を持ってくれるはず」


 四大迷宮と似たような場所をダンジョンと呼ぶ。迷宮に比べて階層も短く、最下層までの道が封印されている事がほとんどなので目立ってないが、それらの最下層には力が眠っていた。


遅くなりました。


主人公出せてなくてすみません(笑)

もう暫くお待ちください。



評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ