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戦いの果てに

 凍り付けを解くとピタリとも動かないレガリアの遺体があった。


 「ふむ、完全に倒したか……」


 魔力の流れがないのを確認する。だが念には念をという事でレガリアの身体から陰黒の力を用いてさらに吸収した。


 「流石に問題ないか……俺も心配性になったものだ」


 九兵衛が戦線離脱という状況になった事もあり、慎重になりすぎていた。だがそれも杞憂に終わったとホッとする。


 「さて暗黒空間ダークネスゾーンを解くか……スパイラルやアレクサンドラに報告だ」


 シンが暗黒空間を解き、元いた場所に戻ろうとした時異変に気付く。


 「なっ……」


 戻った先はさっきまでいた場所ではなかった。草木が生い茂る森のような場所だった。


 どういう事だ……何故戻った場所が違うのだ。


 「まさか……」


 シンは慌ててレガリアの遺体に触れ、残留思念を読み取る。すると自身がしてやられた事に気付く。


 「なるほど……凍り付けになって吸収され始めた段階で暗黒空間事、異空間へと吸い込んだという事か……」


 信仰と信者を大切に重んじるレガリアは、聖地ペブルスの大地を傷付ける事なく、シンを異空間へと吸い込む事に成功した。クレセント同様目的を果たしたのだ。


 「勝負に勝ち、試合に負けたか……忌々しい……」


 レガリアは終盤に倒す事を諦め、自身の死を早め、暗黒空間事吸い込む術を発動した。重力の概念が存在しない暗黒空間だったことや、空間事吸い込んた為に吸い込む引力に一切気付かせなかったのだ。

シンはレガリアの遺体を完全に消し去った。


 「加えて星船計画の実行の為か……だとすれば残りの二体も九兵衛殿と俺同様にあの手この手を使って離脱させてくるな」


 エクリプスにいる二十柱は、封印中のガルカドールも含めて六人。シンは星船計画の全容を知っているので不安が頭によぎる。


 「仮に二人やられたとして残りのメンバーで奴を倒して計画まで阻止できるかだな……何にせよここを出る方法を考えなければ……」


 シンは空を飛び、建物があるかどうかを調べると、十二時の方向に建物がある事を確認する。


 この世界の事を知る必要がある……建物があるとすれば意思疏通の事の出来る生命体との接触が出来るかもしれないな。


 建物まで向かう最中、一面に広がる森を見てシンは不審に思う。生物の気配が少ない。厳密には強い力を持った魔物の気配がないという事だが、ここまで広い森の中でそういった魔物がいないのもおかしな話だからだ。


 もっと詳しく調べる必要があるか……


 シンが建物につく頃入り口でとある人物が手を振って待っていた。


 「お~い!」

 「九兵衛殿か!?」


 九兵衛の姿を見たシンは降下して対面する。


 「君も来たんだね~」

 「九兵衛殿も無事で何よりだ」


 二人はハグをする。


 「君も偽神を倒してここに来たっていう認識でいいのかな?」

 「うむ、レガリアを討伐した。九兵衛殿の話を聞いていたので対策を講じて戦ったがしてやられてここに来た……面目ない」

 「ははっ、僕として仲間が来てくれて心強い、何にせよ無事で何よりさ~」

 「そういって頂けると気が楽だ、それよりここは?」

 「そうだったね、ここが何処なのかの話をしないといけないね~」


 九兵衛は背を向け、入り口を開ける。


 「中で話そう、この世界が何なのか……そしてこの世界の主の挨拶をしよう」



 ◇



 シンとレガリアの戦いが終わった頃、聖地ペブルスの大聖堂ブランカでは歓喜の声が響き渡っていた。腐敗した現勢力を倒した証しとしてレダを含んだ主要メンバーが手を振っていた。


 「これでこの地も変わるわ」


 レダはシンの代わりに主要メンバーを先導していた。しかしながらそれと同時にいくつかの懸念点が頭によぎっていた。


 この後起きるであろう聖地での混乱の事もそうだが、何よりシンとレガリアの反応が消えて結構な時間が経っている事だ。


 「シンさん大丈夫でしょうか……」


 祐二は不安気な表情を見せる。


 「あの人が負けるはずがないわ、もう少し待ちましょう」

 「はい……」


 時同じくしてレイチェルが戻ってくる。


 「レイチェル戻ったのね!」

 「はい」

 「シンさんは?」

 「下での戦いは自分に任せろと上に戻りました」

 「シンの気配が消えたわ、何か心当たりはあるかしら?」


 レイチェルは首を横に振る。最下層に辿り着く前に引き返したので、当然戦いがどうなったかはわからない。


 「ただ途中で地下での戦いは上に戻る途中に大きく響きます。それが途中でピタリと止んだのでシンさんは恐らく暗黒空間を発動した可能性が高いです」

 「なるほど……それなら気配が消失してもおかしくはないわ。ペブルスの地形を守る為の配慮ね。インフィニティーシールドを発動する手間が省けたわ」


 シンがこのまま戻らず、三人が地下に調査に入るのはもう少し後の話となる。レイチェルのこの話でレダは消失した理由がわかったので、頭を切り替える。


 「こっちは無事終わったようですがどうしますか?シンさんが戻らなければ外にいる者達も不安がってしまいます」

 「そうね……一先ずあなたがシンの代わりに外で号令をしてもらいましょう。ここにいる幹部陣には私の方から伝えるわ」

「わかりました」


 レイチェルは、シンがカヤージという偽名と変身をして作った革命組織クールモアの右腕ウィンスとして、外で待つ組織のメンバーに目的が達成された事を伝えた。群衆は歓喜し、クールモアの幹部陣はこれからのダーレー教の方針については、騒動が収まってから決めていく事を話し、上層部の腐敗は全て排除する事の約束を交わした。


 「ウィンスさん、今後の方針なのですがカヤージさんから何か聞いていますか?」

「明確には聞いていませんが、方向性としてはクールモアに加わったダーレー教反対派を刺激しないようにと聞いています」

 「なるほど……確かに下手に刺激してダーレー教を潰すような事態は避けないとなりませんからね」

 「はい、立て直しに関しては街の混乱との兼ね合いも見てやっていきましょう。まずはクールモアとして街を安定させていきましょう」

 「わかりました!」


 尤もな理由をつけてメンバーを納得させる。シンが作った革命組織クールモアはダーレー教を反対している者と現体制を批判する者とで構成されている。上層部の腐敗や、治安の悪いダウン街がある聖地ペブルスでは、ダーレー教そのものから離れている者も生活しており、シンはそれらも積極的に集めた。現時点で反対派をないがしろにしてダーレー教を立て直す事を重視すれば、街はさらなる混乱になるのは火を見るより明らかだった。


 「さて私はカヤージさんを探すので、あなたがたは中にいた敵の拘束と、外にいる群衆の対応をお願いします」

 「はっ!」


 レイチェルはレダと裕二を連れて地下に潜った。



 ◇



 その頃ジャジルに戻ったエミリアは周辺国との交渉にあたっていた。


 「エミリア殿、ボリアル王国との交渉は如何でしたか?」

 「最悪の事態は避けたけど……って感じね」


 国王であるイェーツが帰ってきたエミリアに結果を聞くと、なんとも微妙な表情を見せた。


 「向こうは何と?」

 「どうにも勇者遠征とかで手薄となったファーガスを攻めて、領土を拡大させようとしてたみたいね」

「愚かな……もし仮にそれが上手くいったとしても、どのみち報復措置を受け、周辺国である我々にも迷惑が……」

 「ボリアルが落ちればジャジルやリユーンにも危害が及ぶ可能性が高くなる。ファーガスがボリアルを攻めればこっちも支援せざるを得なくなる」


 ファーガスでは国王が実質権限を失い、後を継ぐサラフィナは周平に従っているものの、攻められた場合は国の威信にかけて反撃をせざるを得ない。ファーガスという大国のメンツを重んじる家臣も数多くおり、攻められた時に攻め返さなければ忠誠心も揺らぐ可能性があるからだ。


 「支援させて大戦争でも起こすつもりだったのでしょうか……勇者達の大半が遠征に行き、兵士も支援で送っていますからな」

 「そうね……取り合えずシュウ達の事ちらつかせて脅しておいたから、行動に起こすような事はしないと思うけど、渋々って感じだったわ」

 「よほど攻めたかったのでしょう……しかし勝算が見込める程の力があるとは……」

 「ええ、そこは私も疑問だったわ。詳しく調べようと思ったけど、私だと警戒されてるし無理だったわ」


 しかし調査をしない訳にもいかないのでエミリアはとある事を考えていた。


 「では代役を立てる感じでしょうか?」

 「勿論、彼に頼むとしましょう~」



 ◇



 「ねぇ光一、今日は空いてるわよね」

 「も、勿論」


 尾形はジャジルに来てから、マヨネーズを作って売り、商業分野での成功を収めていた。国からも重要視されており、要職にもついていた。


 「最近あんた忙しそうだから退屈なの」

 「いや、いつも付いてきたと記憶してるけど……」

 「私の相手そんなにしてくれないでしょ」

 「ハハッ、俺としてもこんなに忙しくなるとは聞いてなかったんだよね……」


 マヨネーズで国に財をもたらした事、エミリアやそのバッグにいる周平と親しい関係にある事からジャジルでは尾形を離さない用に重要な役職に就かせていた。


 「あんたがマヨネーズなんか作るでしょうが!お陰で国は潤ったし要職も就いてるけど、あんたは元々私の家来なんだから」

 「いや、家来になった覚えは……」

 「この期に及んでまだ言うか!」


 スタセリタは尾形の首をヘッドロックをする。


 「く、苦し……」

 「あんたはいつまでも私直属なんだから、もっとその自覚をしないさいよね!」


 尾形は苦しみつつも。胸の感触と甘い匂いを堪能する。


 「わ、わかった……わかったからもう少し優しく……」

 「ならもっと私の相手をしなさいよね」

 「相変わらず仲がいいわね~」


 二人がじゃれているとエミリアが部屋に入ってくる。エミリアはそんな二人を見て呆れつつも仲が良い事に快く思っていた。


 「エミリアさん~光一は私の部下ですよね?」

 「ええ、そうよ。光一はあなたが連れてきたんだから当然」

 「えっ、エミリアさん……」

 「要職ついたってそれは変わらないわよ……ねぇ光一?」

 「は、はい!当然ですよ~ハハッ……」


 エミリアがちょっと睨みつけると尾形は抵抗なく従う。そんな尾形を見たスタセリタはムッとした表情を見せる。


 「あんた……さっきと言ってる事違うけど?」

 「いや~それは最近スタセリタの相手ができなかったからつい……」

 「ふぅん~上司に相手ができなかったからなんて随分ね……」

 「くっ……汚いぞ」

 「はいはい、今日は二人で王都でお出かけでしょ」


 エミリアが間に入ってヒートしそうな二人を宥める。


 「はい、そうなんですよ~光一がやっと時間作ってくれたので」

 「フフッ、ちゃんと時間は作ってあげなきゃね~それで明日以降あなたにお願いしたい事があるの」

 「お願いですか?」

 「ええ、ボリアルに行ってもらいたいの」


久しぶりに一週間で投稿できました。


第一章まで修正終わりましたが、誤字が残っているかもしれないのであったらご指摘いただけると嬉しいです。

現在第二章を修正中です

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