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信者の祈り

遅くなりました。

 「祐二、怪我はない?」

 「はい、僕はなんとも。レダさんの方は大丈夫ですか?」

 「フフッ、私があの程度の相手に傷を追うわけないわ~」


 レダは微笑みながら祐二に抱きつく。


 「少し運動したから補給補給~」

 「れ、レダさん恥ずかしいですよ~」


 レダは人目を気にせず祐二に抱きつく。昔はもう少し自重をしていたがここ最近は祐二との行動が多く自重しなくなっていた。流石に場の雰囲気や状況は見るが、レダの今のような行動に対して強く言えるのは少ない。二十柱の下に戦姫という立ち位置だとしてもレダはかなりの古参で二十柱の中でもレダより前となると半分以下だからだ。昔から二十柱に仕えたレダはルシファーやランスロットの信頼が厚く発言力をある。


 「フフッ、エネルギーは定期的に補助しないとね~」


 祐二はレダの胸の中にうずくまり、それを見た周りが羨ましそうにそれを見る。レダの補給が終わるとすぐに表情を戻す。


 「さて……私はレダ・スパイラル、カヤージの要請を受けてきたわ」

 「やはりか!」

 「最強の援軍だ!」

 「万歳!」


 レダの自己紹介で周りは歓喜する。自分達が苦戦したギルドの精鋭を一瞬で片付けたのを見ていれば当然の反応だ。


 「ふっ……残念だったな。ここは囮……」


 気絶していたトムロルフが目を覚ます。


 「トムロルフ、貴様まだ喋れるのか?」

 「ここでこのまま成敗して……」

 「皆静かに!」


 外野が騒ぎそうだったのでレダは一瞬でそれを鎮める。


 「まぁそんな事だろうと思ってけどね」

 「どういう事ですか?確か上にはこの街とこの聖堂を象徴する鐘があります。それを落とせば反乱軍の勝利ですよね?」

 「祐二、私達の本当の狙いが下なのは分かるわね?」

 「はい」

 「反乱軍が包囲した段階で教皇を含む上層部は上の鐘は諦めたの。あの二人が下に行ったのは勿論本当の狙いの事以外にもそっちの狙いがあるの。どうせ抜け道を用意してるだろうからね」


 シンは初めからそれを見越していたこそ自分は下に行った。その上でレダを上に行かせたのは上に強い護衛を用意していた場合を考えての事だった。


「ふっ、そういう事だ。気になるなら下に行く事だな……教皇達はそのまま逃げるだろうからな」


 トムロルフのこの発言は最後の悪あがきとも言えるだろう。レダを下に行かせれば鐘に行くのを抑えられる可能性があるからだ。だがレダはそんな安い挑発には乗らない。下にはシンとレイチェルが行ってるし、そもそも上を任されたのは鐘まで行き反乱軍の勝ちを決定付ける為だからだ。


 「あら、安い挑発ね~そんな愚かな貴方に一つ。下には私より強い仲間が行ってるの。そして私は鐘を鳴らして反乱軍の勝ちを決定付けるのが仕事。逃げる幹部は眼中ないから無意味よ」

 「なるほど……どこまでも完敗か……」


 レダは倒れたトムロルフの首に軽く手刀をして完全に気絶させる。


 「自分を見失わないようにする事ね」


 レダはこの騒ぎが自分たちの勝利で終わった後のトムロルフがどうなるかある程度予測がついていた。支えとなっていたモノがなくなった時人は自暴自棄となる。だがそれを転機として変わる者もいる。その変化には少しだけ期待しつつその場を後にした。



 ◇



 「逃げろ!」

 「化け物め!」


 シンとレイチェルはゾンビ兵となった教団の精鋭達を戦闘に地下へ進んでいた。


 「思った以上に長いですね」

 「ああ、レガリアもクレセント同様地中の奥深くに自らを封印したのだろうさ」

 「そうみたいですね、しかし大聖堂の地下がこんなに深いとは少し予想外ですね」


 どこかに抜け道があると予想し、秘密の抜け道らしいものを見つけたらレイチェルはシンと別れて逃げ出した教団の幹部達を捕まえる予定だった。しかしそれらしき抜け道は大聖堂の一階からここに至るまでに探しているが見つかっていない。そしてこの異様な数の教団の戦士達の数を考えればこの先にいる事を確信せざるを得ないだろう。


 「アレクサンドラよ、もしこの後レガリアとの交戦になったら地上に戻り大聖堂にいる者達を外に。そしてスパイラルにインフィニティーシールドを発動してもらい、聖堂周辺を囲えるだけ囲って封鎖してくれ」

 「わかりました、しかし九兵衛さんのように異空間へ送られてしまう魔法を発動する可能性があります。幸い図書館ザ・マスター殿がこちらに来たおかげで大きな穴になっていませんがこれであなたを失えばこちらはかなりの痛手となります」


 九兵衛消失後のギャラントプルームでの会議に参加していないシン達だが九兵衛の身にあった事や図書館ザ・マスターが来た事は当然耳に入っている。


 「うむ、それは重々承知だ。だからこそインフィニティーシールドを発動するのだ。大聖堂やその周辺は捨てる事になるが被害を最小限に抑えるつもりだ。そして我が陰黒属性の力でその力を封じ込める」


 シンの中では九兵衛の持つ力では相性が悪く、咄嗟の判断ではどうにもなかったという結論に至った。巨人王の大陸属性は陸地を自由自在に作る力で強力な事には変わりないが、異空間への穴を塞ぐ様な場合に相性が良いとはいえない。それに対してシンの悪魔帝の陰黒属性は吸収する力を持つので、異空間への穴を出されても対処できるはずだと考えていた。


 「確かにシンさんの能力なら対応できるかもしれませんね。その場を見ていないのでわかりかねますが、伝わっている話的には相性はいいかと」

 「ハハッ、今回上手くいけば残りも俺が全て任せられるかもしれないな」


 地下に進めば進むほど二人は驚きを隠せない。何故なら地下にここまで建造物を作っていたからだ。この百年間ダーレー教徒達はこの地で主神であるガロピン含む十の偽神を信仰してきたのだ。それは四大大陸の守り神であるクレセント、オンラク、レガリア、オルメタに加えて百年前の戦争で消滅した軍神フィン、知恵の神カナーン、法神ディスト、統治の神ガディア、天候の神エウレカも含めてだった。二人が地下に進んでいく途中に見た壁に彫られた神を見れば一目でわかるものだった。


 「もう消滅していない者まで信仰とは大した忠誠心ですね」

 「フッ、宗教なんてそんなものさ。実在しない者を神にして信仰しているのが大半なだけましさ」

 「他の世界ではそれが当たり前でしたね、これが終わったら私も色々な世界を旅してみたいものです」

 「俺や実の手伝いをしてもらうだろうし嫌でも付き合わせるさ」

 「それは退屈しなそうで助かります」



 ◇



 二人が下へ下へと向かっている頃大聖堂の地下の最下層では教皇含む幹部や教団員達が集まっていた。


 「ラヴァンタンよ準備はどうだ?」

 「時期完了するかと思います、信者達が必死に魔力を注いでいます」


 ダーレー教団のトップのダンテ教皇と枢機卿であるラヴァンタンは信者達に命令を下し地下に眠るレガリアの復活に魔力を注いでいた。本来復活にはまだ時間がかかる予定だったが二十柱が表舞台に出てきた事で復活を早める羽目になっていた。二人は実際に封印中のレガリアと会話をしており、世の中の情勢を話していた。今回封印を解くのもレガリアの了承があった。


 「そうか、上では暴動が起こっているはずだ。出来るだけ時間を稼ぎレガリア様の復活と共に地上へでる。そこで我らダーレー教の力を愚か者共に見せつけれるのだ」


 教皇のダンテや枢機卿のラヴァンタンは汚職にまみれた権力争いを生き抜き今の地位まで登り詰めた事もあり、かつては持ち合わせていたであろう尊い心など皆無に等しかった。今回の反乱も教団の上層部の汚職が主な原因でもあり本来なら教団の求心力を低下させた二人をレガリアが助ける理由などない。だがそれが反乱に繋がったのは二十柱の台頭が原因だという事がレガリアが封印を解くことを承諾させた。


「教皇様、神レガリアは何と?」


 祈る信者をまとめる司祭の一人が聞くとダンテは池から強く自信に道溢れた表情を見せる。


 「うむ、今リンクさせて声を聞いたがもう少しで復活できると。頑張ってくれと伝えるよう語りかけてくださったぞ!」

 「おおっ……皆のもの、神レガリアが皆の力に期待している。復活まで全身全霊をかけて魔力を注ぎ込むのだ!」


 その言葉に信者達は励まされたのか魔力の注がれる速度が上がる。この場所に集まっている信者達は皆魔力の高く信仰心の高い者が集められていた。


 「この一言で信者達の魔力注入速度があがるとは大した信仰心だ」


 ラヴァンタンは感心半分呆れ半分といった感じで信者を見ると同時に、昔は持っていた真っ直ぐな信仰心や偉くなる為に熱心な信者を出世の道具にした事を思い浮かべた。


 「それが信者という者だ、今ワシとお主は同じ事を思い浮かべたはずだ」

 「ですね、神の言葉を聞けるという事実は実に強い」


 ダンテは司祭に神の言葉と言ったが実際にはそんな言葉を聞いていない。レガリアの声を聞き対話が出来るというのは嘘ではないがそう気軽に聞ける訳ではない。封印中のレガリアと対話をするのは魔力を込めてお互いをリンクさせるという双方負担のかかる手順を踏む必要があるからだ。


 「うむ、実際に何度か対話するのを上層部の人間には見せているからな」


 事実があれば信憑性は高まるし、上層部の人間がそれを見ていれば信じざるを得なくなる。そして神と話せるという事実は教団内で二人は神と同義だった。


 「ほ、報告します!侵入者がここに向かっていると報告を受けました!」

 「そうか、侵入者の数は?」

 「二人です!しかし我らが同胞をアンデットにして精鋭をもろともせず進んでいるとか……」

 「恐らく神殺しだな……やはり裏で糸を引いていたか……」


 ダンテは顔を訝める。レガリアが復活さえすれば十分対抗できると考えてはいるもののまだ目を覚ましていない。流石に目を覚ます前にここに辿り着き襲われれば分が悪いのは明白。


 「どうしますか?」

 「うむ、こちらの目覚めも近い。ならばこちらも本気を信者に頑張ってもらおうか」


 ダンテはラヴァンタンを見てニヤリと笑うとラヴァンタンもそれを察しニヤリとする。


 「あれをやるのですな」

 「緊急事態だからな、相手が神殺しとなれば神レガリアや主神ガロピンもこの行いをお許しくださるはすだ」

 「では早速リングの準備をします」


 ラヴァンタンは司祭に命令をするためにその場を離れた。


 「反撃の始まりだ……神殺しよ来るがよい!」


設定上敵であるダーレー教が信仰する神は主神のガロピン・エクリプスを含め十人という設定です。

百年前の戦争で半分を倒したという事になっていますが名前が出てなかったので今回の話で出しておきます。



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