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突撃大聖堂

 「止まらないか……クッ……」

 「止まれ!」

 「お、応援を……我々では止められません!」


 シンの率いる群衆達は人数の暴力で警備を破り、大聖堂ブランカに流れ込んでいた。その流れと一緒にシンとレイチェルも大聖堂の中に潜り込んでいた。群衆達の狙いは教皇を退任させる事だが二人の目的は当然別にある。


 「大聖堂の地下ですか?」 

 「ああ、目的の奴は十中八九そこにいるさ。あの戦争後この大陸でここほど安全だった場所は他にはない。先の戦争で生き残った騎士団メンバーを考えれば、戦争の終結と共に戦力が削がれた状態で追撃をする余裕はなかっただろうからな」


 封印状態に入った四体の偽神がどこにいるかの特定は困難で、今現在も全て把握しきれていないのが現状だが、戦争が終わった時点でこの場所に一体眠っているのは生き残った九兵衛を含め予想がついていた。だが戦争が終わり和平交渉が締結した後では迂闊にこの場所に手を出す事が出来なかった。


 「はい、あの時はダーレー教に救いを求める者もいました。終戦後師匠、周平さん、立花さん、シンさんを失った状態で民衆をないがしろにここを攻めるという選択肢はありませんでしたからね……」

 「あの時は俺も不覚を取ってしまったからな。再びこうしてくるのに百年もかかってしまったと思うと悔やまれるが後悔しても仕方がない」


 人間側でダーレー教が衰退する事なく広がったのは周平達が魔族側についたのに勝ちきれなかった事だが、アーシアを王とするレイルリンク王国を残せず滅んでしまった事も大きい。もしダーレー教を反対する人間族の強い国があればここまで浸透しなかったからだ。


 「カヤージ様どちらへ?」

 「うむ、地下に行く。お前達は上へ行きレダという者に会うのだ。彼女は俺の仲間で腕も立つ」


 レダと祐二には予めこの事を伝えてあり、クーデターで大聖堂の中に入ってきた時の対応を任せていた。


 「わかりました!」

 「長い蒼い髪の女性だ、すぐにわかるだろう。皆の者!革命はじきに達成される!最後まできを引き締めて行こう!」


 シンは暴徒達の指揮を高めるとレイチェルと共に地下へ向かった。



  ◇



 「空きませんね……鍵がかかっている上に頑丈とは」

 「ふっ、ならばこじ開けるまでだ!どくのだアレクサンドラ!」


 シンは頑丈なドアを斬撃で切り飛ばして中に入る。


 「中々に頑丈ですね」

 「うむ、ますます怪しい……アレクサンドラよ気を抜くなよ!」


 中を進んで行くとフードを被った集団が殺気を出しながらシン達の前に立ち塞がる。


 「教団の精鋭か……」

 「全てはダーレー教の為に……」

 「シンさんここは私が……」


 教団の精鋭達が魔法を唱えようとするとすかさずレイチェルが前に出て魔法を唱える。無詠唱でいくつもの魔法陣を生成しそこから光の砲弾が放たれる。


 「消えなさい!」

 「うっ……」


 二十柱ナンバー三にして初代魔王超越者アファームド・ガルカドールに拾われ直伝の高速詠唱術を教わったレイチェルからすれば教団の精鋭ごときに遅れをとることはない。


 「滅びなさい、ライトオブリベリオン!」

 「グァァァァ!」


 魔法が終わるとあっという間に屍が量産された。


 「流石はアレクサンドラだ、あの人を見ているようだ」

 「いえいえ、お師匠様には足下にも及びませんよ。あの人は……」


 レイチェルが何かをいいかけた時だった。死体となったはずの教団員が動き出し、人間が放つには異質な紫のオーラを放つ。


 「スベテハ……キョウダンノタメニ……」

 「クッ……呪術か!」

 「おそらく既に死んだ時にこうなるように仕組んでいたのだろうさ。魔族を忌み嫌うダーレー教徒が呪術を使うなど笑えてくるがな」


 シンはレイチェルより前にでてゾンビ達に近づく。いつもなら剣を出して斬るであろうシンだが今回は違う。


 「呪魂の鎖!」


 シンが呪術を発動するとゾンビ達の動きが止まる。


 「呪術王シン・アークトライアル・ゲイクルセイダーが命ずる!貴様らの主人は誰だ?」


 シンの声を聞いたゾンビ達はシンの前にひざまずく。悪魔帝として呪術を極めたシンは死んだ者をゾンビへとする事も意のままに操る事もできる。かつては死の軍勢を率いて世界を氷付けにして自身のもつ背信の力で全てを従わせた。


 「これが死の軍勢を率いた力……」

 「少し引かせてしまったかな、だが殺してしまった以上は有効活用させてもらわんとな」


 二十柱はそれぞれ同族を従える者や別の種族の配下を従える者や配下を従えない者と十人十色。ロードリオンは同族を従え、九兵衛は冒険者ギルドを作って異種族の配下を従えている。そして配下を持たないシンだがその理由はシンにとって信用に足るのは友や仲間と愛する者と逆らわないゾンビ兵に限られるからだ。勿論魔族の中の悪魔族の頂点であり始祖の力を持つシンは本来悪魔族を従える必要がある事も理解しているがその責務は愛する者との再会をした後となる。それが一度死後の世界に行った後に復帰する条件でもあった。


 「それでこそ我が配下、レガリアの元へ案内するがよい」



 ◇



 「行くぞ!」


 シンに従う反対派達は教皇がいるであろう上を目指していた。聖地ペブルスにある大聖堂ブランカは神聖な場所とされていた事もあり、百年前に周平達騎士団に一度壊されたのを建て直して以来ずっと平穏な地だった事もあり昔に比べて中の警備も徐々に緩くなっていった。多人数の力技とはいえ難なく突破できたのはこれが大きい。特に大聖堂付近にはダウンに住みついた犯罪者も目立つような事はしないので余計にだ。


 「ここは行かせんぞ!」


 反対派達の前に立ちはだかったのはこの聖地ペブルスのギルドマスターをしているトムロルフだ。最近反対運動が騒がしかったせいか教団から護衛の依頼をうけていたのだ。


 「ちっ、トムロルフか……冒険者ギルドのマスターがどうしてここに……」

 「貴様らみたいなのから教団を守る為だよ、この街に所属する冒険者の半数近くがお前らを粛清する為にここに集結している。覚悟するんだな!」


 トムロルフの周りに部下の冒険者が集まる。冒険者ギルドが進んで人殺しの依頼を

受けるのはここのギルドぐらいだろう。それだけ教団との癒着が強く、過去には視察に来た九兵衛に刺客をだして殺そうとした事もある。尤も結果教団の暗殺者の死体が多発したので今は仮に視察に来ても手を出す事はない。九兵衛としてもここに支部を構えても教団の息がかかるのは想定しており、ここに構えたのは連邦の要請や自身がいつでもここに来れるようにというのを想定しての事だった。


 「くっ……ここで引いては俺達の苦労が水の泡になる……カヤージさんの灯した火を消してはならない!」

 「そうだ、行くぞ!」


 反対派達は声をあげてトムロルフ達に突撃する。先導部隊を引き受けたのは皆戦闘経験のある者だけにここでは引く事はない。


 「へっ、無駄死にご苦労さん~お前ら行くぞ!」

 

 トムロルフ達が反対派に攻撃を仕掛ける。いくら戦闘経験ありといってもトムロルフはギルドでは白金ランク、加えて取り巻きも金ランクの冒険者となれば勝ち目はない。次々に倒れていく。


 「うっ……」

 「グァァァァ!」

 「おら、どんどん行くぞ!」


 トムロルフによって反対派の勢いが止まる。


 「流石は白金冒険者……」

 「このままでは……うっ!」

 「調子にのった罰をしないといけないな~」

 「ここまでか……」


 トムロルフが反対派の一人を魔法で押さえ付け剣を振り下ろそうと腕を上げる。


 「ムッ!」


 振り下ろすその瞬間トムロルフに向かって魔弾が飛んできたので咄嗟に剣で弾く。


 「全くこれが自由の象徴たる冒険者ギルドのマスターとは……恥さらしもいいとこだわ」

 「誰だ!」


 魔弾を飛ばしたのは戦姫レダ・スパイラルだ。大聖堂の中で待機をしていたがトムロルフ達が動き出したのでそれに対応するように動き出したのだ。


 「酷い……皆さん大丈夫ですか?」

 「す、すまない……」


 一緒にきた祐二が倒れている者達に治癒魔法をかける。


 「ギルドマスタートムロルフ……あなたはもう不要な存在ね。今までは目を瞑ってきたけど更生の余地なし……」

 「貴様……誰を殺すって?俺は白金ランク冒険者にしてこの聖地ペブルスのギルドマスターだぞ!」

 「フフッ、可哀想な子……教団の幹部を父に持ち、幼少期からその偏った思想を刷り込まれ盲信……今のあなたを見ていると滑稽ね」


 レダはトムロルフを哀れむような表情で見るとその表情に腹が立ったのか激昂する。トムロルフが一番嫌うのはプライドに傷をつけられる事、父親の権力により幼少期から人を従わせる事を覚えていたトムロルフにとって哀れまれる事は屈辱的な事だった。 


 「貴様!そのような目で俺を見るとは何事だ!」

 「フフッ、図星たったかしら?弱くて脆いくせに下手なプライドだけは一人前……」

 「俺を侮辱して只で住むと思うなよ!」


 トムロルフは我先にと剣を手にレダに飛び掛かる。頭に血が上り勢いだけで突っ込んだがレダ相手には無謀な行為そのもの、トムロルフの剣はレダに届く事なく破壊される。


 「なっ……」


 剣が粉砕されてもトムロルフの勢いは止まらずレダに向かって突っ込んでいく。この時点でレダに向かって勢いたけで向かった事を後悔するが時既に遅し。レダは哀れむよう目でトムロルフを見ながら攻撃を始める。


 「破壊ディストラクション!」

 「グァァァァ!」


 レダ固有の技で任意の場所で光を発生させて暴発させる技、魔法の位階レベルで言えば第八位階魔法相当の威力だが、この技は魔法ではないので破魔軸で魔法の発動が出来ない状態でも発動できる。百年前の戦争では二十柱共のメンバー共に戦場に出たときに破魔軸空間の中で魔法が使えず困惑する相手にこの技を連発し、恐怖に追い込みながら全てを殲滅した事で殲滅戦姫ジェノサイドヴァルキリーと恐れられた。


 「残念たけど戦うに値しないわね。貴方に払う敬意はないわ」

 「クッ……ソ………」


 破壊をもろに受けたトムロルフに立ち上がる気力はなく、そのまま意識を消失した。


 「トムロルフ様がやられた……」

 「アイツヤバイぞ……」

 「消えなさい!」


 残った取り巻き達も破壊で次々に殲滅し全ての敵を倒した。


最近投稿ペース遅くてすみません。

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