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招かれざる客

 「提案は承諾してくれたかな?」


 昼になり二組と一組の代表メンバーが集まり、石川は不気味な笑みを見せながら問いかける。


 「受けてもいいが期限付きかつ条件付きだな」

 「ほう」


 一組の代表メンバーは木幡、美里、橋本、東の四人だ。木幡は代表となって言う。


 「まず俺達一組は近いうちに抜ける予定だ、それが期限付きである理由でもう一つはこっちから派遣するメンバーはこっちで決める。当然派遣しないメンバーもいることを頭にいれておいてもらおう」

 「加えてそっちが予め派遣するメンバーを伝える事とこっちはそれに対して消極的なメンバーが多いから派遣されてもいいメンバーの都合がつかない時はこっちからは派遣しないわ。派遣されたくないメンバーを無理矢理は絶対に出さないというのも条件ね」


 一組としては二組と偵察部隊を組むなんてできればやりたくない。ただ物資を支援してくれている軍の建前拒否をするわけにもいかないので絞りに絞った条件で了承する事にした。


 「脱退に加えて出したくないメンバーを出さないとは……二組は全員を平等に派遣する予定なのに随分消極的だね橋本~」

 「ふん、お前達のやり方と俺達のやり方は違うのさ。無理矢理一つにまとめようとする事の方がナンセンスだよ三浦」


 やや挑発的な物言いなのは二組の三浦奏太みうらかなた。石川と共に遠征組の二組を仕切っている。橋本とは部活が同じだったがあまり仲良くなかった。


 「この状況下で協調性の欠片も感じないのもどうかと思うけど?」

 「君達とは見てる視点が違うのさ。やり方は一通りじゃないよ」


 二組の秀才岩田広大いわたこうだいに対しては同じく秀才の東が張り合う。


 「そういう事だ、それで了承してくれるか?」


 木幡が石川に問いかける。一組からすればこれを了承してくれれば派遣させたくない人材を出さすに済む。


 「それがおとしどころだな。その条件でいいが流石に誰も出さないというのだけは勘弁してもらおうか?」

 「そうだな、ここにいる間はそれは守ろう」


 木幡が他のメンバーと一度目を合わせ、三人の納得した表情を見て了承した。だが二組の思惑はどういう形であれ共同偵察部隊を了承させる事にあった。当然この時一組のメンバーはそんな思惑には気づかない。


 「ふっ、決まりだな。なら早速だが最初の偵察は数日後を考えている。数人メンバーを決めておいてくれ」


 お互いに合意し話し合いも終わりかけたその時少し離れた場所で大きな音がした。


 「この音は……」


 爆発音に近い音が聞こえその場にいた七人もざわつく。


 「ちょっと不味いんじゃない?」

 「ふむ、話し合いも終わったし様子を見に行くべきだろう」


 

 ◇



 「無駄な事はやめろってのに……」


 砦に潜入した実と九十九は兵士達と交戦していた。不法侵入した二人に複数の兵士が襲いかかったが当然相手になるはずもなく人の山を量産しながら勇者達の所に向かおうとしていた。


 「指揮官もしくは勇者に用があります。殺すつもりはありませんから死にたくなかったら邪魔をしないでください」

 「貴様等……」

 「やっぱりこうなっちゃったね~」

 「これだけいたら見つからずとか無理だから仕方ないよ~」


 当然だがここにいる戦力を掛け合わせても二人には遠く及ばない。二人が談笑しながら進んでいくと一組二組含む一部の勇者達と遭遇した。


 「誰だお前ら?」


 実と九十九を見た事のない二組の勇者達か突っかかる。


 「お前らは勇者か?」

 「そうだが爆発音からして穏やかじゃないな、何者だ?」


 二組の数名が武器を手に取り構えるが対称に一組はただ二人を見ていた。


 「あれ九十九ちゃん見たことないのがチラホラいるんだけど」

 「連邦に召喚された勇者達だと思うよ」

 「ああーそういえばいたね。こっちには用ないんだよね~」

 「何をわけのわからない事を……」


 二組の数名が実に突っ掛かろうとするが鞘を納めたまま刀を槍のようにして吹っ飛ばす。


 「ウァァァァァ!」

 「こうも突っ掛かってこられたら話もできないな。もうちょっと穏便にいく謙虚さがないものかな……」

 「フフッ、昔の実君にも言ってあげてね」

 「ハハッ、それは刺さるな~でもまぁこいつらと違い少なくとも相手と力の差を見て判断するぐらいの目はあったかな」

 「貴様……」


 実は周囲を見渡し雪を見つける。


 「おっ、いたいたーあんたに用があるんだ」

 「わ、私?」


 顔は知っているとはいえろくに話したこともないので雪も困惑する。実は二組のメンバーは無視して雪のもとに行こうとすると二組のメンバーが背後から攻撃しようとする。


 「無視するんじゃねぇぇよ……」


 だがその背後からの攻撃と同時に九十九が動き、そのまま蹴り飛ばす。


 「うっ……」

 「しつこいですよ……これ以上被害傷付きたくなければその武器をしまいなさい!」


 九十九が威圧をすると二組のメンバーは武器をしまう。


 「手荒な真似をしてすまない、こうして話すのは初めてだね」

 「あ、はい。確か周平君の……」

 「ああ、元初代勇者にして境界騎士団の一員、今は在るべき世界モンドペレッセリに所属している天竜院実だ。改めてよろしくね、こっちは俺と同じ経歴の御子神九十九」

 「よろしくね雪ちゃん」

 「はい、よろしくお願いします。でも周平君の仲間がどうしてここに?」


 雪が疑問に感じるのは基本的に勇者の手助けはしないと予め周平に言われていたからだ。本人が直接来るならまだしも部下を派遣するなど手助けをしない理由も聞いていただけに理解できなかった。


 「俺達は初代勇者だ、在るべき世界モンドペレッセリではなく初代勇者として周平さんが教えてない技を教えにきた」

 「あの時周平さんがシャガー・ヒンドスタンとして教えていた内容だけではフェアじゃありませんからね」


 周平の使った在るべき世界は対偽神を倒して二十柱が管理する世界に戻すのを目的としており、魔族と人族のバランスと公平性を保つ為に今回の勇者達の戦いには関わらないという方針。しかし前にレダ達が魔王軍に所属して人と戦ったりとしていた事等を加味して、勇者もある程度強化をして補填する事にしており前に周平達が鍛えた事や今回はその補填に該当する。勿論実は初代勇者だった事の想いもあっての事だが。


 「勿論いらない御世話ってなら別にいいがどうする?」


 実はクラスメイトの目を見て反応を伺う。


 「是非お願いします!」


 真っ先に言ったのは雪だ、勿論雪がその申し出を受けるのはわかっていた事だが雪のその言葉に押されたのか周りも続く。一組は周平の率いるメンバーは化け物だという認識があり、実際に鍛えて貰っていた事から実の教えを受ける事に対しては前向きである。だが二組は実際にその強さを目の当たりにしていない者が大半で懐疑的な目で実を見る。


 「なら決まりだな、雪ちゃん受けそうなメンバーは集めてくれないか」

 「はい、わかりました。といっても今ここにいるのが大半ですけど」

 「雪!」


 騒ぎに気付いた美里達が来る。


 「美里ちゃん」

 「爆発音が聞こえたけど一体……って確か周平君のところにいた」

 「天竜院実だ、ええっと杉原美里ちゃんだったよね?」

 「はい、でもどうしてここに?」

 「あの時鍛え残した事があるから補習だってさ、ここにいる一組のメンバーは皆受けるける感じだけど美里ちゃんも受けるよね?」

 「ええ、勿論、あとはあの三人が……」


 少し遅れて六人がやってくる。だが石川を含む三人は先に倒れているクラスメイトの方に目が行く。


 「これは……」

 「おい大丈夫か……」

 「これは穏やかじゃないな……やったのはお前達か?」


 実と九十九を知らない石川は二人を睨みつける。逆に木幡達三人は実と九十九の姿を見て何が起きたのかある程度察し静観する。


 「ああ、ちょいと邪魔したから軽くな~」

 「皆この不法侵入者を追い出すぞ!」


 石川が問いかけるがさっきの二人を見ていた二組のメンバーは動かない。全員が力を合わせても勝てないぐらいの力の差を実感しているからだ。


 「どうした?何故動かない?」

 

 石川の横にいた三浦も一緒になって言うが動かない。そのまま場が静まりかえってしまい実が笑い出す。


 「滑稽だな」

 「何だと!」

 「こいつらには力の差を実感させてやったからな、ああそっちの三人もあの時の補習するから強くなりたいなら参加するか?時間は長くて一月ぐらいかな」


 実のその言葉に三人は同じ事を考えた。鍛えてもらうのは願ったりかなったりとしてその一月という言葉が現状とても都合が良かった。


 「是非お願いしたいです」

 「今後の為にも絶対に必要だ」

 「よろしくお願いします」


 三人も了承すする。


 「ならこの後少ししたら早速やろうか。どこか広い場所はあるか?」

 「はい、案内しますよ」


 美里もこの三人同様さっきの話し合いに出ていたのでにんまりする。このタイミングで実が来た事は一組にとっては二組を牽制する良い手段にもなるからだ。


 「待て、そんな事が許されるとでも?大体貴様は何者だ、軍が黙っちゃいないぞ」


 石川のその言葉に対して嘲笑う。


 「軍が俺たちに手を出せば連邦そのものがつぶれるけどな~それに……」


 実は笑うのを止めて今度は威圧する。


 「この程度の戦力に俺達が負けるとでも?」

 「うっ……」


 実の威圧で場が凍り付く。石川達三人はこの実の威圧を受けて初めて力の差を実感する。超人の域に達している者の本気の威圧は常人が受けるにはキツい。勇者達はまだステータスが高いので気絶をするまでにはならないが、それでも周平達二十柱クラスが本気で威圧をすればそのまま崩れ落ち気絶する者もいただろう。石川は実の威圧をまともに受け身体から汗が流れていた。


 「少しは世界情勢のお勉強もしておくといいかな。勇者の遠征を自由になったのが何でかぐらい把握しておくんだな」


 周平達在るべき世界モンド・ペレッセリの力は各地で浸透しつつある。まだまだダーレー教の影響力から反発している者も多いが、少なくとも遠征をしていない勇者達はその事をよっぽど理解していた。


 「あっ、雪ちゃんと美里ちゃんだけは私が別で教えるからよろしくね」

 「はい、よろしくお願いします」

 「ありがとうございます」


 実と九十九が一組のメンバーに先導される中、石川達二組はその場に立ち尽くした。


クラスメイトの話と併用してシン達聖地潜入組の話はこの章で終わらせる予定です。

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― 新着の感想 ―
[一言] 雪と美里 早く周平の身の回りに着きます バグ→石川達が多すぎる バグ嫌い
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