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尋問

立花ちゃんは記憶もほぼ戻っていますし敵には本当に容赦ないですが仲間内には優しいです。ただ彼女もまた人間として欠けている部分もありそれを教えられていくような話にしたいです。

 さて後はこいつを尋問して、洗いざらい吐かせるだけである。すでにこいつの心は完膚なきまでに折っている。


 「お前は盗賊団での地位はどれぐらいだ?」

 「一二〇人いて俺は五番目ぐらいです……」

 「あなたが指示して襲わせたのかしら?」

 「そ、そうだ……」


 男の声はどこか力なく、顔の生気がない。あれだけ痛みを与えたわけだし、ある程度死を覚悟しているのかもしれないな。


 「そうか、ところでお前は痛くないか?」

 「い、痛いに決まっているじゃないか!現に腕が……ぎゃぁぁぁ…」


 今度は左手首を切断、そしてすかさず止血だ。


 「アホが……痛くないかってのは心だよ!」

 「こ、心?」

 「あなたが襲うように指示したせいで二十人ほど死んで次は盗賊団が壊滅するわ。自分のせいで仲間が死んでいくことに対して心は何も感じないのかしら?」

 「それは……」

 「どうなんだ?」

 「い、痛いです……私が襲うか襲わないかを判断していて、それを見誤ったせいで私の腕は今ないですし命も……どうか助けてください……」


 男のこの言葉は自分だけ助かればいい、そんな保身に走る目もしている。正直反吐がでる。


 「あなたは本当に反吐がでるわ……」

 「えっ……」


 立花は異能大再生ザ・リバースを男に発動する。これは失った部位の再生等が可能だが、それを応用して痛みも再生させることができるので、腕を失った時の激痛をもう一度与えた。


 「ぎやぁぁぁぁぁ……」


 激痛に悶える。


 「あなたのその判断で部下を死なせた責任に関して何もないのかしら?それで自分だけ助けてだなんてムシがいいわね?」

 「す、すいません……部下の死は私のせいです。反省もしています……だから……」


 ついため息が出てしまう。こんな奴に与える慈悲はないのだが……


 「まぁまて立花。こいつに真の反省なんざ期待しても無駄だ」

 「そうね……」

 「ひっ……」


 立花の目はとても冷たく冷徹だ。今すぐに殺してもいいが、案内人として役に立ってもらうという役目がこいつにはあるし、その対価として生かしてやるつもりだ。


 「さて俺達は目をみれば、大体嘘ついているかどうかがわかる。生きたかったら全部洗いざらい話してアジトまで案内しな!」

 「こ、殺さないでくれますか?」


男は自身の生存の可能性を見出せたのか、生気を取り戻す。


 「ああ、それはお前次第だ。ほれ腕も再生させてやるよ」


 不死鳥の異能で腕をくっつける。


 「う、腕が元に戻った……」


 安堵したのか男の表情が少し明るくなる。飴と鞭は使いようって事だな。ただ恐怖だけで人を追いやるのではなく、時に慈悲を与え相手を徐々にこっちのペースに持っていく。それが鬼神ランスロット・ガルティモアーの教えである。


 「約束は守る主義だ。案内する代わりに腕を元に戻してやったんだ。わかってるな?」

 「わ、わかってます……全部話しますし案内もしっかりやります……」

 

 操者の男はキャノネロといい、エステイツ盗賊団の創設メンバーの一人らしい。旅する冒険者を闇雲に狩るより、この馬車によるお金持ち狩りのほうがは効率がいいと考えたらしい。こいつの容姿は汚らしくも野蛮にも見えない、それどころかむしろ上品な顔立ちをしていて、それが操者になった理由だとか。


 「それでお前さんはこの馬車で何グループ食い物にした?」

 「精々五十グループ二〇〇人弱です。自ら護衛をたくさんつけるような奴だったり、本当にヤバいような奴は襲わなかったです。まぁ当然殺したのもけっこういますがね……」


 あらいざらい自白する。やはり数十人は殺しているか……俺達が言うのもあれだが反吐のでる話だ。とりあえずこいつには早いとこ案内だな。


 さて次は祐二だ。


 「なぁ祐二俺達のこの行いを見て思ったことを聞かせてくれ」


 今回の虐殺には理由はあるが、個人的な理由で簡単に人も殺した俺達に対して祐二は何を思ったのか気になるとこだ。正直人格も疑われても仕方ないからな……


 「そうですね……まぁ凄いの一言に尽きるかなと。さすがはレダさんの仲間だっただけあるなと」


 あれ……なんか全然予想を裏切る回答だぞ。ここは正直今回の殲滅行為には衝撃を隠せませんとか、二人が恐ろしいですとか、そういう返答が返ってくるのかと思ったが……


 「私たちが怖いと思わない?」

 「別にですかね……たぶんレダさんといた時間が長いからかな。お二人は想像を絶する強さの持ち主ですが、利害関係が一致しているし、約束を守るであろうお二人は信用に値します。レダさんの仲間ならなおさら、それに敵意のない地球人に二人は手をかけないでしょう?」


 それを聞いた立花は俺の顔を見て笑う。


 「フフッ、あなたの負けね周平」


 立花は俺の頭を撫でた。祐二は幼いが、こういったことにはある程度耐性があるようだ。それがいいかどうか置いといて素質はあるかもしれない。


 「だな、すまん祐二。お前を試すような質問をした」

 「どういうことですか?」

 「レダさんの隣に立つということは、あれぐらいでびびってちゃダメだってことを教える為に、敢えてどう思ったか聞いたのさ。お前を強くするための教育の一環だよ」

 「そうだったんですね。あんまし驚かなかったのは、昔レダさんが僕を守るためにこういったことをしたのでそれでですかね」


 レダさんはすでに祐二の前で修羅の顔を見せていたか……まぁ加護を与えるぐらいだし、レダさんはこいつをある程度教育しているんだな。ただ小さい頃からこういう教育を施された祐二は普通じゃないだろうし、はっきりいって歪んでいる。まぁだからこそ教えがいがあるかもしれないな。


 「よしわかった!俺達が施す教育は少し歪んでいるかもしれない。ただレダさんの隣に立ちたいというお前の意思を俺達は尊重する。だからついてこいよ!」

 「はい、先生。ご指導よろしくお願いします」

 「なんか照れるな~」

 「フフッ」


 レダさんのケツ追っかけるこいつは、今後俺達にとっても有利な味方として働く確率が高い。前回足らなかったのは、各地に芽を広げなかったからだ。これは希望的観測だが、レダさんや九兵衛さんが俺達の帰還を知っていて準備をしている可能性がある。


 「さていくか……おい!」

 「へ、へい、ただいま準備します。」


 三人で話す俺達を見ていたキャロネロは恐怖で顔が引きつっていた。今回の行いを経て、俺達は強いが決して嶋田のような勇者にはなれないのだと改めて確信する。何事にも裏と表があり、俺や立花は裏なのだろう。まぁあれはある意味才能なわけで、この世界にとって有益な存在へとなり得るのかもしれないな。


 二十柱とて完全無欠ではないのから……


師事した人の教えを受け行動やしぐさを真似していくのが人間なんだと自分も生きてきた中で実感しています。


2019年3月20日修正

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