馬車の旅
テンプレって何だろう…
次の日の朝祐二と合流し馬車に乗り込む。
馬車は金貨五枚を払ってデラックス馬車を借りて、優雅な旅をする事にした。祐二のステータスを確認すべき勇者カードを使ってステータスを覗く。月島や杉原に悪いが、パーティ機能は無効にして、クラスメイトや王国にバレないようにしている。
祐二のステータスはこんな感じだ。
二本柳祐二
種族:人間族
レベル45
職業:戦士
攻撃:1200
防御:1200
魔法攻撃:1000
魔法防御:1200
素早さ:1500
魔力:1200
異能:戦いの唄(B)
コントラクトスキル:戦姫の加護
称号:戦姫の弟子、●◆の脅威
魔法で立花と頭の中で念話を始める。
「(おい立花……戦姫の加護をつける条件とか王の書でわかるか?)」
「(心が通った状態で夜を共に過ごし戦姫側が力を与える形で契約が成立するらしいわ……)」
「(まじか……)」
「(まじよ……)」
レダさん……しっかり奪っていたんだな。
数百年生きた中でも祐二はそれだけ特別ってことか?
しかしぼかしが入っていて見えない称号があるな。
「立花、あのぼかしは王の書で見れないか?」
「無理ね……ロックがかかってるように解析できないわ」
脅威か……それは俺達なのか、この世界の神々なのかだな……あとレダさんがどういった意図で契約を結んだかだ。さすがに可愛いピュアなイケメンってだけじゃ契約は結ばない。神々の脅威として育てる為なのか俺達の脅威の牙をなくすために契約を結んだのか……どっちにしろ監視は怠れんな。というかレダさんがこれを解析したのかもわからん。ただレダさんがソロで動いてなければ……同じ騎士団員の藤島直樹がいればこれの解析もできているはず。
「(監視は怠るな)」
「(ええ)」
祐二から話しかけられた所で念話を止めた。
「二人とも見てください!僕達の故郷にはない風景ですよ」
外を見ると雄大な自然が広がる世界がそこにはあった。王都や森しか見てない俺達にはとても新鮮なものだった。日本と違い整備されてないこの世界にはたくさんの自然が残っている。これこそが世界のあるべき姿なのかもしれない。
「すごいな」
「ええ」
「あそこに見えるレオテン山は冒険者の特訓場所として登ります。僕も昔レダさんと一緒に登りました。まぁお二人からしたら取るに足らない場所ですがね」
「今度機会があったらデートがてらに登るわ」
「はい、是非。山頂の風景はなかなかですので」
「山登りも久しぶりに悪くないかもな。ところでアルマンゾールまではあとどれぐらいかかる?」
「この馬車ならあと二日ほどでつきます」
意外と早く着くな。というかファウンドに近い街みたいだし方向も同じで良かった。三日後ぐらいには俺の舌に感動がもたらされるはずだ。
「早く十割そばが食べたい……」
「私はうどんね。特訓できる所は近くにあるのかしら?」
「はい、アルマンゾールは魔物が生息するサガス山地と隣接していますので。サガス山地はアホヌーラ山脈と繋がっていますので、奥に行けば行くほど強い魔物も出ます」
「祐二はレベルもそんな低いわけではない。ちなみにサガス山地の敵は倒せるのか?」
「山地の敵はだいたい倒せます。でもレベル一〇〇を超えた四人組のパーティーでアホヌーラ山脈を越えることができるらしいので、その域に達してない自分ははまだまだです」
なるほど、だったらレベルをできるだけ早く上げて攻略できるようにしてあげるか。だいたいレベル一〇〇超えでゴールドランク相当になるからそれぐらいにさせてあげたいな。あえて強い敵をぶつけて急速アップが妥当か……ならアホヌーラ山脈での特訓かな。
「ならアホヌーラ山脈で特訓だな。アルマンゾールからアホヌーラ山脈のふもとまではどれぐらいだ?」
「魔物を無視で普通に最短距離を歩いたら半日ぐらいですね」
「そうか、なら一日ぐらいだな。立花の転移魔法で行って帰ってを繰り返そう。俺達も祐二の両親が作る飯が食べたいからな」
「転移魔法ですか?でもあれは任意の場所にあらかじめ転移魔方陣を貼らないと無理なんじゃ……」
「何を言っているの?一回行った場所は基本的に空間転移できるけど」
「えっ……」
まぁそうなるよな。転移魔法はそれぞれに転移魔方陣がないと移動はできない。しかも距離が遠ければ遠いほど魔力が膨大になるし、発動にも時間もかかる。だがうちの立花はそんなの無視で、一度行ったことある場所ならすぐに移動できるし、行ったことない場所でも大まかな座標がわかれば移動も可だ。もっとも座標の大まかな特定は、ある程度目的地から遠くはない場所に行ったことがないと駄目だが……つまりここからファウンドぐらいまでは馬車なんざ使わなくてもある程度近い場所に転移はできるが、魔大陸みたいに遠いと不可みたいな感じだ。
「ははっ、まぁ後で祐二には俺達のステータス一回みてもらおうか。言っておくが俺達はレダさんより強いぞ」
「へっ、レダさんよりですか?レダさんのステータスは全部二十万超えで化け物でしたけど……それよりも上?嘘……」
「祐二は度肝ぬかすかもな~」
「フフッ、見せるにはまだ早いかもね」
「そんなこと言われたら気になります~そもそも二人とも人間じゃないですよね?ほんとに日本出身?」
ついには人間であることまで疑われる始末。なんというか話しすぎたかな。この子は純粋な上に目が嘘ついてないし、約束守れそうな子だからつい言っちゃうんだよな~まぁレダさんの教育の賜物かもな。
「俺も立花も神奈川出身だぜ。家系ラーメンは好きだったぞ」
「みなとみらいとかよく行ったわね」
「新潟も何回か旅行では行ってるぞー」
「魚沼産コシヒカリが有名よね」
「流暢なジャパニーズトークが……そっか前世では二人は夫婦でレダさんの仲間で、転生後ここの世界に来て、前世の力を取り戻したんでしたね」
「そういうことよ」
◇
一日目の夜に小さな街に入りそこで一泊する。馬車を動かす人間とその護衛もここに泊まるわけだが、護衛八人も付くデラックス馬車なんざ借りなくてもよかったな。金貨五枚勿体なかったが、贅沢も旅の醍醐味と考えれば良しとしよう。贅沢に優雅に恋人とチートしながら、目的の達成と世界の攻略だ。
「ここの宿泊も代金に含まれているんだったな」
「金貨五枚の中の何パーかはここに入るんでしょうね。お互いウィンウィンになるし」
「デラックスだから泊まるとこも悪くはないが風呂があればな……」
「そうね……」
飯に続く問題のお風呂……城にはあったがこっちにはない。やはり日本人としては風呂がないときつい……
「祐二お前の家も風呂は流石にないか……」
「ありますよ~」
「本当か?」
「あなたもしかして救世主かしら?」
「そんなおおげささですよ~両親とレダさんが作りましたね。おかげでアルマンゾールはどこの家庭にもお風呂がありますよ」
「最高の街だな。早く行きたい」
レダさんもいい仕事してやがる、感謝だ。
「明日が待ち遠しいわ」
今日は二部屋とってあるが、配置は俺と祐二に立花だ。立花と二人でも良かったが、流石に祐二の手前遠慮した。男と男の会話も久しぶりに興味があるしな。
「僕に気を使わなくてもよかったんですよー」
「まぁいつも立花と一緒だから、今日は祐二と二人で会話をと思ってな」
「そうですね、立花さんの前ではあんましレダさんのこと聞けなかったので、丁度よかったです」
確かに異性の前で言うのは恥ずかしいよな、わかるぞ。俺もレダさんの事とか色々聞きたいし、丁度いい。
「お前さんはなんでレダさんに惚れたんだ?あれは鋼鉄の戦乙女や殲滅の魔女の異名で知られていて、戦う為に生まれてきたなんて言っても過言じゃないぐらいの戦闘狂だぞ」
「はい、戦っているレダさんはとても凛々しく美しかったです……そしてそんなレダさんに特訓してもらいあの人のそばにいたいと思ったんです。おかしいですか?」
祐二はとても照れくさそうに話す。そうかレダさんはこいつが自分に惚れているのをわかっていたからスキルを与えたんだな。
「おかしくはないさ。人を好きになるのは理屈じゃねからな」
「周平さんならわかってくれるって思ってました。正直周りに話すのはどこか恥ずかしく、馬鹿にされるのが嫌で言ってないんです。子供のころから一緒にいたお姉さんと結婚したいなんて子供じみてますし夢物語もいいとこなので」
ああこいつはそれだけレダさんを……なんというか応援したくなるな。こいつならレダさんの修羅の部分を知ったとしても受け入れるのかもしれないな。
「その夢物語叶えてこそだろ!アルマンゾールに戻ったらとことん鍛えてやるよ」
「はい、よろしくお願いします!」
力強いそのまなざしは、かつての自分も昔はそんな風に目を輝かせていたのだろうとなつかしい気持ちを思い出させてくれる。黒姫からあれを受け継いでから俺の人生は大きく変わった。まさか二十柱になるとは当時夢にも思わなかったからな。
「さてお前さんにまず覚えてもらうことだが……んっ……」
俺はすぐさまドアの前にいきドアを開ける。
「誰だ!」
ドアを開けると同時に人影を見た。だがその人影は逃げるように消えていった。
「周平さん?」
「どうやら覗き魔がいるようだな……立花には伝えておくか。伝えたらすぐに戻るからちょっと待っててくれ」
「わかりました」
立花の部屋に行きそのことを伝え、部屋に戻った後はまた祐二と色々語った。さて明日は何かひと悶着ありそうだな……まぁないと困るんだけどな。
せっかく誘ったんだししっかりきてくれよな……
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2019年3月17日修正




