次なる目的地
最近遅くてすみません……
「やぁ」
「おう、待たせたな。九兵衛さんの事で手間取っててな」
「ごめんなさいね」
九兵衛さんの家から出て今度はロードリオンの居住区だ。
「ははっ、大丈夫だよ、どうせ女の話でしょ?」
「ご名答~全く困ったもんだぜ」
「昔からたからね、立花もちゃんと周平の手綱を離したら駄目だよ~周平も男の子だからね」
「フフッ、そうならないよう日々しっかり抑えているわ」
立花は腕を強く掴む。俺の九兵衛さんみたいな行動してたら命がいくつあっても足らないな。殆どの女性と話せなくなるかもしれない。まぁ九兵衛さん見ているからあーはならないと思うけど。
「人として恥部を晒す事になるし、あんだけ悪い見本見てるんだから流石にあーはならないさ。それで眠らずの地はどうだった?確か軽く聞いた感じだとアーシアの封印が解けてたんだよな?」
どこに向かったのかわからんが早急に保護して協力を要請する必要があるな。前のような事があって敵に寝返るようでは困るからな。
「うん、お陰で仕事が一つ増えたよ。アーシアの向かった場所を正確に見つけ出さないとだからね」
「目星はついているのか?」
「いくつか候補はあるけど大体ね」
ロードリオンはこの世界の地図を広げるといくつか針で点を刺していた。
「三ヶ所か、一つ目は聖地ペプルス、二つ目は魔王城あたりで三つ目は……こりゃ何処だ?」
クレセントのファーガス城から北東か。あそこら辺に何かあったかな?
「ここは昔アーシアが良く祈りに行っていた場所さ。昔アーシアに聞いたことがあるんだけど、本人曰く自分にとっての思い出の場所らしいよ」
思い出の場所ね……そういえばあそこら辺百年前はレイルリンク王国の領土だったな。
「なるほどね~ペプルスと魔王城に行く理由については?」
「ペプルスはダーレー教の聖地だし、昔から教団に対していい感情がなかった。単独で入る可能性は十分にあるのと、魔王城はアファームド絡みかな」
「封印が解けてからはしばらく時間がたっている事を考えると、クレセントに行っても無駄足かしら?祈るならまず最初に行くでしょうし」
「うん、でもあれから百年、変わった世界を見ていくと考えればすぐに向かったともわからない」
アーシアの性格ならまずは世界を見るな。となるとすぐにクレセントから出ることはないか。
「そういえば彼女はそうだったわね。何でも自分で見てその上で判断を下していた。民の話を聞いて回り、慕われていた。良き女王になると評判だったわね」
立花が複雑な表情を見せる。アーシアは俺が転生する原因を作った張本人だけにあまり良く思っていないのだろう。
「そうだね、彼女は聡明で優しく強かった。それだけに彼女が原因となってアファームドや周平を失ったあの戦争は僕も複雑な気持ちはある。だけど同胞として彼女と協力して偽神を倒すことは必要不可欠だ」
それはまさに立花を諭すようだ。アーシアも俺達同様二十柱の一角を担うだけに手を取り合わないといけない。
「わかっているわ、昔の事があるから気持ち的には全て受け入れろは難しいけど、戦いに私情は挟むつもりはないわ同じ二十柱として果たすべき使命は一緒よ」
「わかっているならこれ以上何も言う必要はないよ。それじゃあ本題だね」
「誰をどこに派遣するかって話だな」
「ああ、君達二人を何処に行かすかだね」
ペブルスにはシン達が潜入しているし俺達がすぐに行く必要もないとして、魔王城かファーガス城から北東の場所にあるとこかのどちらかだな。クレセント、オルメタそれぞれに別件もあるから合わせて行きたいところだ。
「魔王城かお祈りの場所のどっちかだな。魔王城ならパールダイヴァーにもいけるし、お祈りの場所ならオルメタの迷宮の映像で見た過去の勇者の示した場所にいける、どっちでもいいが、どうせならアーシアのいそうな場所に行けるといいがな」
アーシアとも久しぶりに会って昔の話をしたいな。あいつの事だから俺やガルカドール卿についても気にしてるだろうから、笑って迎えてやらないとだろうし。
「なら私達は魔王城を目指すわ」
立花が言う。
「クレセントの方がアーシアとの遭遇率も高い気がするんだが何故魔王城?」
「私達はパールダイヴァーでの用事も済ませないといけないわ。前に図書館に迷宮攻略が終わったら来てと言われていたでしょ?」
「先にそれをこなして魔王城にもいってアーシアを待つって感じか」
「そういうこと、一度行ってしまえば私のゲートでいつでも移動できるわ。クレセントを選ばない理由についてはすれ違いになるリスクを抑えるってとこね」
クレセントに向かわない理由について俺とアーシアの接触を避けようとしている伏しもあるのだろうか。まぁ理由に正当性がない訳ではないからそこは言及しないがな。
「了解、ならそれで決まりかな。そっちはどうだ?俺達の進路について何か反対はあるか?」
「いや、特にないよ。ただクレセントの方にも人を派遣しないといけないと思っててね。誰を行かせようかなと」
「そもそもその祈りの場所について明確にわかってる奴の派遣が必要になるよな?ロードリオン以外に誰もいなきゃ行くのは必然的にロードリオンになるんじゃないか?」
俺もそれについては良く知らないからな。そもそも知ってる奴がどれぐらいいるかだ。
「場所については僕の記憶を伝達するか夢で伝える事ができるからそこは問題ないよ。ただアーシアを連れてくる事を考えたら行くのは二十柱クラスかなとも考えているけどね」
「となると私と周平とシン以外の三人、陣はアーシアを知らないからあなたか九兵衛さんかしら?」
「なら九兵衛さんだな。今女の事で揉めてるし遠征させるのは本人的にもいいだろう」
まぁ誰連れていくかでまた変わってくるがな。あの三人は確実に連れていけないし、騎士団メンバー何人かつければいいか。
「決まりかな。僕は残って残りのメンバーの管理と育成かな」
「そうね、偽神に攻められた時の為に最低限の戦力を置いておく必要があるからね」
「ロードリオンなら何かあった時に夢で俺達に伝える事ができるからな。最悪陣もいるから戦力的には問題ないだろうし」
夢の中でピンチだから早く助けに来いなんていうオンコールはあってほしくはないが、二十柱の存在をアピールしてしまっている以上油断はできない。遠征や配置にはより気をつけていかないとだ。
◇
「そこだ!」
パールダイヴァーでは菱田達が特訓をしていた。老人の助言の通りパールダイヴァー内のサードダンジョンというとこで訓練をしていた。
「援護するよ!」
大野が目の前の魔物大群に向かって魔法を放つ。
「ルナティックフレア!」
第六位階魔法で魔物達を倒し、ボスのカイザーウルフを怯ます。
「隼人くん今だ!」
「おう!」
隙が出来たところを菱田が剣を振りカイザーウルフの頭を斬りつける。
「防御破壊だ!」
菱田の異能である防御破壊も併用して発動する。
「メイスちゃん!」
「ええ、ストーンブラスト!」
複数の石を対象に放つ第五位階魔法だ!菱田の攻撃で怯んだカイザーウルフは避けれずに被弾し悲鳴をあげる。
「もう一発斬りつけてやるぜ!」
菱田が飛び上がり再び斬りつけようとする。
「これで終わりだぁぁ!」
菱田の渾身の一撃が、カイザーウルフの首を深く斬りつけると、そのまま息絶えた。
「やったのか?」
菱田がカイザーウルフに近付き確認する。息がないのを確認するとその場でガッツポーズを見せた。
「よっしゃ!サードダンジョンこれで突破だぜ!」
「隼人くんお疲れ~」
「さっきのナイスだったよ~」
「おう、お前達も良くやったぜ。特にメイスが思ったより強いことにはビックリだな」
「フフッ、魔族は魔力や身体能力が高いから個々の能力が人間とは違う感じかしら。でもあなたは私よりも強いわ」
メイスの強さは秋山より少し下ぐらいだ。昔はそれなりに戦闘をしてきているだけに素人ではない。
「これでも勇者だからな。でもこれじゃあまだまだ足らねぇ……あいつらにはまだまだ勝てねぇ……」
菱田は周平の事や魔族の襲撃の事を常に意識しているだけに、あの時無力だった事を忘れる事はない。
「そうだね、もっと強くなろう!」
「今の俺達ならもっと上を目指せるよ!」
「そうだな、ところでこれで突破だけどみんな感想はどうよ?」
「いい感じに連携を取れてきてるし悪くはないわ。菱田君も入る前とでは動きが断然いいわ」
サードダンジョンは菱田達レベルではソロはきつい。突破前のボスに備えて体力の温存して戦う事や隙を見せず効率よく戦う事を強いられた事で動きに無駄がなくなってきた。
「あんがとよ。メイスも秋山とのコンビはかなりいい。大野は全員とうまく合わせるのも慣れてきたみたいだな」
「隼人君も闇雲に突っ込まなくなってきたね。俺達の強さや連携は客観的に見ても上がってきてるはずだよ」
四人ダンジョンの出口に行き、転移装置に触れる。パールダイヴァーのダンジョンもゴールに転移装置がありそれに触れて入り口に戻る仕組みだ。四大迷宮を小さくしたのが複数あるといった感じだ。
「戻ってきたな」
「この後はどうしようか?」
「とりあえずご飯にしてからあの店に行って老人に会いましょうか」
「そうだな、あの爺、今度こそぶっ倒してやんよ!」
「そいつはどうかな」
すると突然話しかけてくる。中年の無精髭を生やした男だ。
「誰だお前?」
「ふっ、あの程度のダンジョン四人で突破したくらいであの御老人に勝つとか随分能天気な事言うな」
「何!」
「お前ごときではあの人にはまだまだ及ばない」
それを挑発と受け取った菱田はそのまま男に対して戦闘態勢に入る。
「隼人君!」
「へっ、ならまずお前も俺に実力を見せてくれや。そんだけ言うぐらいだからできんだろ?」
「ふっ、まだまだ若いな。少し力の差を教えてやるよ」
男は武器も構えず手で挑発する。
「てめぇ……後悔させてやるよ!」
菱田が剣を手に男に向かうが男は菱田の剣が振り下ろされるその瞬間に菱田の手に攻撃をして弾く。
「なっ……」
そのまま男はもう片方の拳を放ち、菱田の顔の前まで寸止めする。
「これでもまだ大きな口を叩けるか?」
菱田はその場で崩れ落ちた。
次もできるだけ早くアップします。




