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九兵衛と三人

遅くなりました。

 「周平」

 「どうした?」


 ギャラントプルームでは魚人族の里から帰還した周平達が小休憩を取っていた。


 「九兵衛さんがトラブってて来て欲しいらしいわ」

 「まじか……」


 魚人族の問題を解決した事で長のコロネーションの妹であるアキーダは好意を抱いていた九兵衛さんについて行く形でこっちに来た訳だが、その事で別の問題が発生していた。


 「人間族には相変わらず縁がないのに不思議よね~」

 「だな、亜人種から見ると凄い魅力的なんだろうけどな」


 席を立ち上がる。立花からこういわれたという事はまた仲裁に入らないといけない感じかな。いい加減解決してくんないと困るんだよな。


 「ごめんなさいね」

 「いいよ、別に立花が悪い訳じゃないし。それに解決させないと話も進まんだろうからさ」


 ギャラントプルーム内の九兵衛さんの家に向かう。まぁ何が起きているかと言うとアキーダが来て、九兵衛さんのファーストレディ発言をした事でザルカヴァとヴィエナの神経を逆撫でし、誰がファーストレディかと言うので言い争いになっている感じだ。最初は俺や立花もスルーしていたものの、そのせいで次の計画へについての話が滞ってしまい、見かねた俺と立花が話を終わらせる為に動く事になった。


 「九兵衛さんいるか~」


 ドアをノックするとゲッソリした顔の九兵衛さんがドアを開ける。


 「おおっ、救いの手が……」

 「うわぁ……おいおいマジで大丈夫か?」

 「酷い顔ね……」

 「そうなんだよ~もういくらののしられてもいいから助けてくれ~」


 藁にもすがるような弱弱しい顔を俺達に見せる。


 「重症ねこれは……」

 「だな~取り敢えずあの三人とも話がしたいから上がっていいか?」

 「救いの手が……ありがとう……ウウッ」


 泣くとかどんだけだって話だが、それぐらい大変だという事だろう。中に入ると三人が言い争いをしていた。


 「だいたいお前が……」

 「何を言っているのかしら?私は前から……」

 「年数が全てじゃないわ、今の密度が……」


 怖っ……できるだけ関わりたくないんだがな……


 「おい、お前ら~客人だぞ」


 すると三人は同時に振り向き、一瞬黒いオーラを見せるが、すぐに笑顔を見せる。


 「これはこれは周平さんと立花さん~」

 「おう、こっちの生活はどうだアキーダ?慣れたか?」

 「お陰様でね~あなた達二人には感謝してもしきれませんわ~」


 こいつらさっきの顔どこいったかな?って感じだな。


 「ハハッ、そりゃよかった。こっち来て幸せなら何よりだよ」

 「フフッ、九兵衛さんのファーストレディとして当然ですから」

 「何がファーストレディだよ、周平さんこいつ適当の事言うんで信じちゃ駄目だよ」

 「本当ね、一番最後に来た癖に図々しい……」


 ザルカヴァとヴィエナは共に不機嫌な顔を見せながら言う。


 「この中では私が最初にそういう関係になったんですから当然ですわ!」

 「いつなったんだっての?昔から一緒にいるけどお前なんか知らない」

 「だいたい、ちょっと会って遊んだぐらいでファーストレディなんて笑い話もいいとこね」

 「小娘達は黙ってなさい!」

 「何だと!」

 「引っ込むのはばばあのあんたじゃない!」

 「ば、ばばあですって!あなた達みたいな子供よりも私みたいなお姉さまの方が好みに決まってるでしょ!」

 「何を!」


 見るに堪えない争いが始まる。こりゃ見てられんな……アキーダも私みたいなお姉さまって自分で言っちゃうのか……


 「まぁまぁ落ち着けって」

 「そうよ、私達客人が来たのにおもてなしもなしじゃ、誰もファーストレディなんてとてもじゃないけど名乗れないわよ?」


 立花の言葉で急に大人しくなり三人して俺達のお茶を出し始めた。


 「これが私がいれたお茶」

 「こっちが私」

 「これが私のですわ」

 「お前等な……」

 「あのね……」


 思わず二人してため息が出す。九兵衛さんは俺達に何とかしてくれと目線で懇願しているのがわかる。


 「ええっと、まずお前達に一つだけだな」


 これでもザルカヴァもヴィエナも九兵衛さんも俺が統率する組織に入っている。ここはリーダーとしてビシッと言わないとだな。


 「まず九兵衛さんはこれでも二十柱の一角巨人王だ。だから何だ……ファーストレディとかそういうの決めずに皆で仲良くやったらどうだ?伴侶は一人なんて法律はないんだし二十柱クラスになれば女が複数いるのは当たり前だし」


 地球では逆にNGだがこっちの世界では一夫多妻制が認められているからな。いくら女作っても問題ない。


 「へぇ~でも周平さんは立花さんというファーストレディがいますよね?」

 「確か俺の女は立花一人だなんて言ってましたよね?」

 

 ザルカヴァとヴィエナは俺を見て睨みつける。獣娘二人から殺気が出ていて怖い。


 「そんなに言うならハーレム作って全員平等に愛してますっていうとこを見せてから言って欲しいですわ~」

 「確かに、それを見せてくれないと説得力ないな~」

 「ね~」

 「ググッ……お前等……」


 俺がハーレムできないの知ってて言ってやがるな……しかもこういう時だけ息ぴったり合わせやがって……


 「どうしたんですか?確か一緒に召喚された勇者の中にも仲のいい方いましたよね?」

 「二十柱ならハーレムなんて当たり前でしたよね?」

 「まさか一つの組織を束ねるリーダーともあろう方が口だけなんて事はありませんわよね?」


 クソッ……もしこれを肯定するような発言をしたら、隣にいる立花が火花をふいてえらい目にある事間違いない。こいつらめ……


 「いやそれはだな……その……人それぞれじゃないかな~」

 「なら私達の色恋沙汰に口挟む必要ありませんよね?」

 「そ、そうだな……」


 くっ……だがザルよ、そもそもお前はまだ九兵衛さんと正式にそういう関係になっていなかったと思うがな。


 「私も周平さんと立花さんみたいな関係を羨ましく思いますわ。ねぇ立花さん?」

 「そ、そうね……ありがとう」


 立花よ……お前まで負けちゃいかんだろ。くそ……マズイな。


 「待て、確かに俺と立花はそういう感じだが九兵衛さんはハーレムがご所望なはず。そうだろ?」


 目で九兵衛さんに圧力をかける。元はと言えばあんたのせいでこうなってるんだ。ここは男らしくガツンと言うんだ。


 「ハハッ、モテ男はつらいね~いやまぁ俺自身そういうの決めてないんだ~それにほらザルは部下だしヴィエナちゃんもアキーダとも正式にそういう関係には……」

 「ぁん!?」

 「ヒッ……」


 逃れようとした九兵衛さんだが言い切る前に三人からのにらみつけを受け言葉が止まり、沈黙が訪れる。駄目だこりゃ……


 「九兵衛さん、あなたが正式な相手を定めない事に関して、何か理由があるのは知っているし責めようとは思わないわ。だけど三人の想いをうやむやにするのはどうかと思うわ」


 立花が沈黙を破って九兵衛さんに言う。そういや昔詳しくは教えてはくれなかったけどなんか言ってたけな。


 「総長!」

 「九ちゃん!」

 「九兵衛さん!」


 三人がジッと九兵衛さんを見つめると観念したのか口を開く。


 「全てが終わってから……」

 「えっ……」

 「偽神達を全て倒すまで俺は使命を優先すべきだと考えているんだ。千年前の神争で恋人をなくし、大半の同胞を失い、二十柱の確立を始めてから今に至るまで俺は世界の為に戦い続けてきた……だから個人のプライベートを優先するのは偽神との戦いが終わってからかな~だからそれまで俺は全ての女性に対し本気になる事はないし、それをわかって欲しい……」


 それを聞いた三人は急にシーンとなる。どんな理由かと思ったが意外にまともな理由でビックリだ。ずっと昔から二十柱としての使命を果たしてきたんだなと改めて実感する。


 「九兵衛さんの中の使命ってのは偽神を倒せば達成できんだよな?」

 「ああ、あいつらを倒せば後は王の復活を待つだけで大きな障害はなくなるからね~」

 「ならお前等もう少し待っててくれないか?戦いが終わったら好きなだけこのおっさん奪い合ってくれ。今は大事な時期なんだ……」


 ファーガスとファラリスの二つの大国に介入し、二十柱の名前を出した事で奴らは確実に動いているし戦いも近い。


 「わかったよ。周平さんがそこまで言うなら今はやめておく」

 「そうだね、戦いの邪魔になってはいけないわ」

 「仕方ありませんね……今は仲良くしておきますわ」


 三人は納得したのか互いに握手を交わす。


 「さてこれで一件落着だな」

 「ハハッ、すまんね~」

 「気にすんなって、でも全部終わったらちゃんと答えを出してくれよ?」

 「勿論さ~流石に三人に悪いからね~」

 「周平さんいる~」


 話が終わったと思った今度は扉の開く音と共に実の声がし、こちらにやってくる。


 「おおっ実か、どうした?」

 「リオンさんが用あるらしいからもし見かけたら来るように伝えてくれだってさ」


 確かアーシアの事での話があったな。


 「そうか、わざわざ九兵衛さんの家までご苦労様」

 「ハハッ、ランニングしてる時入って行くのをたまたま見かけたからね。この感じだと大事な話の最中だったかな?」

 「まぁそんな大した話でもないさ、話の方も今終わったしロードリオンの所に案内してくれるか?」

 「ああ、大丈夫だよ。それに九兵衛さんにも用があったんだ」

 「うん?俺にかい?」

 「そうそう、エレナって色黒の巨乳美女が九兵衛さんの事で探しててさ。一昨日の夜の続きを待ってるから今夜こないだの飲み屋にってさっき言って……」


 実の言葉が止まると共に三人が後ろで凄い殺気を放つ。その殺気は俺ですら寒気がした。


 「これはどういう事です?」

 「いやその……」

 「これは本格的に絞らないといけないようね」

 「全く油断も隙もありませんわね」

 「いや~これには深い訳が……彼女とは決してそういうのじゃ……」


 全くどうしようもないな。相変わらず脇が緩いというか……まぁそれが九兵衛さんだったな。


 「わざわざ来たのにな……案内してくれ実」

 「うん、というか俺何か余計な事言った感じかな?」

 「いや、むしろ良かったよ。ありがとさん」


 まぁ三人が交代交代で相手しやるのが一番いいかもな。あのおっさん一人じゃ駄目だわ。


 「立花も行こうか」

 「ええ、私も話を一緒に聞きにいくわ」

 「周平、立花、俺を見捨てるのか?」

 「三人に誠意を、俺が言えるのはそれだけだ」

 「同感ね……」


 立花さんの目もゴミを見るような目に変わってますな。


 「そ、そんな……ヒッ……助け……」


 その後叫び声が響いたが気にせずその場を後にした。


次回はまた前の話の続きを書きます。

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