祐二との出会い
読んでくれてるみなさん改めてありがとうございます。質問や気になる点がありましたらどうぞお願いします。
話しかけてきたのは同じの年ぐらいの男の子だった。
容姿は日本人のようだが……
「どうした?何か用か?」
「お二人に頼みたいことがあります」
立花は顔を顰める。
「まずはあなたの名前を教えて頂戴」
男の子は慌てて自己紹介をする。
「これは失礼しました、僕は二本柳祐二です。さっき酒場であなたたちを見ていました。あの銀ランクのメンデス相手にあんな芸当できるなんてびっくりしました」
随分日本人っぽい名前だな、こいつ何者だ。
「ははっ、あれは相手が弱いだけだよ。それで頼み事ってのはなんだ?」
「僕一流の冒険者になりたいんです。だから僕を鍛えてほしいんです……」
まさかの弟子入り願いとは……次から次へと面倒が来るな……
「いきなりだな~でも悪い……今は急いでいてな。悪いがそれは受けられん」
「そうね……それとあなた、いきなり知らない相手にそんなお願いしても大半は断るわよ」
立花は少しきつく言い放つ。まぁそれもそうだ。鍛えてくれなんて見ず知らずの相手に頼むものじゃないし、俺達が悪人だったらどうするんだって話だ。
「でも僕はどうしても……」
「お前さんの都合なんざ聞いてられんよ。それに報酬として何をくれんだ?俺達はお金には困ってないぞ」
「それは……逆に何が望みですか?」
「そんなこと聞いてどうする?」
「もしそれが渡せるものならそれを渡します」
ふっ、笑わせてくれるじゃないか、俺が今欲しい物?
お前さんにそれをだせるわけがない。
「俺達は白米が食べたいんだ?あとうどんやそば、後は天ぷらな。それをお前は食べさせてくれるか?」
そう、俺は和食に飢えているんだ……あの味をもう一度口にして食べたい……
「わかりました。それを食べさせれば受けてくれんですね」
「ほら無理だろ。だから諦めてほかをあた……へっ?」
俺は予想と一八〇度違う返答に逆に困惑する……こいつ今確かわかりましたって言ったよな?
「ちょっとあなたでたらめを言うんだったら容赦しな……」
「お米はコシヒカリ大丈夫ですか?うどんもありますし、そばは十割でも大丈夫ですよ」
「「えっ……」」
コシヒカリにうどんだと?
そんな日本チックな単語を連発するとは……この男はいったい……
◇
「やはり日本人か~」
「そうです、新潟出身です。僕が六歳ぐらいの時、母と父と一緒にこの世界に迷いこみました」
迷い込むとかそんなこともあるんだな。てことは逆パターンもあるのかもしれないな。
「祐二は俺達が日本人だってわかったから声をかけたんだな」
「はい、しかも強いということもわかりぜひお願いしようと思いました」
あの屈強そうな男、実はそこそこ強かったらしいな。渾身のストレートも指二本で止めちゃって悪いことしたかな。
「でもあなたあそこで断られたらどうするつもりだったの?」
「周平さんが日本食食べたいって言ってたの聞こえていたので、たぶんいけるかなって」
聞いていたとは……この子意外と油断ならん子だ。
「年は十六歳なのでお二人の一つ下です。お二人はどうやってここに?」
「私は地球にいるときに魔法を使えたのよ。それで一年前にここに。周平は一月前にクラスごとここに召喚されて、迷宮でクラスメイトに殺されかけて、おきざりにされたの」
「迷宮って王都にあるやつですよね?」
「ええ、私は一年前に迷宮を最下層まで攻略して、幼馴染であり恋人の彼を待ってたの。彼は殺されかけた後覚醒し、迷宮の最下層まで攻略して、私と再会って感じね」
「すごい、ロマンチックです。でも立花さんは周平さんがくるのをわかってたんですか?」
「ええ、もちろん。だから待ってたのよ。何しろ前世は夫婦だし」
「どんな設定ですかそれ。というかなんでそんなことわかるんですか?」
祐二興奮しまくっとるな。立花の奴もさらっと秘密情報言いまくってるけど大丈夫なのか?
「フフッ、秘密よ」
「教えてくださいよ~でも迷宮攻略なんてすごいですね。最下層まで攻略した人なんて今までいませんよね」
「まぁな、俺達だけだろうな」
九兵衛さんや初代妖精王ロードリオンあたりは攻略している可能性はあるな。迷宮完全攻略は二十柱クラスの戦闘能力がないと攻略は無理だろう。
「何層まであるんですか?」
「一〇〇一層ね、まぁ人間やめないとソロ攻略は無理ね」
「そんな人たちに教えてもらえるなんて歓迎です」
魔神と大賢者からレクチャーを受けるなんて、四戦姫も七魔女も一三騎士もびっくりだな。
まぁ今も存在しているかわからんが……
「まぁ白米やうどんが食べれるなら喜んでやるさ。でもその代わり今聞いた事や、俺達の事は絶対内緒にすると約束できるか?」
「はい、ただ両親にはなんていえばいいでしょうか?ご飯を作るのは両親なので……」
「ご両親にはこっちから挨拶するからそこは例外とするわ。ほかは他言無用よ」
「わかりました。とりあえずなんでお二人にそれを食べさせてあげられるか説明しておきますが、父母共には料理人で父は畑で米を作ってます」
とういうことは色んな料理ができるな。これは期待大なこと間違いなし。だがこの世界にいきなり迷い込んでどうやって米を作れるんだ?種がないと作れないし何より水田とかの問題もある。
「なるほどな。しかしものがなければ米とかつくれなくないか?」
「はい、移動した時は何も持ってなかったのですが、その後知らない女の人が来て、異世界へ飛んだのは私が原因だといって一五歳ぐらいまでその人がうちをサポートしてくれました。元の世界へ返すことはできないが、小麦や米の種を持ってくることはできるとのことで、色々調達してくれたので田んぼを作り米や小麦の制作に成功したんです」
なるほど、祐二がこっちに迷い込んだのは人為的な原因があるわけだ。しかしそいつが何者なのかとても気になるな~
「その調達してくれた女の人ってどんな人?」
「とても綺麗な人で十年たっても容姿が変わらない不思議な人でしたね。長い蒼い髪と大きな胸にメイド服は衝撃的でした。それでその人に戦い方も教えてもらってました」
「名前は?」
「レダさんって人です。レダ・スパイラル」
「それってまさか……」
「ああ、そうだな」
その容姿にその名前は鋼鉄の戦乙女に間違いない。元騎士団メンバーで序列は七位。年齢的には大先輩で九兵衛さんと一緒に入ってくれた黒姫の腹心。
まさか知り合いだったとは……世間は本当に狭いな~
「祐二君その人は私たちの知り合いよ」
「えっ、そうなんですか!?」
祐二もかなり驚いた様子だ。
「ああ、あの人が人に迷惑をかけるとは珍しいな。ちなみにレダさんは今どこに?」
「一年ほど前やるべきことがあるといって旅にでました。その時強くなって再開したら結婚して下さいっていったら、優しく微笑んで「強くなって私を迎えに来てねって」言ってくれたんです。僕の初恋の人なんです!」
祐二は顔を赤くしながら照れくさそうに言うが、それを見た俺と立花は若干引き気味になる。
「祐二、レダさんはその……やめておいたほうがいいぞ」
「そ、そうね、祐二君ならもっといい人がいるわ」
レダさんは確かに綺麗だが……
「なんですか?いくらお二人でもレダさんの悪口は許しませんよ~」
「いや、そういうわけじゃないんだ……なぁ立花?」
「そうそう、私たちもお世話になったし……」
レダさんは頭も切れるし、戦闘でも頼りになる人だったが、昔からかわいい男の子に目がないからな……十年も一緒にいたということはたぶんもうこの子は手遅れだ……
彼の両親はファウンドに近いアルマンゾールという街に住んでいるという事なので、目的をアルマンゾールへと設定し、馬車ごと借りて明日の朝出発となった。夜ご飯を食べた後祐二と一旦別れ、宿に泊まる。当然立花と部屋は同じだ。
「とりあえずこれからは同じ布団で寝るようにしましょう!」
「お、おう」
俺は顔を赤らめる、当然だな。
「ほら、緊張しないの。前世は毎日一緒に寝て+運動する毎日だったんだから」
「あ、はい」
「周平は記憶が戻りきってないからまだそういうとこはお子ちゃまね~まぁそれもいずれなくなるだろうし、それまではそんな周平を堪能させてもらうわ」
立花は微笑みながら、意地悪な顔をして楽しんでいる。
「記憶よ早く戻ってくれ……」
そんなことを言っても当然戻らない。しかし前世で俺と立花はどうやって会ったんだったかな。
「俺とお前は前世の時どこで知り合ったんだ?」
「前世でも家が近くだったのよ。私は貴族の一人娘で、あなたは大将クラスの軍人の一人息子、私はエデンを受け継ぐ才能が生まれた時からあったから、そのままそれを受け継いだわ。その時から私の婿になりたいという人間が殺到してね」
立花ほどの容姿にさらにそんな力があって、貴族の血ともなれば当然だ。
「俺が割り込む余地なんてないな」
「ええ、でも私はあなたとの結婚を望んだわ。あなたは小さい頃から秀才だったし、周りもできればお互いが望む形のほうがいいということになったの。でも他の大貴族がそれを許さなかったわ。ついには当時の王家からも婚姻をせがまれたわ」
「となると俺の排除か」
「そう、周平を不慮の事故に見せかけて殺すという計画で、見事にあなたは死にかけたわ」
死にかけたのは覚えてる。
そうだ、それであいつが俺の元にきた。
蒼い目に長い金髪……その容姿を見たら目を離さずにはいられないというあの女。
俺を生かし神殺しに加担させた。
「黒姫……二十柱の一角にしてナンバー二、リンデント・ヘルム・クルシフィックスが死にかけた俺の元に来て、狂魔結晶を俺に与え、それに適合した……」
「そう、私の元にエデンを渡したのも彼女。それで周平は神殺しの仲間入りをして、誰も私と周平の婚姻を邪魔しなくなった」
その時のその国の王の反応は今でも覚えているな。
後ろに黒姫やランスロット先生の存在があり、手出しができず、ただ俺への行いを詫びる事になったみじめな王の姿は鮮明に覚えている。
「少し思い出してきたよ、ありがとう」
「ならよかったわ。明日も早いし今日は寝ましょう」
「ああ」
立花とキスを交わす。
前も毎日こんなんだった気がする。
俺は最終的にどうするのだろうか?
元の世界に帰れたとしても帰らないのかもしれないな。
慢心かもしれないが力ある者……二十柱としての義務は地球で果たせないだろうし、さてどうしたものか……
クラスメイト編はちょいちょい挟んでいきますね。
2019年3月15日修正




