召喚されし勇者達
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「召喚は成功したぞー」
王様らしき人間の声とともに周りにいる人間も一緒に歓喜の声をあげている。なんだかわけのわからない状況の中、担任の先生である二十六歳の藤田玲奈先生が声を上げる。
先生は黒髪ショートの美人で生徒に大人気だ。生徒の中で告白した者もいたとか。
「これは一体……あなたたちは何ですか?」
すると王様らしき人物はこちらを見る。
「これは申し訳ない……私はこのファーガス王国の王であるオロソ・V・ファーガス六世だ。君たちはこの世界エクリプスに勇者として召喚されたのだ!」
突然のその言葉に周りは困惑する。異世界?勇者?よく小説であるお決まりのパターンなわけだが本当にあるとは……
「勇者ですって?そんなことのために私たちを……」
玲奈先生は怒りを隠せないでいた。真面目で正義感の強い玲奈先生だ、こんなことを突然言われて怒らないわけがない。
「まぁまぁ怒りを鎮めてどうか私たちの話を聞いてほしい……」
ファーガス王はなぜ俺達を呼んだかを話し始めた。
この世界は他種族が存在しており、その中でも魔族と妖精族と人間族が大きな勢力を持っている。俺達をこの世界に召喚したのは、この世界の人間たちに信仰されているダーレー教団の神の信託によるものらしい。
四つの大陸がありそのうちの一つであるここクレセントは、人間族の大国であるファーガス王国といくつかの小国が存在している。また人と魔族は対立しており妖精族は中立を保っていて、ほか三つの大陸は一つが妖精族の国が、もう一つは同じく人間族が、そしてもう一つは魔族が治めている。魔族の治める大陸オルメタは一番国土が広く、人間族と日々争いを続けているんだとか。
ここファーガス王国では零明高校二年一組の担任含む三十三人が、もう一つの人間族の大国ファラリス連邦では陣達二年二組が召喚されたらしい。
勇者は異能とギフトが与えられ成長力が桁違いに早く、ファンタジー世界のお約束である魔法も習得ができる。また召喚された勇者は、この世界で自身を証明するカードのような物をいつでも発現して見る事ができ、そのカードを通じて自分のステータスや相手のステータスを見ることができる。
玉座に座る偉そうなおっさんから説明されたことを要約するとこんな感じだな。そういう系のアニメをたくさん見ていただけに魔法にはちょっと興味がある。
劣等生と言われたお兄様や、ツンデレ美女に異世界に呼ばれたハーレム男子とかその他色々見ていたが憧れたことは何度もある。
「わけわかんねぇこと言ってんじゃんねぇーぞ!」
「そうよ、私たちを元の世界に帰して!」
「そうだーふざけんな!」
当然説明が終わるとクラスメイト達の罵詈雑言が飛んだ。まぁ無理もない、魔法には興味深々の俺でも心の中では周り同様ふざけんな!と叫んでいる所だ。戦うという事は死のリスクもあるし、平穏な生活を求めている者にとっては受け入れがたい事この上ない。
王様の取り巻きがそれを見て静粛にと大声をだし、王の御前でなんと無礼ななんて声が聞こえてくるが、異世界からきた俺達からしたらそんなの知ったこっちゃない。正直、はいそうですかなんて納得する方がおかしい話だ。
「君たちを元の世界に戻すのは可能だ!しかしいきなりそれは無理だ」
王様の言葉にクラスメイトは顔を顰める。クラスメイトが混乱する中クラスのリーダー格である嶋田は王様に質問する。
「どうやったら僕たちを元の世界に帰してくれるのですか?」
嶋田が質問をすると王様はすがるような表情で質問に答えた。
「我々は魔王を倒し人々に平和をもたらす為に、多量の魔力を使用し貴殿等を召喚した……魔王を倒して平和が戻ったら貴殿等を元の世界に帰すことを約束するし、そのためのサポートは怠らないつもりだ」
とまぁこんな事を言っているが信用できんな……俺の勘がそう言っている。よくラノベで世界を救った後は用済みで命を狙われたりとかよくある話だ。
「わかりました……」
嶋田は納得したと言わんばかりの表情を見せるがそんな嶋田に対し玲奈先生は口を挟む。これは一種の脅しともとれるが、これを呑まないと元の世界への帰還が厳しいことは間違いない以上致し方ないだろう。
「嶋田君、そんなこと私は許すとでも?私は先生です。クラスメイトの安全を守るのも先生の役目です!」
玲奈先生の言うことはもっともか……魔王を倒すとなれば当然危険が伴し、いくら力を与えられたとしても命を懸けることに変わりはないのだ。誰か死ぬリスクだってでてくるだろう。
「しかし先生、それでは僕達は元の世界には帰れません。現状僕達が地球に帰るためには彼等の要求を呑むしかないでしょう!」
だが現時点では嶋田の言うことも正論だな。先生も嶋田の言葉に帰す言葉がないようだ。
「先生、僕がみんなを引っ張りますので。みんな協力して元の世界に帰ろう!」
嶋田の大きな声で言うとそれにみんなが続く。さすがはクラスのリーダー嶋田といったところだ。それを見た玲奈先生は納得のいかない様子だったが、返す言葉もなくしぶしぶ引き下がった。
そんな簡単に引き受けていいものなのだろうかと思うところだが、元の世界に帰る手段がない以上は引き受けるしかない。まぁ異世界なんて毎日退屈していた自分には丁度いいかもしれないな。
俺はただそこで気持ちを高ぶらせてワクワクしていた。
次の話はクラスメイトのステータスのお披露目です。
2019年3月10日修正しました。