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決着

家に一日中いたので書きました(笑)

 「さてと……それじゃあ行ってくるわね」


 体力は概ね残り三割ってとこだが、あいつのあの能力で防御力が上昇している。減らすには大魔法で一回一回の減らす量を上げるのが得策だろう。


 「魔力の海!」

 「やっぱ発動するよな」

 「フフッ、残りの体力的大技で一気に沈めた方が得策……魔女の福音!」



 魔力の海は一回の魔力消費量を減らす第十位階魔法で魔女の福音は直後の魔法の威力を大幅に上げる第十位階魔法。次に放つ第十位階魔法の威力を上げて攻撃し、残りは魔女の福音の適用外である神魔法、創生魔法でゴリ押す戦法だろうな。


 「動かず耐えるという戦法をとるという事は攻撃を避ける気はない。俺のように肉弾戦で行けばああいうカウンターを喰らうが、遠距離の魔法に対してはただ受けるしかない」

 「ハマジク対策に魔力の海をしているし、魔女の福音で威力を上げた私の第十位階魔法を全く避けずに耐えきるなんて無謀もいいとこね~」


 こいつはあくまでもコピー、フィールドも限定されている以上明確な自我を持って相手に合わせた対策はとれない。


 「いくわよ……天上の光国ヴァルハラ!」


 大いなる光で対象を包み消滅させる聖属性系統の魔法の中では最高峰の第十位階魔法。しかも魔女の福音での威力倍増に加えて、立花が放っている。こんなのまともに耐えきろうとするとノーダメージは無理だろう。恐らくインフィニティーシールドを貼っても破壊されて貫通するだろう。


 「いけ~」


 フィールド全体を眩い光が包む。ここは造りが特別頑丈だからいいが、威力増加状態の本気の状態……地上でこれやったら大都市が跡形もなく丸ごと消滅する。


 グググッ……ギギギッ……


 「へぇ~まだ耐えるんだ~」


 光が晴れるとオルメタはまだ立っている。何とか耐えきったようだが能力を生かした戦法が返って裏目にでているな。俺は今全力を出せない状態なのと、不利な肉弾戦を敢えて行ったのが響いて倒し切れてないが、立花の場合ちゃんと全力が出せる上にステータスが倍違う。そんな状態で威力が増加した大魔法をモロに受けるわけだから勝負になるはずがない。


 「今の状態の防御力はかなり高そうだな?」

 「ええ、今だと普通の攻撃じゃかすり傷もつかないでしょうね」

 「だろうな、それで次はどうすんだ?」

 「決まっているわ、折角自由に魔法が打てるんだし、大技で決めちゃうわ~」


 立花の元に魔力が集まっていく。


 「ほどほどにな~」


 神魔法ってのは通常発動すれば周囲を壊すし、生態系とかにも大きな影響を及ぼすから基本は発動しないし、発動したとしても本気の魔力では打たない。その分使用できるのは二十柱クラスでないと無理ってのが唯一の救いともいえるだろう。つまりそんなもん連発してまともにくらって耐えれる奴なんてそうはいない。それはあのオルメタとて例外ではない。


 「神宴の雷槍ランスオブゼウス!」


 前にラシュカリの街で発動していたな。だが、あの時と比べて威力がまるで違うな。


 「周平、バリアを貼っておかないと被害を受けるわよ」

 「了解」


 インフィニティーシールドを発動する。威力が高すぎて地面がゴロゴロ揺れてやがる。


 「万物の神の王のソードオブオーディン!」


 凄い揺れだ……いくらここが全力の神魔法に耐えれるフィールドだからってこれはいくら何でも……だがあいつの反応はまだある。まだ耐えるのかよ……


 「耐えているようだけどそろそろ終いね…… 神々の聖戦ジ・ハード!」


 もしこれを魔女の福音の効果ありで発動できたらと考えると怖いな。今回も創生魔法の強いやつは見れず終いだが、それには値しなかったという事だな。


 グググッ……ゴゴゴッ……


 声を発さない、青色の人型の守護者の身体は色あせていく。これはもう力の維持ができなくなった証拠だ。だがあの状態から本気の神魔法を三回モロ受けてまだ消滅していないのは流石の防御力と言ったところだ。


 「これで最後ね、破槍アイシングラス!」


 最後は創生魔法か、槍がオルメタの身体を貫くとそのまま消滅した。


 「お疲れ様、終わったな」

 「ええ」

 「相変わらず、すげー魔法だな」

 「あなたがあそこまであいつの体力を減らしてくれたお陰でゴリ押しするだけだったからね」


 立花は俺に近づき口を引っ張る。


 「いへっ……にゃにお……」

 「今回は早く倒す為の効率重視だったから許すけど、本来なら駄目だからね!」

 「しゅ、しゅみましぇん……」


 少しお怒りのご様子だ。確かに初めから魔法でいけば、途中で離脱する事無く倒せただろうからな。だがお陰で早い決着だ。


 「まぁ予定通りだからいいけど、あなたが本来あいつ如きに遅れをとる事なんてありえないんだから」

 「ああ、当然さ。本物とやる時は本気で行かせてもらうよ」


 コピーじゃないあいつと対峙したらこんな無様な事はしない。慎重かつ正確な立ち回りで消滅させるし、油断や慢心など一切見せない。


 「フフッ、わかっていればいいわ。早速下の階に進みましょうか」

 「ああ、目当てのモノを回収だな」



 ◇



 それと同時期のギャラントプルームでは眠らずの地から帰還したロードリオンに九兵衛と陣の三人で会話をしていた。


 「そうか……アーシアの封印は解けていたか……」

 「まぁ彼女ももう大丈夫だとは思うけど、前の事もあり会って確かめない事にはって感じかな」

 

 昔の事もあり、二人も会わない事には信用しきれないといった感じだ。アーシアはエミリア等一部からも反感を買っているから余計にだ。


 「まぁ行くところは限られるし、すぐに会えるさ~」

 「そうだね、ところで陣?」

 「あ、はい」

 「君は周平の計画というのを聞いた時どう思った?」


 計画とはファラモンド征圧後、周平が陣、雪、美里に話した話だ。


 「まぁあいつの話を聞いて何というか、それを聞いて今まで疑問だった事が解消された感じですかね」

 「つまり地球で周平と日々つるんでいる時から違和感のようなものはあったという事だよね?」

 「ええ、だけどそこまででもなかったですよ。というのも周平は出会った時から非凡そのもの、非凡故の他とは違う違和感ってのもありましたから、それを話されて初めてそういう事かっていう感じです」


 陣もまた非凡、だからこそ周平に惹かれ、つるむようになった。だがそんな周平に最初から違和感を感じたのは陣が最初ではない。


 「成程ね、夢の世界に行きランスロット達と話したから裏は取れたけど、僕はそれに気づく事は出来なかったね」

 「ハハッ、リオンと再会した時の周平では感じるのは無理だよ~俺もわからなかったし」

 「仕方ないですよ~にしてもその計画がなされたらどうなるのか……正直不安もありますがね」

 「勇者の事だね?色々荒れるかもしれないけど、少なくともそれを望む者もいる。後はなるようになれって感じじゃないかな?」

 「リオンに同意だね~」


 陣の不安はまだクラスメイトへの情がある事だった。だからこそ目を逸らしたままでいたかったのだ。



 ◇



 「ここね」

 「ああ、とうとうだな」


 一〇〇一層の扉の前に辿り着いた二人は扉を開き、中へと足を踏み入れる。


 「おおっ、まずは水晶発見だな~」

 「先に会話をする?それとも先に回収しちゃおうかしら?」


 恐らくあの人との会話になるはずだ。となれば先に力を回収して、思い出してない記憶なんかも思い出して話したい。力が完全となった段階であれも出来るし、色々都合がいいはずだ。


 「先にあれを回収しないか?」

 「了解、それじゃあの先の扉に向かいましょう」


 奥の部屋への扉を開き祭壇のある場所に入ろうとするが、その前に大きな宝箱に目が入る。


 「立花、こいつどうするよ?」

 「開けてみて」

 「おう」


 開けると金や宝石がたくさん入っていた。まぁ予想通りだが……


 「回収しちゃいましょう~」

 「いや、まぁそうなんだけど今更こっちっているかな……」

 「何を言っているのかしら?迷宮攻略者である私達は受け取るのは当然よ」

 「そうなんだけどさ……金有り余るぐらいあるし……」


 素材売りや前の三つの迷宮で回収した事でかなりの資産がある。今回もかなりの数の素材を回収したし、そっちでも資金が確保されるし今更これを回収してもといった感じなんだが……


 「貰える物を貰わないとか馬鹿のやる事よ?金はいくらあっても困らないんだし、しっかり回収しなさい。どうせどっかでお金を大量に使うタイミングが出て来るわ」

 「それもそうか……お土産にもできるし回収するか」


 宝物庫に全ての財宝を収納する。まぁラシュカリの街とかに一部寄付するのもありだな。


 「それじゃあ気を取り直して奥の部屋にいきましょう」


 奥の部屋に入り、祭壇が見えてくる。


 「あるわね……」

 「ああ……目の前にすると体が疼くな」


 黒い結晶と白い結晶がそれぞれ一つ……これこそ俺達の力の最後の一つだ。


 「とうとうこの時が来たわね……」

 「ああ、早速回収といこうか」


 祭壇に近づき、それぞれの結晶を手に取り身体に当てる。


 「「うっ……」」


すると身体に力が入らず、その場に跪く。何かが頭によぎる。


「止めるんだ!」

 

 レイルリンク王国の首都シカンブルの外れ、和平交渉を裏切り、自国で破壊活動していたアーシアを止めに入り、交戦していた。


 「こいつの身体の意思はもう死んでいる。こいつの身体は完全に……グググッ……しゅう…くん……」

 「アーシア!」

 「私を殺して……そうすれば……」

 「んな事できっかよ!ガルカドール卿になんて報告すれば……」

 「時間が……グググッ……この小娘…点この身体は私の……グググッ……私は……私……もう誰にも渡さ……」


 そうだ……俺はここで……


 「団長代理としての務めは果たすぜ!」


 俺はここでアーシアに近づいた……


 「少し待っててな……」

 「えっ……」


 そう、俺はここでアーシアの精神の中に入り込んだ。そして中で戦うアーシアと戦う偽神を見つけた。


 「お前ごときが入っていいわけねぇだろ!」

 「貴様……何を……」

 「しゅうくん!」

 「みんなすまない……またいつか……」

 「止めろぉぉぉぉ!」

 「死ね!」


 そうだ全て思い出した。だから俺の死体は無事だったんだ。そしてこの技は来世へと魂を転生させると同時に対象を消滅させる呪術……滅界転生。シンが前に教えてくれたこの技をふと思い出し発動したんだ。


 「はっ!」

 「周平!大丈夫!?」


 目の前では心配そうな顔でこちらを見る立花の顔が映る。この力の感じからして、取り込みは無事完了したのだろう。


 「ああ、立花も大丈夫か?」

 「ええ、無事力が完全になったわ」

 「俺もだ、記憶のフラッシュバッグでああはなったが取り込み自体は成功したし、記憶も蘇った」

 「ならよかったわ……とりあえず水晶のところに戻りましょう」


次は来週までにはアップします。

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