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最下層での戦い

遅くなりました。

 薄暗い闇の中、この感じは恐らくいつものあれだろう。


 全く最近多すぎだっての……この迷宮に来てから何回目だよと愚痴りたくなる。もう話すことをないはずなんだがな……


 ソウイヤガルナヨ……


 嫌がるなよときたか……いやいや、これ見るとあんまり眠れた気がしないから出来れば勘弁してほしいんだよな。


 起きたとき疲労感があんまりとれないからだよ。全く今迷宮攻高速略中で只でさえ疲労があるのに勘弁してくれよ。


 ドウセモウラストダ、リッカガイレバモンダイナクコウリャクデキルダロ?


 他人事見たくいいやがって……まぁ迷宮終わればこうして話す事もなくなるし気持ちは分からんでもないがな。


 んなことはわかってるよ。でもお前のせいで魔神の能力に制限かかってて大変なんだよ。


 コンドコソラストダカラナ……スコシハサビシイダロ?


 少し寂し気な声だ。この声が何なのか今となってはわかりきった事だが、この声の囁きが聞けるのはこれで最後かもしれないと思うと、少し寂しさを感じるな。


 ああ、お前の囁きを聞くのもこれで終わりだ。俺を悩ませるお前の声ももう終わりだと思うと寂しいな。


 フッ、オマエヲナヤマセルノハオレノシゴトダッタカラナ。オマエニタクサンノセンタクシヲカンガエテモラウウエデジュウヨウダッタ。


 選択肢か……逃げようとしても俺を追いかけてきた。その執念に俺は逃げるのもやめた。俺に常にその事を考えてもらう為に随分ご苦労なこった。


 ソノシュネンコソガオレデアリオレダトイウノハ、ジュウブンシッテイルトオモウガ?


 知ってるさ、そんなの俺が誰より知っている。そんなお前だからこそ、俺は誤魔化すことなく正面から向き合ったんだ。それが自分の為になると思ったし、それが正しい選択な気がしたしな。


 世界の為に、俺の大事な人が幸せでいられるように。そんな世界にする為に戦っているのだから。


 モウコトバハイラナイナ、アトハスベテマカセタ。


 ああ、今までありがとな。


 声がピタリと止む。何もない無の空間に一人ポツンと立ち、夢から覚めるその瞬間を待ち続けた。



 ◇



 「いきましょうか」

 「おう!」


 長い休憩を取りある程度万全の状態となった。俊樹さんの作ってくれた食事がなくなる前にここまで来れたし、計画通りだ。ちなみに空間転移系統の魔法はこの迷宮内では全て制限がかかっている。これは立花のゲートを使ったとしても不可能だ。そのからくりは場所の座標が一定じゃないのも一つの理由だが、何よりここの迷宮にかけられた制限がとても強いからだ。二十柱の為に作られた最下層だけあってその制限も二十柱基準だ。


 「第千層神託の聖域……開くわ」


 扉を開くと、これで四度目となる盛大で豪華なフィールドが目に映る。


 「ラストを締めくくるには素晴らしい場所だな~」

 「フフッ、じゃあそれが素晴らしくない場所にならないよう援護頼んだわ」

 「了解~」


 二人で闘技場の真ん中に行くと、光が一つになり、青色の人型に形成されていく。


 オルメタ

種族:神族?

レベル450

攻撃:400000

防御:400000

魔法攻撃:400000

魔法防御:400000

素早さ:400000

魔力:400000

固有スキル:神の光、■◆●の堅忍

称号:エクリプス創生神の使い、四大大陸守護神


 流石のステータスと言ったところだ。問題はあの不気味なスキルだな。


 「あのスキルはどういう感じだ?」

 「大賢者の叡知を発動するわ」


 あいつのあのなんとかとかいうスキルは名前からして防御系統なはず。クレセントが攻撃バフ、オンラクが攻撃デバフのレガリアが魔力吸収、百年前に殺した偽神共もそれらに類似した能力を一つ持っていた。


 「立花どうだ?」

 「恐らくわかってると思うけど、あのスキルは体力が減れば減るほど防御力をあげる能力よ」

 「予想通りか……なら最初は俺が削りにいくぜ!」


 今の俺はあの声のせいで魔神の力をフルに発動する事ができない。体力的な回復が遅いのもそのせいだったりする。


 「周平、あいつは距離が範囲内に近づくと身体から攻撃がくるから気をつけて」

 「了解~」


 なら無闇に攻撃するのでなく吟味してデカイ一発をいれていけばいい。あそこから動かず根みたいなの貼ってるってことは避ける気はないようだしな。


 「おらぁぁぁ!」


 拳を一発お見舞いしようとすると案の定身体から何かが飛んでくる。


 「ちっ……なら上だな」


 頭上に飛びそのまま上から頭に強烈な一撃を喰らわす。


 「ふん!」


 頭からそのまま凹ますつもりで攻撃をしたが思いの外身体が固い。表面は柔らかそうな外見だがそれは見かけだけという事だろう。


 「周平、避けて!」


 身体から飛んでくる攻撃を避けて間合いをとる。


 「立花、あれ喰らうとヤバイのか?」

 「少し厄介ね……当たると身体にへばりついて弾けて衝撃による追加ダメージよ」


 一回二回なら大したことないが何回も喰らえばそれなりのダメージだ。近づく度に身体から複数飛んでくるのを考えたら肉弾戦は無謀中の無謀か……


 「厄介だな」

 「無理して肉弾戦を挑む必要はないわ。確かにあなたの肉弾戦は完全記憶の異能によって何人もの強者のスタイルを再現していて天才的な動きができる。だけど今のあなたではいつも見たく戦えないわ」


 立花の言う通りだ。戦神ネレイデ、竜王ジェラード、鬼神ランスロット、巨人王九兵衛、超越者ガルカドールと二十柱の中でも肉弾戦に優れた者達の動きを真似て再現しアレンジした俺の体術と張り合える者など数えるほどだ。本調子じゃないのもわかってる。だが……


 「わかってるさ。でも今回はお前がいる。俺は限界までスタイルを貫いてお前にバトンタッチするぜ」


 その方が早く片がつく。今回はスピード重視だ。


 「ちょっと周平!」

 「お前を信じてる。だから俺がアウトした時に頼んだぜ!」


 不死鳥の異能の再生力に期待してインファイトしてやんぜ。


 「いくぞ!」 


 不死鳥の異能は炎の攻撃の他再生力と不死鳥のように飛ぶ事ができる。奴の防御力とて今の状態ならあのステータス通りだ。ステータスで倍以上の能力を持つ俺の攻撃が無傷で済むわけがない。


 「お前にはこれを喰らわせてやるよ」


 炎の羽を生やし闘技場の上を舞う。まずは飛んで速度を上げ、そして強烈な一撃を相手にぶつける算段だ。


 「デザートトルネード!」


 砂の竜巻で相手の視界を攪乱する。あいつの身体から放たれる攻撃が視界での判断かそうでないかを見極める必要がある。


 「いくぞ、神鳥撃ゴッドバード!」


 後ろから不意打ちをするかの如く強烈な一撃を与える。


 「ぐっ……」


 当然身体から放たれる攻撃の被弾は免れない。当たる時もそれなりだが、さらに弾けて衝撃が俺を襲う。


 「ウォォォォォ!」


 流石に被弾は免れなかったが、今のこの攻撃で間合いに近づいた時に身体からすぐに攻撃が飛んでこず、攻撃を与えた瞬間に来たのはわかった。つまりこいつの攻撃は視界と衝撃による判定だ。


 「お前なんぞに俺が逃げると思うなよ!」

 「周平、いったん下がって!」

 「いいや、まだだ!こいつの地に這う根ごとこいつを吹き飛ばすまでは逃げれんな」


 追加攻撃による痛みが走るがそんなものは関係ない。今の俺の使命はこいつの体力を半分以上減らす事だ。


 「吹き飛べぇぇぇ!」


 とうとう地を這う根がちぎれ、奴を吹き飛ばす事に成功する。


 「よし、このままいくぜ!」


 吹き飛ばした場所まで近づき、そのまま肉弾戦を始める。一部体を魔神モードに変化させる。


 「限界までいくぜ!」


 ゼロ距離での攻撃を始める。


 「あれ?」

 「やはりそういう事か」


 インファイトで殴る蹴るの直接攻撃を開始したが、さっきみたく身体から攻撃が飛んでくることはない。


 「こいつのあの攻撃は無限じゃない、あのレベルの攻撃をあの数放ち続けられるわけがないんだ」

 「なるほど、下から供給していたというわけね」


 そう、下に貼っていた根のような物で魔力を吸収し、あの攻撃を放ち続けていたのだ。


 「んなインチキが続けられるわけがないだろ?ならお前が根を貼る前にそれを邪魔して攻撃し続ければ勝ちだ!」


 だが攻撃すればするほど、防御力が高くなるのは嘘でないようだ。攻撃を入れた時に入る時の手ごたえが少し悪くなっている。


 「でもまだまだ攻撃は効いているようだな?身体が悲鳴を上げてるぜ~」


 ここで攻撃を止めればこっちの勢いが止まってしまう。次根を貼られれば防御力が上がった状態で引っこ抜く事になるし、それではまた面倒になる。


 「狂炎舞!」


 だがその瞬間オルメタの身体は青色に輝きだす。そう、体力が半分を切った合図だ・


 「ナイスよ周平、あいつの体力はこれで半分になったわ」

 「ああ、だが最後にもう一発デカいのをお見舞いしてからだ」


 光り出すと凄い速さで身体から根のような物を伸ばす。だが置き土産がしっかり受け取ってもらうぜ。


 「炎獄!」


 普段の出力では出せないがそれでも効かないわけがない。黒味のかかった赤い炎でオルメタを囲う。炎獄内の高温で燃やし尽くす。


 「これでどうだ!」


 炎で包んで少ししたその瞬間だった。


 「うっ……」


 さっきの何倍もの速さで飛んでくる。衝撃波の威力が上がっているせいか、さっきよりも強い痛みがはしる。


 「周平!」


 攻撃が無数に飛んできては被弾する。ここいらが引き時って感じだろうな。


 「俺は大丈夫だ!少しダメージを喰らいすぎたがな」


 攻撃を避けながら後退し、立花の元に戻ったがもうフラフラだ。まぁ次は立花のターンだな。


 「まったく無茶しすぎよ……あなたに何かあったら私はどうすればいいのかしら?」


 その場で崩れ落ちかけた俺の支えながらも、白い目で俺を見る。その表情にはどこか悲しそうな目だ。


 「すまんな……お詫びに何をすればいい?」

 「そうね、暫く私の傍で行動することかしら?別行動は当分駄目よ、それから他の女の子との会話も禁止しちゃおうかしら~」

 「後半のはちときついな~別の代案かな」


 流石に女の子との会話制限されたらこの先の様々な計画に支障がでてしまうからな。


 「フフッ、それじゃあ私がささっと倒しちゃうからそこで自分の身だけ守ってて頂戴」

 「了解、正直ちときついな。でもあいつの体力は予定より減らしたし仕事はしたぜ」


 恐らく七割近くの体力を減らす事が出来たはずだ。


 「ええ、あなたの頑張りを無駄にしない為にもささっと決めるわ!」


次の投稿は連休が終わるまでにやる予定です。

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