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オルメタ迷宮最下層攻略4

書けたのでアップします。

「ふぅ~」


 八〇〇層まで攻略が終わり、ホッと息をつける。次の九〇〇層は図書館ザ・マスターのやつが作った機械ゴーレムだろうし、こんな簡単には倒せまい。


 「お疲れ様~」

 「ありがと、まぁあれぐらいは当然だけどな」

 「フフッ、休んでいきましょうか」

 「そうだな」


 七〇〇層の時と同じように絨毯をひいてソファーを用意する。百層ごとでないとまともな休憩はとれないからな。


 「あと一週間でいけるかしらね」

 「このペースでいけば何とかなるかな。あとは層一つ一つを進む時に水の妨害を受けない事を祈るばかりだがな」

 「そうね、そういえばこの層までクリアした人だけど二十柱を除くと三組らしいわよ」

 「ヒルデとミラーは間違いないとしてもう一組は?」

 「二人組の男女ね、名前はレオ・キタノとリオ・キタノって人ね」


 随分と日本人みたいな名前だが……もしかしてタークロナルドが言ってた二人組の男女の事かな。


 「それってもしかして勇者かな」

 「それをこれで確かめましょうか」


 立花は手元から何やら古びたビデオカメラのような物を出す。


 「何だそれ?」

 「周平が戦っている時に隅っこにあったのを拾ったのよ」


 これどう見ても地球で売ってそうなやつだ……しかもかなり古い。


 「それ写るのか?」

 「流石にこのままじゃ無理ね。でも……」


 カメラを目の前でみるみる綺麗にしていく。大再生ザ・リバースの異能の力だ。


 「これで写るんじゃないかしら?」

 「おおっ、立花ナイス~」


 もしかしたら何か写ってるかもしれないな。


 「でも映像再生をするツールが……」

 「それはこっちに任せなさいな~」


 物質具現の異能によってプラグとディスプレイを一時的に具現かさせる。電気の代わりに魔力で動かす仕組みだ。


 「フフッ、流石ね」

 「これは制限があるけど映像を写すことはできるはずだ」


 プラグをビデオカメラにくっつけて映像を出力する。


 「チュ……ンッ……」


 映像に流れて来たのは若い男女がキスをしているシーンだ。もしかしてただのAVか?


 「ンッ……ハッ……ってこれ映すの恥ずかしいよ~」

 「文句言わない!さっきのスライム戦で蒼髪の女性に化けた時ウハウハしてた罰なの」

 「いや、あれはいきなりだったから……決してそういう気があったわけじゃ……」

 「いや、あれは絶対見とれてたもんね!奥さんの前でそんなん許せないんだから!」

 「奥さんとかまだそこまでじゃ……それに俺達ここに来る前までは兄妹だったし……」

 「親同士の再婚だったし血繋がってないし無問題だけど何か?」


 男の方が劣勢……俺と一緒か……ってそこじゃないか。男の方が気弱そうな優男に女の方は気が強い感じだな。


 「まぁそうなんだけどさ……というかこれは何で残すの?」

 「私達がここまで来た軌跡をこの世界に残すためよ~もうじき戦神の丘を通って地球に帰るんだし」

 「いや、それもまだ本当に帰れるかわからないしさ。あのヒルデって人の言うことが信用できるかって話だしさ。それに他の勇者達は……」

 「うん?」


 女の方の表情が変わり、男の方に顔を近づけ睨む。


 「そんなあまっちょろい事言ってられる状況かしら?四人は魔族との交戦中にあなたを殺して私を犯そうと襲ってきたのよ?レオは私よりもあの四人なのかしら?なんとか死んだ事になっているお陰でこうして難を逃れて自由になっているのに!あっ、レオは私がどうなってもいいんだ!そうなら私も考えが……」

 「わかったわかった。僕が悪かったよ。リオが他人に犯されるとこなんて見たくないし……」

 「レオは優しすぎるのよ!まぁそれがレオのいいとこでもあるんだけどね~」


 すると女の方は愛を確かめるかのように男とディープキスを交わす。


 「ンッ……」

 「チュ……ンッ……ハッ……ならよろしい!それにあのヒルデっていう人の言葉は信用できる気がするんだ~」

 「いつもの女の勘ってやつかい?」

 「ええ、あの人の時折見せる微笑みかな。母性が溢れでてるっていうか。私達を助けてくれた時もそうだったじゃん?」

 「確かに……あの時瀕死の状態から救って貰った後から色々周ったけど魔大陸の人はいい人達が多いよね」


 ヒルデが勇者を救ったという事か。この話からして二代目勇者の戦死をした二人というのがこの二人だな。実は生きていたということになる。確か残り四人はエミリアが殺したと聞いているからな。


 「そうね、ファーガス王国にいた時もナシュワンさんはいい人だったけどあのムトトってやつはウザかったわね。今思うと殺せなかったのが非常に悔やまれるわね……」

 「まぁまぁ、確かにあの人には色々酷い事をされたけど、気にするだけ無駄さ。もう会うことはないんだから」


 確かナシュワンの後に団長になったムトトは典型的な国粋主義者で当時の無能な国王が魔大陸遠征を決めた時にそれが国の為と考えて強行策を押したと聞いている。それで穏健派であるナシュワンと衝突し、年老いたナシュワンを幽閉した。まぁ四人の勇者同様エミリアに殺されたと。


 「それもそうね……というかこの先は進まない方向でいいのよね?」

 「ヒルデさんにもどんなに頑張っても八〇〇層が限界って言われてるからね。二十柱っていう神クラスじゃないとゴールまでの攻略は不可能って言ってたし素直に撤退しよう」

 「了解~前にクレセントで会ったダークロナルドに単体で勝てないのに流石に無理よね。あん時もファーガスの城でナシュワンさんにもらった大天使の免罪符がなかったら最後の攻撃で即死してたしね~」


 そういやあの骸骨、二人組に殺られたって聞いた時、その倒した二人がジェラードさんのあの技喰らってよく生きてたななんて思ってたけど、そういうことか。しかもそのアイテム、ファーガスを守る為にレイルリンク王国に直接出向いたナシュワンにアーシアが渡したんだったかな。


 「懐かしいね。あの時見たヴァダモスっていうデカイ人形は見るだけで鳥肌たったよね」

 「ハハッ、あれに勝てれば神だなんて言ってたね」

 「そろそろテープ切れるね。何か言い残す事は?」

 「ここに来るような猛者であれば、あれを成し得てくれるかもしれないし頼んでおきましょう」

 「ああ、あれね。ええっと今後ここに来る猛者の方へ、クレセント大陸のサイフォンの地下深くに眠るアイツを目覚める前に何とかしてください。偶然見つけたあの場所だけどそこにいるだけでもおぞましいぐらいの怪物です……どうかあれが目覚め……る……ま……」


 テープがそのまま切れる。


 「立花、これは興味出る内容だな。迷宮攻略が終わったら……」


 横に座っていた立花がそのまま俺に飛び付く。


 「おい、立花いきなり何を……」

 「チュ……ンッ……」


 舌を入れてくる。動画を見てやりたくなったのだろうか。いきなりでこちらも身体が熱くなり興奮状態になる。


 「ンッ……ハッ……あのカップルの動画見てたら欲情しちゃった~」

 「ハハッ、強引だな~」

 「今日は夜は寝かせてあげられないわね~でもまぁその前に今の動画を見て色々と整理する事があるわね」


 勇者の実力なんざ初代の実とか九十九除けば他はどっこいどっこいだと思ってたが、ここまで突破できるってのは並の実力じゃないな。ヒルデとの関係性も気になるところだ。


 「そうだな、まずこいつらとヒルデの関係性だな。ヒルデとの接触がアイツらがここを越える程の力を得たと考えるのが納得だが……」

 「そうね、そもそも実を殺そうとしたヒルデが勇者を助けたのが気になるわね」


 ヒルデは昔実を助けた後に殺そうとしている。もしかしてこの二人も……いやそもそもほっておけば死んでいた二人をわざわざ助けているからそれはないか。何にせよに何かしらの意図があるだろう。これに関してはここで考えても仕方のないことだがヒルデとどうにかして接触する必要があるな。


 「まぁそっちは今気にしても仕方ないか。それよりも気にするのはサイフォンの地下って場所にいる何かだ」

 「サイフォンって場所はファーガス王国北部にある場所ね。でもあの場所に地下があるなんて話は知らないわね」


 確かサイフォンってのは平地だったよな。行ったことはないがそんなヤバい奴がいるなんて話は聞いたことはない。何にせよ戻ったらわかりそうな奴に聞いて情報収集だな。


 「戻ったら九兵衛さんあたりに話を聞きましょう。それよりも……」


 立花はこっちに抱きつく。


 「久しぶりに我慢できないから今夜は頑張ってね~」



 ◇



 その頃のアクエリアの街ではアキーダが宮本とヴァルドマインを保護していた。二人が迷宮に入って一週間が経ち、少し退屈していた。


 「迂闊に外出れないし、退屈ですね~」

 「仕方ありませんよ。お二人が不在の時に我等に何かあってはお二人も動きにくいですし」


 アキーダの住む屋敷の中で生活しており、移動はコロネーションかアキーダがいる時だけで極力動かないようにしているのだ。


 「コロネーションさんもアキーダさんが言ったのか随分手厚くなったからそこはいいんだけどね」

 「あの人も長として反対派を抑えたりと、大変な思いをしています。特にギュイヨン家が隙あらば長として成り代わろうと画策しているとも聞いていますからね」


 二人が迷宮から戻ってきたら、行動を起こすと聞いているので、それまでは大人しく待機している。


 「よくわからないんだけど、コロネーションさんが選ばれて長やってるんですよね?」

 「はい、ですがその長決めの時もかなり争いがあったみたいなんです。ほぼほぼ互角だったんですけど、当時のギュイヨン家の長の不祥事が明るみに出たせいで少し票が傾きコロネーションさんが長になったとか」

 「政治的なのはドロドロしてて怖いですね……」


 二人で話しているとアキーダが部屋に入って来る。


 「お話混ぜて貰ってもよろしいですか?」

 「あ、どぞどぞ~」


 アキーダは部屋にあるソファーに腰かけて座る。


 「人魚さんってずっと海の中のイメージがあったので本当ビックリしてます」

 「フフッ、なので魚人族はみなこの技を最初に取得するんです。こういう便利な身体に作ってくれた神に感謝です」

 「ですね~私達巨人族にも人間サイズのなる技がありますが、習得率が低いので上げていきたいですね」

 「フフッいずれ来る共存の時代に向けて人間と関わる事も多くなるでしょうからね」


 他種族共存……魚人族には現状難しい道ではあるが、アキーダがそれを目指すようになったのは九兵衛と出会った事にあるだろう。九兵衛自身にも惹かれ、外の世界の話を聞いて、周囲とは違う考え方を持つようになった。だからこそこの街で他の人魚と同じように一生を過ごす事の疑問を感じ、外の世界に出れる機会を狙っていたのだ。


次は土曜までにはアップできるよう頑張ります。

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