テンプレ
だいたいこういうとこでは絡まれてからの撃退が主人公かなと
シルキーサリヴァンとのやり取りを終え、お金もたんまり入った俺達はVIPルームを出て、一階の食事処で食事をとっていた。
「しかし九兵衛さんは俺や立花みたいに死なずにあの戦争を乗り切ったんだな」
「そうね、あなたは割と早かったからね……」
立花は少し悲しそうな表情を浮かべた。俺自身どのタイミングでどうやって死んだのか覚えてないが、立花は覚えているのだろう。
「なぁ俺は誰にどうやってやられたんだ?」
「わからないの……」
「えっ?」
「あなたを探しに行ったらあなたは息絶えていたわ……」
うん、どうゆうことだ?
そもそも魔神の特性としてほかの二十柱に比べて高い生命力を持っている。
そう簡単にやられるものなのか……
「ただやられたわけではないことだけはわかったけど……」
「どうゆことだ?」
「どうも転生魔法を使った形跡があったの。私達二十柱が死ぬと体ごと消滅するのに、あなたの遺体は残っていたからね」
「転生か……なんでそんなことを……」
「わからないわ……ただあなたの体からは戦闘痕があったから、戦闘の末に使用したという判断よ」
つまり俺は何者かかと戦っていて、死にそうになったから転生魔法を使用したということか。まぁ納得っちゃ納得だが立花はまったく納得してないな。
「たぶん勝てない敵がでてきて、やられそうになったから使用したんじゃないかな?」
「でも自己封印という逃げ手があったし、それを使えばあなたは死を免れられたわ」
「でも封印しちゃったら復活するのが面倒なんじゃないか?」
「私達境界騎士団一三人のうち力を完全にしていた二十柱が三人に、不完全者は私とあなたをいれて三人いたわ。だから自己封印なんて普通に解けたし、転生よりも遥かに効率がよかったの」
ああ、そういえば九兵衛さん以外にもいたな。
初代妖精王とか魔剣聖とか……あいつらにも早く会いたいな。
それとなんで俺はそいつらがいるにもかかわらず転生なんかしたんだ?
「それだとたしかに解せないな」
「でしょ!だから早く記憶を取り戻して真相を教えてね」
「ああ、俺もそれは凄い気になる」
それはとても気になるし自分の事なのだが、実感が湧かないせいかどうも他人事のように感じてしまう。その時の記憶が完全に欠落していてるせいか、聞いてもまったくピンとこない……そんな自分がもどかしかった。
「そういえば立花はなんで転生したんだ?」
「あなたと離れるのが嫌だからよ」
「えっ……」
ちょいと待ってくださいな。
というかそもそもなんで転生後も小さい頃からずっと一緒だったんだ?
今までぜんぜん違和感なかったけどここに来て違和感が……
「なぁ俺達小さい頃からずっと一緒だったけどそれはもしかすると……」
「あなたの次の転生先をあなたの遺体から解析して、私の創生魔法と王の書をフル活用して場所と年代まで特定していたからに決まっているでしょう!」
立花は自信満々に言う。まぁ考えてみればそんな偶然は有り得ないからな……そもそも偶然や運命ってあらかじめ作られた必然なのかもしれないな。力のある神様みたいな奴がそれを作る。二十柱自体この宇宙じゃ神に近い存在だし、王や黒姫の能力や立花の魔法はそんな偶然を作る事ができる。
「まさか追ってきたとは……」
「迷惑だったかしら?」
立花は少し不服な顔をする。
「いや、全然。むしろ追ってきてくれてありがとう、愛してるよ」
「ふふっ、だったら追ってきた甲斐があったわ。あなたが他の女といちゃつく姿を想像するだけで世界を滅ぼす衝動に駆られるの」
「そ、そうか……相変わらずで俺はとても嬉しいよ」
「フフッ、ありがとう」
この人今怖いこと笑いながらしれっと言ってるよ……そういえば昔よく風俗街に行くと、立花に尋問されていたな。その時は絡んだ女はどんな容姿でどういう会話をしたかとか包み隠さず答えていたな。立花は俺に対して風俗は行ってもいいけど、内容をすべて話すことと本番行為やそれに近い事をしないというのが条件だった。まぁ基本的に風俗行くのは仲間の誘いや付き添いだったし、それでも後ろめたいから何とかバレずにコソコソ行っていたが大半がバレて尋問だった。昔本番まで行きそうになった時、理性が飛んでこのままいっちゃえなんて思ったが、その時あいつはずっと見ていたからな……あの時のことはしっかり鮮明に思い出しているが思い出さなくていい記憶だ。
「でも転生したのは結局戦争の終盤偽神との相打ちがあったからだけどね。本当は戦争後の後始末をしてからの予定だったけどそこは誤算だったわ」
「そうだったのか。やはり力を完全にする必要があるってことだな」
「ええ」
◇
立花とギルドの食事処で話をしながら食べること小一時間。俺はとある衝動に駆られていた……この世界にきて一月ちょっとが過ぎそろそろ限界がきていた。
「日本食食べたい……」
ここにきてからずっとだ……この感情はチートスキルを手に入れても消えない。ある意味最大の障害だった。
「まぁまぁ、ここの食事もけっこういけるわよ」
立花は俺より早くここに来てるし順応したみたいだが、俺はまだ無理だ……
「なんというかここもだけど城の食事は薄味でさ……塩や胡椒がレアなんだな」
「この世界だと食塩の精製もできないだろうし、食事を豊かにするために香辛料の調達が必要ね」
「ああ、金はあるんだし早いとこ調達しよう」
今後の課題というか、早急に手を打たねばならん案件であること間違いなしだ。
「しかしここの周りの冒険者は見ているとごついがみんな弱そうだ」
「あのギルドマスターでさえ私たちに比べたら雑魚扱いになっちゃうわね……」
ギルドマスターのステータスはこんな感じだった。
シルキーサリヴァン
種族:人間
レベル220
職業:ダークナイト
攻撃:30000
防御:22000
魔法攻撃:15000
魔法防御:25000
素早さ:28000
魔力:20000
異能:ダークオーラ(A)
称号:ギルドマスター、ブレニムの英雄。
まぁなかなかなんだけどな。
「今考えていたが今日はここで一泊して明日の午前中の便ででる感じでいいかな?」
「そうね、ここに長居する理由はもうない。少しでも早くここを出ましょう」
「そこの女!」
突然後ろから声がした。振り返るとガタイのいい屈強な男がこちらに来る。
「私に何か?」
「そこにいる優男より俺と組まないか?」
さすがは立花だ、当然こんなむさ苦しいとこにいたら声かけられるよな。立花は黒髪ロングに容姿端麗で巨乳だ、釘付けになる人間も多い。転生前も中学生の時もダントツだった。
「ふふっ、お気持ちは嬉しいけど私人妻なので」
俺にくっつきアピールすると男の悔しがる顔をするので見ていて気持ちいい。当然男は引き下がるはずもなく突っかかってくる。
ああ……これはお決まりのテンプレパターンか……
「納得いかねぇ!なんでお前みたいな優男がこんなきれいな人と結婚してるんだ」
知るか!というか結婚してたのは前世な。
まぁ今は結婚を前提のパートナーなわけだが。
とりあえずこいつを倒すのは運命的に決まっているっぽいな。
「知るか、お前さんみたいに乱暴だと女は寄り付かないんじゃないか?」
「おのれ……決闘だ!女をかけて勝負しろ!」
「嫌だ!」
「えっ?」
周りもその言葉で一気に静まる。
「立花をかけるのにお前みたいな雑魚の命じゃ足らん。出直してこい!」
まったく身の程知らずもいいとこだっての!周りはまた騒ぎ出すし……まったく鬱陶しい。
「このクソガキがぁぁ!」
男は大きな手で殴りかかるが、その手を指二本で止める。
「なっ……」
男の顔が青ざめていく。自分の渾身の拳が指二本で止められたので当然ともいえる。見かけだけ倒しとはまさにこれのことを言うよな。とりあえず倒してテンプレはこれで完了だ。
「今度はこっちの番だな~」
かなり加減して男の頬にストレートを食らわせたが、十メートルほど飛び、気絶した。周りはそれに絶句し言葉もでなかった。
「さてでますかね」
「ええ、行きましょう」
立花と腕を組んだままギルドを後にしたが、立花はなぜか満足気の表情を浮かべていた。
「さてどこの宿に止まろうか?」
「馬車が出るところから一番近い所にしましょうか」
「それが楽だな。しかしああいう輩はどこにでもいるから面倒だな~」
「そうね……まぁ私たちって冒険者っぽい服装とかしてないから目立つのよね」
確かに俺なんてまだ城でもらった訓練用の服だし、立花も地球にいた時の服装だ。とても冒険者には見えない。さすがにそろそろ冒険者用の服を購入して着替えたほうがいいな。
「防具とか基本必要ないからな~武器も出したいときだけ具現化するだけだし」
「でもさすがにここを出る前にお互い服を替えましょう」
「そうだな」
二人が歩きながら話していると後ろから声がする。
「すいません」
話しかけてきたのは俺達よりちょっと下ぐらいの男の子だ。見た所冒険者のような恰好をしているが……
この男の子との出会いが自分を救うとはこの時は夢にも思わなかった。
立花は第1ヒロインです。
2019年3月14日修正




