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洞窟を超えて

久しぶりのアップです。

おまたせしました。

 「もう少しか……」


 海の洞窟に入り三日が経った。潮の関係で足止めをくうのがなければ今頃ついているのだろうが事前に聞いていた事なので仕方ない。俺一人であれば泳いでいくのだが今回はそういう訳にもいかないからな。


 「周平君ここの洞窟どうなってんのさ~」

 「どうなってるって普通だろ」


 宮本は文句を言いたげな顔を見せる。というのも洞窟に入るまでの道中と違い魔物がしっかり俺達を狙いにくるからだ。どうも俺達がオーラを見せれば見せる程恐れるどころか好戦的になるので宮本はそんな魔物達にビビりながら進んでいるからだ。


 「ぜんぜっん普通じゃないから!どんだけ襲ってくるのよ」

 「確かに自分が一人で通る時よりも襲って来る魔物の数は多いですね。お二人の力に惹かれるのかもしれませんね」


 ヴァルドマインは苦笑いしながら言う。


 「まぁしょうがないわ。私と周平がそれぐらい魅力的だって事でしょ?」

 「ハハッ、そういうこったな」

 「もう……りっちゃんまで……二人はいいけど私達は一般人なんだからそれは覚えておいてね」

 「大丈夫よ。あなたやヴァルドマインには指一本触れさせはしないわ」


 バリアで二人の元には攻撃が届かないように対策はしている。だが見えない穴からいきなり魔法が飛んでくるのは攻撃が届かないとわかっていても慣れないだろう。


 「あんたが普段通る時もこんな感じで進んでいるのか?」

 「こんなハードに進んだことはないですよ。いつもこれだったら一人では行きませんね~」

 「そうか……なんかすまんな」

 「いえいえ、いつもと違うので楽しませてもらってますよ」


 このヴァルドマインという男もこの洞窟を行き来するぐらいの力は有しており決して弱くはない。冒険者であれば金は余裕でいくし普通に白金クラス冒険者になれるだろう。


 「そう言ってもらえて助かるよ。このルートは見覚えはあるか?」

 「はい、ここは前にも通った事があります。ここさえ抜けてしまえばもう潮の影響は受けませんので後もう少しです」


 この洞窟のヌシがどんな奴なのか見てみたかったが、今回は諦めだな。


 「そうか、よかったな宮本」

 「残念そうな顔で言わないの」

 「ハハッ」

 

 ここを抜けたら魚人族の街か。偽神どもの動きがどうなるか気になる所だが、しばらくは動くまい。仮に動かれてもシンやレダさん達を聖地に派遣しているし抜かりはない。


 「うん?」

 「ヒッ……何この音?」


 突然大きな音が聞こえ、宮本がその場でじたばたする。


 「海流が来ます……それもかなり大きい……」


 ヴァルドマインのその声と共に後方から水が流れる。


 「ヒッ……嘘でしょ!?」

 「周平、これ魔力を感じるわ」

 「誰かから攻撃でも受けたか……」


 つけられたような気配はなかったが……この洞窟の魔物か……


 「これはもしかしてヌシの攻撃では……」

 「どういう事だ?」

 「確かヌシは洞窟内の魔物が多数やられるとその報復として襲うと聞いた事があります……」

 「ちょっと待って、襲い掛かってきたのは魔物達よ!」

 「ヌシはそんな事は関係ないかと……」


 向こうから襲っといて倒したら見えないところから攻撃とは舐めたマネをしてくれるな。全くふざけた事を……


 「そんな悠長に話してる場合じゃ……」

 「あわてるな宮本」


 パニックになりかけた宮本を宥めて魔力の籠った海流と対峙する。


 「どうするの周平君?」

 「ここのヌシに誰に喧嘩を売ったかわからせてやるのさ!」


 二十柱相手に喧嘩を売ったらどうなるか……少しお灸をすえてやらないとだな。というかどうせ来るなら真っ向から姿見せてくんないと不公平だわ。


 「いくぞ……」


 魔神モードへと体を変化させ構える。こんな海流……蒸発させてなくしてやるさ!


 「大炎戒!」


 灼熱の炎の壁を作り迫りくる海流の流れを抑える。それと同時に洞窟全体に威圧をかける。


 「魔神の灼熱の壁の前ではそんな海流は無力……身の程を知れ!」


海流は蒸発して消えると同時にさっきまで周囲でうるさく感じていた気配は静寂なものへと変わった。おそらく今の威圧で襲ってはいけない相手だという認識をしたのだろう。


 「フフッ、初めからこうした方が楽だったわね」

 「だな、最初はまさかあんなに襲ってくるとは思わなかったからな」

 「そうね。というか魔物がいつもより騒がしいわ……おそらくこれは何かの前触れ」

 「戦争か……」


 人間と魔族の戦争……いや俺達と偽神の世界をかけた戦いか……あまり流暢にはいられないな。


 「早いとこ用を済ませましょう。ここを抜ければすぐなのよね?」

 「ええ、ここを抜けてしまえばすぐです。今ので潮の流れが止まりましたしすぐにつけるはずです」

 「そう、周平くれぐれも人魚に目を奪われないようにね」

 「そうだぞ~周平君は女好きだからすぐ他の女に目がいっちゃうからな~」


 立花が言うと宮本がニヤニヤしながらこちらを見てくる。


 「ば、バカヤロ~んな訳ないだろ」

 「あ、今目が一瞬泳いだ」

 「これは要注意かしら」


 立花から黒いオーラが滲み出る。まじで怖いから煽るのやめてくれ……


 「ハハッ、さっき物凄い殺気を見せた魔神も女性には勝てないのですね」

 「うるせぇ、それとこれとは別なんだ」

 「確かに女性は怖いですからね……巨人族の里でも裏で仕切ってるのは女性ですし……」


 ヴァルドマインが恐れ多そうな顔で言う。そういえば里長の息子だったな。


 「そうか……お前も苦労しているんだな」

 「身分がら仕方のない事ですけどね……」

 

 人魚ぐらいしっかり拝んで脳裏に焼き付けていこう……嫁が隣にいようと見るのはただだからな。



 ◇



 一方でここは眠らずの地。ロードリオンはエミリアや直樹を連れて祠へと向かっていた。


 「相変わらず辛気臭い場所だね」

 「まぁそう言わないでくださいな」

 「しかしここの怨念を完全に取り払うのは一体いつになる事やらって感じだね」

 「それは仕方ないさ。それにこれのお陰で守られている秘密もある」


 かつての戦争での傷痕を残すこの地に近づく者は少ない。それもあり長年隠されてきた秘密があった。


 「アーシア……彼女のせいでガルカドール様もシュウも……」

 「気持ちは分からなくはないさ。でも過去は変えられない……確かに百年という時間を費やす事となったけどその分良い事もあった。今はそれを……」


 ロードリオンはその時異変に気付いた。


 「エミリア、直樹!どうやら来るのが遅かったかもしれないね」

 「どういう事ですか?」

 「封印が一つ解かれているね……恐らくアーシアが目覚めたようだ」


 それを聞いたエミリアは複雑な表情を見せる。かつての苦渋をなめたその記憶が脳裏に浮かんだのだろう。


 「そうですか……私は彼女をまだ許していません。少なくともあれに対して誠意を見せてくれなければ……」

 「そう言うなと言いたい所だけど仕方ないか……さてアーシアの痕跡を探ろうか」


 ロードリオン達は祠へと向かう。その祠は旧レイルリンク王国の王都シカンブルの王宮があった場所で今ではその栄華の欠片もない。かつての戦争で全て滅んだからだ。


 「さっきあの時アーシアがとは言ったけど、それを言ってしまうともっと前にもそういう事はあるんだ」

 「と言うと?」

 「図書館ザ・マスターがここに来た時にヴァダモスを使っていれば今頃根絶やしに出来たかもしれないし、ランスロットが温情をかけなければという話にもなる。発端を言えばルシファーの責任でもあるからキリがないよ。そうやってくうちに五百年だし、それに比べればこの百年は大きな進展さ」


 千年以上の時を生きる初代妖精王からすれば百年という時間は大した時間ではない。彼からすれば百年前の戦争はついこの間の出来事に思えているだろう。


 「確かに設計者であるあの人がいればあの兵器を操る事が出来ますからね。確か世界を破壊しない為に敢えて使わなかったとか」

 「ああ、あれをまともに動かせばこの星を破壊するのは容易だからね」

「確かヴァダモスをまともに使ったのは戦神が暴れた時でしたよね?前に魔法学校時代の教員をやっていた頃ランスロット校長からお聞きしましたわ」

 「ああ……ラムタラが消滅してしまったあの事件だね。あれでネレイデは怒り悲しみとある星を破壊する決心をしてしまったからね。彼女も三大兵器の一つである玉を持っていたからヴァダモスをぶつけざるを得なかったし」


 二十柱が保有する三大兵器、戦神と図書館がそれぞれ兵器を使って死闘を繰り広げ最後は暴走を止める事が出来たものの、そのとある星の被害は酷く再生にかなりの時間を有した。その出来事からヴァダモスや玉の能力を検証する事となったと同時に安易に三大兵器の使用や二十柱が本気を出す事は極力避けられる事となった。


 「生でそれを見てみたかったね。研究者としてはそれに近い物を作ってみたい願望はあるけど流石に許してくれなそうだ」

 「ハハッ、直樹の場合は図書館次第だけど才能を高く評価しているしこの件が終わればその希望は叶うかもしれないよ」

 「そりゃ嬉しいですね。ならさっさと片付けないとだ」

 「簡単に言わないの。それとあなたは次元エレベーターの方が先よ。図書館に認められたいのならまずあれを完成させないと」

 「ハハッ、わかってるさ。でもその事を考えると楽しみでね」


 天才と言われ様々な事を研究開発していた直樹にとって、神の力に触れた研究できるのは何より嬉しい事である。


 「気持ちはわからなくはないけどね。あっ……」


 三人が歩いているとエミリアが立ち止まり、十二時の方向を見て指を指す。気付けば目的地の祠は目の前まで近づいていた。


 「予想通りだね。祠の右側の洞穴に違和感を感じる」

 「去年九兵衛さんと来た時は三方向の洞穴ともとくに異常はなかった……右側だけ一部崩れかかっているというのは目覚めたと見て間違いないですね」


 祠を囲むように存在する三つの洞穴にはそれぞれに大事な封印が施されている。解かれるその時の為に百年守られてきた大事な封印の一つは、強固な紐をほどいていた。


 「早速洞穴の中に入って調査だ。エミリア、祠に備える物は準備しておいて」

 「了解です」


 三人は右側の洞穴へと入って行った。


次も未定ですがなるべく早くあげていきたいです。

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