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ミストの森

久しぶりにアップです。

 「やっほ~」


 宮本は外を見ながら張り切っている。

馬車に乗りギャラントプルームからラグーサ大森林を北に進む。魔大陸へ海を渡ることなく行くにはこの方法しかないがこれには一つ問題があった。


 「魔大陸でも難所の一つであるミストの森に繋がっているからな」

 「そうね、迷わず行けるといいけど……」

 「確か実体が定かじゃない獣がいたはずだ、ミスティビーストって名前だったかな」


 それだけでなくベヒーモスの頂点に立つとされる幻のキングベヒーモスがいると言われている場所でもある。


 「そんなのでたらヤバいね……」

 「フフッ、私達二人いれば何も問題はないわ~」

 「当然だ、襲ってきたら俺が食うし問題ない」


 ミスティビーストはともかく、ベヒーモスの肉はわりかしうまいしキングとなれば格別だ。きっと旨いはずだ。


 「ですよね~心配した私が馬鹿だった……」

 「そうよ、私はそんなことより里菜の将来のお嫁さんが心配……」

 「宮本はモテるから問題ないべ?」


 高校ん時もそれなりに人気があった記憶だ。


 「だからこそよ!里菜を大事にしないDV野郎とかが夫になったら……」

 「おいおい……」


 つーか宮本も現時点でかなり強いし逆にフルボッコだろうな。


 「でもまぁ二人見てると私も将来そのぐらい仲のいい夫婦がいいわよね~」

 「ならあいつとかはどうだ?」

 「あいつ?」

 「翔太か海か孝人あたりなら大丈夫だろう。特に控えめな孝人あたりがいい」

 

 中学の生徒会のメンバーだ。俺と立花が集めて選りすぐりのユニークな奴らだ。


 「孝人君なら夫婦としてはかなりいいだろうけど、どっかの財閥のお嬢にストーカーされてたじゃん?そんなのと戦うのは無理です~」

 「そういえばそうだったわね~金持ちの年上に好かれるのよねあの子?」

 「そうそう、それで事件もあったな~」


 確か美人の先生にも好かれてたよな。あいつ控えめで誠実だからな~


 「フフッ、また集まりたいわね~」

 「だな~」


 最高に楽しかったあの時……もう一回揃って馬鹿やりたいものだ。


 「そうだね~でも二人ここでのことが終わったら……」


 宮本には話していたな。俺達はこの世界での役目を終えたら二十柱の住む天上の神域に行くことが決まっている。地球へ全く戻らないわけではないがな。


 「ならあの三人もどっかの異世界に召喚して巻き込むわ~それで六人で何かやる! それで決まりね~」

 「ハハッ、まぁ確かに無理やり巻き込んじゃうのはありだな!」


 俺達が完全な二十柱になったら権限使って色々出来るし何でもありだ。


 「あっ、そろそろよ」


 大気の魔力が多くなってきている。とういうことはそろそろミストの森に入るということだ。


 「馬車を降りるぞ」


 立花のゲートで場所を一度ギャラントプルームに送り返しミストの森に入った。



 ◇



 「霧が深いわね……」

 「久しぶりに来たが前が見えねぇとは……」


 霧はいつでも濃いが特に濃い日がある。今日はまさしくそれだ。


 「二人ともこの結界から出ないようにね~」


 立花の発動した球状の結界の中で三人が同じペースで歩く。


 「確かこの先を抜けたのが巨人族の里であるタイランだったよな?」


 少数である巨人族は魔大陸でもあまり人が立ち入らないような場所で暮らしている。図体はデカいが争いは好まず妖精族同様中立を貫いている。


 「そうね、そこからさらに西北に進んだ海沿いの街アクエリアが最終目的地」

 「そこは魚人族の住処だったな」


 魚人族も巨人族同様に中立を貫いている。魔大陸は魔族が納めていると言っても西北部と南部は別だ。


 「巨人族は九兵衛さんのこともあるから友好的とはいかなくても敵対はされないと思うわ」

 「だな、問題は魚人族だな~九兵衛さんもここ数十年交流がないみたいだしあいつらは警戒心が強い」

 「色々な種族がいるのね~でも周平君や立ちゃんみたいな二十柱には逆らわないんじゃないの?」

 「そうなんだけど九兵衛さんがやらかしてるのよ……」

 「セプ姉をいないし心配だ……」


 もう数十年も前の話だが、九兵衛さんが直接行った時に凄い美女の人魚を見つけてエロスイッチ入って嫌われたって話がある。それ以来来ないでくれと言われて交流が途絶えたのだ。九兵衛さんがいなきゃここは超えられない人間と人魚の交流は途絶えたと。全くあのエロ親父はやってくれたもんだ。


 「あの人ね……いい人だけどエロいよね~」

 「その時のことも、本人的には俺は何も悪くないなんて言ってるんだけどな」

 「誤解はあったんだと思うけど何もしてないは絶対嘘ね!」


 女性関係に関しては信用ゼロだからな……冒険者ギルドの総長として、同じ二十柱の先輩としては尊敬できる部分もたくさんあるのに残念な人だ。


 「むっ……今何か動いたぞ!」


 物音がした。間違いなく何かが……


 「う、後ろ……」


 振り向くと白い霧を纏った怪獣が爪で攻撃を仕掛けてきた。


 「ミスティビーストよ。慌てないで里菜」


 結界によって攻撃は無事阻まれた。


 「にゃろ……」


 結界を出てその爪を掴もうとするが掴めずすり抜けた。


 「あれ……」


 ミスティビーストはそのまま霧の中に消えていったのだ。


 「ありゃ……あいつよくわかんねぇんだよな~」


 昔どうやって倒したっけな~


 「周平、あいつは正面じゃ捕らえられなかったはずよ」

 「そうだっけ?」

 「ええ、攻撃を仕掛けてきた時点でも奴は追えないわ……」

 「なるほどね~王の書は万能だな」

 「ええ、歩く攻略本ですもの~」



 ◇



 さらに進んでいく何回かミスティビーストの襲撃にあったものの結界でそれを防ぎ進んでいた。結界の中は周囲の幻からも守られておりきっちり北へと進行していた。


 「しかしまぁ嫌な場所だ~」

 「そうね……ミスティビーストの攻撃が当たった時点でそれは幻。実体は少し離れた場所にいるのだけどこの霧と周囲の魔力がそれを実体化させているの」

 「なるほどね~」

 「しかも大半がここに迷い込むミスディレックスの死体が死にきれず、そのまま魔力を宿していのが奴の正体」

 「それじゃあ食べれないね~周平君残念……」

 「だな~」


 死肉を食う趣味はないからな、食ったら俺でも体に異常が出るかもしれん。


 「キングベヒーモスは霧が濃いと出るらしいわよ」

 「へぇ~絶好のチャンスだが今回はパスだな……」


 来てすぐは気付かなかったかが今ならわかる。この森は俺達を殺す意思はないからだ。


 「どうして?」

 「この森は察するに迷い込んだ奴を食うんだよ。もっと言えば森に同化させる」

 

 だから迷い込んだ奴はみなミスティビーストになるんだ。例えそれが人間だろうが魔族だろうが巨人族だろうがな。妖精に関しては森との意志相通が出来るからケースバイケースといったところだが。


 「だが俺達はもう森に入って小一時間……まだ同化していないだろ?」

 「うんまぁそうだけど……」

 「この森の王であるキングベヒーモスは争いを好まない。つまり自分が勝てない化け物は素通りさせるはずだ」


 俺達が来た時霧がやけに濃かったのは俺達の強さを感じ取ったから。強さに敏感な奴はそのオーラに反応し目を覚ますと霧が濃くなる。それで何をしに来たかゆっくりと見定めるんだ。


 「それじゃあもう安心して抜け出せるの?」

 「少し違うわ、ミスティービーストは命ある者に見境のない生き物だからバンバン襲って来るわ~」

 「じゃあどういうこと?」

 「中途半端に強くて森を荒らすものには霧をより濃くさせ迷わせ自らがその者を食う。それ以上に強い者の場合、自らの存在を隠し余計な刺激をしてこないって感じかな」


 昔ロードリオンに聞いたのすっかり忘れてたぜ~


 「なるほど~」

 「しかも私達が狂うことなく北を目指しているのは気付いているはずよ。だからこのまま通り抜ければいい」

 「だけどこいつは始末しないとだな……」


 上から大きなこん棒のようなものが振り落とされる。


 「キャァァァ!」

 「落ち着きなさい里菜!」

 「今のは何?」

 「おそらく巨人のミスティビーストってとこだ」


 多分里には近寄らせないみたいな感じなんだろうな。迷惑だし倒しておくか。


 「二人ともそこにいろ!」


 結界を出ると大きなこん棒が再び頭上に飛んでくる。


 「ふん!」


 頭上にのしかかるそのこん棒を宝物庫シャッカンマーより出した大剣にて防ぐがすぐに感覚がなくなる。


 「気に入らないね~」


 どこにいるかは分からんが少なくとも俺のいる場所より前だ。魔力を研ぎ覚ませ実体を見つけるんだ。


 「感知しづらいな……」


 雑音が飛び交うように乱れる上にこん棒が容赦なく俺を襲う。


 「立花!俺をガードできるか?」

 「オーケー!」


 さて少し精神を集中しないとだな。


 どこだ……前方方向のどこかにいるはずだ……


 このノイズに惑わされてはいけない……これはブラフだ。


 「よし……そこか!」


 実体のないこん棒が振り下ろされるその瞬間北西部に十メートルだ。


 「いくぞ!」


 十メートル進んだ先に降ろされたこん棒が再び持ち上がる瞬間を見ることが出来た。


 「見つけた!」


 そのまま大きく飛び上がると霧を纏う巨人の姿が見えた。


 「お前にはこれだ!」


 とびっきりデカい大剣、最初の迷宮攻略の九百層のゴーレム戦に使った王大剣オベリスクをだしそのまま巨人に向かって落とす。


 「おらぁ!」

 「グググッ……」


 効いたのか少しバランスを崩したようだ。次で終いだな。


 「見えればこっちのもんだな。プリズムアーク!」


 光属性のこの魔法はお前にはさぞかし効果的だろう。


 「グゴゴゴッ……ワ……タ……シハ……」


 そのまま受けきると肉体が崩れ落ち、大きな音が響く。


 「そのまま安らかに眠れとな……」


 こいつは死してなお里を守ろうとしたのだろう。九兵衛さんはこいつの存在気付いていたのか?まぁこいつも巨人王がきたら手を出すどころか姿を見せないかもしれないがな。


 「周平!」

 「おう!終わったぞ~」


 二人がこちらにやってきた。


 「こんなところに実体があったのね……」

 「こんなに離れてても攻撃が届くんだ……恐ろしい森だね……」

 「ちょっと待っててな」

 

 折角巨人族の里に行くんだしこん棒を回収して届けるとするかな。


 「よっこいしょっと……」


 こん棒を一度手にとり宝物庫にしまう。


 「オーケー、それじゃ行こうか」


アルファポリスで少し変えて投稿しているのでよかったらそちらも是非お願いします。作品名は少し変えてますが同じ明石清志郎でやってますので是非見てください。

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