バイクと商業都市
10月22日に前の話の改稿に合わせて微調整しました。
フェアーウィンの街を出る前にフレーモアの店で食事をした。
「おう、無事再会できたようだな」
「フフッ、あなたのおかげよ」
あの宿にまんまと誘導されたので自分としては複雑である。
「まぁ一応あんたの協力で俺と立花が再会できたからな。礼は言っておくよ」
「あんちゃんもこんな綺麗な恋人残して旅にでるとか……いかんぞ」
立花の奴なんて言ったんだ?
「フフッ、もう婚約してますのよ」
「マジか、若いのに早いね~これから出るんだって?」
俺達の年齢がもうすぐ十七だからな。前世で結婚していたとはいえ早い。
「ああ、レガリア大陸を目指すつもりだ」
「そうか、なら選別だ。飯はサービスしてやるよ」
まぁ根はいい人なんだな、旅人にはありがたい存在だ。
「フフッ、ありがとう」
◇
一度カポットの森に戻り、まずは商業都市であるコジーンを目指すことにした。今の所の最終目的地として目指すのはファラリス連邦のレガリアの大迷宮、迷宮は首都のファラモンドの中にありそこは陣達が召喚されている場所でもある。ここから何もなく順調に寄り道しなければ数週間で着くだろう。
「どうやって移動する?」
「そうね、あなたの異能で自由に乗り物を具現化させてから、私が魔力を込めて走るようにすればいいのだけど王都が近いから目立つのはよくないわね」
「歩くか?」
「それも惜しいわ。とにかく王都からはできるだけ遠くに離れないとだし……そうだ!」
立花はいい案が閃いたのか声を高くする。
「あなたがバイクみたいなもの具現化させて私が魔力で動かす。それとAランク異能の認識阻害で私達の存在そのものをバレないようにするわ。プラスで姿を消す第7位階魔法ミスディレクションフィールドを私達の周りに貼れば完璧ね」
「りょーかい。ここいらの魔物は弱そうだしスルーしていくか」
物質具現の異能でバイクに似たような外見のものをだす。一度見たものを忘れないパーフェクトメモリーはバイクの外見を完全再現させ、魔力で動くように作成する。
昔バイクにちょっと憧れてバイクのカタログとか見ておいてよかった。俺の創造したバイク?は黒ベースに所々レッドメタルが目立つ感じで、これがかっこいいかはともかくこの世界にバイクなど違和感以外のなんでもない。
「よしこんな感じでいいな」
「さすが周平ね。悪くないセンスよ。七十点はあげるわ」
「なんか微妙だな……」
「私の七十点は大したものよ」
そういえば昔から俺への評価は厳しかったな。
バイクに乗り、当然俺は前に、立花は後ろに乗って森を駆け抜ける。
「周平私の胸あたってるけどちゃんと興奮してる?」
「突然何を……」
いきなり何をいいだすかと思いきやそんなことか……興奮しないわけがない!
中学生の時は後ろに女の子を乗せるのに憧れたものだ。当然その時後ろに乗せたかったのは立花であるがな。
「朝みたいに揉みたい?」
「もち!」
俺はノリノリに反応する。立花のおっぱいの感触は朝確かめたが至高そのものだ。
「フフッ、記憶が戻ってきて私の質問に答えられたらね~」
「頭たたけば記憶戻るかな?」
「焦らない、焦らない。いずれ戻るんだから」
それまで我慢できないこと間違いなしだな。
「はいよ、周囲にほとんど人がいないみたいだし飛ばすぜ!」
一本道を駆け抜けコジーンを目指した。
途中にいた魔物や冒険者に当たらないよう運転し、駆け抜けた。整備された一本道にでたら、後は飛ばして軽快に進んだ。
あと五百メートルで街って所まで来た時点で街の門が見えたので、バイクから降りて消滅させた。バイクに乗るのはとても新鮮だったが、この世界の雰囲気ぶち壊してる感じがしてならないので、当分はやめようと心に決めた瞬間でもあった。
「どうやら入るのにお金が必要みたいだな」
「そうね、一応入るぐらいのお金はあるわ。後は魔石関連を街でさばけば当面は困らないわね」
「そうだな」
二人は街へ入るお金を払う。ちなみに一人銅貨十枚だ。
「さて売りさばきに行きましょう」
「ああ、さてどのぐらいになるか楽しみだな」
迷宮で狩った魔物の死体や、落とした魔石はたんまりある。魔石や魔物の死体は冒険者ギルドに持っていけばお金に換算できるらしい。
「冒険ギルドへの加入はどうする?冒険者となれば色々街を移動する時楽になるが……」
「たしかにその街々の移動するとき無駄なお金を払わなくてよかったり、魔石を売る時の料金が割り増しになったりといいこともあるけど、私たちの能力がバレれば色々と厄介だし、能力の高さを期待されて色々拘束されたら面倒よ。圧倒的な力と迷宮で得たものを売って得る資金力で、邪魔者はねじ伏せていきましょう」
そういえば立花は何かをされた時は力でねじ伏せていたな。そんな立花に惹かれる人も多かったが、同時に畏怖の対象にもなっていたので、好き好んで近づくのは少なかったな。まぁ俺が隣にいたというのもあるがな。
「とりあえずギルドだな。というかお前なんでそんな詳しいの?」
「王の書よ~」
さすがは通称攻略本なんて言われる異能だけあるな。
「チートだな、つかそれ主人公スキル!」
「あなたはパーフェクトメモリーや宝物庫があるでしょ。それにチートはあなたもよ?」
確かに無制限に物を収納できるこれもチート異能だ。ちなみに収納スキルはアーティファクトいう形で習得することもできるが、収納には制限がある。立花自身も収納スキルは習得済みだが、俺の宝物庫には遠く及ばない。
アーティファクトによるスキルは収納以外にもあり、便利系から攻撃系と幅広く一応誰でも習得可だ。もちろん人によって向き不向きがあったり、習得数の制限があるので全部の習得は基本的には無理だしスキルによっては習得できない人もでてくる。
ちなみにアーティファクトとは古くから伝わるスキル習得方法で、魔法と儀式を用いてアーティファクトカードを作成し、そこに習得したいスキルを読み込むと習得できるかどうかの審査が自動的にされ、審査が通ればレベル一の状態で習得だ。アーティファクトスキルの習得する為の魔法は手間のかかる術式に加えて、大量の魔力と高位の魔法が必須なので、取得できる施設があるのは基本大きな街だけだ。
習得数の制限は能力によって解除されていくのだが俺や立花にはまったく関係ないし、立花は王の書で得た知識と自身の魔法力でほぼすべてのアーティファクトスキルの作成が可能で、習得可能なスキルを全部習得している。
ちなみにこの後俺も可能な限りのスキルを習得させてもらった。結果パーフェクトメモリーのおかげもあってか、立花よりも習得数が多かったので立花に悔しがられたのだった。
「王都とはまた違った感じの雰囲気だな」
「そうね、王都も活気はあったけどどこか堅苦しかったわね」
「確かに、それに比べるとここは明るく賑やかな感じかな」
商業都市コジーン……こっちにきてから三つ目の街だ。ギルドを探して歩いているが、この街で早速感じたのは自由というものだ。王都の街並みには自由はなかったので違いがよくわかる。なぜなら貴族がたくさん住んでいて、それを伺いながら生きる平民にとってあの街はどこか息苦しいのだ。それでも住む平民達はそれなりのリターンがあるから住むわけだが俺には到底考えられないことだ。
「早速ギルドへ向かいましょう」
「ああ」
どうやらこの街のギルドは王都に近い大きな都市ということもあり、そこそこ大きいようだ。
ギルドはギルド組合が独立して存在していてるので、いかに王国や連邦だろう無闇に介入はできない。ただお互いに協力関係ができており、持ちつ持たれつという形で成り立っている。国は冒険者に対しての強制力を持たないが守りもしない。ただし国のために雇われて働けば金をだすといった感じだし、特に国と国をまたぐような仕事では冒険者を使うことも多いらしい。
ギルド自体は二つの大陸の各地に拠点がある。妖精の国では出入りこそ認めているが拠点はなく、魔族の国では認められてないのが現状だ。
「ここが入り口だな」
「ええ」
ギルドの中へと足を踏み入れた。
ステータス面やスキル等で疑問があるかたはどうぞ遠慮なくお願いします。
2019年3月13日修正