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無条件降伏

遅くなりました、忙しくてアップ遅れてすみません。

「これは……」


 目覚めたゼラ・ハイフライヤーは目に映る光景を見て驚きを隠せなかっただろう。

 瀕死で死にかけで意識を消失したはずが体の傷が治っており、なおかつたくさんの人に囲まれているにだから。


 「どうも」

 「お前は……神山周平!」

 「今無事獣人族の革命が成功し旧ダルシ国領全ての街の領主を含め大体の主要都市を落とし領主を拘束したうえで連れてきた」

 「なんだと……」


 まさかファラモンド以外の複数の街でも同じことが起きていて大半が制圧されたと聞けば驚きを隠せないだろう。

 文字通り悪夢を見ているに違いない。


 「俺達はそれに協力した、さぁ獣人族の王は旧ダルシ国の再建及び奴隷の完全開放をご所望だ」

 「ふざけるな……そんなこと……」


 それを言いかけた瞬間実に目で合図すると実は拘束された領主の一人に攻撃を加える。


 「ぐほっ……」

 「なっ……」


 どうやらまだ立場をわかっていない様子だ、まぁ無理もないが色々わからせる必要がありそうだ。

 

 「何か勘違いしてないか?お前にそんな権利あると思ってるのか?」

 「何だと?」

 「これは無条件降伏なんだよ!本来なら全員殺してもいがわざわざこうやって助かる場を与えてやってるんだ、それがわからないのか!」


 まくしたてる言い各街の現状を直樹の発明した機器によって映し出させる。


 「これは……」

 「これが現状、お前たちはボロ負けしたんだよ!やっとわかったか?」

 

 それを聞いたゼラは一瞬口を閉じたが少しして再び口を開く。


 「フフッ、確かに俺達は負けたようだがそれらの要求全ては受け入れられないな……」

 「あんっ!」


 それを聞いた時セラの目はまだ死んでいなかった、この状況下でまだ何か手段があるとでもいうのだろうか。


 「こんなことをして同盟国のファーガスやダーレー教団が黙っているとでも思うか?獣人族の奴隷化は教団が認可したこと、お前たちはいわば教団に背く反逆者だ」

 「フッフッフッ……」

 「何がおかしい?」

 「ハッハッハッハッ!」


 つい笑ってしまった、こいつの切り札はそれか。

 俺達相手にそんなも盾にしようだなんて滑稽すぎる。

 連邦側の人間や嶋田達は今の俺を不気味に感じただろう、だが仲間達は俺同様笑っていた。


 「お前滑稽だな……」

 「なっ……」

 「改めて自己紹介しようか俺の名は神山周平、百年前活躍した境界騎士団団長にして二十柱の一角魔神だ、そして今ここにいる二十柱の数は六人!」


 久兵衛さんやロードリオンの方に目をやると二人も続けて自己紹介を始めた。


 「改めて自己紹介しましょうかね~冒険者ギルド総長にして境界騎士団の一人、二十柱が一角巨人王高天原九兵衛~」

 「妖精の国初代国王にして境界騎士団の一人、二十柱が一角妖精王ロードリオン」

 「冒険者ギルドの総長まで異端者だというのか……」

 

 その異端者という言葉にイラつきゼラの腹に一発拳を打ち込む。


 「ぐほっ……」

 「「ゼラ様!」」

 

 何人かの騎士がこちらに向かって剣を抜こうとしたので複数で威圧をかけ制する。

 

 「異端者だと……この世界は元々二十柱の王が作った世界、この世界の統治を任された偽神どもがそれに反逆して俺達を異端者としダーレー教というものを作った、それが始まりであり元々の異端者はあいつらだ!その間違った認識は改めるんだな!」

 「……例え……それが正しい歴史でもこの国、いや世界の大半がダーレー教を信仰しているのだ……ダーレー教が示した歴史の方が強い……」

 「フフッ、それはどうかしら?」


 立花が口を開く。


 「ダーレー教の信仰はファーガスとファラリスの両国が大半、それらを合わせてもこの世界の半分弱……大半には程遠いわね~それとあなたに現実を教えてあげるわ」

 「現実だと?」

 「次期ファーガスの女王となるサラもあなたの息子のフィッシャーマンも正しい歴史を追求する反ダーレー教徒よ、サラは私達の力で次期女王の座を手に入れた、そしてあの国はとある一件から周平や九兵衛さんには逆らえない状態……周平は今やファーガスではキングメーカーの座についている」


 その気になればファーガスを動かすことも可能だ、残りのクレセント大陸の諸国はジャジルを筆頭に実質エミリアの配下。

 冒険者ギルドは幹部の大半がこちら側、妖精の国も獣人族もこっちだ。


 「魔大陸の最強の初代魔王もうちの騎士団のメンバーの一人でもあるんだぜ……」


 ゆっくり歩きゼラの後ろに行き肩を組む、これは各地の街にて映像が映し出されているし演出も大事だな。

 そのまま耳元で囁く。


 「その気になればファラリス以外の勢力を動かして戦争することもできる……これははったりでもなく本当にだ!」


 ガルカドール卿に関して言えばまだ復活していないので魔大陸に関してはややハッタリだがファラリスとは戦争中だ。

 それにもうすぐ復活できるだろうからな。


 「要求をのまなければ手段は選ばないということか?」

 「当然、お前らがなんと言おうともダルシ国は無理やり再建させる。これを断れば各国で挟み撃ちして敗戦国にした上でお前たち人間が届かない神魔法をもってして主要都市全てを無に還すことを約束しよう!」


 これを断ってくれたらそれはそれでカオスになるがたくさん死ぬことになるしそれが好都合なこともある、こっちのプランに移行したらダーレー教団を滅ぼすのは簡単になる。

 その分面倒を被ることもあるがね。


 「その目……どうやら本気のようだ……」

 「当然だ……だが貴様次第で平和的に済ます手段もあるということだ」


 ホントウニソレガオマエノネガウベキコトカ……

 

 「っ……」


 動悸がする、何かが俺の声に響く。

 

 オマエハトックニキズイテイルノダロウ?オレハオマエデアリイマノオマエハオレデアッテオレデハナイ……

 スベテハアノトキカラハジマッタ、オマエノカンガエハヨメテイル……ナニシロオレハオマエダカラ……


 うるさい!

 俺のプランにケチをつけるな!お前は俺だろ?


 オレハオマエノタメニイウ、コノコトニタイシテオレガコウシテオマエニハナシカケルコトガデキルノハオマエジシンマヨイガアルカラダ……ココデコイツラヲコロシシンタイセイヲツクレバオマエノカンガエルミライモ……


 その声を抑えるように俺は強く念じた。

 俺はお前だ、共にあり統合しないのは一つの選択肢を得る為……そして世界は俺の為に動いているのだと。


 「とにかくどうするゼラ・ハイフライヤーよ?」

 「貴殿に一つだけ問う?貴殿は世界をどうするおつもりだ?」

 「世界を本来の在るべき形に戻し統治し導くのが俺達の役目だ!」


 最終的な目的はそう、その工程においての殺戮があったとしてもそこはブレない。

 この星はまだ目覚めぬ残りの二十柱の為にも必要な場所だからな。


 「わかった……皆を守りたい」


 ゼラの下した決断はそれだ、覇王を目指したその男もその夢が潰えた瞬間だった。

 別に二十柱統治下での世界ならゼラも覇王になることが出来たのかもしれない……それぐらいに才能のある男である。

 だが今の時代今の世界においては縁がなかったと言えるだろう。


 「ではここで大きく叫びそれを宣言してくれ」

 「うむ……皆の者!私は皆を守るためここに全面降伏を受け入れる!異論のある者はここにきて私に罵声を浴びせるなりをしてくれ、何なりと受け入れようぞ!」


 たくさんの領主が集まる前で言ったその宣言、誰か一人二人はゼラの前に来るんじゃないかと思ったが誰も来なかった。

 ある者は安堵しある者は涙を流す、みな今回の獣人族の力に恐れをなしたからにほかならない。

 大半の領主達の目の前での全面降伏、それに対して誰も文句がでなければ国の維持はできそうだ。

 この国を糸で引ければ残りは魔大陸のみだ。


 

 ◇



 「戦が終わったわミッディ」


 ファラリス連邦の東側の街でダーレー教団の本拠地でもあるペブルスの街にいるレダはそうつぶやいた。

 妹分であり同じ戦姫のミッディの家に来ていたレダと裕二はミッディから色々と話を聞き昔話をしていた。


 「そう……この国は滅ぶのかしら?」

 「いいや、ただダルシ国が復活するだろうから領土は減るわね」


 それを聞いたミッディはどこか安堵していた、自分の作った国だけに行く末を見届けようと隠居していると聞いていたが私達の手で滅ぶのはあまりいい気はしないだろう。

 直樹から渡されたこの映像端末に映し出される映像と周の音声からして連邦は無条件降伏を受け入れただろうしこの件はこれにて解決に向かう。

 当初の予定通りにここまでうまく事が進むとは世界が周達のために動いていると見ていいだろう。


 「次はどうするの?魔大陸?それともここ?」

 「おそらく魔大陸よ、それでそれが終わる頃にはあいつらもあぶり出てくるだろうからここはその時ね」


 偽神達はダーレー教団の信仰が弱まれば弱まるほど力を失っていく、教団自体も弱まってきたことに危惧し自己封印にて逃げた残りを呼び覚ますはず。

 私達がここに来たのもこの街の監視とそれを探ることにあった、少なくとも殺しきれなかった五人のうち一人であるレガリア本体はこの街のどこかに封印されている。

 そして教団のトップは偽神達の親玉であるエクリプスを呼び寄せることも出来ると噂されている。


 「そう、私はただ見ているだけだけど頑張ってほしい……」

 「ええ、それがあなたの役目だったわね、あなたとクイルは中立を保ち観測するのが黒姫様からの命だったわね」

 「うん、ヒルデ姉さんは敵側につくのが役目……姉さんをどうするの?」

 「ヒルデは……」


 まだ姿を見てないが生きていることはわかっている、ヒルデの役目は結果残酷なものであった。

 当初は偽神側について内情を観察するだけだったがその過程で人を殺めることに嘆いたヒルデは心を封印し槍も捨てた……結果傷つきファーガスに復讐をしようとした実を殺そうとした。

 あの時実以外にもファーガスに復讐をしようとした者達を一つに集めて保護していて、実もヒルデの保護下に入っていた。

 だがある日全員を一つの場所に集め実以外を殺した……心から信頼していた実は命からがら逃げ切ったが深い憎しみを頭に残した。

 

 「姉さんは本来凄く優しい……姉さんの殻を破って救い出してくれないかな?」

 「ミッディ……」


 戦姫の役目について知るのは二十柱のみ、それを他言することは許されていないのだ。

 実の怒りを抑えてヒルデも救う……私あの時成しえなかった今も続く使命だった。


タイトルは前話がこれでしたが本来は今回なので前話のタイトルは修正します

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