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お見合い3

お見合いの話はこれで終わりです。

 「それがお前の答えか、理由を聞こうか?」

 「よくよく考えた結果ですわ、致し方ありませんが同じ考えなら私と同じ道を歩んでくれるでしょう」


 そうせざるを得ないだろうし判断としては悪くはないか……


 「そうか……」


 俺達がバックにいる限り最悪の事態は避けられる、もしそれをせざるをえなくなって連邦と敵対するようなら滅ぼすまでだ。



 「ありがとうございますサラ王女!」


 フィッシャーマンは立ち上がってサラの手を握る。


 「なななな、何するんですか~そんな急に手を握られたら恥ずかしいですわ~」


 サラは顔を真っ赤にして言う。


 「あ、すいません……あまりの嬉しさについ……」


 フィッシャーマンは少し悲しそうな顔をするとサラは慌ててフォローする。


 「も、物事には順序がありますからね、手はもっと仲を深めてからにしましょう」

 「はい!」


 屈託のない笑顔を見せる、人を分析するような目で見たりする一面もあればこういう一面もあるのか……


 「うちのサラはけっこう捻くれてるけどそっちはどうなんだ?スタイミー殿の口から是非一言欲しいな」

 「そうですな……スタイミー殿も捻くれている部分もありますが素直な一面もありますぞ」

 「大丈夫ですよ周平殿、もし何かあればあなたが私の命をとればいいだけですから」


 確かにその用だな、なら次は条件をつけさせてもらうか。


 「サラ、婚約する際の条件の話をしよう」

 「そうでしたわね、これを」


 これは向こうにはいい条件ではない、というかこれを見せて断らせる為に作った物だ。


 「これはお前さんを断らせる為の条件だし勿論削除するところは削除するがいくつかは絶対守ってもらいたい内容も入っている」

 「はい、それ確定で守って欲しいのはどれですか?」


  紙を指差す。


 「ここいらだな~」


 何かというとサラに何かあった際の王位継承権に一切関われないことや政治的介入の制限等だ、これらに関しては王国の乗っ取り等に関わる事などであらかじめ国王やその他貴族と話し合い決めている。


 「そうですね、ここいらは婿養子としてそちらに行く以上は当然の条件でしょうね」

 「ああ、ここいらは国王や貴族達が決めている。不服か?」

 「いえ、予想通りですし問題はありませんよ」


 後は細かいとことだな、後は二人に任せておいても問題ないだろう。

 万が一何かあれば俺が直接動けば問題ないからな。


 「スタイミー殿我々も少し休みましょうか?」

 「そうですな、大方終わりですしちょっと外で風を浴びてきていいですかな?」

 「ええ、かまいませんよ」

 「ではちょっと失礼します」


 スタイミーは部屋をでる、三人になるとフィッシャーマンが何か言いたげな顔でこちらを見てくる。


 「どうした?何か言いたいことがあるなら聞くぞ」

 「ええ、スタイミー殿の前では言いたくなかったことですので丁度いいです」

 「ハハッ、連邦の人間には聞かれたくないことでもあるのか?」


 フィッシャーマンは神妙な顔でこちらを見る。


 「彼が……もし僕の身に何かあればあなたを頼るといいと言っていました」

 

 彼?その彼が誰なのか俺は一瞬でわかった。


 「陣と面識があったのか?」

 「ええ……陣は僕の数少ない話相手でした、でもそのせいで彼は……」


 フィッシャーマンが憂い顔を見せる。


 「詳しく聞かせてくれよ」

 「陣はよく一人でいる僕に話しかけてくれました、異世界人だからか僕の話や主張も否定することなく聞いてくれました」


 陣らしいな、誰とでも仲良くできるのがあいつの特技だからな。


 「彼が抜け出そうとしているのも知っていました、あなたのことも含め色々話をしてくれましたからね」

 「そうか……きっとあいつのことだ、俺がいれば今頃とっくに抜け出してるなんて言ってたんじゃないのか?」

 「ええ、あいつは凄いからって自慢気に言ってましたね」


 フィッシャーマンの顔から笑みがこぼれる。

 俺は来た時は能力に目覚めてなかったから陣と一緒だったらかなりの迷惑をかけていただろうな。

 

 「僕はダーレー教団の者から疎まれています、陣が配属された第四方面軍にはダーレー教徒の者も多く僕と陣が話しているのをより不信に思ったのでしょうね……」


 フィッシャーマンの表情が曇る。


 「確か聞いた話によると陣は裏切りにあったって聞いているがあんたと何か関係あるのか?」

 「元々脱走計画は数人でやろうと考えていたらしいのですが僕と話していることをより不信に思った第四方面軍が配属された他の勇者を監視し尋問をしたのです」

 「陣はバレるような間抜けなことはしないし口を割るようなこともしないからな、その尋問からバレて首謀者の陣は投獄か……」

 「はい……」


 力のない声で言う。

 陣も同じ舞台に配属された奴に信頼をおきすぎたな、だがそんな状況なら力を合わせる……みんながみんな陣のように強くはないということだな。


 「でもあいつは抜け出して魔大陸に行ったはずだ、俺の仲間がそれを見送ったからな」

 「魔大陸に逃げる前に一度僕の元に来てくれましたよ、彼が第四方面軍部隊を壊滅させた時丁度その部隊のダーレー教徒に暗殺されかけていましたからね」


 確かその部隊のトップを含めて殺して逃亡だったな、復讐以外にもそういう理由があったと言うことか。


 「何か言っていたのか?」

 「あなたを頼れとは言ったのはその時でした、この縁談を受けようと思ったのもファーガスに行けばあなたに会えるかもと思ったからです。まさか会えると思わなかったですがね」

 「さっきサラとの婚約を自分から懇願したのも俺がサラのバッグにいるからか?」

 「ええ、サラ王女には好感を持てましたが流石に一目惚れはしませんでした」


 それを聞いたサラはムッとした表情を見せる。


 「もちろんサラ王女のことはこれからじっくり好きになる予定ですからご心配なさらずに」

 「是非よろしくお願いしますわね、私周平より美人ですし人間味あふれてますから!」

 「なんの張り合いだよ……サラもそんな顔するなって」

 

 二人でサラをなだめる。


 「まぁそんな狙われる状況ならこっちの方が住みやすいかもな、今や俺に逆らえる奴はこの国にいないしな」

 「もうそこまで力を振るっているのですね、流石は陣が認めた男です」

 

 本来ならこの星を守護する立場にある存在だ、いずれは仲間と力を合わせて全土を掌握する予定だ。


 「俺の手にかかれば当然さ、さて気配からしてスタイミー殿が戻ってくるからこの話はここまでにしておこうか」

 「わかりました」


 ドアが開きスタイミーが戻って来る。


 「すみません、風が気持ちよくてつい長居をしてしまいましたよ」

 「気にしないでください、こっちの取り決めも大体決まったしそろそろお開きですかな」

 「おおっ、そうですか」

 「もう追い出した者を呼んでも良さそうですよ、無事両国の友好にもなりましたしそちらもいい報告ができるかと」


 今回の縁談は両者共に望む声が大きい、俺達の今後を考えてもプラスになるだろう。

 連邦で起こす革命には一工夫必要になりそうだが俺達は一枚岩でないからな。



 ◇



 修練の里パールダイヴァーの奥地で特訓をしていた陣とアンは最奥で激闘を繰り広げていた。


 「ヴァイスシュバルツ!」


 白と黒の弾丸を光のバリアが防ぐ。

 目の前で対峙するのは感情を失った天使のような存在だ。


 「いくぞ!」


 陣は魔族が見せる漆黒の翼を具現化させ宙に舞う。


 「アン援護を頼む!」

 「はい!」


 アンは補助魔法を陣に付与する。


 「偽りの魔剣アベルの力を見せてやるぜ」


 天使に向かって斬りにかかると向こうも光の剣を手に剣を受け止める。

受け止められても気にせずそのまま剣撃加えると剣同士がぶつかり合うことによって発生する金属音と響く。


 「チッ……ならば……闇剣!」


 一度間合いを取って下がりアベルの剣先を暗黒を纏わせ黒に変化せる、聖属性には効果的な攻撃だ。


 「おらぁぁぁぁ!」


 一度大きな斬撃を飛ばしてから天使に迫る、天使はその斬撃を防ぐと光の剣にヒビがはえる。


 「そこだ!」


 そのヒビの入った箇所に剣をぶつけると大きな衝撃と共に光の剣は真っ二つになり闇剣はそのまま天使の体を直接斬り付ける。


 「まだまだ!」


 斬り付けた剣をそのまま心臓部に向かって突き刺した。


 「どうだ!」


 天使は無言のまま光り出す。


 「陣危ない!」


 アンの声が聞こえると光り出したその体が消滅すると同時に爆発が俺を襲った。


 「陣!」


 爆発とともに吹き飛ばされ目が覚めるとアンが上から心配そうに見つめていた、つい見惚れてしまうその赤い目が見えるということはとりあえず生きているということだろう。


 「どうやら生きているようだな」

 「陣!あなたの身に何かあったら私は……」

 「ハハッ、すまんな~」


 涙目でこちらを見るアンにとびっきりの笑顔で返す、どうやらアンのかけた付与魔法のお陰で致命傷を負わずに済んだようだ。


 「赤い目に見惚れるぐらいの元気はあるから大丈夫さ」


 立ち上がり体を少し動かす、ややふらつきはあるがこの部屋で最後だし問題ないな。


 「陣ったらそそ、そんなこと言って誤魔化そうとしてもだ、駄目ですから!」


 アンは顔を赤くして口ごもる、前から迫害されまくったせいか褒めるのには弱いんだよな~

 普通に可愛いと思うしいい子なだけにそういう風評被害をなくなる世界になればいいんだけどね……


 「ハハッ、本当のことを言ったまでさ~俺そういう嘘つけない男だからな」


 確か昔ダークエルフで強大な力を持った奴が悪さをして世界を荒らしてそれを退治したなんて話がダーレー教とエルフ族の伝承とにあるせいでダークエルフを忌み嫌う者として見るようになったんだったかな?

 連邦にいた頃フィッシャーマンの奴が色々教えてくれたっけか……あいつ今頃どうしてるかな……


 「陣のバカ……そんなに褒められたら私は……」

 「どうしたよく聞こえんぞ?」

 「な、何でもないです~」


 アンは一人でアタフタしている、こういうとこもアンの可愛いとこではあるな。


 「そもそもダークエルフ=悪なんてのは風評被害もいいとこだって俺の友達のフィッシャーマンが言ってたぜ、現に触れたって生気を吸われることはないって俺が証明したしさ」

 「フフッ、あなたのような人ばかりなら私も日の影で暮らすような生活をしなくてもいいのですがね……」


 アンはこちら見て微笑むとそれはとびっきりの笑顔で屈託のない純粋な顔で言う。


 「ありがとう、あなたに会えて本当によかった……」

 「俺もだぜ、ささっとあの祭壇の水晶に触れて帰ろうぜ」


 祭壇の光る水晶に触れると俺の体に何かが入り込み意識が消失するような感覚に陥ったのだ。


次回は陣の話です。

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