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クラスメイト達の思惑

ブクマ50人が素直に嬉しい。次は100人や~

 あの時の雪は悲しみで発狂していた。


 正直自分が冷静でいたのは親友の泣きわめく姿を横で見ていたからだろう。菱田は許せないし、周平君と親しかったのは私も同じだ。もし雪がああじゃなければ、私も泣いていたに違いない。


 私は去年周平君と同じクラスで雪同様仲が良かったし、何より周平君を一目置いていた。特訓の時に周平君に色々指摘するよう言ったが、結果彼は鋭い洞察力を示した。そんなことを頼んだのも彼がとても頭の回転が速く、なんでも簡単にこなす人間であることを知っていたからだ。


 「どうして周平君が……」


 確かに能力自体は高くなかったけど、彼の頭脳は後に絶対必要になると感じていた。それだけにこんなことになってしまったことに大きな落胆を隠せない。そして私は菱田達三人よりも違う視点に気づいた。


 そもそも周平君はなんであそこで前に飛んだのか?

 援護魔法があたったにしては少しおかしな点がある。

 そもそも後退している時なぜあそこにいたのか?

 周平君ならもっとはやく後退できたはず。


 確かに原因を作ったのは菱田達ではあるがその後は違う。


 彼は援護射撃に被弾し、鉄巨人の前に飛んだが、あれは偶然ではなく狙ってやられれたものだとしたら?

 

 二回も連続して当たったのを見ていたがあれはやはりおかしい。

 

 それと本当に死んだのかしら?


 いくつもの疑問が私の頭に思い浮かび、雪を呼んだ。


 「どうしたの美里ちゃん?」

 「ちょっと話があってさ」

 「話?」


 私はとりあえず雪が元気になるようなことを言うことにした。ただこれは私自身もどこかそんな気がするように思えたからだ。


 「雪、周平君が死んだとは限らないわ」

 「でも崖から落ちて……」

 「確かに生存は絶望的ね。でも私はね彼がそう簡単に死ぬとも思えない。だからそのわずかな希望にすがってみない?」


 その言葉に当然雪は反応した。確かに彼の死はほぼ確実……だけどどこか彼が生きている気がしたのだ。それはおそらく希望からくるものなのであろう。素直に死んだなんて思いたくないし、彼の顔が見れると信じているからだ。


 「うん、そうだよね!周平君が死ぬはずなんてないんだから。もっと強くなって周平君を迎えに……」


 雪は元気をだそうとしていたが、自分の言った言葉で再び目が潤む。


 「絶対に再開するんだから……」

 「ええ、そのためにもっと強くなりましょう」

 「周平君……」


 こんなことを言ったところで彼が戻るわけではない……でも私は彼の生存を諦めるつもりはなかったのだ。

 

 周平君と仲良くなったのは高一のゴールデンウィーク前だ。雪と私は入学してすぐに打ち解けたが、そんな雪が気になった生徒が周平君だ。気になったといっても、恋愛感情ではなくどこか腐りかけての魚のような眼をした彼がほっとけなかったらしい。偶然くじで二人が学級委員に選ばれてから雪は彼と会話をし、最初は素っ気なかった彼も雪とは次第に打ち解けていった。

 聞くと周平君は大事な人の失踪の話を、雪は家のことを話した。どこか不安定な二人は恋人にはならなかったが、固い絆が芽生え、その後同じクラスだった私と問題児の陣君の四人はなんだかんだ一緒につるむようになったのだ。


 「元気づけようとしてくれてありがとう美里ちゃん!」

 「ううん、私もそういう風に思いたかったから。それでここから本題ね」

 「本題?」


 もし周平君を弔うならこれも解決しないとね。

 これはおそらく間違いないはず。

 だとしたら本当の犯人を見つけないと。


 「ねぇ雪、周平君がクラスメイトに狙われたって話をしたら信じるかしら?」

 「えっ、それってどういうこと!?」

 「周平君が鉄巨人の前に飛ばされたのは誰かの援護魔法が偶然飛んだってことになってるけど、おそらく周平君は狙われたわ」


 私のその言葉に雪は動揺を隠せない様子だ。


 「じゃあ、菱田君の起こしたアクシデントを利用して誰かが周平君を殺そうと……でもクラスメイトにそんなこと……」

 「彼はクラスでは疎まれていた。私たちと仲がよかったのが気に入らなかったのか、それともほかに理由があるのか知らないけどね。雪と私はけっこうな男子から好意を受けているのよ。雪もわかるでしょ?」


 雪はその問いかけに対し一瞬恥ずかしそうな顔を見せるが、すぐに真面目な表情に戻る。


 「それは確かにわかるけど……でもほんとに周平君を狙ったというなら許さない!」

 「ええ、それは私も一緒よ。絶対に落とし前つけさせてやるんだから!」


 私と雪はこの日からクラスメイトを疑うようになったんだ。


 「とにかく詮索がばれないようにしないとね」


 雪の言う通り、悟られれば探すのも困難になるからだ。


 「うん、とりあえず他の橋本君あたりのグループから調査ね」

 「嶋田君と木幡君はどうする?」


 基本四人でパーティを組んでいるので、隠しながら調査するぐらいなら仲間にいれようかと雪は提案してきた。


 「駄目よ、木幡君は周平君にあまりいい印象をもってないわ。あと嶋田君もいかにもクラスのリーダーって感じだけど、内心は周平君に嫉妬していたわ。この調査は二人でやるのよ」


 今はあの二人であっても信用できるかわからない。現時点では伏せておくのが得策だろう。


 「うん、わかった!」


 こうして私と雪の真犯人探しが始まった。これで向く方向はあっているとは言い難いが、雪も少しは元気になってくれるかもしれない。

 

 私達の戦いはまだ始まったばかりなのだから。


 月島雪

レベル:40

種族:人間ヒューム

職業:混色魔法使い

攻撃:1000

防御:1400

魔法攻撃:2400

魔法防御:2400

素早さ:2000

魔力:2000

ギフト:身体強化、成長速度UP、魔法適性

異能:キャットクイーン(A)

称号:中級魔法使い


 杉原美里

レベル:40

種族:人間ヒューム

職業:狩人

攻撃:2000

防御:1400

魔法攻撃:1800

魔法防御:1600

素早さ:2400

魔力:2000

ギフト:身体強化、成長速度UP、狩人適性

異能:気配探知(A)

称号:中級狩人



 ◇



 嶋田と木幡は周平が崖へと落ちた三日後の夜、今後について話していた。



 「なぁ竜也、神山は本当に死んだのか?」


 竜也に質問した。


 「さぁな、ただあいつのレベルじゃ落ちた後、仮に生きていたとしても生き残るのは無理だろうな」

 「そうだよな……クラスメイトが誰一人欠けることなく帰還を……」


 俺は少し責任を感じていた。クラス全体をまとめて、誰一人欠けることなく頑張っていこうとしていただけにさすがにショックを隠せなかった。たとえそれが理想に過ぎないきれいごとだとしても、あまりにも早すぎる別れだからだ。


 「ああ、それが理想だった。でもそれは難しい……でも俺達からしたら好都合じゃないか?」

 「好都合?」


 竜也はニヤッと笑う。


 「お前は月島を、俺は杉原をだろ……」


 竜也のその言葉を俺は慌てて否定した。その悪魔の囁きのような一言に動揺を隠せなかったからだ。


 「それは……しかし彼がいなくなったおかげで邪魔が消えたなんて俺は思いたくない!」


 内心では神山がいなくなったことで月島を狙いやすくなったと思う自分もいるが、それを認めたくないのだ。それは心の奥底で自分が神山よりも劣っているなんてことを認めたくない気持ちの表れなのかもしれない。

 

 俺はあいつのことはよくわからない。あいつはほとんど素の自分は見せなかったし、あいつをよく知るのは特に仲のよかった三人だけだ。それに傍から見れば彼は自堕落な人間としか見えないし、彼自身もそう通そうとする。そんな彼をよく見ていないのかもしれない……だが竜也は


「ははっ、まったく浩二は正直だな。認めようぜ?俺もあいつがいなくなって正直ホッとしてる。杉原や月島のこと考えると目の上のたんこぶだった。さすがに死んだことに関して嬉しいとまでは思わないがな」


竜也は神山のことをよく観察していた。

なぜ彼があの二人と仲がいいのか?

彼が出来すぎた人間だからとういうのも理解していた。

だからずっと邪魔だったのだ。


「竜也……そうだね、君に隠しごとはしないさ。これからは二人であの二人を支えよう。彼の死を無駄にしない為にも」

「ああ、そうだな」


 俺と竜也はとてもよい笑顔を見せる。決して爽やかとは言えないが、二人は今後の展開に希望を抱いていた。ただ当然不安もあり、竜也はそれも予感していた。


「しかし浩二、他のクラスメイトには気をつけろ!力を得たクラスメイトが狂気に走る可能性がある。それによって月島や杉原に危険が及ぶ可能性もあるからな!」

「ああ、だから四人でのパーティで行こう。いずれはこの城も勇者らしくでてね」


 嶋田浩二

種族:人間ヒューム

職業:勇者

レベル40

攻撃:2000

防御:2000

魔法攻撃:2000

魔法防御:2000

素早さ:2000

魔力:2000

ギフト:身体強化、成長速度UP、魔法適性、戦士適性

異能:元始の爪(AA)

称号:クレセントの勇者


 木幡竜也

種族:人間ヒューム

レベル40

職業:ナイト

攻撃:2400

防御:2400

魔法攻撃:1000

魔法防御:1800

素早さ:1600

魔力:2000

ギフト:身体強化、成長速度UP、戦士適性

異能:カウンターシールド(A)

称号:中級ナイト



 ◇



 菱田達三人は部屋で迷宮での話を振り返っていた。



 俺は取り巻きの大野康太と秋山祐一と三人で部屋に集まっている。神山の奴が崖から落ちて三日後の時の話で、俺達はあの時から反省の意を込めて頭を丸めたのだ。


 「なぁお前ら本当にやってないんだな?」

 「「当たり前だよ!」」


 二人が同時に答える。俺は神山の死に疑問を感じていた。


 「あいつを鉄巨人の前に飛ばしたのはおそらく人為的なものだ」


 俺はそれを確信づけていた。というかそれ以外考えられないからだ。


 「まさか……そんなことは……」

 「でもさ隼人君なんでそこまで……」

 「さぁな、神山に嫉妬してのことだろう」


 俺はあれからずっともやもやしていた。確かにあんなことになった原因は自分にあるが、直接の原因を作った奴が別にいるからだ。


 俺はガラの悪いヤンキーで通っているし、実際自分もそうだと自負していた。ただ担任の藤田玲奈に密かに気があったりで、クラスでは大半の生徒にフレンドリーに接している。そういったことからクラスではあまり問題を起こしていなかった。


 ただそんな俺が神山を執拗に狙い続けたのは別に理由がある。


 「そういえば俺はどういうつもりであいつを執拗に攻撃してたかお前らは知らなかったよな?」


 秋山と大野は菱田とは小学生からの仲だ。俺がちゃんと高校に入れたのもこの二人のおかげだし、一応感謝はしているつもりだ。そんな親しい二人にもその理由を話したことはない。


 「うん、そういえばなんで神山をずっと攻撃してたの?」

 「本当のあいつを知るためだ」

 「どういうこと?」


 俺の返答に二人は困惑した。答えを言ったわけではないし当然だがな。二人は俺が神山を狙い続けた理由など聞いていなかったし、てっきりただ気に入らないからだと思っていただろうからな。


 「まぁいずれ話すさ。とにかくクラスメイトを含めあんまし周りを信用するなよ。特に国王とかな」


 勝手に召喚されて魔王の討伐なんぞ押し付けられてうんざりしていた。おそらく元の世界に戻す術をあいつらは知っている。それをなんとしてでも暴き出す。


「まずは外にいく口実が欲しいな……」


 俺達は外の世界に安易にでれない理由があった。現状ファーガス王国の王都から無断で出れば脱走罪で指名手配になるし、そうなれば命を狙われ、捕まれば牢屋行きだ。

 

 王様は最初にそれを説明している。気に入らないしハメられた気分ではあるがな。ただその反面王都内は自由に歩けるし色々と好待遇だ。もちろん問題を起こせば別だがな……


 「おい、お前ら明日からは迷宮攻略に精をだすぞ!俺達はあの日から生まれ変わったんだからよ」


 別に俺は神山が憎いわけじゃないし、殺したいなんて思ったことは一度もない。だが結果殺すことになってしまったのでせめてその罪滅ぼしに戦おうと思う。



 ◇



 結果菱田はあの一件で考えを改めることとなったが、あの場には自身含め八人しかいなかった。菱田の周平に対する悪意は本当の意味での悪意ではない。周平に対する強い悪意を持つ者はその陰に身をひそめたままなのだ。


 菱田達のいるそう遠くない場所で歓喜を上げる男がいた。


 「ざまぁねぇな、神山!」


 周りに誰もいないであろうその部屋で男は独り言を続ける。


 「お前が悪いんだぞ!お前が月島といつまでもいちゃついてるからだ」


 男は月島が好きだった。いつも仲のよかった神山に嫉妬をしていた。そして迷宮に入った時好機が訪れ。それを利用し、原因を菱田に押し付けるというおまけまで付けて、周平を迷宮の下に落とすことができたのだ。


 「待っていろ月島。お前を愛していいのは俺だけなんだからな……」


 男は高笑いしながら呟く。

 クラスメイトの狂気はまだ始まったばかりなのだ。


 菱田隼人

種族:人間ヒューム

レベル40

職業:剣闘士

攻撃2400

防御:1400

魔法攻撃:2000

魔法防御:1400

素早さ:2000

魔力:2000

ギフト:身体強化、成長速度UP、戦士適性

異能:攻撃破壊(A)

称号:中級剣闘士





クラスメイトのステータスは周平と離れる直前のステータスです。


8月20に改稿で前話を割り込みで入れたのでそれに合わせるように変えました。


2019年3月12日修正

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