お見合い1
アップします。
ドアが開く音とともに数人がこの部屋にやってきた、若い男一人にさっき話した鎧の騎士と他数名だ。
おそらくあの若い男がフィッシャーマンで間違いないだろう、こちらまで来ると一礼し鎧の騎士スタイミーが口を開いた。
「お初にお目にかかりますファーガスの皆様、私は今回フィッシャーマン殿の護衛を努めるスタイミー・アルベルトです。今回はお見合いということでこの城にお招きいただけたことを嬉しく思います」
「こちらこそわざわざ来ていただき感謝の限りでございます」
秘書のプレイフルアクトが答える。
「ではフィッシャーマン殿はこちらに座ってください」
「ありがとうございます」
フィッシャーマンはサラフィナの対面に座る、あれがスタイミーか……少し線が細いな、博識だという噂だが果たしてどうか……
「ではまず簡単な二人のプロフィールをお互いに説明しましょうか」
プレイフルアクトはサラフィナのことを向こうの貴族っぽいのがフィッシャーマンの簡単なプロフィールの紹介をした。
説明を聞いているとどっちも良く見せようとする感じだったか両名ともお見合い嫌いで有名だ、どうせならもっとストレートな説明でもいい気もするな。
「以上で簡単な説明を終わりますが次はお互いに交流してもらいましょうか」
そんな運動会のプログラムじゃないんだからそんな形式的なことしなくても……
「待ってください、今回はお互いにとっての折角のお見合いです。お互いにこの場に従者一人だけを残してじっくりと話したいのですがいいですか?」
突然のフィッシャーマンの提案に周囲は驚く、建前上は二人でもっと密な話をしたいといった感じなのだろうがその方が余計な会話を聞かれる人数を減らせるというのが主だろうな。
「それでも構いませんがお互いに残す一人は決まっていますか?」
「僕はスタイミー殿を指名します、そちらは?」
「なら私はこの周平を指名しますわ」
俺かい、てっきり立花だと思ったが……まぁその方が都合がいいか。
「だったら俺とスタイミー殿を残して従者は全員退出しようか、これは当人達の希望だしな」
「だがしかし……」
向こうの貴族っぽいのは納得していない様子だな。
「その方が二人がじっくり話せますな~さすがに二人きりには出来ませんがなるべく二人きりの世界にしてあげたいですし」
スタイミーが俺をフォローするかのように続く。
「だな、一応俺は今回のことを王妃に報告するよう頼まれているし俺だけで十分だな」
「同じく私も書記長への報告義務がありますしこちらも私だけで十分です」
すると周りは言葉をなくし退出した、部屋は四人だけとなり少し閑散とした様子だ。
全員退出したし早速頼むぜ……
念には念をだ、立花との念話を繋いでおり部屋をでたらハマジクを部屋中に唱えてもらうことになっている。
自身にかけている障壁が破られハマジクの発動が確認できた。
「一応俺の連れが盗聴防止の魔法を部屋中に貼った、これで好きにやれよ」
「なんと、気付きませんでした。魔力の反応があれば何かしら気付くのですが……」
ハマジクは魔力反応をなくす魔法だからな、第十位階魔法なんて知られてないしわからなくて当然か。
「本来気付かれては意味がないからな、それでそっちは色々と聞かれたら面倒なんだろ?」
「ええ、なので助かりましたよ」
「サウンドアウト!」
外から聞き耳立てられても困るからな、どうせなら徹底的にだ。
「流石は勇者から白金ランクの冒険者になっただけのことはありますな、サウンドアウトを無詠唱とは」
「これぐらいは朝飯前さ、それじゃあ始めてくれ」
準備も整いお見合いの開始だ。
「まず言っておくけど私ダーレー教嫌いよ、周りは認めてくれないけど反ダーレー教団への加入を熱望しているぐらいよ」
突然の爆弾発言に一瞬間が沈黙する。
二人ががダーレー教徒だったらどうするんだよ……
「一国の次期女王とも方が易々と公言していい台詞とは思えませんね」
「私はこの発言を言ったとしても身の安全が保障されていますし今この場で言うのは特に問題ないと思ってのことですわ」
サラの強気な発言ときたら……完全俺任せだろ。
まぁ自分のことを正直に言うのは悪いことではないかもしれないな、どのみちサラと結婚する奴はダーレー教徒では務まらない。
「ハハッあなたは面白い人だ、僕もスタイミー殿もダーレー教徒ではない。だがもし僕達が熱心な教徒 だったらあなたはお見合い後に命を狙われることになっていましたよ」
「ではその暗殺者は良かったですわね、私の護衛であり友である周平と立花に殺されずに済みましたわ~」
そこもか、当然暗殺しに来たら殺すまでだがね。
「サラ、その話はあまり口外するなよ。二人もうちの姫が言っていることはこのお見合いが終わっても公言するのはできれば控えて欲しい」
「確かに、今は戦争中故に同盟国同士でのいがみ合いは避けた方がよろしいですからな~承知しました」
スタイミーが言う、軍の偉い奴だけにそこら辺はしっかり理解しているようだな。
「私も口外したりは致しません、それよりお二人は仲の良いご様子ですね」
フィッシャーマンがこちらの表情を観察するように見てくる、やはり喰えん男のようだ。
「俺は既婚者だ、さっきいた黒髪の美女が嫁だがあいつは浮気と二番手を許さない。おまけに強さは俺と同等クラスで怖くてそういうのは無理さ」
「なるほど、あらぬ勘繰り失礼しました」
フィッシャーマンは苦笑いを見せてごまかす。
「問題ないさ、俺は白金ランク冒険者だしこの国の人間ではないからな、サラが王女だろうとこういう口調なだけさ」
本当は黒ランクだし本来なら敬れるべき存在なはずだからな。
「良くも悪くも冒険者らしいですね~それでサラ王女はどのような男が理想ですか?」
フィッシャーマンはサラの目を見つめる、サラの顔を見て言っていることに対しての表情を見るのだろう。
尋問の時に使ってもお見合いで使うなよ……
「私は自身の理想に賛同してくれて後押ししてくれる方がよろしいですわね」
「ではその理想とは?」
「私は将来的には無宗教国家として多種族が出入り出来る国にしたいと考えています」
「なるほど、では連邦の獣人族奴隷に関しても反対ですか?」
「もちろん、私の掲げるものとは程遠いですもの」
フィッシャーマンの半尋問のような問いにサラはスラスラと返す、ここら辺はおおっぴらに反ダーレー教なんて言うぐらいだから流石だな。
自分の主義主張をハッキリ言えるのはサラの長所とも言える。
「ではその為の手段を考えていますか?」
「そうてすわね……獣人族奴隷解放に関しては他国のことなので外交で訴えるしかないですが多種族との交流はそう難しくはないでしょう」
サラの奴俺が連邦を火の海に変えるから平気とは流石に言わなかったな、少しヒヤヒヤだったが流石に場をわきまえているな。
「ダーレー教団はどうするのですか?ファーガスはダーレー教の影響をかなり受けています」
「もちろん信仰したいものは信仰させておきますわ、ただ国としては無宗教国家を掲げたいだけですわ」
ちなみにあれから何度か暗殺に来ているが見えない護衛や魔具を与えているので失敗に終わっている、狙いに来た奴は毎回始末して場合によっては廃人にして教団に送り返している。
「余程ダーレー教が嫌いなようですね~」
「もう十年以上嫌ってますの~」
あいつ二一だしそんな子供の頃からその気持ちを抱くあいつもある意味スゲーわな、子供ってなんでなんでってなんでも疑問を抱くからそこから色々追求した結果なんだろうな。
「よろしければその理由を聞いてもいいですか?」
「私は真なる歴史を学び追求してきました、結果ダーレー教さ嘘つきのインチキ集団である事がわかりましたのよ」
「ほう、それはどういったところですか?」
フィッシャーマンはさっきまでと表情を変え目を光らせる、サラの問いに興味があるのだろう。
「ダーレー教の本にある神の敵である二十柱はこの世界を作った本来の守護者であり神、本来神と仰ぐべき存在を神と呼ばず神の敵とし偽の神を神として仰ぐ教団は敵ですわね」
大戦も負け側のくせに復興に協力した騎士団を反逆者扱いだからな、生き残った偽神のせいだが改めて傲慢で図々しい教団だと再認識したぐらいだ。
「でもそれが本当かどうかはわかりません、そもそも二十柱も神も本当にいるかどうかが怪し……」
「どちらもいますわ、ねぇ周平?」
フィッシャーマンが最後まで言うのを遮ると今度は俺に振ってきた、ここで俺に振るのかよ……三人の視線が俺に向けられる。
「初代妖精王ロードリオンはその一人で今も生きている、うちのギルドの総長は旧友で会ったことがあるんだ。そこで大戦時の話や教団の話を聞いたからな」
流石に自分が二十柱の一角だなんて言えないからな、不自然がないようにしとかないと。
「なるほど、そういったことをギルドの総長から聞けるということはあなたはギルドでもそれなりに高い地位にあるということですね」
確認するように聞いてくるフィッシャーマンが鬱陶しいな、こいつは連邦の人間だしスタイミーもいる……少しでも情報を聞き出そうと考えているだろうし警戒せねばいかんな。
「一応高位ランクだしな、元は別世界から来た勇者で無宗教だったからか総長の信頼ももらえてこうしてサラとも接触する機会をもらって今に至る感じだ」
三人してこっち見ながらそんなまじまじと聞くなよってかこれ二人の見合いだろ。
「スタイミー殿我々は隅っこにでもいきましょうか?これじゃあお見合いの雰囲気ぶち壊しですし」
「そうですな、周平殿お相手は私が……」
これじゃあただの四人の密会だ、一応正式なお見合いで俺達二人はそれぞれ報告義務があるしこれでは報告に困ってしまう。
「いえ、その必要はありませんよ二人共」
「どういうことだ?」
フィッシャーマンのその発言に俺とスタイミーは首を傾げる。
「サラ王女とはこれからも話す機会が嫌でも増えていきます、サラ王女の後ろにいるあなたとの会話も大事ですから」
「お見合いの相手は私ですわよ、周平はあくまで私の護衛であって本職はあなたの喋り相手ではありません」
その発言にサラは声を少し荒げる。
お見合い相手の自分を差し置いて俺との会話を優先だなんてもってのほかだ。
だが今の発言には少し気になるワードがある。
「待て、話す機会が増えていくとはどういうことだ?」
「それはこういうことですよ」
フィッシャーマンは頭を下げてサラの前に跪く。
「サラ王女、是非僕を貰ってください!」
「へぇっ?」
フィッシャーマンのその発言は一瞬部屋全体を沈黙にし数秒後サラの叫び声が部屋中に響き渡ったのだ。
お見合いは後半に続きます(笑)




