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到着

少し遅れました。

 あれから三日、とうとうお見合いの日にの当日になった。

 何が起こるか想像がつかんがここまで来たら出たとこ勝負である、お見合いの場所はこの王都アスタルテである。

 両国共に各地域にVIP用の転移陣がりそれを使ってこの離れた距離をすぐに移動してきたらしい。

 サラフィナは今や次期王女ということもあり今回は向こうがサラに合わせた感じだ。


 「よし!気合入れてこうか!」

 「他人事だと思って……」


 何やら緊張している様子だ、昨日まではあんなに意気込んでいたのに情けない。


 「寝れなかったみたいで私がわざわざ寝かせてあげたのよ、そんな煽るとかわいそうよ~」

 「立花~」

 

 サラは立花に抱きつく。


 「よしよし」


 頭を撫でてサラを落ち着かせる。


 「それで周平、後何分かしら?」

 「一時間後だな、俺達は護衛兼アドバイザーとして同行するが他にもサラを結婚させたい派の人が何人か見守るはずだ」

 「お母様の部下ですわね」


 母親のシャワンダ王妃もこいつの為に偉いわな~

 城でも大半の奴がこいつを変人扱いする中向き合ってたみたいだし話をした感じもいい母親だなと俺は思ったがね。


 「だな、お前の縁談を成功させたいだろうからな」

 「何としてでも逃げさせてもらいますわ……」


 サラの気持ちもわからなくはないけどね~


 「ちょっと外いってくるわ」


 外に出て城の屋上に出て外を眺めていると見慣れた顔の女性がやってくる、そうシャワンダ王妃だ。


 「サラの予定はどうですか?」

 「相変わらず嫌がっていますよ」

 「そうでしょうね~」


 王妃は予想をしていたのだろうか苦笑いだ。


 「今や次期女王だしそろそろ結婚してほしいのが本音ですよね?」

 「ええ……前ならともかく今はあなたの手引きで次期女王……自覚をもってほしいものですね……」


 俺がこの人と話したのはあの王座の事件での後で接触は向こうからだった。


 「サラの縁談については俺は中立を貫きます、ただ今回は外交の問題もありこっちから理由もなく断ることはできません。だから彼女を向き合わせたいと思っています」


 先に断った方は外交で付け入る隙を与えることになってしまう、もちろん正当な理由があれば別だがお互いにお見合い嫌いの問題児……お互いに断らせようと考えているはずだ。


 「わかりました、あの子がその事に向き合い考えてくれるようになるのではあれば今回の見合いはそれだけで十分なぐらいです」

 「そうなることを俺も願っています、俺達も彼女を女王にさせる手助けをすると言ってしまった以上その責任は果たします」

 「フフッ、この国は安泰ね。どうかあの子をよろしくお願いします、私の部下もいますがあなたはあなたのいいように動いてくださいね~」


 食えない人だがあの王様の妻とは思えないほどの良妻だな、サラもいい母親に恵まれたもんだ。


 「失礼ですが何故国王と結婚を?」

 「フフッ、あの人も昔はいい男でしたけど権力争いに揉まれて変わっていったのよ。みんながみんなあなたのように強くないわ」

 「俺だって弱い部分はあるさ……たたそれを見せないだけですよ」



 ◇



 一時間後ファーガス城内のとある一室に人が集まっていた。

 真ん中のソファーに座るのはサラフィナ、そしてその後ろに俺と立花に専属メイドのザインタ、そして王妃の部下で秘書を務めているプレイフルアクトとパンクティリオスだ。

 プラスで何人か役人がいるがサラに口出しできるのはこの五人だ。

 お見合い反対派が来るかと思ったが現状サラの婚約を望んでいる者が多いので監視役が送られなかったのだろう。


「サラいよいよだな」

「ええ、あなたに私の戦いを見ててもらいますわよ」

「ハハッ、応援していいのかわからんがしっかりな」


 横で二人が俺を白い目で見ている、ここでの応援はこの二人への敵対行為になるからな、そもそも俺は今回中立の予定だ。


 「サラフィナ王女、相手は他国の長の御子息、くれぐれも失礼のないようにお願い致します」


 プレイフルアクトはやや厳しめの声で言う、二人はお見合いを成功させたいだろうからな。


 「そうです、姫様いまや次期女王です。相手に対してもそれらしい姿勢でいてもらわないといけません!」


 パンクティリオスも続いて言う、するとサラは鬱陶しそうな顔を見せる。


 「それぐらい言われなくてもわかっていますわ、私も前とは違います。だからこそこの縁談を渋々受けたのですから」


 渋々は余計だぞ、渋々は……


 「あとどれぐらいで来るのかしら?」

 「もうじき来ると思いますよ~そんなに不機嫌そうな顔はお嬢様の折角の美人が台無しですわ」

 「そうですわね、一応初対面でしたわね」


 ザインタがサラをなだめる、流石は扱いをよく分かっているな。


 「あ、そろそろ来たようですね」



 ◇



 それをさかのぼる事数時間前、王都アスタルテの玉座の間にフィッシャーマンとスタイミー達が国王と謁見していた。


 「はるばるご苦労であった」

 「転移陣を使わせていただきありがとうございました」


 ファーガスの領内に入っても転移陣を使って移動したことでかなり早く王都アスタルテにつくことができた。

 転移陣で移動した街に転移陣があれば次の街へ、ない場合はそこから転移陣のある一番近い街への移動をしただけである。

 ちなみに転移陣と言っても行先が決まっている転移陣で自由に指定した街へいけるわけではない。


 「来て早々悪いが早速我が娘とのお見合いじゃな、そちらが使う部屋を案内させよう」


 国王との謁見が済み私はフィッシャーマンと共に我々が準備する部屋へと案内される。


 「とりあえず一息いれていいですかね?」

 「そうですな~」


 転移陣で来たとはいえちょこちょこ移動したので計二日はかかったからな、すぐにお見合いというのもあれだがこれはお互いの希望に沿っているし問題はない。


 「少し緊張されていますかな?」


 とまぁフィッシャーマンに話しかけたのはお見合い賛成派のシャーディだ、確かファーガス王国の貴族とも繋がりがあったな。


 「ええ、流石に。見合いを今まで断ってきただけに余計ですよ」


 フィッシャーマンは苦笑いを見せる、この縁談を成功させようと必死な貴族達のリーダー格だ。

 

 「だが相手をしっかり見ないことには駄目ですぞフィッシャーマン殿、相手もかなり風変りと聞いています故しっかりと見極めることが大事です」

 

 と否定的なのはジルザル、反対派の貴族だ。


 「ええ、流石にコミュニケーションが取れなければ断るしかありませんからね~」

 


 今度はジルザルに合わせて反応する、ファラモンドを出てからこの二人の相手をさせられてかなり大変な思いをしていたので横やりをいれて邪魔をしていた。


 「だが相手は次期女王になられるお方、美人と聞いていますし滅多にないチャンスですぞ」

 「美人だろうと相手の性格に問題があればそれはまた別問題です、縁談が成立した場合フィッシャーマン殿はこちらで住むことになるのですから」


 今もこうして二人で火花を飛ばしあっているが権力争いの道具にされるのを黙って見ているのは実に忍びない、フィッシャーマンは頭がいいので流石に傀儡になるようなことはないとは思うが相手をするのが面倒だからな。


 「ゴホンッ、二人共フィッシャーマン殿に一息いれさせてください、言い合いをするならお見合いが始まるまでつまみ出しますぞ?」

 「そうですな……我々も少し休みますかな?」

 「それがいいですな、ハハッ……」


 二人を軽く威圧する、書記長の指名で同行しているのを知っているので流石に二人共黙り口を塞ぐ。


 「さてこれを呑んで落ち着きましょう」

 「ありがとうスタイミー殿」


 フィッシャーマンの目から言葉以上に感謝が伝わってくるような感じがした、書記長もこれを危惧して私を同行させたのだろうな。


 「あと何時間ですか?」

 「そうですね三時間はありますな」

 「では少し仮眠をとります、一時間前になったら起こしてくださいな」


 直前になって仮眠とはどうやらあまり緊張はされてないようだな、流石は書記長の息子だけあって堂々としている。


 「私は少し城を探索してきます、我が部下スウィープが見ていますのでご安心を」


 我が第二方面軍部隊序列三位の女傑スウィープ・ラシアンボンド、気高き戦士でありわが軍のブレインでもある。


 「わかりました」

 「それじゃあ頼んだよ」

 「お任せください、フフッ、本番前に気晴らししてきてください」

 「帰ってきたら君にも気晴らし時間を与えるからね」


 スウィープで交互にフィッシャーマンを見ている、こっそり盗聴器を付けられる恐れもあるので許可を得て補助魔法もかけているぐらいだ。





 「あまうろつくと言われそうだし外が見えるところに行くとしよう」


 来た道を忘れないように歩きつつ外が見えそうな所に行く。


 「この国でも勇者が来ているんだったな」

 

 確かある程度自由にやらせているので離反者も数人出たという話だったな、だがうちでも第四方面軍の話を聞く限りレヴモスの奴に勇者の指導を任せたのは正解とは言えないな。

 結局奴は脱走した勇者に殺されたが重大な違反をしていた。

 後を引き継いだアソールトの奴もレヴモスほどではないができた人間とは言い難い。


 「緩すぎずキツすぎずが理想だが難しいな~」


 外を眺めながら見ていると一人の若者が近づいてきた、見た感じ勇者とよく似ている。


 「あんた見ない顔だな?」

 「ああ、だが怪しいものではないし招かれているよ」


 得体の知れないオーラを見せている、おそらく勇者だがかなりの実力者であることは間違いない。


 「知ってるさ、見合いだろ?」

 「そうだ、私はスタイミー・アルベルト、ファラリス連邦の第二方面軍の責任者だ。君は勇者かね?」

 「ああ、神山周平だ」


 やはり勇者か、確か大半が遠征に行っていたはずだから彼は残り組だろうか。


 「君は戦わないのか?」

 「俺か?俺は白金ランク冒険者もやってるし他の勇者達とは少し違うんだ、どうせ後で会うから言うがサラ王女の護衛だ、あんたもそんな感じだろ?」


 勇者から冒険者で白金ランクか……ということは彼は他の勇者とは違う道を歩んでいるということだな。


 「君はもう勇者ではないのか?」 

 「ああ、今回はサラ王女に頼まれて護衛で戻ってきただけだし勇者であって勇者ではないかな。元勇者といった感じかな」


 ギルドに入ればギルドが守ってくれるし白金ランクなら勇者と言えど他国も口出しはできない、自由にさせすぎた故の弊害だな。


 「複雑そうだね……理由を聞いても?」

 「そうだな……一回死にかけた時何とか生きながらえてここを出た感じだ、それで冒険者ギルドは入って今に至る、その間に色々あり不信感をから勇者を辞めた感じだな」

 「なるほど……複雑な事情があるようだな野暮なことを聞いて失礼した」

 

 この一言の裏には何度も苦難があり乗り越えて来たのだろう、まだ若いというのに風格がでているからな。


 「別にいいさ、それじゃあまた後で会おう」

 「ああ、こっちもあまり動かないようにするよ」


 その若者はとても達観していたし底知れぬオーラからおそらくかなりの実力者だ、是非戦場で……いや勝ち目があるのかもわからない……そんな若者だった。

 


 ◇



 「あ、来たな」


 俺やサラが待つ部屋に近づいてくる数人の気配を感じた。


 「そうね、数人の気配よ」


 気配をよむと何人か近づいてくるのがわかった、そのままこちらに向かいドアを軽くノックすると声が聞こえ外からやってきたのだ。


次の回はサラとフィッシャーマンの顔合わせですね

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