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スタイミーとフィッシャーマン

感想をくれると凄い嬉しいので良かったらお願いします。

 周平達がサラと会っている頃尾形もまた須貝と会っていた。


 「や、やぁ久しぶりだね」


 思わずタジタジになってしまう自分がいるが無理もない、直ちゃんには昔から頭が上がらなかったし元々俺は自分からグイグイ行く方ではない。


 「こ、光一!光一なの?」


 直ちゃんは思わず俺に抱きつく、映画とかで夫の戦場からの帰還を待ち望んだ妻はこんな感じだったのを思い出す。

 直ちゃんは幼馴染である俺のことを変わらず心配してくれていたようだ。


 「ハハッ、苦しいよ直ちゃん~」

 「馬鹿!勝手にいなくなったりして……私がどんなに心配したか……」


 直ちゃんの目から涙が滲みでていて思わず心が痛む。


 「色々あってね~本当にごめん」

 「本当だよ!光一の世話はおばさんに頼まれてるんだからあんまり心配かけないでよね~」


 おばさんとは俺の母親のことだ、幼馴染だけあって親同士も親しいのだ。


 「直ちゃんには敵わないな~」

 「それで何でいなくなったりしたの?」


 ジト目でこちらを睨み付けてくるので王国を抜けた経緯を話した。


 「それじゃあ怪しい女について行ったの!?」

 「うんまぁ……でもそれは色々と俺なりに考えてて……」


 俺が全ての弁明を言い終わる前に静かに言葉を発した。


 「正座……」

 「あ、はい……」


 この死んだ目は直ちゃんが怒るとでるやつで昔何度かこうなったが母親よりおっかなかった記憶がある、まぁこうなるのも無理はないので大人しく正座をする。


 「光一、私に言う事は?」

 「ごめんなさい……」


 この冷たい視線が心に突き刺さる……でも考えなしに去ったわけではないしちゃんと自分の意志は言わないとだな。


 「でも俺自分でその方が色んなことが知れるって考えて抜けたんだ!ここにいても未来は感じなかったから……」


 すると俺の頬を叩く、何故か凄い痛い……そう響くような痛みだ。


 「馬鹿!あんた自分の命は一つしかないんだよ!当時はそんなに強くなかったし死んでしまってもおかしくなかった……あんたが死んだら私はおばさんになんて説明するの?」

 「ごめんよ……だからこうやって顔を出しに来たんだ……」


 自分の中でどこか後ろめたかったこと……それは俺もまた周平君と同じようにクラスメイトとの絆が残っていたからだ。

 道を違えど絶対に切ってはいけない絆を俺は今感じることが出来たのだ。


 「うん、だから私もこうやって説教が出来た。大事な幼馴染はまだ私との繋がりを切ってなかったのも今のでわかったしそこは嬉しかったよ……」


 直ちゃんは周平君前言ったように絆を重視する、だからこそ今ちゃんと言っておかないといけない。


 「当たり前だよ!直ちゃんは大事な幼馴染だから」

 「私も同じ気持ちだよ、それで光一はこっちに戻ってきてくれるのかしら?」


 その質問をした直ちゃんは期待をしつつも寂しげな表情をうかべている、これにはっきりと答えるのは辛いがしっかり言っておかないといけないのだろう。


 「直ちゃん俺ここに戻ることは出来ない……今ジャジル王国でやる事があってさ、向こうをほったらかしには出来ないんだ……」


 直ちゃんの表情が曇り一瞬場が沈黙する、その沈黙はほんの数秒だがとても長く感じた。

 その数秒が過ぎると直ちゃんはため息をつき口を開いた。


 「そっか……そう言うだろうと思ったけど光一が自分でそう決めてるならしょうがないかな……」

 

 仕方がないことだった……ここで直ちゃんに一緒に来るように誘ったとしてもいい返事はもらえないのもわかる、直ちゃんはクラスメイトの絆を切れないしそれを切って俺と一緒に行ったら今までの自分への裏切りになるからだ。


 「でも直ちゃんとの絆は切れることはないから……」

 「当然だよ!光一は私がピンチの時は絶対に来るんだからね、昔の約束はしっかり守りなさいよ~」


 確か小学生の時よく直ちゃんに守ってもらっていた自分が不甲斐なく思い直ちゃんにいつか自分が守るからなんて啖呵きったんだったかな。


 「あの時そんなこと言ったね~よく覚えてるね」

 「当然、光一が珍しく男らしいこと言っただけに一言一句覚えてるよ~」

 

 直ちゃんの表情が少し明るくなる。

 

 「アハハッ、困ったね~」

 「それで光一はいつここを出るの?というかどうやってここまで来たの?」

 「ああ、それは周平君がここに連れて来てくれたんだ~」

 「えっ?」


 直ちゃんの表情がまた曇り始める、それと同時に周平君と神明さんがこちらに来たのだ。


 「よっ、感動の再会は済んだか?」



 ◇



 ファラリス連邦ハイフライヤー城にてスタイミーは初期長ゼラに頼まれその息子フィッシャーマンに挨拶に向かった。


 「フィッシャーマン殿はいるかな、縁談の件で書記長から同行を頼まれている」

 「わかりました、こちらへ」


 従者のメイドがフィッシャーマンの元へと案内する、どうやら話は伝わっているようだな。


 「スタイミー・アルベルト大将が来られました」

 「おおっ、部屋へ入れてくれ」


 甲高い声が聞こえ従者が扉を開ける。


 「待っていましたよ、スタイミー殿」


 部屋へ入ると少し線の細い茶髪の青年が手招きをしている、あまり顔を合わせない為記憶も少し曖昧になりかかっていたがフィッシャーマン本人で間違いない。


 「お久しぶりですねフィッシャーマン殿」


 フィッシャーマン・Aアーチ・ハイフライヤー、書記長の第四子にして城内の書物を管理する地位にある歴史学者でもある。


 「こちらこそ、めざましい活躍をされているようで父上も期待を寄せていましたよ」

 「それは嬉しい話ですな~でも戦争はまだまだ始まったばかりですので油断は禁物です」

 「スタイミー殿相変わらずですね~でもそんなスタイミー殿だからこそ父上や兄達から信頼が厚い」


 書記長の子供は全部で五人いるが兄弟で唯一軍役についておらず水面下で行われている後継者争いにも参加をしていない、そんな彼に対して揶揄する兄弟もいるが本人は全く気にしていない様子だが……


 「それで今回の縁談についてですが……」

 「そうそう、その話だ。そこに座ってください」


 ソファーに二人座ると早速フィッシャーマンはため息をつく。


 「まずは戦争中にこんな事に巻き込んだことは深くお詫び申し上げます」

 「とんでもない、むしろ今は落ち着いていますし一週間ばかり戻るのがずれただけで私にはいい休暇になっています」

 「そう言っていただけると幸いです」


 向こうが少しばかり心配だがブッシャーもいる、お陰でこっちでやることも出来たしわずかながら家で家族と過ごす時間も取れたからこっちとしては都合がよかったかもしれないな。


 「それで私はどうすればいいですかね?」

 「はい、僕は本当はお見合いとかしたくないんです……それはスタイミー殿もわかってはいると思います」

 「ええ……お噂はかねがね聞いておりますので」


 縁談嫌いで相手を探す気がないバカ息子と書記長は言っていたが実際の所はどうなのだろうか?


 「それで今回スタイミー殿に同行をお願いしたのは証人になっていただきたいのです」

 「証人?」

 「はい、証人とは僕は今回の縁談はしっかり断るつもりでいます」


 それを聞いてついため息をつきたくなりそうになるが抑える、まぁ仕方なく受ける縁談だしそういう腹だとは思ったが。


 「今回の相手もお見合い嫌い、ちゃんと向こうに拒否されて仕方なく断念したということにするのでそれをしっかり見ていただきたいのです」

 「はぁ、でもそれは向こうも同じように考えているだろうし向こうも同じような事を考えているのでは?」


 両国と共にその見合いを仕方なく断念したという主張をしたいはずだ、となると共に先に拒否されようと考えるのはまず間違いない、つまりこれは手間と時間をかけた茶番だ……


 「そうだと思います、そしてスタイミーさんは父から頼まれている以上そんな僕を後押しなど出来ないし茶番に思っているとかと」

 「正直に言いますとそうですな~」


 こんな茶番の為にこっち戻ったままのは向こうで頑張る部下たちに申し訳ない気持ちになる……


 「そこで僕としても父に頼まれたスタイミー殿の顔に泥を塗りたくありません、なのでお見合いにおいて僕の方から余程のことがない限りお見合い中に拒否するような発言は一切しないことを約束しますしもし拒否してしまったら新たに同じ条件でお見合いをします」

 「それは信用できるのですかな?」

 「ええ、同行するのは縁談を成功させたい思惑の者もいます。その者達は二人きりになって結託して拒否して破談させるかもと考えるでしょうし二人きりにさせてくれないだろうと僕は考えています」


 確かに共にお見合い嫌いなら二人きりになって縁談を破棄と考えるだろうし共に縁談を成功させたいと考える者はそれを絶対阻止しようと考えるはずだ。


 「おそらく監視者を一人つける提案が互いにされると思いますのでその時僕とサラフィナ王女の話を聞く証人にあなたを推薦したい、なのであなたは中立者として証人になっていただきたい」

 

 なるほど、ある程度覚悟は決めているご様子だ、そういうことならその覚悟に誠意を見せなければいけないだろう。

 他の者も書記長に同行を頼まれた自分が一人推薦されたことに不服を申し立てることはないだろうし自身の称号や立場を考えれば向こうも文句を言ってはこないだろう


 「わかりました、その条件なら茶番でなく立派なお見合いですしこのスタイミー・アルベルトが責任をもって引き受け」

 「流石に父に怒られてしまうからね、これは僕と父の戦いだし正々堂々と戦います」


 あなたが勝てば書記長はさらに困るのですがね……まぁお見合い嫌いな彼が観念し譲歩したのだからまだマシか……


 「それで証人としてなのですが会話の内容を全て父にというのは恥ずかしいのでそれは流石に控えていただけると嬉しい限りです」

 「もちろんそれはフィッシャーマン殿やあちらのサラフィナ王女のことも考えてそうさせてもらいますのでご安心を」


 書記長が不快に思うような会話も絶対に出るだろうし報告する自分としても勘弁願いたいからな。


 「ありがとうございます~ではそう父に報告しその条件でスタイミー殿を同行してもらうと言っておいてください」

 「はい、書記長もこの条件なら文句を言う事はないと思いますな」


 となるとどうなるかが少し見物だな、その証人をやれば結果もリアルタイムでわかるし面白いかもしれないな。


 「あと同行には私の部下のスウィープも連れていきます、私と同じ立場であなたを見守りましょう」

 「それは問題ありませんよ、女性の方ですし道中色々お聞きしたいからむしろ歓迎です」

 「感謝いたします、それと一つお聞きしたいのですがフィッシャーマン殿は女性嫌いというわけではないのですよね?」


 縁談を何度も拒否しているのでそう囁かれているが実際は違くて何か理由があるはずだ。


 「ええ、もちろん。今は言いたくありませんがいつかお話ししますよ」


 それを言った時のスタイミーは少し寂しそうな表情をうかべていた。


矛盾点がでないように書いてるつもりですがでてたら指摘お願いします。

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