尾形編4 絶望の森
尾形編は次かその次で終わりにします。
図書館との会話を終え奥の部屋にある狂魔結晶へと手を出す。
「これで五つ目……」
狂魔結晶を手に取り体内に取り込みステータスを確認する。
神山周平
レベル:850
種族:魔人族
職業:魔神
攻撃:1000000
防御:1000000
魔法攻撃:1000000
魔法防御:1000000
素早さ:1000000
魔力:1000000
固有スキル:魔神の戒律(不完全状態)、
異能:アイスショット(C)、チャッカファイア(C)、粘着弾(B)、チャージショット(A)、天の糸(AA)、物質具現(AA)、不死鳥の橙炎(S)、完全記憶(S)、砂の王(S)宝物庫(S)
称号:神殺し、煉獄の王、クレセントの悪魔、オンラクの悪魔、レガリアの悪魔
とうとう百万に突入だな、さて次は記憶の解除だな……行くぜ!
「ウッ……」
取り込んだ力を発動し記憶の解除を始めた、それまで思い出すことを拒んでいた記憶の鎖が破壊され俺の頭に広がる。
「グッ……頭が……」
「周平!」
その場で倒れ込む俺を立花が支える、ここまで激しい頭痛になるのは予想外で頭が割れそうだ……
「すまん……頭が……」
更に激しい頭痛が俺を襲い何かの記憶の映像が浮かび上がる。
「ガルカドール卿!」
「止めるなシュウ、これが未来の為の決断だ!」
ガルカドール卿の胸に突き刺さる光の剣、そしてその光の剣を持つ天使の翼を持つ女性……
「アーシア……」
二十柱の一角である大天使を受け継ぎし者アーシア・フォン・レイルリンク……彼女を浄化する為にガルカドール卿は自身の肉体を引き換えにした、この時ガルカドール卿との約束としてこのことを誰にも他言しないというのが交わされそれがレダさん達の不信感へとつながったのだ。
「うっ……そうか……あの時アーシアを元に戻す為にガルカドール卿は……」
場面が変わる、また別の記憶だ。
「アーシア……何故……」
焼け野原の中、周りの動かない死体を無言で燃やす血まみれの天使は微笑んだ。
「これが運命……これを持って私は完成する!」
「アーシア!!」
森で落ち合う約束をし森で再会したとき俺は絶望を見たんだ、戦争終結の為の大事な打ち合わせでそこにはその為のキーパーソンが集まっていた。
でもアーシアはそれを踏みにじった。
魔神モードになって怒れ狂う自分が映し出される、俺はこの後何を……くそ天使…モヤがかかって思い出せない……あともう少しなのに……
森を灰にした魔神と大天使の戦いの結果……それは……
「周平!」
「はっ!」
目が覚めると立花の膝の上にいた。
「ここは……そうか……あのまま意識を失ったのか……」
「心配したじゃない……もう……」
立花は悲しそうな顔でこちらを見る、こんな立花を見るのは久しぶりだ。
「すまんな、だけど俺は大丈夫だ」
起き上がろうとすると頭痛がまたはしりまたも倒れ込む。
「無理しちゃ駄目よ!全く…」
立花無理矢理俺の頭を膝の上に固定する、膝枕は嬉しいけどシチュエーションがな……
「それで記憶の方は蘇ったのかしら?」
「ああ、九割がたは戻ったさ。ガルカドール教が戦死したあの戦いなら解決したよ」
「本当ですか!?」
レイチェルの声が響く。
「ああ、それはここをでたら答え合わせといこうか。今は頭の中がぐちゃぐちゃで整理したい」
今記憶が戻ったことで今まで自分だけど他人の記憶に感じていた大半のことが自分のことだとはっきりと意識出来るようになった実感がある。
「ガルカドール卿だけじゃなくアーシアの奴も探さないといけないな……」
「思い出したのね……」
立花は複雑な表情を浮かべる、思い出して欲しくない何かがあったのだろう。
「俺が死んだ最後の戦闘の記憶だけはまだ蘇らなかったがガルカドール卿も俺もあいつが関わって……」
「ええ……だから私は彼女を……」
立花から殺気がにじみ出る。
「まぁそういうなフォルモサよ」
シンがそんな立花をなだめる。
「シン!あなただって……」
「ああ……でも奴が正常でなかったのも事実だ、だからこそもう一度それを確認すべきなのだ」
シンのいう正常ではなかったというのが真実ならばあの焼け野原での出来事も……
「今ここでそれを議論してもしゃーないさ……とりあえず一度帰還しよう」
◇
周平達が迷宮を攻略していた頃絶望の森を進み眠らずの地を目指していた。
「魔法剣ファイア!」
絶望の森に徘徊する絶望狗の群れの相手をしていた。
「へっ、バテてないかコウイチ!」
トリプティクと背中を合わせる、よく漫画やアニメなんかで見るそれをまさか自分がやるとは夢にも思わなかった。
「まだまだやれますよ!」
狗に斬りかかる、幸い一体一体の体力が低いので攻撃を上手く当てて冷静に対処すればどうってことない相手だ。
「フッ、そうこなくっちゃな!」
トリプティクはデカい斧のようなものを振り回す、流石は大きなギルドのマスターだけあって早くて強い。
「ハァァァァ!」
トリプティクの気迫のこもった攻撃で最後の一匹が倒された。
「とりあえずこれで全部だな」
「はい」
その場でしゃがみ込む、あの大軍相手だ……そろそろ休憩にしたいところだ。
「どうした?」
「連戦続きで体が少し休みたいらしく……」
トリプティクはしょうがねぇなと言わんばかりに俺を引っ張って立たすとそのまま抱きしめる。
「へへっ、まだまだやれるんじゃなかったのか?」
「敵がいなくなったらつい抜けちゃって~」
するとそのまま顔を胸に押し付ける。
「まぁよくここまでくらいついたじゃねぇか、ご褒美だ」
胸の柔らかい感触とトリプティクの匂いで体の力が抜ける。
「まぁ周辺に敵の気配はないしそこで座って休もうか」
座れそうな大きな石の上に二人で座る、予想はしていたがここまでキツいとは……
「この森しんどいだろ?」
ニヤニヤしながらこちらを見てくる。
「うん、後どれぐらいでこの森を超えられる感じ?」
「どうだろうな?ただ少なくとも半分は超えているよ、生えてる樹が紫に染まってるのがその証さ」
確かに入り口付近に比べて樹の色がどす黒い感じがするな、魔物も随分殺気立ててたし。
「ここを超えた目的地も危険地帯ってのが辛いとこですね……」
ノリで安請け合いしてしまった感が否めないだけに無事に生きて帰れるかどうか……
「ハハッ、そんな顔するんじゃねぇよ、アタシがついてるだろ?」
トリプティクは自信満々の表情だ、確かにここに来るまで何度か助けられたしエミリアさんに師事していただけあって実力者なのは間違いないんだけどね。
「そうだね、でもこないだの夜のこと考えると最低でも対等に渡り合えないといけないなとは思うんだ」
数日前の夜トリプティクに迫られた時のことを思い出す、よく異世界ものの小説ではハーレムが定番になっているがこうやって異世界に来た以上自分もそのルートに入れるかもという淡い期待を抱いてしまう、ただその小説の主人公は強いことが条件だ。
「コウイチは召喚された勇者の一人だしそのうちアタシなんて超えるからそこは大丈夫だろ、そんなことよりも……」
トリプティクは俺の首にヘッドロックをかける。
「ハーレムってのはたくさんの女が群がってできるんだ!そんなこと考えるなんて十年早いんだよ!」
「ヒィィィッ、ごめんなさい~」
スタセリタのヘッドロックよりも強く胸の弾力もより感じる。
「苦し……ギブ……」
「どうやら色々鍛えて教えてやらなねぇといけないみたいだな~」
教える?一体何をだ……いかんあっちの方の想像が広がる。
「へへっ、アタシがいてよかったな。まだまだお子様の光一には大人の味を……」
その瞬間トリプティクが口を閉じる、それに続き自身も変な違和感を感じる。
「デカいのが近付いているな……」
「そうですね、移動しますか?」
恐らくまだ遭遇していないドラゴンが近付いているのだろう、わざわざ戦闘して消耗する必要もない。
「だな、わざわざ危険を冒す必要はないからな」
荷物を片してその場を離れた。
◇
「せっかく盛り上がったのによ~」
少しご機嫌斜めな様子だ。
「まぁまぁ……」
というかあんな大きな声だしたから近付いてきたんじゃないのかと疑ってしまう。
「ん?なんか言いたそうな顔だな?」
「いや、トリプティクのおかげでこんな陰気な森でもテンション上がったからありがとう」
ここは安定のごま擦りだ、まぁこれも嘘ではないからな。
「へへっ、コウイチもちゃんと気を遣えるんだな、感心感心」
頭を撫でてくる、まぁ悪い気はしない。
「そういえばトリプティクはギルドマスターの腹心の一人と聞いてるけどそれはエミリアさんの下で師事してからなの?」
「まぁそれもあるが親が熱心なダーレー教徒でアタシにそれを強要してきたからかガキの頃からダーレー教が嫌いでな、こういう性格だったからかいつの間にかダーレー教を疑うようになっちまったんだよ」
子供は親を見て育つというがトリプティクの場合その信仰が理解しがたいものだったのか反面教師にしてしまったのだろう。
「それも最初は我慢してたけど限界がきちまって結局故郷のファーガスをでて冒険者やってたら姐御に目をつけられて今に至る感じさ」
エミリアさんが目をつけた理由の一つとしてトリプティクのダーレー教への敵対心が挙げられるだろうな。
「そうだったんだね~でもトリプティクってまだまだ若いって聞いてるけど冒険者自体は小さい頃からやってるの?」
「ああ、家にいるのも嫌だったしそれなりにセンスもあったからな~十五の時からやっててもう八年になるのか……」
八年で今の地位ってのも凄いよな……自分はギフトなかったら安定の雑魚間違いないし。
「てことは今二三歳……」
「ん?ばばあとでも言いたいのか?」
目を赤く光らせてこちらを睨み付ける。
「滅相もない、年上に甘えたい願望ありますから~」
「ふぅん、ならこれが終わったらもっと甘えさせてやるよ」
何やらニヤニヤしているが機嫌をそこねると色々怖いので今は上手く誤魔化しておこう。
「そういえば思ったよりも敵が出ないな……」
「だな……たぶん近くにドラゴンが徘徊しているんだろうな……」
狗も猿も竜には逆らわないらしいな。
「まさかさっき近付いていた個体につかれています?」
「いや、そいつじゃないと思うぜ。何にせよ今がチャンスだな……敵が出てこないことを祈ってこのまま行こう」
「了解です~」
でも森抜けてもそいつが追ってきたら意味はないが……
「ドラゴンは眠らずの地に入っても追ってくることがあるんですか?」
「そうだな……あんまりないし仮に追いかけてきたとしても眠らずの地に入ればそのドラゴン自体はうまく撒くことが可能だ、危険地帯ではあるが建物もあるからな」
墓地とかそういう所には魔物は来ないらしい、もっとも墓地は別の面で恐ろしいが……
「建物の中なら休めそうですしそこまではノンストップで行きます!」
「おう!」
最近アップが遅くてすいません……




