ベッドでの再会
やっぱり覚醒までのテンポが早いな…
10月22日タイトルの変更と大幅な改稿をしました。
主人公が迷宮で離脱する時とヒロインとの再会が迷宮ではなく外にでてからに変えたのでそれにより後の内容でその話がでてきた時に矛盾が生じるかもしれませんが見つけ次第改稿します。
俺が見たのは懐かしい夢だった。といっても前世の話ではない。
二年前の中学三年生の時の夢だ。俺の隣に住んでいた幼馴染はいつも通り寝坊しそうな俺を叩き起こし、一緒に学校に向かった。だがその途中で先に行こうとする幼馴染を追い俺も追いかけるが、追いつくどころかその距離はやがて広がり、俺はそのまま一人になるんだ。あいつが失踪してから一年以上が経ったが、俺はずっと探し再会出来る事を信じていた。
前世でも隣で共に戦ったのだからきっとこの世界に……
「うん?夢か……」
あいつの夢はこの世界に来てから初めてか……まったくどこにいっちまたのだろか……うん?
「あれ?」
なぜ俺の目の前には裸の女の子が寝ているんだ?
しかもあいつの姿形してやがるな……まったく俺の妄想もここまでくると……
「う~ん、先に起きてたなら起こしなさいよね周平」
えっ、まてこの声は……
「り、立花なのか!?」
聞き覚えのあるその声はとても懐かしく、その姿を改めて見ると自然と涙が流れ出てくる。ずっと会いたかったその子が目の前にいるのだ……
「周平~」
立花は俺に抱きつく。
「わっ、り、立花?」
頭を整理する。ええっと、起きたら裸で幼馴染が同じベッドで寝ていたと……あれ俺まで裸じゃね?どういうことだ?
「この感じは周平に間違いないわね~」
「本当に立花なのか……」
「ほら私の胸の感触、間違いなく私でしょ?」
立花は俺の手を自分の胸に当ててくる。
「あ、ああ、でかくてやわらか……」
「フフッ、スケベね」
「あ、いや……なんだその……」
「フフッ、可愛いわね」
立花はクスクスとこちらを見て笑う。この長い黒髪とややつり目にでかい胸、このSっ気のある声としぐさ……目が合うと目線を離すのが難しく、釘付けにされちゃう美しいその姿はまさしく……
「本物の立花だ!俺ずっと会いたかったんだよ……やっと会えた……ウウッ……」
神明立花は幼稚園の頃からの幼馴染で、同じく零明高校入学予定だったが3月に謎の失踪……俺は立花とは恋人ではなかったが、一緒にいたし互いにそれを意識していた。そんな俺達の仲を邪魔するものおらず、俺も高校に入ったら告白するつもりだった。それだけに彼女の失踪は俺を大きく変え、俺は脱力感を押し殺して高校を通う日々へとなったのだ。
「改めて久しぶりね、会いたかったわ周平」
それはこっちのセリフだよ。でもこうして俺は再会出来たんだな。
「ああ……本当に久しぶりだ……一年半弱か……」
「正確には五五五日かしらね、駄目じゃない正確に覚えてなくちゃ。完全記憶が聞いてあきれるわ~」
あっ、失踪した日から逆算するとそれぐらいか。日にちまでしっかり数えていたんだな。
「ははっ、お前には負けるな。あのジュースや宿の誘導はお前の差し金か?」
「フフッ、ご名答よ。ぐっすり寝れたみたいだね。ついでに迷宮のメッセージも私よ」
どうりで急に眠くなったわけだ。あのメッセージといい、俺はうまくここに誘導されたわけだ。
「ははっ、お前も奴を倒してここに来たんだな」
立花のステータスを見た。
神明・F・立花
レベル:555
種族:人間?
職業:大賢者
攻撃:550000
防御:550000
魔法攻撃:650000
魔法防御:650000
素早さ:600000
魔力:600000
固有スキル:大賢者の叡智(不完全)
異能:スタンボルト(C)、ハンドカッター(C)、物質硬化(B)、認識阻害(A)、熱線砲(AA)、溶解液(AA)、麒麟の蒼雷(S)、大再生(S)、雪の王(S)、王の書(S)
称号:神殺し、魔法神姫、クレセントの悪魔
これが立花のステータスか、まぁ知ってたけどチートだ。ちなみに前世も共に戦った仲間であった。
「そうよ、あなたは色々と知りたいことがあるでしょ?まずそれを教えるわ」
立花は今までの経緯を説明した。
「私はあなたが完全記憶をこちらに来る前から発現していたように、私も王の書を発現していたわ」
王の書は宇宙のルールや魔法等、位置情報等の様々な知識を直接頭に教える異能、いわばガイドブックであり攻略本のようなものだ。そこで立花は魔法を習得し、そこから前世の記憶を発現、この世界へと飛んだ。この世界へ飛べたのはファーガス王国が当時俺達を呼ぶために実験をしていた事により、発生した空間の亀裂の調査をしていたら吸い込まれてしまったらしい。こっちに飛ばされた立花は迷宮を目指した。
前世の時に受け継いだ魔神と同等の力、創生魔法エデンの力を駆使してクレセントを倒し、一月半前ぐらいまでは地下の最下層に篭っていたらしい。初めて攻略したものにのみ与えられる、一度だけ指定した相手と会う方法を教えてくれるというクリスタルの力で一年以上ここにいれば来るというのがわかり、迷宮に篭っていたという。
あのクリスタルそんな力があったんだな~
「そういえば俺達お互いに裸のままなのだが……」
立花のおっぱいがもろ見えるし、下半身の方にも目が行きそうになるし、なんというか俺の下半身もヤバい、今にも欲情しそうだ。
「フフッ、久しぶりに再会した夫の為にサービスをしているのよ。別に欲情して我慢できないならそれを受け止めてあげるわ」
「へぇっ?夫?」
何の話だ?前世でも二人でどこかに出かけたりした記憶はうっすらあるが……
「ところで周平、前世の記憶を少しは戻っているのかしら?」
「多少はな……お前と前世で仲間だったとこまでは思い出した」
すると立花は納得しない顔で俺を睨み付ける。
「言っておくけど前世での私と周平は夫婦よ!だから私はこれからもその関係をあなたに押し付けるつもりだけどいいかしら?」
なんじゃその設定?
確かによく二人でいたっぽいけどまさかの俺既婚者かよ!
つまり押し付けるというのはいきなり夫婦になるのか?
まぁ立花とならやぶさかではないが……
「いきなり夫婦って言ってもな……確かに俺はあの時立花に告白しようとしてたけどさ……だから恋人になるとかは嬉しすぎなんだけど……」
すると立花は顔を赤らめて嬉しそうな顔をする。
「フフッ、嬉しいこと言ってくれるわね。そうね……転生してから結婚はしてないから、結婚を約束した恋人ってことで手をうってあげていいわ。実感湧かないかもだけど、記憶が戻ってくればその夫婦ってのにも実感湧いてくるだろうから」
そうか、立花は俺よりも記憶がしっかりあるから、お互いの認識にかなり差があるんだな。
「だったらそれでいいよ。俺もう立花と離れる気はないし」
だがその言葉に立花はまだ納得していない様子だ。
「ちゃんと言葉にしてちょうだい周平」
「えっ?」
「言葉よ言葉!」
俺の反応の鈍さにまたもムッとしているようだが言葉とは?
「まったくあなたは……」
固まった俺を見て立花はため息をつく。
「だからちゃんと私に告白しなさい。あなたは記憶がそんなに戻ってるわけじゃないんだから」
なるほどそういうことか……だが今の俺にはハードルが高いな……なんというか中学生の時俺はなかなか告白できなかったしこんな不意を突かれた感じで言うのはなおさらだ。だが言わなければ言うまで納得しないのも目に見えているな……
「なんか恥ずかしいな~わかったよ……お前のことが大好きで愛してやまないから関係をまた結んでくれ」
その言葉に立花は満足したのかまたも抱きつき顔と顔を近づける。
「ありがとう、ちゃんと関係をまた結んでくれっていう言葉選びも悪くないわ。それとずっとまたせてごめんね……」
「ああ、でも今は目の前にいる……共に神を名乗るあいつらを殺そう」
俺も立花も同じ二十柱の一角で、前世の時は神を名乗る奴らの殲滅をしていた。
「そうね、一緒にあの時の続きをしましょう」
俺の中で空っぽになっていた何かが埋まった瞬間だった。転生してから再びこうなることをずっと望んでいた気がするし、この転生と再会もあらかじめ仕組まれたことであると確信していた。あいつらが保険を打たないわけがないからだ。
立花と唇を交わしあの時まであったつながりと温もりを取り戻したのだ。
◇
再開し再びカップルとなった後立花は自身の知り得る情報を俺に伝えた。おかげで今まで思い出していた断片的な記憶一つ一つをつなげることができた。このペースでいけば俺の記憶が完全になるのもそう遠くはないだろう。
「わかっていると思うけど私達の力はまだ完全じゃないわ。私のエデンは四つに分かれていて私はまだ二つ目。周平の魔神は六つに分かれていて、そのうち三つを習得し、さらに迷宮で四つ目を手にしたわね。これらの力は欠片と適合し、最初に習得した者以外はその者が死なない限り習得不可になっているの。したがってそういった意味では残りの力の回収をそこまでいそぐ必要はないけど、この世界の偽神と万全の状態で戦う為には全部回収する必要があるわ」
「問題はどこにあるかだな」
迷宮にあったということは他の迷宮が怪しいだろうな。
「おそらく他の迷宮にも私やあなたの力の一部が眠ってるはずよ」
前世の時回収し損ねていた残りを完全に回収し、力を取り戻せばあの時果たせなかったことも……
「それで今後はどうしたい?」
今色々聞き考えていたがまずは残りの力の回収だろうな。
「とりあえず次の迷宮の攻略として、ファラリス連邦のあるレガリア大陸のレガリアの大迷宮だな。そこには別のクラスのやつが召喚されているんだ」
残りの力もささっと回収して力を完全にすべきだろう。レガリアの大迷宮に俺の力の一部があるかはわからんが、どうせ攻略するのは確定事項だし陣との再会も兼ねて一石二鳥だな。
「そういえば何人ぐらい召喚されているのかしら?」
「ファーガス王国には零明高校二年一組担任含めて三十三人。ファラリス連邦は二年二組担任含め三十三人召喚されているはずだ」
「二組分それぞれ別の大陸で召喚されているのね。ちなみに一組はいいの?あなたのクラスよね?」
立花にそれを言われると複雑な表情になる……まぁ軽く話しておくか。
自分が一組でハブられていたことやその原因なんかをかるーく話した。
「よし殺しに行きましょう」
「ちょっとまて……」
「なんでかしら?あなたの妻なのだから報復の権利はあるわ」
立花は満面の笑みをうかべて言う。本気の目だ……まぁこうなるのは予想通りだが。
「まぁまぁ今は極力相手にしたくないんだ。殺そうとした二人に対してはいずれ何かしろするつもりだが、今生きているのがバレてさらに神の敵なんてわかったら色々面倒だろ?それに月島や杉原には世話になったんだ。だから二人のせいでハブられたのはむしろ歓迎だったし」
立花が介入すれば生かさず殺さず相手を必ず屈服させるだろう。もしそんなことされたら後で色々厄介になること間違いない。
「納得いかないわね。別にその月島さんや杉原さんに世話になったのは別にいいわ。周平と恋仲だったわけでもないし……問題はしっかりやられたらやり返さないことよ」
「やり返すってそんなの今さらしてもあれだろ。クラスで外されたぐらいでほぼ九割近い人間に報復するのは流石に……」
俺を外したのは一部のクラスメイト達の意向であり、大人しめの奴らはその影響を受けているにすぎないからな。そういう意味じゃ嶋田や木幡は別に俺を外してはいなかった。クラスの主軸ではあるが、あいつらは二人行動がメインだし、俺を外したのは橋本達のグループだ。嶋田なんかは正義感強いし、カリスマがあって女子がみんな味方するから俺に話しかけたりしても橋本達も強くは言えないからな。
「違うわ周平、それはこの世界に来る前ではなくこの世界でされたことね。地球にいたころは月島さんや杉原さんと仲良くして妬まれてハブられたにも関わらず、力で屈服させないで受け身だった周平にも問題があるわ。でもこの世界でうけた仕打ちはしっかり何かしろの形で返すこと!屈辱を受け、死にかけたのだから当然よ、その二人なら殺すのが妥当だと私は思うけどね」
立花に強く力説され反論できない自分であった。
仕返しというか記憶が戻ってきてあいつらに色々興味がないんだよな~
ただ月島や杉原に何かあれば俺はあいつらを殺すかもだが。
「まぁ数人心配な奴がいるからいずれは再会する。その二人は殺しはしないが、別の形で仕返しをするし他の奴も何かしら考えておくよ」
立花はまだ少し納得いってなかったが無理やり丸め込んだ。
「わかったわ。それで二組には友達がいるのかしら?」
「ああ、親友とまではいくかわからんがいるよ。宗田陣という奴だが陣は俺の言葉を信じる。それに戦争になんざいかれる前に助けたい奴は拾っておきたいからな。月島や杉原の奪還はすぐには難しいが、団体行動を好まないあいつならすぐに持ってこれるし、あいつがいれば月島や杉原の奪還もしやすくなる」
宗田陣という男は必ず俺に味方する。
だから頼むぞ……勇者召喚とそのからくりに気づけば嫌でもお前は俺側につくはずだ。
「わかったわ。当面の目標はレガリア大陸ね」
俺の記憶が戻りかけな以上、かつての目的を果たすことに対して邪魔するものを撥ね退けるだろう。俺達二十柱はこの世界を変えてでも目的を果たさなければならない……それが俺達の宿命であり、この世界に住み着いた害虫どもが駆除されることは必然なのだ。
次はクラスメイトのお話です。
2019年3月12日修正