脱出
感想とか意見どんどん待ってます。
千層のボスを倒し千一層まで降りてきたが、各層のボスは一定時間たてば復活する。つまり俺がここに再び降りる場合またあいつと対峙するわけだ。まぁ当然戻る気などなく先に進むだけだがな。
「次は最後の層だが果たしてお宝が残っているかだな……」
過去にもしここまでたどり着く奴がいたらお宝はもうないと思っていい。自分と同じ二十柱はかつての仲間にいたし、そいつらが来ている可能性もなくはないからだ。
「封印の間か……」
入ると大きな音とともに何かが頭上に落ちてきた。上を見るとくす玉らしきものが割れていてそこには攻略おめでとうの文字がでていた。
「な、なんだ……くす玉か?」
おそらく迷宮に入って一番困惑しているだろう……だが人の気配があるわけではない。
「くす玉なんてこの世界の人間が作るわけがないよな?」
奥に進むと光を失ったクリスタルのようなモノを発見した。
「随分とでかいクリスタルだな~うん?何か書いてあるな」
輝きを失ったクリスタルには後から刻まれたと思われる文字が書いてあった。
「これは漢字を使った文か?」
不思議だがこの世界の言語は日本語と変わらず、使われてる文字は全てカタカナなのだ。
「どれどれ、えーここに到着したら奥の部屋の祭壇にあるものを回収すること。他のお宝はどっちでもいいわ。それを終えたら転移装置を使いなさい。行先はカポットの森だから、そのまま森を王都と逆方向に進みフェアーウィンの街へ。あなたの今後の道標がわかるかもか……」
誰かはわからないがこの漢字を使ったメッセージは地球人、もしくは地球を知っていて漢字を知る者でこの迷宮を突破できる力を持つ者か。
「今後の道標も決まってないしとりあえずそこを目指すしかないか……」
だがクラスメイトの事もあるからな……でも今俺が戻れば自由に動けなくなる可能性もあるからな。記憶の事もあるし今は暫く離れておくべきか。
部屋をくまなく探し、そこら辺に転がり落ちてるお宝を回収することにした。
「うん、これなら外出ても遊んで暮らしていけるぐらいの金にはなりそうだな」
あのメッセージを残してくれた人には感謝だな。財宝も後から来た人の為に残してくれたのかもしれん。もっとも俺は宝物庫の異能で全て回収できるから、後から来た人の為にお宝なんざ残さんがな。
「どうもこの部屋は少し前まで誰かが生活していた感じがするな」
埃なんかもあんまりないし、前にここに来た人は随分綺麗好きだったのかな。
「さて残りは一番奥の部屋だな」
奥の祭壇がある部屋へと足を運ぶ。祭壇の部屋は広いが祭壇以外何もなく不思議な空間だった。
「ここは広い割に随分と殺風景な部屋だな、お祈り部屋か?」
祭壇の前まで近づくと紅黒に禍々しく輝く結晶が置いてあり、その結晶は不気味な紋章が刻まれていた。
「こ、これは?」
記憶の引き出しが開く。俺はこれを知っている……最初にこれを見たのは前世での幼少期だ、俺はかつてこいつを取り込んだ。
「狂魔結晶か……何故こいつがここに……」
俺は前世でこいつを全て回収しようとしていた、魔神の一部である狂魔結晶。
「これは俺しか回収できん、前にここに来た奴も断念したんだろうな~」
狂魔結晶に手を触れ、体に取り込んだことで記憶がまた少し蘇りステータスも上昇した。
神山周平
レベル:700
種族:魔人族?
職業:魔神
攻撃:800000
防御:800000
魔法攻撃:800000
魔法防御:800000
素早さ:800000
魔力:800000
固有スキル:魔神の戒律(不完全状態)、
異能:アイスショット(C)、チャッカファイア(C)、粘着弾(B)、チャージショット(A)、天の糸(AA)、物質具現(AA)、不死鳥の橙炎(S)、完全記憶(S)、砂の王(S)宝物庫(S)
称号:神殺し、煉獄の王、クレセントの悪魔
またあがってしまった……インフレやばすぎだろ。
完全覚醒すればステータス百万超えは間違いなしだな。
「さて回収するもん回収したしちょっと休んだらここをでるか」
あのメッセージの主の言葉に従い、フェアーウインの街に行くわけだが、王都に一度戻るか迷っていた。俺が死んだと思っているだろうし、月島と杉原あたりには生存を伝えるべきだと思うが今の自分を見せてもな……
「ふふっ、化け物と非難を受けるかもしれんな」
ただこのメッセージの主と話がしたいという気持ちがでかいな。かつての仲間の手掛かりも知りたいし。
「とりあえずフェアーウィンの街に行くか……月島や杉原との涙の再会はもうちょい後だな」
一日休養した後、転移装置を使い迷宮を後にした。
◇
転移装置の移動先はメッセージ通り森の中だった。森の中といっても小さな遺跡みたいになっている場所だ。そして久しぶりの地上だからか改めて空気が新鮮でおいしい事を実感した。そこは地球と比較して良い部分でもある。
「さてその街だが、向こうに見える王都アスタルテと逆の方向へ進めばいいんだな」
力を取り戻した俺は周囲数キロの気配を感じることができる。
「あっちの方向にたくさんの気配を感じるな」
森を進むと魔物の気配も感じるがどれも脆弱だ。魔物を俺が通ろうとすると避けるように逃げていく。
「ははっ、流石は魔神だな。ちょっと走るか~」
◇
無尽蔵にある体力を消費し、全速力で走ること十分弱で街が見えてきた。
「ふぅ~いい汗かいたな」
走ればすぐだったな。さてこの街のどっかにあのメッセージを書いた奴がいるはずだが……
フェアーウィンの街は王都アスタルテの北側に位置し、北側からの王都に向かう旅人や、商人の休憩街になっている。王都アスタルテから東西南北それぞれこういった休憩街を一つ存在しており、出稼ぎ労働者は休憩街を拠点に王都で働くらしい。王都だと宿泊費なんかも高いからだろう。
「とりあえず腹減ったし飯でも食べるか~」
適当に店に入り飯を食べたが、やはり味の薄さは否めない。ただ久しぶりの人との会話が嬉しいのかテンションアゲアゲになった。迷宮ではずっと独り言を言っていて寂しかったからな。
「海の近くの街へ行けば塩が手に入るはずだ。塩があればマシになるはず……」
ぶつぶつ独り言を言っていると店員の一人が俺に話かけてくる。
「おい、あんた見ない顔だな」
「ああ、今日この街に来たんだ」
「そうかそうか、見た所旅人か?」
あ、そういえば俺の召喚された時の職業は旅人だったな。というか今思うと駆け出しの旅人って何だよって感じだな。
「ああ、北の方に行こうと思ってな」
「そうかそうか、ただ食べてるものが質素だな」
「今金欠でね」
お宝はあってもそんな金がないんですよね……換金できるまでは、迷宮攻略している時にたまに拾う事のできたお金でやりくりしないといけないからな。
「そうか、なら今日は俺のおごりで、飯一品とここを出てすぐのコマツヒカリという宿に行くといい……安くしてやるよ」
「本当か?」
こいつはラッキーだな。
「ああ、今日はお店も大盛況だしサービスだ」
「感謝するぜ」
旅人はこういう人に巡り合えるかどうか、運も大事だな。
「それじゃあ宿着いたらフレーモアの紹介といってくれ。宿はそこそこだし、この街の相場よりも安いからそこは心配せんでくれな」
追加で食事を注文し食べた後店を後にした。
「言われた通りサービスしときましたよ」
「フフッ、ありがとう。私も宿に向かうからそれじゃあね」
◇
宿へ入り店主の名前を出すと、本来の値段よりも安く泊まることができた。
「あの人にはいつかお礼をせんとな」
風呂はないのでシャワーを浴び、後はベッドに横たわる。
「さてこの後どうするかだな~」
妖精の国の初代妖精王は昔の仲間だし、妖精の国を目指すのもありかもしれないな。くつろいでいるとドアをノックする音が聞こえた。
「どうぞ」
入って来たのは宿の店員だ。
「フレーモア様からのサービスを渡すのを忘れていましたので、今お渡しに来ました」
店員が持ってきたのがキンキンに冷えたジュース瓶だ。
「サンキュー」
まったく、あのおっさんは……ありがたく貰うぜ。
「それではごゆっくり」
店員が出ていき俺はそのジュースを一気飲みする。
「うまいね~」
やはり果物は地球よりもレベルが高い。前世の時もたくさん食べた記憶があるが、まだ記憶が完全ではない。
「たしか凄くおいしい果物があったがあれはなんだったかな~」
完全記憶の異能があって一度記憶したことは忘れないはずだが、前世の記憶は思い出すまで駄目らしいな。
「あれ、なんか眠いな……疲れたのかな?眠くなってきたしそのまま寝るか……」
色々あったからな……ここにきて色々疲れがでたのだろう。
そのままベッドで眠りに落ちた。
そろそろクラスメイトださないとな…
10月22日タイトルの変更と大幅な改稿をしました。
2019年3月11日修正