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完全勝利

遅くなりました。


 「九兵衛さんそれに……立花まさか……」

 「ギャラントプルームに集結していたから呼んでおいたの」


 九兵衛さんの後ろにいるのは我が騎士団員にして四大戦姫フォースヴァルキリーが一人レダ・スパイラルとかつて俺や立花の通った魔法学校の同級生でそこでは第三席だった戦刀姫神代椿だ。

 どうやらレイチェル・アレクサンドラは来ていないらしい。


 「そうか……とんだサプライズだな……」


 どうやら俺との間に溝が出来ているようで少し話にくいな……レダさんは人生の大先輩でもあるからな。

 力は上でもどこか頭が上がらない。


 「よっ、久しぶりだな」


 無理に平常を装うがレダさんはそんな俺を速攻で見抜く。


 「ふふっ、久しぶりね周平。気まずい時頭を掻きながら無理やり笑顔を作るのは変わってないわね~」


 流石はレダさんか……俺の癖なんかはしっかり忘れず覚えているようだな。


 「敵わんな~椿もしばらくだな」

 「そうだね~周ちゃんも元気そうで何よりだよ」


 俺に不信感を抱いていると聞いているだけに少し気まずい感じがする。


 「あ、ああ……二人も元気そうでなりよりだ。レイチェルは待機か?」

 「ええ、九十九とロードリオンと一緒に向こうで待機よ」


 ということは今この城に騎士団メンバーは八人集結している感じだな。

 レダさんは俺に近づくと俺の顔に触れ目と目を合わせる。


 「ロードリオンが夢の中で彼と話して何があったかを聞いたというのを聞いたわ、でも記憶が戻ったあなたから直接聞くまで何があったかは聞いてないわ……」

 「ああ、記憶が戻ったら俺の口から直接話すよ。それまで待っててくれるか?」

 「ええ、大事な仲間だもの~」


 レダさんは微笑む、よかった……三人の不信感を解くのは今後の障害の一つだったがクリア出来そうだな。


 「周ちゃん良かったね~ロードリオン様に感謝しないと」

 「ああ、後で礼を言っとくさ」


 これで十二人集結した、後はあの人を残すだけだ。


 「良かった良かった~そっちは解決したし今度はこっちだね~」


 九兵衛さんは王様の前まで行く。


 「これはこれはファーガス王、私の名前は高天原九兵衛。冒険者ギルドの総長をやっています」

 「冒険者ギルドの総長だと……」


 九兵衛さんは不敵な笑みを見せるのに対し国王は顔をさらに青ざめる。

 そうか!だから立花は九兵衛さんを呼び寄せたんだ。


 「失礼ながら一部始終を見させてもらいましたよ~」

 「そ、それがどうしたと言うのだ!」

 「待て!」


 国王の後ろにいる大臣が言うと国王がそれを制止する。


 「どうも私のギルドの者があなたがたを助けたのにその助けた私の部下に襲い掛かるような暴挙をしたようだがどういうことか説明して欲しいですな~」

 「そ、それは……」

 「今ここにいるものはみな私と旧い仲でギルドでも要職についてるのですがね~」


 九兵衛さんはニヤニヤした顔を崩さず国王に言葉攻めをする。


 「それでこの落し前はどうつけさせてくれるのですかな?」

 「ウッ……」


 もし冒険者ギルドを怒らせればこの国では大きな不利益を被ることになる、冒険者ギルドに委託していることも多々ありそれがなくなればちょっとした混乱が起きるだろう。

 それぐらい冒険者ギルドの影響力は高いのだ。


 「騒ぎの発端は魔王軍の襲撃、だが私の部下を襲った原因はそこで縄で縛られている男にあるようだね~」

 「そうだな、そいつが犯罪を犯したのを摘発して裁きを要求したら俺達は襲われたな~」

 「私達の力で無力化出来たけどもしもっと下のランクの者を派遣してたら……想像したくないわね……」


 俺と立花で更に煽る。

 もしあのままクラスメイトが襲い掛かってきたのを無力化出来ず死傷者をこちらにだせばもっと大惨事になっていただろう。

 九兵衛さんが本気になればこんな国簡単に滅ぼせるだろうしな。


 「なるほどね~君達を派遣して良かった……もし死傷者が出てればこの国とギルドの関係を見直す必要があったからね~」

 「そ、そうですな……ハハハッ」


 国王は苦笑いだ。


 「それで事の発端になったその男は王子らしいね~」


 九兵衛さんがモーストン王子の方を見る。


 「待ってください……息子の不祥事は私の責任です……どうか恩情を……」

 「ははっ、わかってるって流石に死刑とかは可愛そうだからね~そうだね……国外追放と王位継承権の完全剥奪が妥当だね~」


 九兵衛さんは俺の顔を一瞬見てニヤける。

 これこそが俺の狙い、これが成されればサラが女王になる為の一番の壁を突破出来るからだ。


 「ま、待ってくれ……それではこの国が……それに完全剥奪とは?」

 「この国が?呪術悪用するような奴に国を任せる方がよっぽど危険な行為だと思わないかい?そうでもしないとタピット騎士団長殿やその他の兵士が納得しない」

 「そうですね、そこの御仁のおっしゃる通り私はこの国の為に心を鬼にして王子を反逆者として捕らえました。もし王子がこの先王となったとしても私達騎士団は心の底から仕えることは出来ないですし反発も起こるでしょう」


 この国の主力たる王国騎士団から不信感を買うことになった以上もはやモーストンは王になどなれん、 そしてギルドにも牙を向いたことも加味してこの勝負は俺達の完全勝利だ。


 「さぁ国王陛下、早くここで王子に判決を言い渡してください。その判決次第で俺達の関係がどうなるかが決まります」


 九兵衛さんが追い討ちをかけるように攻める。

 国王は観念したかのように告げる。


 「モーストンは反逆罪により国外追放と王位継承権の完全剥奪とする……」


 力無い声で告げると王子はその場で肩をがっくり落として崩れ落ちる。

 国王の恩情を期待していたのが半分諦めていたのが半分といったところかしつこく弁解するつもりはないようだ。


 「ご決断ありがとう、陛下のこの判断で我々ギルドとの関係は守られた。今回私の部下達を襲ったことは不問にするね」


 九兵衛さんは国王の肩を軽く叩く、今更だが九兵衛さんの態度見てると国王の威厳がクソもないな。


 「ちゃんとした決断を下してくれたし俺達を襲った件は不問にするよ」

 「陛下ご決断ありがとうございます、このタピット今後とも王国の為に仕えてまいります!」

 「あっ、言い忘れてたけどそこの騎士団長に対して何かするならどうなるか覚えておいてね~俺達ギルドが介入するから」


 俺達に協力してくれたしそれぐらいの後ろ盾になるのは当然だろう。

 まぁ国王もタピットがいなくなれば王国が危ないことぐらいわかってるだろうから何もしないとは思うがな。


 「それとそいつらにつけた腕輪あれも立派な犯罪行為だ、すぐに外す事と何かあれば近隣諸国に言い触らす。いいな?」

 「わ、わかった……」

 「ふふふっ、いくつも貸しが出来たけどちゃんと私達への配慮があれば悪いようにはしないからしっかりと覚えておくことね」


 何かあればすぐにでも攻めて潰せるということはしっかり理解しただろう。

 魔王倒すために召喚したクラスメイト達を一瞬で無力化した俺達に喧嘩を売るような真似は今後はないと思うが……


 「こ、金輪際お前達には逆らわん!約束する!」


 最初からそういう態度でいればここまで火傷をすることはなかっただろうにな。


 「さて……お前達も大丈夫か?」


 ダウンしているクラスメイト達に声をかけた。


 「なんとかね……」


 嶋田が力無い声で言う。


 「こんな茶番に付き合わせて悪かったな、もう終わったよ」


 クラスメイト全員に回復魔法をかける。


 「優しいのね周平」

 「からかうなよ立花、俺が吸収した体力を還元してるだけだ」


 さてこれで王国が必要以上にこいつらを縛ることはないだろう、別にそこまでしてやる義理はないが二人のこともあるからな。


 「さてこれでお前らの魔大陸遠征に強制力はなくなったな」

 「どういうことだい?」

 「これで魔王討伐なんざ無理してやることはないだろ?誰だって命は惜しい、お前らじゃ死ぬだけだしな」


 この程度ではこの先生き残れない、死ぬ覚悟がなければ元の世界に帰るのを諦めた方がいい。


 「やろっ!諦めろといいたいのか?」


 菱田が怒鳴り声を上げる。


 「その程度でどうにか出来るなんて本気で思っているのか?首が飛んで血が飛び出たぐらいで腰を抜かすお前らにとても出来ると思えないな」

 「何だと!」

 「仮にお前は大丈夫でも他は違うだろ?」


 菱田は根性があるし負けず嫌いだからずっと足掻くだろうが全員がそこまでメンタルが強い訳ではない。


 「まぁお前はまだいいさ、そこで腰抜かしてた橋本なんかどうなんだおい?さんざんデカい口叩いてた割に大したことないな~」


 こいつにはよく当たられたな、せっかくだし当たっておく。


 「あの時の仕返しのつもりか神山?随分と偉そうじゃないか」

 「そんなことを言う元気があるならまだまだ平気そうだな~」


 橋本も強がってはいるが内心ではビビっているのかそれが顔にでているのがよくわかる。


 「何が狙いだ?わざわざ変装してまで俺達を鍛えて今度は上から見下ろしたりと随分と暇だな?」

 「なぁにちょっとしたサービスだよ、少しは強くなったしよかったじゃねぇか。さんざん馬鹿にして奴から受けたアドバイスで強くなった自分を振り返ってくれると嬉しいね~」


 少し橋本を煽るとあからさまな嫌悪感をこちらにだしてくる、何か言いたげだが返す言葉がないのだろう。


 「そうだよ、その顔が見たかったぞ~」


 悔しくても何も言えない橋本を見るのも悪くない、あの時のささやかな仕返しだ。


 「いつかその鼻を明かしてやるよ……」

 「へぇ~楽しみだね~」


 期待しないで待っておくか。

 そしてもう一つ俺はここで言う事がある、ちゃんとけりはつけておく必要があるからな。


 「そういえば迷宮で俺を殺そうとした奴がいたな?俺を殺す殺意はあるくせにそこの大臣の首が飛んだらみんなして腰を抜かすんだな?」

 

  するとクラスメイトがざわつき始める。

  その瞬間のクラスメイトの表情を見逃さずしっかり記憶する、特に怪しい奴は一人残らずだ。


 「殺すって何の事だい?」

 「何の事ってとぼけるのが下手だね~顔にしっかりでてるぞ」


  今嶋田の目がしっかり泳いでいたのを見逃さない。


 「なっ!」

 「しかし人を殺すのを躊躇しているそぶりを見せていたくせに俺を殺そうとするんだから本当恐れ入るね~」


 わざと煽るように言う、クラスメイト達の大半は俺と顔を合わせるのを避けている。


 「君は俺達に何を望んでいるんだい?復讐でもしたいのか?」

 「復讐?別にそんな大層なものじゃないさ、ただ犯人を特定したいだけ……ただそれだけだ」


 といっても今のでほぼ特定したがな、たぶん昔の学校での件も関わってきてるだろうしその件はまたおいおいだな。


 「ならそれが終わったらもういいかな?正直色々不愉快だよ……」


 何時もの嶋田とは違い怖い声と顔を見せる、こういう顔もしっかりできるんだなと感心。


 「不愉快で結構さ、自分の無力さを知ると余計に不愉快かもな~」


 わざと煽る、せっかく鍛えてやったんだしもう少し可能性を見せてくれないのと割に合わないからな。

 今後の計画もあるし俺を憎んで強くなってくれるなら喜んで憎まれ役になってやるさ。


 「黙れ!いきなり出てきてかき乱して……俺は君とは相容れない、俺は自分のやり方でクラスメイトを導き元の世界に帰る。君には絶対屈しない!」

 

 絶対に屈しないか……ならこの先それを見せてもらおうか……


 「私も嶋田君に協力するわ、あなたには負けない!」


 須貝が嶋田に続くと他のクラスメイト達も続く、これでもうしばらくは頑張ってくれるだろう。


あと2部かいたら三章終わりです。

クラスメイトとのやりとりが……もっと納得いくように書きたい……

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