タピットの決意
雪が凄いです(笑)
「来たか……」
タピット騎士団長はファーガス王国第二王子であるモーストン・W・ファーガスを捕えた状態で玉座にやって来た。
「タピットさん!」
「みんな無事のようだな……」
タピットは安堵の表情を見せる。
「そっちはしっかりやってくれたようですね」
「ああ……お前さんの言っていた通りだったよ、二週間ほど前にいきなり現れた時はビックリしたがな」
城を離れてラシュカリに行く前にタピットとは再会を果たしていた、その時点で第二王子の怪しい動きに気付いていた。
というのも第二王子からは公爵ほどではなかったが呪素を感じたからだ、そのことをタピットに伝えておいたのだ。
「俺もあの時まで自分の正体に気付いてませんでしたからね~」
「まさかエミリアさんと仲間とは夢にも思わなかったよ……」
あの時エミリアと一緒に現れ自分の正体を明かした時のタピットはお前は本当にあの神山周平かと何度も疑われたものだ。
「それであなたの答えをここで見せてもらいましょうか?」
エミリアはタピットを少し煽るように言う。
「ええ、さっき捕らえたモーストン王子の処罰を考えていました。それをここで申し上げたいと思います」
タピットは縄で縛ったモーストンを連れて国王達の元へ行く。
「タピットこれはどういうことじゃ!後ろに連れているのが誰だかわかっているのか!」
王様は激昂してタピットに怒鳴り付ける。
「はい、後ろで縛っているのはあなたの御子息であるモーストン王子です」
タピットは淡々と答える。
「貴様……何をしているかわかっているのか!」
「はい……では何故モーストン王子をこうして捕えているかお答えしましょう」
タピットは話始めた。
モーストンは言ってしまうと今回の魔族の襲撃とは関係ない、だがモーストン本人から感じた呪素が気になりシンに調査を依頼した。
結果モーストンは呪術の研究をしていることがわかり実際にその呪術を一部の人間に使用していたことがわかった。
普通の人間が呪術を使用するとかなりの負担がかかるので強力な術の使用こそなかったが本来魔族専用の術である呪術を使用するのはいくら王族であろうと立派な犯罪行為にあたる、そしてその呪術を教えたのは魔族であり魔王軍の手先と繋がっていると考えられるだろう。
「私はそれを聞いた時最初は耳を疑いました……まさか王子がと信じられませんでしたからね……ただそれを聞いた以上調べないわけにも行きませんでした……なので……」
「父上!タピットは無許可で私の部屋に入ってきたのです!無礼を働いたこの男に処罰を!」
モーストンは必死に国王に訴えかける、当然今後の為にもタピットの助け舟をする。
「でもそのお陰でお前さんの犯罪行為が明るみになった、タピットさんのファインプレイじゃないか?」
「何だ貴様?」
モーストンは俺を睨み付ける。
「では聞くがお前さんは呪術を使用していたらしいじゃないか?ここにいるタピットさんや他兵士達、そしてエミリアがそれを目撃している、まずはそこを話し合おうじゃないか」
「貴様私を誰だか知ってのことか?私は……」
必死に話をすり替えようとするモーストンを威圧する。
「呪術を使用したのかしていないのかとどうなんだと聞いていのがわからないのか?貴様が誰であろうと知ったこっちゃないんだよ!」
「ヒッ……それは……」
「どうなんだ!」
胸倉を掴んで脅しをかける。
「し、使用しました……魔族からその術式を教えてもらいました……」
「モーストン!」
国王が悲鳴を上げ周りの大臣達もザワザワする。
「そういうこった、つまりこいつは今呪術を使ったことを認めた。さぁどうする?」
「貴様……死んでいたと思ったらノコノコと現れて何が望みだ!」
「望みも何も今俺は大事なクラスメイトの一部が危険にさらされているのを知ってここに来たんだ、当然不安要素は取り除くに決まっているだろ?それと俺が助けに入らなかったら今頃どうなっていたか理解していてそれを言っているのか?」
国王を睨み付けながら強い口調で言う。
「くっ……それは……」
国王は口を紡ぐ。
「そして更にその共犯がいることもわかっている!シン!」
玉座の裏の扉からシンが出てくる。
「シン頼む」
「うむ」
シンは目を青く光らせると宰相であるアーノルド・レコンダイトの体が勝手に浮き始め
俺達のいる所に移動される。
シンの持つ異能の一つAAランクのサイコキネシスだ。
「これは一体……」
アーノルド何が起きたのか分からず目を右往左往させる。
「この男はそこにいる王子と共に呪術に関わっていたな」
「何を馬鹿なことを……私がそんなことをする訳が……」
その瞬間立花が王子に向かって雷を落とす。
「ぎゃぁぁぁぁ!」
「モーストン!貴様何のつもりだ?」
騒ぐ国王を無視してモーストンに問いかける。
「フフッ、あなた死にたい?それとも生きたい?」
「ヒッ……」
苦悶な表情のモーストンに囁くように問いかける。
「本当のことを言えばあなたの命は助けてもいいと思うけど嘘をつくようなら裁きが下される前にあなたの命を刈り取ってしまうかもしれないわ」
「そ、そんな……死にたくない……」
立花はモーストンに揺さぶりをかける、人間の弱い部分を突いて口を割らすのは常套手段だ。
「フフッ、なら簡単な事じゃない?ちなみに嘘をつけば容赦はしないわ……」
不敵な笑みを浮かべながらも殺気をむき出しにすると怯えながらタジタジとする、この男のメンタルは脆いようだ。
同じ姉弟でも虐げられて育ったサラと比べて少し甘やかされて育ったのだろう。
「あ、アーノルドは僕の共犯者です……私はとある魔族から聞いた呪術を二人で悪用していました……」
「お、王子!何でたらめをいってらっしゃるのですか?」
アーノルドが必死の剣幕で言う。
「もう終わりだよ……こ、こいつらに逆らえば……」
するとアーノルドは大きな声をあげてモーストンに襲いかかる。
「おのれ……もう少しの所で……」
アーノルドは血迷ったのかナイフを手にモーストンに襲い掛かる。
「王子!ここで死んでもらおうか!」
アーノルドのナイフがもう少しでモーストンに届きそうな所で手がピタリと止まる。
「ヒッ……」
首が消し飛んだアーノルドを見たモーストンは腰を抜かしてその場で崩れ落ちる。
エミリアの手から出た魔弾のようなものがアーノルドの首を消し飛ばしたのだ。
「余計なことをするからよ……そんなことしたらタピットの出した答えが聞けないわ」
エミリアは凍りついたような声を出し周りを黙らせ戦慄させる。
「まったくだな、タピットさん続きを」
「ちょっと待ってくれ、これは一体何をするつもりなんだ?」
静観していた嶋田が口を開く。
「ちょっとも何も見ての通りさ、タピットさん!」
タピットはモーストン王子を引っ張り国王の元に行く。
「国王様、私はファーガス王国騎士団長としてこの国への忠誠心は変わりません。しかし私が忠誠を誓っているのはこの王国です!」
「何!?」
タピットは淡々と答える。
タピットと接触した時にエミリアが告げたのは騎士団長を継承したタピットへの死刑宣告だ、召喚されたクラスメイト達に隷属の腕輪を付けたまま野放しにしていたからだ。
そこでエミリアは一つの提案を出した、それが今のこれだ。
「私のこの国への忠誠心は魔族と接触し呪術を使用したモーストン王子を許すことはできません。それはいずれこの国を破滅に導くでしょう」
「何が言いたいのじゃ……」
「モーストン王子を国王様自らこの場で裁いてもらいたい、もちろん国の法律に乗っ取った形で公正にです!」
タピットは真剣な眼差しで国王を見つめる。
「ほほう、つまりこの私に息子を裁けと申すのだな」
「ご無礼は承知の上ですがこれが私の正義です……」
すると国王はクスクスと笑い始めた。
「ハハハッ、そうか、これが飼い犬に手を噛まれるという事なのじゃな」
「国王様?」
「息子は裁くだと?ふざけるな!誰に向かって口を聞いている!」
国王は顔を真っ赤にして激昂する、まぁ無理もないが状況をわかっているのか言いたくなるな……
しかしタピットはエミリアとの契約を優先した、国に忠義を尽くすこの男今後のこの国に必要な人材である以上殺さなくて済んだことは大きい。
「殺せ!そこの余計な奴らも含めてな!」
「おいおい、それはギルドに対しての敵対行為か?それに誰が俺達をやるってんだ?」
「フフフッ、それはそこにいる勇者達さ!」
国王は自分の手に付けている腕輪に向かって怪しげな呪文を唱える。
「勇者につけていた腕輪は隷属の腕輪……そしてこの呪文は勇者を無理やり戦わせるだけでなく一時的に大きな力を付与するものだ!いけ勇者共こいつらを殺せ!」
「グッ……」
「体が……」
「止まれ……止まってくれ!」
クラスメイト達は一斉に動き出し俺達に襲いかかろうとする、予めそれを無効にするものを渡していた月島と美里は大丈夫なようだ。
「まったく物騒な術ね~なんとなく予想はついていたけど……」
「まぁそういうな立花」
「それでどうするのシュウ?」
「エナジードレインで一瞬で終わらせるさ」
魔神の能力であるエナジードレインの能力を発動し襲い掛かる奴らから体力を吸収する。
「なら襲ってきてもらおうじゃないか、やれるもんならやってみるんだな!」
元々虫の息に近い奴らを無理やり動かした所でたかだか知れている、弱っている分吸収しやすい上その無理やり動かしている分の体力を吸い取ってしまえば自ら攻撃する必要すらない。
「力が……抜ける?」
襲いかかろうとしたクラスメイト達は次々に倒れていく。
「なっ……」
国王が一瞬見せた笑みはすぐに苦悶な表情へと変わる。
「どうした?手駒はもういないのか?」
「そんなバカな……」
国王はその場で崩れ落ちる。
「フフッ、滑稽ね」
「愚かな奴だ……」
「これで奴にも相応の裁きを下せるね」
「隷属の腕輪を勇者に使用だなんて近隣諸国が知ればどうなるか……」
これでチェックメイトだ、隷属の腕輪を勇者に使用した所を何人もの人が目撃、そしてギルドへ喧嘩を売ったことを盾にすればこいつらは俺達の要求をのまざるを得なくなる。
「ま、まだだ……教団の精鋭が……」
国王がそう言いかけた時またも玉座への来客だ。
「そいつらなら全員殺したよ~」
現れたのはギルドの総長高天原九兵衛、そして久しい顔の二人が後ろにいた。
完結はまだ先の予定ですがみなさん温かい目でよろしくお願いします。




