真夜中の再会
月島と杉原をどうするか……
戦闘が終わり月島と美里の元に戻る。
「無事か?」
「何とかね、周平君の強さに脱帽したわ」
「これは現実なのって感じだよ~やっと再会出来たと思ったら絶対的な力を見せるあたり周平君らしいといえばらしいね」
二人とこうやってまた話するのはもっと後かと思ったんだがね……まぁ何にせよ本当の意味での感動的な再会だ。
「ははっ、色々あってな。あの時迷宮で前世の記憶と力が蘇ったからわざと別れたんだ」
「なんだ、心配して損したわ~というか先に私達に一言くれてもいいんじゃない?」
「というかシャーガーさんって周平君だったんだよね……」
月島と美里はジトメでこちらを見る。
「ああ、さっきサラっと自己紹介したもんな~お前達の無事を確かめたくてこっそり戻ってきてだな……」
「「ジー」」
二人の白い目が俺のメンタルをジワジワと削りに来る。
「ごめんなさい……」
「この貸しは大きいわね~」
「うん、私達こんなに心配したもんねー私なんてあの日城で大泣きしたんだから~」
グサッ……心に突き刺さる……
「すいません……」
「私と雪の涙は高いわよ!」
強くなって戻ってきても二人には頭があがらんな~
こういうやりとりも高校の時を思い出す。
「ははっ、そんな俺を脅迫せんでくれよ。それと失踪した幼なじみとも再会できたよ、こっちの世界に来てたみたいでさ」
立花がこちらに来る。
「フフフッ、ハンナ・ヒンドスタン改め神明・フォルモサ・立花よ。この姿で会うのは二回目だったわね」
「あの時の謎の女性は周平君の最愛の幼なじみだったってわけね」
「連れがお世話になったわねってのは周平君のことだったんだね~あの時は意味がわからなかったけど解決~」
後から立花から聞いたが街全体を石にして脅迫したらしいからなら、日本人の容姿をしているだけにずっと疑問だったはずだ。
「そんでもってまだ記憶が完全じゃないんだが前世で結婚してたから一応嫁だ」
その発言に二人は驚く。
「マジか!結婚とか知らないうちに進みすぎ~」
「そっか~既婚者じゃもうプロポーズできないね……」
二人とも少し残念な表情を見せる、ハーレムルートを折るヒロインじゃなきゃこの二人もな……
「しかもうちの立花は浮気とか二番目とかにマジで煩い奴でさ~」
「フフッ、当然よ。浮気なんていう背徳行為は万死に値するわ」
立花は俺にだきつく、笑いながらも立花の目は本気だ。
「見せつけてくれるね~すっかり尻に引かれちゃってる感じだね~」
「ほんとだね~周平君もっとしっかりしないとだよ!」
「あっ、はい……」
なんか俺の立場が……月島も美里も立花もだが俺と親しくなる奴は不思議と世話焼きが多い。
今自分の中で駄目人間疑惑が浮上した瞬間でもある。
「でも一緒に愛人立候補できなくて残念だね雪……」
「ほんと残念……」
二人は笑いながら冗談混じりにいう、俺が立花を忘れられなかったのを二人は知っているからか割り切るのも早い様だ。
二人が俺をどう思ったかはともかく俺はこの二人とは恋仲とよりも親友といった感じの認識だ、月島とは昔色々あったからな。
「ふふっ、旦那が愛人立候補されるぐらいモテモテで嬉しいわ~」
「立花さん、目が怖いよ……というか腕痛いっす!」
立花は俺の腕を強く握ってくる、そんなやり取りをニヤニヤと笑う二人はささやかな仕返しをしにきてるのかもしれない。
「ふふっ、二人と周平の関係は良くわかったからいいわ。ある意味私じゃ築けない物を築いてて嫉妬しちゃうけどそれは私には無理だから何も言わないわ」
何やら意味不明なことを言っているな。
「流石は周平君のお嫁さんだね、改めてよろしく!」
「そうだね、逆に言えば立花さんがいたから私達と周平君はこういう関係何だろうね」
二人は立花の言ったことの意味を理解しているようだ、はてどういう意味だ?
「二人ともよろしくね!お互いに名前で呼びましょうか、敬語もやめましょう」
「そうだね~」
立花はそれぞれ二人と握手を交わす、立花の嫉妬深さからこういう対面はリスクがあったがそれも杞憂に終わりそうだ。
「そういえば玲奈先生は?ちゃんと生存報告して説教を受けたいんだが……」
あの時ああいう形で別れることになってしまったからな……
「玲奈先生は部屋で寝てるからちゃんと後で言ってね」
「了解~」
きっとそのことでクラスメイト達は泣きながら説教喰らうだろうな。
「周平君夜ばいは駄目だからちゃんと朝になってからだからね!」
「その心配は杞憂に終わるよ、というかいろんな意味で怖くて出来ないわ!」
玲奈先生の説教、立花の嫉妬、二人の白い目。
この三つで俺は心身共にボロボロになることが目に見えているからな。
「おおぃ!そろそろこの縄を解いてくれ!」
玉座の方から声が聞こえてくる。
「そういえば忘れてたな」
王様達の方へ行こうとすると宰相のアーノルド・レコンダイトが人を下に見るような発言をしてくる。
「早くしろ!王に失礼ないようにやらないとは何事だ!」
それを聞くと実がいち早く近づき喚き声を上げたアーノルドを蹴り飛ばす。
「ぐはっ!」
「王様に失礼だと?わざわざ助けてやってそれは何だ!それが助けてもらった人への態度か?」
実は明らかな敵対心を見せ殺意を剥き出しに見せる。
「貴様……というかその顔まさか……地下の?」
アーノルドも含め実がかつて城で捕らえられていた勇者であることを気付いた様だ。
「百年前からこの国は本当に変わらない……周平さんこいつら殺しちゃ駄目なんですか?」
「ヒッ……」
愛刀を手に王様達に向ける。
「実落ち着け、そいつらはそのままにしとけばいいから」
「そうよ、そんなゴミ共の言葉を聞いてたらいちいちストレスよ!」
玉座に入ってきたエミリアが実を宥める。
「あの女は……」
「あの時の……」
クラスメイト達は迷宮での苦い記憶を思い出し顔を顰めた。
「よっ、そっちは終わったのか?」
「ええ、思ったよりスムーズにいったわ」
エミリアには別の仕事を任せていたがどうやら上手くいったようだ、あっちの方が無事済んだとなれば時期もう一つの余興も見れる。
「あの時の魔導士も周平君の仲間だったんだね~」
「なんか色々納得だね~」
クラスメイト達が顔を顰める中二人だけ変わらない感じなのは俺の知り合いだとわかったからだろうか。
「ふふっ、迷宮の時以来ね。みんなあの時よりは見違えたようね~」
「俺達が指導していたから当然さ!」
なんだかんで一月ぐらいは指導していたからな。
「流石シュウね、それであのゴミ共はいつ殺すのかしら?」
「お前もか……取るに足らん奴らだしいずれは大変な目に合うだろうから放っておけよ」
サラのこともあるから流石にここで殺すわけにもいかんだろう。
「了解~シュウがそういうなら何もしないわ」
「嫌だけどこっちも今は我慢しとくよ」
実は刀をしまい殺気を解く、好戦的な奴が多いからまとめるのは大変だ。
そんな中置いてきぼりにされた嶋田が俺達の世界を壊すように横から口を割って話しかけて来る。
「ちょっと待ってくれ?二人は何でそんな風に神山と会話できるんだ?」
嶋田の後に木幡が続く。
「そうだ、そこにいるのは神山だが人殺しだ。俺達が束になって勝てないような相手を躊躇なく虫を殺すように殺した、少しは警戒すべきだ」
木幡の言葉に周りの生徒も頷く。
まぁ無理もない、俺があいつらの立場なら同じことを言うだろう。
だが二人は何で?と言った感じの表情を浮かべる。
「神山君に一つ聞きたいんだけど君は私達の味方、それとも敵?」
須貝が質問をしてくる。
「どっちでもないな、だが大半はぶっちゃけ死んでも気にならんよ」
俺は本心を包み隠さず言った、元々このクラスに仲間意識はないからな。
「なら君は俺達の仲間にはなれないな、今回のことは感謝するが君を迎え入れることはできない」
嶋田のこの発言に苦笑してしまう。
「くっくっくっ、そういうお前も何か勘違いしてないか?」
この凄まじい勘違いはしっかり正してやらんとだ。
「どういうことだい?」
「俺が仲間に戻るために戻ると思うか?そもそも俺は今お前らが苦戦した魔族の頂点たる現魔王ですら殺すのに数分とかからない、それぐらい力の差がある」
俺はそもそもザラックを粛正する目的がありその過程でこいつらを噛ましたに過ぎない。
あのタイミングで助けるように入ったのも演出の一つだ。
「なるほど、馴れ合うつもりはなく君は君で魔王を倒すということかい?」
こいつの頭は少しお花畑になっているようだな。
「いや、魔族と人族の間で起こるであろう戦争を邪魔するつもりもない」
「どういうことだい?」
「お前らはお前らで魔王と戦争してろということさ、俺はそれを邪魔するつもりもないし助けるつもりもない」
その発言にあたりはざわつき須貝が口を開く。
「君にとって私達はどうでもいいというこなんだね?」
須貝は少し残念そうな顔で言う。
クラスメイトの輪を重んじていた須貝だが俺に手をさしのべたことはなかったな……まぁその理由も何となく推測がつくが……
「お前さんよくそんなこと言えたもんだな……まぁ俺はクラスで外されていたし言ってしまうとそうかもな。というかお前らの望みを叶えてあげることができないからだ」
「周平君どういうこと?」
美里が俺に質問する。
「まぁ俺も月島や美里や先生は大事だからな、借りもあるし手を貸してやりたいが俺の立場上ある意味お前らは俺達の敵ということになる、色々ある訳だかまだ介入しないのが一番いいのさ」
俺達の目的は偽神共の殲滅、つまりこいつらを召喚した偽神共は倒すべき敵に当たるからだ。
「つまり私達の戦いには参加できないと」
「そういうことだ、お前らはたぶん元の世界に戻る為に戦っていると思うが現時点で俺はお前らを元の世界に帰してやることはできないからな。それが望みを叶えてあげられないってことだな」
地球への帰還方法はまだまだ確立出来てないのが現状だ、仮に偽神共の殲滅が帰還方法だとしてもそれが成されるのはまだまだ先になる。
「わかった、君と敵対しないためにも僕達は僕達、君は君ということだね」
嶋田のこの発言は随分と簡単に引き下がっているがこれは俺という存在が邪魔である事の裏返しだと容易に推測できる。
「物分かりがいいな、あと一応言っておくがもし俺達の邪魔をするなら排除するからそこは覚えておくことだ……」
あえて殺気を放ち威圧しながら言う。
もし俺達に立ちはだかるようなら容赦はしない、全力で叩き潰す……そのことを理解してもらう為だ。
「さてそろそろもう一つの余興だな」
すると閉ざされていた扉が開きタピット騎士団長達精鋭とそれらに捕らえられた第二王子の姿がそこにあった。
主人公とクラスメイトのやり取りは次話も続きます。