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収容所へ

何とか日をまたぐ前にアップ(笑)

 屋敷を上へ上へと進んだ先の大きな扉を開く、ジュエラーの話ではここがダイオライト公爵の部屋だ。


 「いくぞ」


 扉を開けるとそこにいるのは二つの黒い角と大きな翼を持つ魔族がいた。

 年齢は魔族なのでわからないが人間で言えばおじさんといったところだろう。


 「貴様公爵ではないな?」

 「いかにも……私はクロコルージュ、先代魔王アルサイド様の片腕で今はこの家で雇われている」


 先代魔王の片腕ね……まぁ確かにステータスを見ると結構高いな。


 クロコルージュ・クライド

レベル:300

種族:魔族

職業:混色魔法使い(マスター級)

攻撃:90000

防御:90000

魔法攻撃:100000

魔法防御:100000

素早さ:100000

魔力:100000

固有スキル:魔黒眼

称号:魔王の片腕、漆黒の魔星ダークスター


 基本的に悪魔族は異能を持たず代わりに魔眼という恩恵がある。

 シンの奴はもちろん両方持っているがな。


 「なるほど、なんでそんな大層なご身分のあんたがこんな屋敷で仕えてるのか非常に興味深いところだね~」

 「今の魔王は私が邪魔だったみたいでな、命の危険を感じてオルメタを後にして各地を放浪していたら先代のダイオライト公爵に拾われ今に至るというわけさ」


 公爵の代わりにこの男がここにいるということはつまりこいつはおとりになったということだろう。


 「悪いがお前に構っている暇はなくてな、公爵はどこだ?」

 「それを知りたくば私を倒すことだな、屋上にて待つ」


 クロコルージュは転移魔法を使用しその場から離れた。


 「ちっ……立花はここにいてくれ。奴は俺がなんとかする」

 「わかったわ、私はこの部屋を調べておくわ」


 部屋をでて屋上へと向かった。


 

 ◇



 「来てやったぜ~」


 屋上に行くと夜を僅かに照らす月の光の下、冷たい潮風に揺られたクロコルージュとが立っていた。

 あれでポーズを変えて月でも見てればかなり様になったのではと考えてしまう。

 屋上と言っても屋根の上だが設計者の考えなのか屋根の上の大半は平らになっており夜の空を眺めて黄昏ることができたり机や椅子をおいてランチやディナーをとることができるだろう。

 

 「よく来たな」

 「そりゃまぁね、ととっと片付けて居場所を吐いてもらわないとだからな」

 「ふっ、そう慌てるな。まずは楽しもうか!」


 クロコルージュが空を飛び上がり長い呪文を唱えた、それは俺や立花がよく使用するあの魔法だ。


 「ヴァイスシュバルツ!」


 黒と白の無数の弾丸が襲い掛かる、思えば転生してからこれを相手に使われたのは初めてである。


 「それを使えるのは強者の証だな……マスターシールド!」

 

 物理魔法攻撃共に高い防御を誇るシールドで発生させたシールドにダメージを受けても使用者の魔力が許す限りそれを修復再生できる第八位階魔法だ。


 「さすがはあの結界を破壊するほどの猛者ということか……ならこれならどうだ!」


 またも長い呪文を唱える、さすがは先代魔王の片腕だけあって魔法もかなりレベルの高い領域に達している。


 「ダークオブプロスペリティ!」


 対象を闇で包み込み、包み込んだ内側に向かって無数の闇の砲撃を放つ第八位階魔法だ。


 「なるほど、マスターシールドの内側から闇を侵食させたか……」

 「これならガードも避けることもできまい、そのシールドが仇となったな」


 包み込まれた闇の中無数の砲撃が俺を襲う。


 「ちっ……なら砲撃を全て吸収すればいいだけのことさ」


 宝物庫より聖剣カラドボルグとエクスカリバーを取り出す。


 「二刀流魔法剣アスピル乱れ斬り!」

 アスピルとは魔法吸収呪文でその魔法を剣に付与する。

 四方八方から飛んでくる闇の砲撃を神速で反応し斬ることでそれらを吸収する、やがて砲撃が止み闇が晴れるとクロコルージュは俺が無傷な事に唖然とする。


 「ば、ばかな……」

 「今度はこっちの番だな」


 縮地を使い空を飛ぶクロコルージュの元まで行き頭に目がけてかかと落しをするとクロコルージュはそれに反応し腕を前にしてガードする。


 「わざと見える速度で蹴ったのはわかったかな?」

 「何!」

 「体技:鋼皮」


 皮膚を固くする体技の一つだ。


 「おらぁぁぁぁ!」

 「ぐっ……」


 クロコルージュはかかと落しの威力に耐えきれず下に落とされる。


 「これで終いだなイノセントブレイク!」

 「ぐあぁぁぁぁ!」


 黒い光の斬撃が屋上に叩きつけられたクロコルージュに直撃する。

 これは攻撃を受けた者に様々な状態異常を引き起こす第九位階魔法だ。


 「これで終いだな」


 クロコルージュはやられたもののどこか満足気な表情でこちらを見ている。


 「ふっ、見事だ……勝てないのはわかっていたがこれほどとは……」


 第八位階魔法を唱えることができるものは紛れもなく強者でありそれを誇っていいレベルだ、だが相手があまりにも悪い。


 「上には上がいるものさ、さぁ居場所を教えてもらおうか?」

 「公爵なら収容所に向かったさ」

 「随分あっさり教えるんだな」


 もしもっと足止めならそれすらも言わないはずだ。


 「約束だからな、それに今対峙して力の差は理解したつもりだ。楽しませてもらったし私はこれにて閉幕だ、さぁ止めを」

 

 もう既に覚悟は決めてある感じだな。

 この男殺すには惜しい人材かもしれないな……ここまで熟練した戦士だ。


 「ならその命は俺の所有だな、この一件が終わるまでそこで大人しく月を眺めているといいさ」


 もしこの男がしつこく食い下がり命乞いをしたら容赦なく奪っていただろう。

 だがこの男は利用価値があるし味方に引き入れることもできるだろうと判断した。


 「ふっ、私はもう先代から受けた恩は返した。もしお前が私を雇うならこの件を終わらせることだ、早く収容所に向かえ」

 

 立花の元に戻った。

 

 「この一件、我々の負けは確定した……だが勝敗を明確に決めた時お前達が勝っているとは限らない……この街の闇はそれほどまでに深い……」



 ◇



 「収容所ね、ここからでて結構離れているわね」

 「ダイオライト公爵はもう既にいなかったってことか?」

 「いいえ、この部屋を調べていたら転移装置で移動した形跡があったわ。残念ながらその転移魔方陣は消されているけどね……」


 ここからだと立花のゲートを使っても少し時間がかかるな……


 「早いとこ向かおうか、敵がこの部屋の前まで集まってきてやがるな」

 「そうね、早く向かいましょう」


 ゲートで屋敷の外に脱出し、収容所へと向かう。

 一度街まで戻ったので再び魔族の群れが襲い掛かる。


 「雑魚が……デザートハリケーン!」


 砂の竜巻を起こし吹き飛ばす。


 「まったく……蒼雷砲!」


 邪魔者を蹴散らし収容所を目指す、どうやら収容所に来るのを見越して警備を厳重にしているようだ。


 「魔族は特性上人間よりも夜に強い種族だったな」

 「ええ、先の大戦時は魔族の大半が味方だったからだいたい夜に奇襲していたのを思い出したわ」


 人間よりも数の少ない魔族を率いて戦争を優勢に持っていく為に夜の奇襲をバンバン多用した。


 「夜に魔族と戦っちゃいけないってのは教訓ね」

 「ああ、しっかり的確に狙って来てやがるからな。俺達は別に問題ないがあいつらにはしっかり教えとかないといけないな」


 月島達はきっと苦戦するに違いない……ちゃなんと教えておかないとな。


 「あら、周平ったら優しいのね」

 「死んでほしくない奴もいるからな」


 クロコルージュクラスの奴を相手にするとなるとまだまだ遠征は早いのかもしれないな、幹部クラスは第八位階以上の魔法を使用してくる。

 クロコルージュのヴァイスシュバルツを喰らったら今のあいつらには耐えられないだろう。


 「ふふっ、彼等の大半はあなたの望むようなものを見せてくれるかわからないわよ」

 「それはわからんぞ、もしかしたら俺達の想像を超えるものを見せてくれるかもしれない」


 人にはみな無限の可能性を持っている、そこら辺にいる何の能力も持たないような人間でも何かしらの才能を持っていると俺は確信している。

 


 ◇



 邪魔する魔族共を排除しつつ収容所の目の前まで辿りつき中に入る。


 「やっと着いたわね……」


 公爵の屋敷を出てからここに着くまで三十分ぐらいかかってしまった。

  

 「邪魔者が多かったからな……」

 「早いとこ済ませましょう」


 収容所の中に入るとまず異臭が俺達を襲う。


 「この匂いは……」

 「やはり遅かったか……」


 立花は悔しそうな表情を浮かべる。


 「この匂いからして一日二日前の話じゃないと思うぜ、おそらくもっと前からだ」

 「そうね……とりあえず公爵の元に向かいましょう」


 さらに先へ進むと想像していた通りの光景が襲った。


 「うっ……」


 牢屋の中には人間の男性と思われる死体が転がっており死体にネズミとハエがたかっっていた。


 「何の恨みがあってこんなことを……」


 この死体全員はみな餓死が原因だ……この街の男性陣に何の恨みがあったというのだ。


 「わからないわ……ただ……」


 立花は手と手を合わせて合掌する。


 「私をここまで不快にさせるなんてほんといい度胸しているわね……」

 

 立花は怒りを顕わにする、俺達も傍から見れば人殺しだ。

 ただこういう餓死をさせるようなむごいことはしない、何より自分の街の領民をこんな目に合わすような領主に俺も憤りを感じる。


 「先に進もうか……」

 

 収容所を一通り巡回するとたくさんの死体が転がっており数は数えきれないほどである。

 檻の前にいる死体の大半が苦悶の表情を浮かべてこっちを見ていて心が痛む、きっとあの死体たちは最後まで食べ物を懇願していたんだと思う。


 「街の女どもはなんで気づかないんだ?」

 「アッシュの幻想に囚われているところね、おそらく街全体に魔法がかかっているんだと思うわ」


 この街全体に長期展開させるなんて大した術式だよ……考案した奴は素直に称賛に値する。


 「街全体に破魔軸を展開するか?」

 「できなくはないけどいきなり準備もなしには街全体にはキツイわ……それに魔族がそれに気づき街の女性たちに手をかけたら元も子もないわ」


 街がこんなになっているとは来た時は想像もできなかったわけで他にも同じような街がないことを祈るばかりだ。


 「それもそうだな……大人しくそいつを見つけださないとだが本当にここにいるのか?」

 

 収容所を一通り巡回したが公爵の気配はない、気配探知を無効にする魔法を自身に展開しているのかもしれない。


 「収容所にはいない……いやそんなはずは……そうか!」


 どうやら閃いたようだ。


 「どうした?」

 「ふふっ、地下までくまなく探していないってならしょうがないわ」


 立花が不気味に笑う。


 「この収容所の扉のないスペースのどこかが空洞になっていてそこで術式を展開していると仮定したわ」

 「立花?」

 「となればやることは一つよ……」


 立花は魔法を唱えた。


 「おい……まさか……」

 「軍神の怒り(フレアオブアレス)!」

 「や、やめろ!」


 これは大きな爆発を起こす神魔法にして爆発系統の魔法ので一番強い魔法だ。

 うちの嫁も怒りに燃えているがこれはいくら何でも……

 

 収容所を包むように大きな爆発を発生し収容所は倒壊した。

 


明日仕事ですがあけましておめでとうございます←早い

今週も少し忙しいですが時間があったら上げます。

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