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子爵のお屋敷へ

アップします。

 「おいおい冗談はよしてくれないか?俺達は……」

 

 いくら何でもおかしい……依頼主が半年前に亡くなったなんてそんな馬鹿な話はない。


 「ではこのお屋敷は今誰の所有かしら?」

 「ここは今奥様のミスリラ様の所有だ」

 「子供はいないのかしら?」

 「跡継ぎだったはマロウ様も三カ月前に亡くなられたよ……」


 この兵士達の表情からしてそれは間違いないのだろう……


 「死因は?」

 「なぜそんなことを聞く?」


 立花は魔法を唱えた。


 「サウンドアウト」


 まず音を遮断させる。


 「インビシブルライト」


 俺達と門番を光が包み込む。

 これは設置された空間内が周囲の目から認識できなくする第七位階魔法だ、現代風に言えば赤外線よりも少し高い波長で周りを包んでいる、ただ同じ光で包まれたもの同士の認識と対象が周りを見る場合には影響しない。


 「これで私達は外から姿を認識されないし声も聞かれないわ」

 「お前達は一体……」

 

 門番に事の経緯を説明した。


 「なるほど……そう言う事だったか」

 「確かに子爵様はギルドに依頼をしようとしていたな……」

 「その依頼がタイムカプセル開けたみたいに最近届けられたのさ」


 そもそもこの街は一体なんだ?


 「葬儀は確かにここでやったし街の人は知っているはずなんだが……」


 ならあの宿屋の店員が嘘をついたってことになるのか……だがそんなすぐばれる嘘をつく理由が見当たらい。


 「まぁ俺達街に行くのが許されてないからな~」

 「どういうことだ?」

 「三カ月前に街に魔瘴毒が流れ込んできたらしくそれが今でも残るから駄目なんだとさ」


 魔瘴毒?そんなもの街に充満していなかったが……


 「ここは大丈夫らしいけど確かに夜にこいつと出かけようとしたら途中で体調を崩してさ……気を失って気づいたらこの屋敷のベッドでその後ミスリラ様から大目玉喰さ……」

 「そそ、息子のマロウ様もそれで亡くなってるから使用人が外に出るのは禁止、最近は夜はずっとバリアを貼っているから抜け出すのもできない感じさ」


 まてまて、俺達はその街から来たんだぞ。


 「そんなものはなかったぞ?そんな魔瘴毒が街全体に広がってれば普通に気づく」

 「おかしいな……俺達は三週間前の夜確かに調子悪くなったけど」

 

 すると門番の一人が深刻な顔になる。


 「お前達の話と全く噛み合っていないな……つまり何かおかしな問題が起きているのだろう」


 どうやら理解してくれたようだな。


 「そういうことね、あなたたちは今まで通りにしていなさい。街は特にそんな毒は漂ってないし街の人達はユリウス・ガヴァナー子爵が生きていると思っている。おそらくあなた達は何者かに襲われたということになる。」

 「そうだな、夜見せたくない何かでもあるのかもな~」

 

 おそらくこいつらが余計なことを知ったとなれば命にかかわるだろう。

 俺達に対してはまだ何もアクションがないがおそらく街を出ようとすれば何かあるはずだ。


 「とにかく命が惜しくば何もしないことね」

 「ああ、あんたたちも気をつけろよ。それでここに入るのか?」

 「中にいれてもらえるか?」


 向こうから来る前にこっちから先手を打つのがいいだろう。


 「客が来たと伝える、この魔法を解いてくれ」


 

 ◇



 少しすると中に招待され屋敷に入る。


 敷地内は執事のファンタストが俺達の対応をした、どうやらこの執事も数か月はこのお屋敷からでていないようで門番の兵士達と似たような反応だ。


 「ではここでお待ちください」

 

 数分すると還暦を過ぎたぐらいであろう女性がドアからやってきた、上品な顔立ちと身につけている物を見る感じあれがミスリラだろう、後ろにはその秘書とも思われる若い女性もついている。


 「これはお初にお目にかかりますなガヴァナー子爵夫人」


 軽く頭を下げると夫人は怪訝そうな顔をする。


 「こんな辺境の地に何の用かしら?」

 「私は神山周平、こちらが妻の立花だ。共にギルドで要職についている冒険者でこの街の異変について調べてほしいとユリウス・ガヴァナー子爵からの依頼が来ましてね」


 夫人は少し考えるそぶりを見せる。


 「なるほど……結論から言ってその依頼何かの手違いよ」

 「手違い?」


 そう来たか……


 「でも依頼書はこのようにあるわけでしてね……」

 

 依頼書には確かにガヴァナー子爵の印が押されているし日付も依頼承諾日も書いてあるのだ。


 「シラオキあなたは何かご存知ですか?」

 「いえ、私は何も関与していません。ただこの印を見る感じただのいたずらとはとても思えませんが……」

 

 元子爵の印なんてそう簡単に持ち出せるものじゃない、つまりそんなことができるのはこの夫人かそこの秘書だろう。


 「あの人の印はもう金庫に保管して以来誰も開けていないはず、昨日あなたと一月ぶりに開けたわよね?」

 「はい、埃が被っていて最近開けた形跡はありませんでした……」

 「おいおい、それじゃこの印は誰がつけたってんだよ」


 もう少し何か引き出す必要があるな。


 「私が聞きたいですわ……その依頼書にあるこの街の異変ってのは半年前の話だしもう奇声なんか聞こえませんわ」

 「ではこの依頼はどうすればいいんだ?」

 「適当に報告書を書いておいて頂戴、気になるなら奇声が聞こえるか確かめればいいし」


 随分と投げやりな……


 「ほいほい、そんじゃ宿に戻ったら報告書を書いて帰るか……その奇声が聞こえていたのって何時ごろだったんだ?」

 「酷い時は昼夜問わずでしたわね」

 

 秘書が代わりに答える。


 「それでそれはどれぐらい続いたのかしら?」

 「一月ほどだったと記憶しています」


 夫人はイライラしたのか席を立ちあがる。


 「私はもうその話はしたくないので後はお任せしましたわ」

 

 夫人は部屋から出る。


 「すみません、私もこれで。後はファンタストから聞いてください」


 秘書も軽く頭も下げ部屋を出ようとする。

 ここいらで俺は軽くカマをかけて見た。


 「ふんふん、あんた臭うぞ……」


 秘書が追えない速度で近づき首元の匂いを嗅いだ。

 すると秘書は俺の右側頭部に向かって回し蹴りをしようとする。


 「おおっと~」


 遅い遅い、さてとこれである程度確信したし後は……


 「ブフォッ……」


 突然左側頭部に蹴りが飛んできた。


 「私の前で浮気とかいい度胸ね……」

 「立花……これは違……」


 背中に変な衝撃が走る。


 「ごめんなさいね~この人綺麗な女の人がいるとああやって匂いを嗅ぐ癖があるの」

 「い、痛いっ……」


 俺の耳を引っ張りながら後ろでドス黒いオーラを出す嫁はそこら辺の心霊スポットいくよりもずっとホラーである。

 突然横から現れるチェンソー男や夢の中で殺しに来るあの男なんてまるで目じゃない。


 「ごほんっ、旦那ならしっかり教育してください……」

 「了解したわ~」


 シラオキは不機嫌な顔をしながら部屋を後にした。


 「お仕置きは何がいいかしら?」

 「まてまてこれはだな……」

 「ふふっ、それとこれとは別よ~どんな理由があろうとあれは私への挑戦ととるわ」


 立花の目は血走っており戦争で戦ってる時より遥かに本気で怖いんだが……

 「だから誤解だ~」


 勘弁してくれ~


 「あのう……私はどうすればよろしいですかね?」


 執事のファンタストは少し怯えた表情だ、うちの嫁が怖いことを確信したのだろう。


 「ああ、先に話を聞きましょうかね」


 奇声があった時の詳しい様子を聞いた。

 ユリウス子爵は奇声が聞こえ始めた直後に衰弱による病死で葬儀は盛大に行われた、さっきの門番の言う通り街の人みんなの知る所らしい。

 収容所もガヴァナー子爵家の管理だったが後を継いだマロウが死んだことで領主のダイオライト公爵の直接的な管理となった。


 「私が知るのはそれぐらいですかね」

 「あの秘書はいつここに?」

 「シラオキ殿は一年前に秘書としてこの屋敷に仕えています、彼女はとても有能な方で奥様を懸命に支えてらっしゃいます」


 一年前か……


 「ユリウス子爵の体調は何時から悪くなったのかしら?」

 「子爵様は九カ月ぐらい前から調子が悪くなっていきました……元々心労があったのですが半年前のあれで更に体を悪くして……」


 ファンタストの表情が暗くなる。


 「顔がやつれてなかったか?」

 「はい、徐々に……領主様より薬を頂いたのですが良くならず……」


 よくアニメとかである話だな、薬は毒薬で徐々に弱らせられたってのが妥当な筋書きだ。

 一年前ってのも衰弱死を仕込むのには充分な時間だ。


 「ふむふむ」

 「他に何かありますかな?」

 「もうないわ、ありがとう」


 部屋をでて屋敷の玄関まで行くと一人のメイドが掃除をしていた。


 「メイドか」

 「はい、彼女はユリウス様が拾った孤児で幼少期からここでずっとメイドとして働いています」

 「アドラーブルと申します、お見知りおきを」


 メイドは丁寧に頭を下げる。


 「これから庭の掃除か?」

 「はい、ついでに客人のお見送りをしましょうか?」

 「ふむ、お願いしようかのう」


 執事と別れメイドに見送られる。


 「ギルドの方なんですか?」」

 「ああ、ちょっと用があってな」

 「そうなんですね……」


 何か言いたげな顔をしている。


 「どうした?」

 「いえ……その……」


 どうにも様子がおかしいな、しかもあの秘書が窓からしっかり見ているし……


 「また近いうちにここに来ることになるからその時に色々聞かせてくれないか?」

 「えっ?」

 「そうね、今はあの秘書がこっちを睨み付けているわ……だから私達が帰ったら何喰わぬ顔で戻りなさい」


 するとアドラーブルは後ろを振り向こうとするのでそれを止める、酷く怯えている様子だ。

 となると見ちまったのかもしれないな。


 「変身した姿はもっと怖かったか?」

 「ひっ、何故それを……」


 どうやらビンゴのようだな。


 「もし何か聞かれたかって言われたら止まっている宿に隣接している所で夜ご飯を食べるから一緒にどうだと誘われたと言っといて」


 アドラーブルはコクリと頷く。


 「まぁ初めて見たんだったら軽くホラーだよな」

 「あなた達は一体……」

 「あの手紙はSOSだろ?助けにきたから安心しな」


 とはいえ思ったより自体は深刻かもしれないな。

 だがアドラーブルの顔は希望に満ちていた、待っていたみたいだし期待に応えなければならんな。


昨日急な残業で書く時間奪われました……残業は最大の敵ですね(笑)

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