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三分以内の決着

服だけを都合よく溶かす蛙なんて何かの漫画ででてましたね、パクッてすいません……


 アッシュがマイクに依頼を引き受ける連絡をするとマイクは俺達を屋敷に招待した、こちら側の条件としてもう同じような依頼をしにこないことや立ち合い人を付けることを要請し無事それを承諾してもらえたので俺とアッシュと祐二を立会人とした。


 「祐二いきなりすまんな~」

 「いえいえ、いきなり再会したと思ったら面白そうなものが見れるので歓迎ですよ~」


 アッシュとの話し合いが終わった後すぐに祐二と再会し無理やり巻き込んだ。


 「それであのマイクって奴はお前から見てどうなんだ?」

 「そうですね……僕から見てというより周りの評価はかなり悪いです、ファウンドの領主の息子だけあって権力はそれなりにありますがそれを無視できる冒険者ギルドを苦々しく思ってて度々嫌がらせをしようと考えていたみたいですからね」

 「なるほどな、そんな面倒な奴粛清すればいいんじゃないか?」


 それですべて解決だと思うが……


 「そんなことすると僕達ギルドが絡んで生み出している利益に支障がでかねないんだよ……」


 アッシュは苦々しそうな表情で言う。


 「まぁここで私が依頼を受けて終わりよ、屋敷までどれぐらいかかるのかしら?」

 「あと十五分程度だよ、それと引き受けてくれてありがとう。よろしくお願いします」


 これでやっと終わらせられると思うと嬉しいのだろうか、イキイキとした声だ。


 「しかし広い街だな~屋敷までいくのに馬車を使う事になるとは……」


 当初は歩いて行こうと考えていたが向こうが迎えの馬車をよこしたので馬車に乗っていくことになった。


 「ファウンドはファーガス王国一の交易都市だからね~面積も最大だ」

 「僕も初めて来た時はこの広さに驚きましたね~」

 「そういえば君はどこで二人と出会ったんだい?俊樹殿の息子と知り合いでびっくりだよ」


 そういえばこいつはアルマンゾールの長をやっていたな。


 「コジーンで会ってからアルマンゾールまで一緒に旅をしたんだ、その時頼まれたから色々教えてやったんだ」

 「それで急に強くなったんだね、いつの間に金ランクに昇格していてビックリだったけど君達が絡んでいるなら納得だよ」


 祐二の奴は俺達と別れてからも鍛錬を重ねてどんどん成長している、弟子の成長は素直に嬉しいものだ。


 「はい、周平さんと立花さんに鬼のしごきを受けてここまで成長することができたんです。色々トラウマになることもありましたけどね~」


 俺の時は何度も死にかけ立花の時は何回も死んでるからな、これぐらいの成長は当然だ。


 「着いたよ」


 ギルドから馬車で移動すること十五分マイクの住む屋敷に辿り着いた。


 「広いな……」

 「領主のお屋敷だからね~」


 うん、破壊したら最高に気持ちいいはず。


 「周平さん今屋敷破壊したら気分爽快なんて思いませんでした?」

 「おおっ、流石は祐二。俺の考えていたことを当てるとは」


 祐二の頭のクシャクシャ撫でる。


 「ははっ、そんな顔してるなって思ったので~」

 「そうかそうか、流石は俺の弟子だ」

 「本当にそんなことしないでくれよ……」


 アッシュが少し焦り顔を見せる。


 「大丈夫だ、破壊したら俺と立花と祐二はすぐさまこの街を去るから」

 「ふふっ、それもそれで面白そうね、向こうも二度とギルドに来なくなるわね~」

 「全然大丈夫じゃないよ~頼むから辞めてよね?ね?」


 必死になるこいつを見るのも面白いな。


 「周平さんあんまり遊んであげるのもかわいそうですよ~アッシュさんも色々大変なので」

 「ふふっ、そうね。周平も面白いからって遊んじゃ駄目じゃない~」

 「ははっ、悪い悪い。早いとこ済まそうぜ~」


 空いた門を我先にと進んだ。


 「ねぇあの夫婦の言動は聞いていてヒヤヒヤするんだけど流石に屋敷を破壊するとか冗談だよね?」

 「う~ん、邪魔者は叩き潰すが信条のお二人ですからね~たぶんガチですね~」

 「僕は依頼する相手をミスったかもしれないな……」



 ◇



 屋敷の中に入り応接室で待っているとマイクが鼻歌を歌いながら入って来た。


 「よう~」


 俺がニヤニヤしながら声をかけるとマイクの鼻歌がピタリと止み顔が引きつり始める。


 「な、なんでお前が?お前を招待した覚えはないぞ!つまみ出せ!」


 いきなり敵意むき出しである、まぁ無理もないが……


 「そのことだけど僕から説明するよ」

 「どういうことだ?」

 

 マイクが顔を顰める。


 「この二人はギルド本部の重鎮で実は僕より権限が高い、今回この依頼を受けるにあたりこの二人に依頼をしたという事さ」

 「そそ、それで俺の嫁である立花がその依頼を引き上けるってわけだ、よろしく~」


 俺はわざとマイクの前に手を出し握手を求めると俺の手を弾く、えらい嫌われたものだ。


 「お前と握手する義理はない!とっとと依頼を始めよう」


 どうやら気分を害したようだ。


 「一応あの約束は君のお父様にも言ってあって承諾もしてもらっているからそこんとこはご理解よろしくね、君の頼みだからギルドの上級職員がわざわざ来ているというのも忘れないように」

 「ああ、人選は腹立つが父上からも言われているから約束は守るよ」


 そうは言っても自分の思い通りにいってないからか少し不服そうな表情だ。

 こんな茶番をとっとと終わらせて俊樹さんの家で夜ご飯を食べたい。


 「おい、こいつらを観客席に、お前はこっちだ」


 屈強なボディーガードの一人が俺達を観客席のまで誘導する、どうやら敷地内に闘技場があるらしい。


 「ねぇ本当に大丈夫なのかい?」

 「何がだ?」

 「今回の依頼だけどここで飼っているクローズキラーは一味違うと聞いている、もし立花さんの裸体が露わになったら……」


 また要らぬ心配を……まぁ万が一そんなことになったら……


 「見た奴全員殺すだけだが?」

 「それぜっんぜん大丈夫じゃないんだけど……」


 アッシュはお腹が痛くなってきたのか腹を抑える。


 「まぁそんなことになる前にクローズキラーが消滅するから問題ないよ」

 「ですね~立花さんがそんな遅れをとるわけないですからね~」

 

 通路を進むと闘技フィールドが縦横ともに百メートルある大きな闘技場が目の前に見えてきた。


 「見るのは最前列でいいか?」

 「ああ、どこでも構わんよ。ただ一番前はバリアをはるから最前列より一段後ろにしてくれ」


 前から二段目の席に腰掛ける。


 「了解、あんたもお疲れ様な。ギルドで会った時俺があいつを吹き飛ばしたがなんで俺に攻撃しようとしなかったか聞いてもいいか?」

 「私も命が惜しいからね、相手を見て勝てない相手ぐらいの見極めはするよ。だから君の片割れが参加者で少しホッとしているよ」


 スキンヘッドの髭を生やしたボディガードは気さくに答えてくれた。


 「あいつを少し痛めつける結果になるかもしれんがそれでも大丈夫か?」

 「ええ、ギルドの本部からわざわざ出てきたことの意味は理解していますので加減さえしていただければ」

 「オーケー」


 しばらくすると立花がフィールドにでてきた。

 ちなみにクロースキラーとは大きな蛙だ、そこそこの強さの魔物だがアーティファクトスキルの調教レベルが高ければ言う事を聞かせることができる。

 能力は服等の繊維を溶かすブレスを吐くことから旅人や冒険者……特に女性から嫌われていることで有名な魔物だ。


 「準備はオーケーよ~」


 立花がストレッチをしていると十匹の黒茶色をしたデカい蛙が逆の扉から姿を現す、転生前にも間近で見たことがあるが相変わらず不細工な姿である。

 数人の調教師が首輪をはめた十匹の蛙を闘技場の真ん中に誘導し首輪を外す。


 「ではでは始めようか~今から三十分攻撃を耐えきれば終了だ、これが終われば金貨五百枚だ」


 服が溶けて裸体を見れるのが楽しみなのかマイクの声はとても興奮している。

 お前ががっかりする様をしっかり見届けるとしよう。


 「スタート!」


 さぁ立花、ショーをぶち壊してくれ。


 「ふふっ、ごめんなさいね……エミリウスの宴!」


 開始早々立花の発動したその魔法は周囲を石化させる創生魔法だ。

 あの蛙共の腕にはめられた魔具は魔法耐性を高めるものだがそんなものがあろうと立花の前では関係ない。


 「なっ……」


 マイクは何が起きたのかわからないのか目が点になっている、隣で見ているアッシュも同様だ。


 「ヴァイスシュヴァルツ!」


 黒と白の弾丸が宙からカエルに向かって放たれるとまず三匹の蛙の命が奪われた。


 「メガフレア!」


 追加で石像となった二匹の蛙が砕け散る。


 「ふふっ、後五匹ね~」


 あそこの坊ちゃんまだ状況が呑み込めてないな、まさか蛙を石像にしてからノーガードで魔法を喰らってやられるとは夢にも思わなかったはず……笑いがとまらんな~


 「ディバインバルカン!」


 神々しい光が蛙に直撃し四匹消滅させた。


 「あと一匹ね~」


 立花は神細剣ローズメイデンを取り出し麒麟の蒼雷キリンライトニングの異能を剣に纏う。


 「はぁぁぁぁ!」


 剣を蛙の石像に向かって突くと石像は無残に砕け散った。

 開始から三分も経ってない、カップラーメンができるより早いな。


 「さてもう片付けたけど終わりでいいかしら?」

 「なっ、そんなばかな……」


 おおっ、さっきまで意気揚々としてた坊ちゃんが絶句しとるな~


 「確か依頼内容はクローズキラー十匹と三十分戦う事だったわね、したがってその十匹を片付けたという事はこれは私の勝ちということよね?」

 「うっ……確かにそうともとれるな」

 

 マイクの表情は焦燥感をいい具合に出していい顔になってきた。


 「それじゃあ終わりね……私はこれで……」

 「まだだ、あれを使え!」


 すると闘技場の二つの入り口側からそれぞれ何かが飛んできて立花に直撃した。


 「ははっ、これぞクローズキラーの粘液弾だ。油断したな~さてお前の裸体を……えっ……」

 「はぁ~これで終わりじゃないのはわかってたけどね……」


 立花はバリアを貼りしっかり粘液弾を防いだ。


 「さて……こっちの出番か……縮地……」


 高速移動でマイクの目の前まで移動し、押し倒す。


 「い、痛い……な、何をする……」

 「おい、今のは重大な契約違反だな?」

 「あ、あれはほんのちょっとして余興さ……ほら凄いつまらなかったし……」

 

 違反をしたからにはしっかりと取り立てをしないと、契約ってのはそういうものだ。

 付け入る隙はすかさず突くのが当然。


 「違約金含めて金貨一二〇〇枚だ、しっかり払ってもらおうか」

 「誰がそんなものを払うものか、おいお前ら!」


 複数のボディーガードが俺を抑えようとするのを威圧し牽制する。


 「お前等なら力の差ぐらいわかるよな?命が惜しければ大人しくするこった」

 

 ボディーガード達もそれなりに腕の立つ者ばかりだからか俺の威圧で素直にヤバいと感じ取ったのだろう。


 「俺は冒険者ギルドでも高い権力があるし加えてお前を殺ることにもそんなに抵抗はない」

 「ひっ……そんなことをしたらどうなるかわかっているのか……僕はオーサムアゲイン公爵の息子だぞ……」


 はぁ~こういう奴は本当に虫酸が走る……てめぇの家の権力なんざ知ったこっちゃない。


 「だからなんだ?俺の嫁に変なことしようとしてタダで済むと思うなよ……この敷地ごと灰にしてやろうか?」

 「ひっ……わかりました……金貨一二〇〇枚払います……もう金輪際こういう依頼はしませんから許してください……」

 

 少し本気をだして威圧したらあっさり手の平を返した。


 「ふっ、わかればいいよ。今度お前がギルドに迷惑行為をしていると判断したらギルドでの権力を行使してお前の父親が不利益になるようなことも容赦なくするから覚えておくことだ」

 「はい……」


 マイクは肩をがっくり落とした。

 これにて一件落着だな。


 「さぁ帰ろうかみんな」


 その場で一二〇〇枚の金貨を回収しギルドへと帰還した。


立花ちゃんの裸体は周平にしか見せません(笑)

三章は後半に入ってますが少し寄り道です。

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