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カシナーテ

「おやもう地上へ戻るのかい」

しわくちゃな顔のマーレスが食後の紅茶を入れながら装備をそのまま身に付けている私に聞いてくる。

「明日には依頼が入る予定だからね、ライネルとアポロニアがどうしているのかと思ったけど居ないからね」

「しかし死んだ者を生き返らすんだろうそんなことが許されると思うのかね」

マーレスは少し考えたが、

「神様がしてくれているのだから駄目とは言えなくもないかな、でも何処かで歪みが出るのかもね」

「あんたも冒険者から足を洗って土を耕せば良かろうに、借金も返し終わったのだから」

「もう少し年を取ったら考えるよ、今があるのは周りのおかげだししがらみもあるからね」

「上のマリーネにこきつかわれ過ぎるんじゃないよ」

何時もはつっけんどうだがライネルが来たお陰で少しずつ知らないうちに変わっているのかと思いながら地上へと上がった。


宿に戻り水浴びをして夕食と酒をのみその日はゆっくりとしながら早朝にギルドへと顔を出す。

「早速だが2つのパーティーの捜索を依頼したい」

マーカスは私を待っていたらしく夜が明ける前にも関わらずギルドのカウンターかた私を呼び座らせた。

「良いですが居場所はあの階層ではなさそうですね」

戻るときに階層を探してみたが彼らがいた形跡が無いため聞くと、

「どうやらイレギュラーにできた裂け目に落ちたらしい」

回収を始めた頃にアポロニアの暴れてのが要因で通路に裂け目ができてレッサーオークから冒険者を回収するのにえらい大変だったと思い出しながら何処に落ちたのか聞くと、

「まったくわからない、裂け目ができたすぐ下の階層を調べたが落ちていない」

「それは探すのは絶望的と言うことですね」

マーカスは頭をかきながら、

「こちらから依頼をしているから探してくれないか、金貨1枚で1週間探索と回収または救助で」

「わかりましたが今回期日内でみつかる保証はないので失敗は免除を」

「仕方ないがその場合は3日延長してもらえるで良いかな」

依頼に合意して書面にしてもらい地下へと戻ることにした。


「裂け目が何処に繋がっているか知っているなら教えろと」

店に入ると嬉しそうに美味しそうに私を見つけ私が消えた原因であろう裂け目のことをたずねる。

「情報料は貰わないとね、いくらかしら」

美しい顔で値踏みをしてきており私は先程貰った金貨1枚をテーブルに仕方なくおいた。

「金貨1枚、少ないけどこれ依頼のお金でしょう。切羽詰まってるからだわね」

すべてを見透かされたと言うか値段までと顔に出てる自分にマリーネは笑いながら情報を教えてくれた。


「落ちたところはリザードマンの下の階層だと思うわ」

情報を聞かなきゃよかったと後悔しながらギルドから貸し出されたレッドアイズで転送する。ジャイアンアントの巣があった場所でありあの時の喧騒はなくワーウルフとワータイガーの階層をぬけリザードマンの階層をぬけてようやく到着した。

まずは周辺を探索して焚き火の後などの形跡がないか探す。他のモンスターはこの階層には来ることはなくもしあれば捜索は楽になると思ったが見当たらず、あの横穴へ入らなければならないのかと考えると気が滅入る。

アポロニアの妹だが面識があるわけでもなくはじめて会った時の転送中に現れ、

「妹のところで結構暴れてくれたみたいだね、なかなか面白かったよ。妹は話が通じないけど私は興味があるから一緒に行動するから」

そう言ったのを思い出す。ドラゴンで話が通じない、無理と言わざる終えないが依頼を遂行しないとと責任感で穴へとはいった。

「臭い」

あの恐怖の臭いが漂い、アポロニアは不思議とにおいがなかったなと思いながら下りていく。


ドラゴンといつ遭遇するかと思いながら巣へと到達した。

奥には宝がありその右側に冒険者がいた。ホッとため息をついて冒険者に近づきながらドラゴンがいないのと冒険者が動かないことに不安を感じて声をかけた。

「何をしている早くここからでて上に戻るぞ、ドラゴンが来る前に急げ」

ようやく私に気がついたが青い顔をしてこちらを見るが一言も発し無いので、

「いい加減にしろ、走・・・」

私は言葉が止まる。冒険者の中で私に唯一後ろ向きでいた黒髪のおかっぱ頭の女の子がこちらに向いた瞬間恐怖が一気に沸き上がりそのまま踵をかえして走る。

後ろから声は聞こえたが振り向く気もなくひたすら外へと走った。


洞穴をぬけ斜面に出ると走る。

「待てっていってるだろ」

後ろから少女の声で聞こえてくるが恐怖で走るしかなく上の階層の階段をかけ上がった。

通路をぬけ広い階層に出る。森をぬけ住みかである沼をぬけようとすると気がついたリザードマンが出てきたが私の後ろを見て逃げ出していき私は恐怖が終わっていないと思いながら走り抜ける。

上の階層に上がりひたすら逃げなにかを察して本来なら元気よく動き回っているワーウルフは姿を見せず転送のあるジャイアンアントの階層へと戻ってきた。


後ろの気配は消えておらず上へと必死に走り抜ける。いきは途切れ途切れだが走るのを止めるわけにいかず荒れ地を通り抜けレッドアイズを置くと、

「転送一階へ」

そういった瞬間背後を振り替えると笑いながら走ってくる少女の姿が見え転送した。

地上へと戻るとホッとしてギルドへと行こうとすると、

「転送を使えるとはな面白いぞ」

私は漏らしそうになるのを我慢して悲鳴をあげながらドアを蹴破りギルドへと走る。衛兵が顔を出すが見てはいけないものを見たと青い顔をしてまわれ右をしてしまい詰め所に入っていく、とにかくギルドと思っていたが頭のなかに

「こっちへきな」

マリーネの声が何処からともなく聞こえて進路を変えて店へと息も絶え絶えに店へと飛び込んだ。


カウンターに駆け寄りそのまま酸欠で意識が遠退く、

「なんじゃこれは、はなせはなせはなせー」

怒りが私にぶつけられ意識が引き戻され後ろを見る。蜘蛛の糸に絡め捕られた少女が暴れ様とするが伸縮自在にのびる糸になすすべもなかった。

「むだよむだ、キングスパイダーの糸だから切れも燃えもしないドラゴンの幼体ならなおさら」

マリーネは嬉しそうにカウンターから見ており私を見て、

「あの小娘といいこのチビといい人外に好かれるわね」

自分の事を棚にあげての言いぐさに突っ込もうとしたが、

「チビ言うな、化粧臭いしわくちゃばばあのくせして曲がった性格までは隠せないでしょ」

マリーネは青筋をたててカウンターを軽々飛び越えると少女の前にたちほっぺをつねりながら、

「そんなことを言う口はこれかい、まだ言うかね」

お互い言いたい放題しており私はそれが本気でないとわかると力がぬけ記憶がとび寝てしまった。



「目が覚めたようじゃな、目がさめだぞ」

ベットの上で目覚めると目の前に少女がおり私をのぞきこんでおりマリーネが横から顔をだし、

「いい運動になったであろう、本気を出せばすぐに捕まっていたからな、そんなことすぐに考えればわかるだろうに」

「ねえ様の良いにおいがしてたからついてきただけじゃ、待てと言っているのに待たぬから地上まできてしもうた。まあおかげで面白いおば様にもあえたからのう」

マリーネを見て笑い、

「そうそう自己紹介をしていなかった、カシナーテじゃよろしくの」

「ドレークです。よろしく」

そういった瞬間に地下での出来事を思いだし聞いてみると、

「ああ、落ちてきて騒がしいからチャームをかけたところにドレークが来たからそのまま立ちんぼしてるだろう」

そういわれ安心しながら彼らをつれてこなければならない事を伝えると、

「ねえ様にも会いたいしのう、しばらくは一緒にいようぞ」

嬉しそうに言われ私は頭を抱えるしかなかった。


ギルドへと顔をだしマーカスへと報告する。アポロニアの妹と聞いて慌ててギルド長の執務室へと通して顔を青くする。

「心配するなねえ様に会いに来ただけじゃ、特に何するわけでもない」

カシナーテがそうは言ってもドラゴンであり幼体でも十分力はあるわけでアポロニアの件からさらに白くなった頭がさらに白くなった気がする。

パーティーを巣に迎えにいくことになり出ようとすると、

「その格好は不味い、これで新しいのを買ってくれ」

マーカスが指摘したとおりカシナーテの服はボロボロであり渡した金貨で新しいのをということだった。

「フリフリがついて可愛いのう、でも色が発色が悪いな」

貴族の御用達で買うわけにもいかないので街の洋服屋へと向かい金貨ではお釣りが来る一番良いのを購入したが色を染め抜く技術はその程度でありカシナーテはフリフリをヒラヒラさせながら店を出た。

カシナーテはアポロニアと違い光る金色の腰まであるロングヘアーで一緒に購入した髪留めのリボンと赤いくつで可愛さが引き立った。

早めに依頼を終わらせアポロニアの元へ急ごうとしていると厄介事が向こうからやって来た。


「平民の娘よ馬車にのれ、苦しゅうないぞ」

馬車が止まり中から貴族の坊っちゃんなのか私たちの目の前におりてきて馬鹿面でいきなり言ってくる。マーカスにどう連絡をつけようか思っていると、

「あの変なのがなんかいってるぞ」

カシナーテはなにか面白いことが起きると予感してかにやつき嬉しそうにしており馬鹿面の坊っちゃんに何度か誘われると、

「誘われているから行ってくる。一人で回収してきてくれ」

そう言うとチャームお解く方法を教えてくれ馬車に乗って行ってしまい私はマーカスから付けられた監視役を人ごみに見つけるとマーカスに伝えるように言って迷宮へと潜った。


ジャイアンアントの階層へと転送して下へおりる。騒がしいはずのワーウルフやワータイガーがなぜか静かであり通り抜ける。リザードマン達も同じで沼から出てこようとせずそのまま下に降りるとカシナーテの家へと洞窟を下っていった。

冒険者はそのまま直立いておりカシナーテの言うとおりにしたのだが霞がかかったような目は戻らず困って、

「いい加減に帰るぞ」

そう言うと頷き私のあとについてこようとする。驚きながら洞窟を上がるとそのままついてきており解呪ではなく主人を変更すると言うことと理解して力がぬけながら上へ上がりリザードマンとどうするかと思いながらやはり姿がないのをラッキーと思い階段を上がった。

通路をぬけて丁度中間へ来ると前方で気配がしておりラッキーもここまでかと思いながら弓を引いて構えながら進む。

「若いのこちらは攻撃する意思はない話し合いをしたいだけじゃ」

暗闇の中から声がして私はとっさに壁に張り付き後ろにも命令をする。

「それだけの臭いをさせてるものがこれほど臆病とは」

そう言いながら私の視界に入ってきた。


「ドラゴンは今は地上か」

ワーウルフの長老はため息をついて私をにらむ、

「これで2度目と思ったが生活が混乱をする。やめてくれとも言えないが考慮してくれると助かるが」

白くなった目が隠れるほどの眉毛とアゴヒゲが震え私を見るので、

「善処はしますがドラゴンですから、地上にとどまっているのもイレギュラーですし」

「そうか、それとその臭いが老若男女を混乱に陥れる」

自分では気がつかないが結構なにおいをさせているらしいく服のにおいを嗅いでみたがいまいちわからなかったが、

「臭いを取るようにするけどにおい消しがなかなか効かなかったからな」

前回のことでの宝物を持ち去ろうとしたがにおいが消えず諦めたことを思い出しながらため息をつくしかなかった。

ワーウルフの長老との話は終わり上層の階へあがり転位した。


外に出るとマーカスが慌てて駆け寄ってくるので、

「依頼は完了したよ、チャームがかかっているのを解呪すれば問題ない」

そう言いながら依頼書を出すと、

「そんなことしている場合じゃない、今大変なことになっているんだこっちへこい」

マーカスは私の腕をつかむと走り出し貴族の住むエリアをぬけ城の横にある迎賓館に到着した。

その周囲は衛士が固めており誰も近づけない様にしており、マーカスはそこにいた貴族の一人に声をかけた。

「おお、説得できる者を連れてきたか、すぐに王子を解放してくれ、くれぐれも怪我や粗相がないようにな」

マーカスは貴族から念を押され私を引っ張ってなかに入ろうとする。

「ちょっと待てマーカス、説得しろなら無理だって原因はその王子にあるんだろうし私はなんの責任もないはずだよ」

私は中に入ろうとするのを押し止めると、

「ドレーク、連れてきてしまったんだ何とかしてくれ、このままだと国際問題に発展してしまい戦争の原因になりかねない」

「何とかって、何ともならないし面倒はごめんこうむりたい、アポロニアがいればなんとかなるかもしれないけど」

「とにかく顔を出してくれ解決の窓口になるかもしれないし」

「こんなの金貨10枚でもごめんこうむる」

そう言うとポケットから白金貨1枚を取りだし、

「これがギルドからの依頼だ、成功報酬で」

金貨1000枚の価値と言われている私もみるのが初めての物だが成功報酬でと言われ首を横にふるしかなくマーカスは諦めて私の手のひらに握らせると、

「頼むぞ」

そう言って中へと押し込んだ。

手のひらにのせられた白金貨、一生食うに困らないものだが酔ったドラゴンがどんな事をするのか不明であり心配になりながら廊下を進んだ。


現場へ到着したようで部屋の前には侍女や執事が青い顔をして待機しており、

「酒を持ってこい」

カシナーテの可愛いが間違いなく酔っぱらっている声が聞こえ恐る恐る侍女が酒のはいった壺を持って中へと入っていった。

私はその隙間から中をみてみるとそこには騎士や衛士が山のように倒れており、その奥のソファーでカシナーテとその横で青くなっている王子が今にも気絶しそうな顔で座っている。

カシナーテは顔を赤くして上機嫌であり侍女が持ってきた壺を受けとると飲み始めており侍女は青い顔で戻ってきた。

どうするかと考えてはみたものの私が出ていって事態が好転するとはおもせず時間だけが流れていく、私はふと思い出して外へ出ると、

「マリーネ見てるんだろうなにか方法はないか」

ダメもとで空に向けて聞くと、

「あははは、大変みたいだね。方法はなくもないけど成功報酬を貰わないとね」

先程のやり取りを聞いていたのか嬉しそうな声で言ってくる。

「わかった、それでどうしたら良い」

「眠り玉を3つまとめて使えば酔っぱらっているドラゴンなんていちころだよ」

そんな簡単なことかと思いながら無言で迎賓館の中に戻り侍女が持っていたお盆の上に眠り玉を3つ置くと退避するように指示をして火をつけた。

外に出て砂時計を取り出して反転を3回に余分にもい一回待ってから中へはいった。


「グオォーーーーースー、グオォーーーーースー」

どんだけのいびきなんだと思いながら部屋の中にはいるとソファーで寝ているカシナーテを抱き上げる。

気持ちよく寝ており、眠り玉で寝たのかただ普通に寝たのかと思いながら外に出ると入れ替わり貴族が入室していき離れようとすると、

「まてい、不敬を働いたその小娘を引き渡せ」

空気が読めないのか点数稼ぎなのか騎士が私の前に立ち塞がり手を出してくる。

その次の瞬間抱かれていたカシナーテの腕がふりあがり、騎士は気がついたら隣接する建物の壁にキスしておりそのまま崩れ去った。

あきれながらも自分がいつやられるのかと怯えながらマリーネの店に急ぐ、しかしその後は大人しいもので別途に寝かしつけるまで静かでおとなしくようやく脱力感一杯でマリーネの前に座った。


「ご苦労様、あんたにゃなんもしないよ安心おし、しかしこんなに酒癖が悪いなんて痛快だね」

「知ってたならマーカスに教えてやれば良いのに」

マリーネは首を横にふり、

「タダ働きはごめんだね」

そう言いながら嬉しそうに手を出してくるのでため息をはきながら値段を聞くと、

「金貨999枚」

見ていたのかと思いながら貰ったばかりの白金貨1枚をテーブルにおくと、

「まいどあり、お釣りは金貨1枚とおまけで眠り玉3個もつけちゃうから、あーなんて私は優しいのかしら」

「はい、何時も感謝してます」

そう言うと後ろで盛大に寝返りをうったカシナーテは壁にパンチをして穴をあけてしまい私は笑うしかなかった。

「それとこれマーカスに渡しておいて、このこのチャームを解呪した代金が一人金貨1枚でまけとくって」

守銭奴というのはこの人のことなんだと思いながら紙を受けとるとギルドへと向かった。



「一人あたり金貨3枚と銀貨50枚だって」

私が入ってくるなりカウンターでマーカスと例のパーティー2つがおりマーカスが、

「それと違約金パーティーで金貨1枚と、えっと解呪が一人金貨1枚」

私からマリーネの請求書を受けとるとそれも加えて伝える。

「一人金貨4枚と銀貨66枚と銅貨66枚」

おっ、暗算ができるんだと感心したものの彼らにとっては一生かかっても返しきれるのかという値段であり他の者も呆然としておりマーカスが、

「最深部に近いところだからな無傷で帰れたことを感謝しろ、それと装備はお前達を救出した者の物だからな」

そう言ってさらに追い討ちをかける。

「本来なら別に動いたものもあるがそれはギルドでしたことだから請求は見送る。」

そう言って足りない分は借用書を書かせ装備を外させて終わらせ、私の横を呆然とした顔で出ていき私はマーカスの前に座った。


「今回の報酬だ、あれに比べれな微々たる物だがな」

そう言いながら42枚という本来ならその半分以下だが裂け目から落ちてしまいこの料金となったのは不幸中の幸いであり嬉しいが、マーカスはマリーネにかつあげされた事を知らないのか言ってくる。

もうどうでも良いやと思いながら金貨を受けとると宿に戻り水浴びをして酒を飲むと寝てしまった。


「ドレーク起きろ、いつまで寝ているのじゃ」

その声に慌てて起きると目の前にカシナーテが座っており私を慌てさせる。

「ねえ様の所に案内せい」

そう言われて慌てて起きると着替えたのだがふと気になりカシナーテのにおいを嗅いでみると確かに独特のくさいがあり、

「すいません、連れていく前にこの臭いを何とかしたいのです。迷宮の連中が困っていますので」

「そうか、全然気にならないがのう」

そう言って自分のにおいをしきりに嗅いでおり、私は行くことがないお風呂へと連れていった。

「服のクリーニングと垢擦り娘あわせて金貨1枚となります」

さすが庶民が利用することがないお風呂でさらに垢擦りをつけると法外な値段をとられる。私も染み付いているのであろうにおいをとるために入った。


蒸し暑い場所に入り汗が出てくると竹べらをもった女性がきて擦り始める。自分の黒い肌の下からピンクの肌が見えてきたのには驚き一皮も二皮も剥けた気がして落とされる垢の量に驚いた。お風呂に入り出てくると女子の方で何やら騒いでる。何かやらかしたかと思ったので店員に聞くと、

「竹べらがすぐに削れてしまうんです。小さなお子さまなのに」

そう言われてカシナーテだとわかったが入っていけないのでそのままマッサージを受けながら待つことにした。

ウトウトしながら過ごしてるとようやく終わったのか垢擦り娘が5人ほど疲れた顔で出てきてそのあとにカシナーテが意気揚々と出てくる。

「中々気持ちよかったぞ、また来ることにしよう」

そう聞いて店員数人が意識が飛んで倒れていく、服も綺麗にしてもらい迷宮へと向かった。


転位は使えないのでそのまま下る。今回の稼ぎがかなりあるので市場で買い込んでマジックザックに放り込んでいき、本来ならこちらの方がいいなと思いながら散財して詰め込んだ。

コボルトの村に到着すると物珍しそうにカシナーテの周りに集まる。

「こやつらは逃げないな、リザードマンやワータイガーは泣き叫びながら逃げ回るのに」

そりゃ本人が怖いだけだからとも言えず、

「アポロニアが怖くないからその延長線上でと言うことかな、攻撃すれば逃げて出てこないけどそんなことをするのかな」

「しない、面白いものもっと近寄れば良いのにな」

そう言ってるとカシナーテよりもさらに小さなよちよち歩きのコボルトが嬉しそうにカシナーテに近づき抱きついた。親は心配したがカシナーテは嬉しそうに抱き上げるとコボルトはニコニコしながらほおずりをした。

それによって緊張がとけたのか子供がそして大人が近づきフリフリをつまみ上げたり、長く金髪の髪の毛を見つめたりして大騒ぎになり長老が出てきておさまった。

「あの黒髪のお嬢ちゃんの妹かい綺麗だな、それと何時もお見上げありがとう」

薬草などを渡すと嬉しそうに何度もお礼を言い食事を御馳走になることとなった。

「色々入ってておいしいな、いつも丸飲みで味はしないからな」

私はそれを想像してしまい食欲がなくなってしまった。

「またくるからな」

カシナーテがコボルトに言うとみな悲しそうに手としっぽをふる。

「すねなさんな、あなたはあなたで慕われてますから」

マミヤからのフォローに苦笑いしながらマーレスの元へと向かった。


「まったく呆れるね、下でさんざん暴れてた子だろ」

どうやらアポロニアはまだ戻っていないらしくマーレスだけが迎え入れてくれる。

「カシナーテ、アポロニアの友人のマーレスだ、大人しくしていてね」

人の話を聞いてるのか聞いてないのか壁の戸棚の中の品物に興味津々で見てまわってる。マーレスはため息をはきながら、

「で、どうするって言っても待つならあんたが居てくれないとこの子の相手は私じゃ無理だよ」

見透かされているのを苦笑いで頷いてお茶を飲む、

「3人はあとどのくらい帰ってこないかな」

亀甲を取り出してにおいをかいでいるカシナーテを見ながら聞くと、

「もうそろそろ食料がなくなる頃だろうけどどこかで調達していればまだまだだろうね」

しばらくはここにいるかと思いながら3日ほどいることを伝えザックから買ってきたものを積み上げていった。


カシナーテは最初の二日はマーレスにまじないなどで使う材料の事を聞いて回っていたが、一通り聞き終わるとこの階層を見てまわりたいといい頭を抱えさせる。

「ドガギャクがいれば問題ないけど、勝手に行きそうだねこの子は」

マーレスはため息をつくとゴブリンの長老を呼び出した。


「というわけだから村の皆に知らせておいてくれ」

ニコニコしているカシナーテがドラゴンと説明され長老についてきた若いホブゴブリンは顔を青くしたがアポロニアの妹と聞いて安心したようで、

「また酒飲める楽しい」

酒癖が悪いカシナーテに対して危険な発言に当の本人が嬉しそうに同意していた。

お守りを頼む代わりに地上からの品物を贈り物として渡していきそ知らぬ顔をしようとしたがマーレスに押し出されて村へと向かった。

このように入るのは始めてであり、ホブゴブリンやゴブリンの村人は私たちを見ながら嬉しそうに手をふってきておりアポロニア何をしたんだと言いたくなるのを押さえながら広場に到着した。


村人が集まり歓迎の儀式が始まる。目の前では豚が何匹も丸焼きにされ、その回りを着飾った村人が踊りカシナーテもうずうずを押さえられずにその輪に入り踊る。

おおいに酒をのみ踊っていると、

「アポロニアとライネル様が帰ってきた」

そう言って輪の端が開いてドガギャクも含め三人の姿が見えた。カシナーテは歓喜の叫びをあげてアポロニアに抱きつきさらに大騒ぎになる。

もうカオスであり大騒ぎで踊り明かし朝方うっすらと高い天井がうっすらと明るくなり始めた頃にようやく寝静まった。


翌昼川で水浴びをしてマーレスの家に戻る。

「昨日は大騒ぎだったみたいだね、どうやら戻ってきたみたいだし」

お茶を入れてくれるマーレスに礼を言いながら飲んでいると、

「ただいまマーレス、びっくりしました帰ってきたらお祭りになってるしアポロニアの妹のカシナーテがいたから」

ライネルとカシナーテの二人は手を繋ぎながら旧友のように仲良くしており後ろではアポロニアが嬉しそうに頷いている。

皆がテーブルにつくとマーレスのかわりにライネルがお茶をいれてくれマーレスが、

「この子のいれるお茶はほんと美味しいよ、良い子だねえ」

珍しく誉めておりライネルも嬉しそうに動きまわってる。

「所で何処までいったんだい」

私は椅子に座ったライネルに聞くと、

「50階層まで行ってました」

そう言われ私は頭がフリーズする。

「転位でおりて祖先である英雄パラミディウスのロングソードを墓標から手に入れられるなんて幸せです」

ライネルは私達がそのようやく半分に到達したのに未踏の50階層まで潜ったと言うのを話しさらに、

「墓標の守護者5つ首のヒドラとアポロニアの戦いがすごかったです。神々の戦いのように」

アポロニアはどってことないという顔をしており、カシナーテはさすがねえ様と頷いている。

相手がドラゴンとはいえなんかもうちまちまと潜るのが馬鹿馬鹿しくなるような話を聞かされため息しか出なかった。


数日すごしたのち巣をあまり開けるのは好ましくないということらしくカシナーテを連れてアポロニアは巣に戻り、私はライネルに1度マーカスの所へ顔を出して安心させようと伝えて戻ることにした。

「またね義ねえ様」

「またすぐに会おうぞ義妹よ」

ライネルとカシナーテはいつの間にか義姉妹になったのか抱き合って別れを惜しみ、アポロニアはしばらく巣に戻ってから出てくると私に言うと別れて出発した。

ライネルの足取りは軽く、背中には英雄の宝剣であるパラミディウスのロングソードを背負進んでいく、途中コボルトの村ではまた歓迎を受けて地上へと戻った。

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