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「疲れた顔をしてどうしたんだい」

私が家に入るとマーレスが奥から出てきて心配そうにいってくる。

「まあ何事もうまくいかなすぎて、消極的だと後手後手にまわって」

「そうかい、まあゆっくりしていきなよ他の3人は散歩にいってくると出かけてるからね」

アポロニアとライネルそしてドガギャクは仲良くしているようで公女の身も地上にいるよりは安全かなと思いながら椅子に座る。


マーレスがお茶をいれてくれ良いにおいの温かいお茶を飲むとホッとして今の仕事の事を考える。

はじめた理由はパーティーが全滅してしまい食うに困って浅い階層で遭難したパーティーを連れ戻すと言う依頼があり、その中に貴族の御子息がいたから依頼を出したが冒険者は迷宮を攻略するのが当たり前でありもし他のパーティーが全滅をしても装備を拾って売り払えるのでそんな奇特な依頼を受けるのは皆無だった。

私は装備も逃げるときに捨ててきているので粗末なショートソードと布の服しかない、

「回収するのは良いのですが全員を運べないかと」

革のザックはあるが一人はいるかどうかも怪しいし担いでいく自信もない、

「わかりました、紹介しましょう特別なザックで重さと容量は増えないものだ、ただし値はあるがな」

ギルド長のマーレスがお店を教えてくれる。紹介状をもって心配そうな以来主の執事がついてきており指定された店へと入った。

「いらっしゃい」

今は顔馴染みのマリーネが今と変わらぬ妖艶な唇をなめると私を見る。紹介状を渡すと、

「マジックザックかい、いいが高いよ払えるのかい」

そう言われていくらかと聞くと、

「どのくらいのだい、まあ所持金額で買えるとは思えないけどね」

金貨はパーティーの金貨2枚が虎の子であるのだがいくらかわからないが6人と装備を入れられるもの、

「そんなバックあるとお思いかい、と言うかあるか」

そう言うと店員に何か言うと後ろの部屋に取りに行かせた。しばらくすると黒い革のザックを抱えて戻ってきた。

「金貨200枚」

そう言われて凍りつく、所持金の百倍というか200枚ってマジックアイテムでも拾わないととてもじゃないが返せない、しかししなければ生きていけないとその頃は思い詰めていたので頷くと、

「返せるとお思いかい、金貨200枚を」

そう言われてもう一度頷くと、

「そのつもりなら売るけど担保が必要だね、それでも良いかい」

念を押され頷く、

「これに手を添えてごらん」

私はランプの形をした中心には深淵の青で吸い込まれそうな中心に手を添えるとスッとからだが軽くなり、

「終わったよあんたの命が担保、あそこで命を落としても魂はここにはいるのさ、この中には何千もの魂が入っている」

「軽くなったのが魂の重さかな」

マリーネは妖艶な微笑みで頷いた。


ザックを担いで行こうとすると、

「これはおまけだよ、火にくべれば眠りを誘う、砂時計3回たつまで近づかない様にね」

カウンターに置かれた玉3つと砂時計を礼を言ってもらうと執事に見送られ地下へと入った。


何時もは仲間でおしゃべりをしながら他の座っている冒険者の間をぬけて行くのだが一人で歩くのは不安でしかない、マリーネが「戦わずに仕事をこなしなよ、生きたければ」その言葉が頭を何度も駆け巡り迷宮へと入っていった。

幸い目標の階層までは前にパーティーがいたため付かず離れずでついて行く事ができて拍子抜けるほどだが、そのパーティーも次の階層に向かう通路に脇目もふらず進んでいき一人残されてしまった。

「さあ探すか」

そう言ったものの地図はあるがどこに彼らが行ったかと言われれば不明で恐る恐る歩き始める。パーティーなら前後でそれぞれが警戒しながら進むが一人だとそれを一人でしなければならず音で聞き分けながら通路を進んだ。


通路をぬけるとそこにはホブゴブリンとゴブリンの集団が寝ており高らかにイビキをかいており、パーティーなら奇襲かと思いながら横を静かに通り抜ける。背中は汗でびっしょりで気持ち悪さをおさえながらさらに歩き回った。何時間たったのかわからないが休憩をしようと思い地図を見て気がつく、もし生きているなら休憩できる場所に行っていると思い出しため息をつくとそこへ慎重に向かった。


「救援にしては一人だしみすぼらしいな」

部屋に入るなり私より若い戦士が立ち上がり私しかいないと知って言ってくる。

「ギルドに頼まれて来ました。バズエル家の方ですね」

部屋を見ると6人揃ってはいるが貴族の坊っちゃん以外は床に倒れておりそのうち二人はからだが欠損しており若者は頷き、

「僕以外は死んじゃったよ、ゴブリンの奇襲を受けてね。まったくどうしてこうなったんだか」

仲間を足の爪先でつっつきながら文句をいっている。私はマジックザックを下ろすと5人を中にいれ横におくと水と干し肉をだして食事を始めた。

「早く上に上がりたいんだけど、もしかして君が偵察で本体が来るのをまつとか」

私は首を横にふり食べ終わると仮眠をとるため横になった。

「おいおい、何をゆっくりしているんださっさと起きて上にいくぞ」

「仮眠をとってからです」

「雇い主の言うことが聞けないのか」

若者は頷き、怒るので依頼書をみせて、

「以来主は執事、依頼は回収すること」

「執事の雇い主は僕だぞ」

私は依頼書をしまいながら、

「依頼人は依頼人です。どういう関係であってもかえられませんし、貴方が生きてるか死んでるかは問題ではないんですよ、貴方を回収できれば」

それだけ言うとショックを受けた若者をほっておいて私は眠りについた。


どのくらい寝たのか疲れは少しだけとれており目覚めると若者がいない、トイレかと通路を見たが姿は見えず若者が消えてしまったことに悪態をつきながら重さが変わらないザックを担いで通路へ出た。

あの性格ならゴブリンの住みかを突っ切って最短で上の階へ向かうだろうと思いながら通路を急ぐ、しばらくすると金属が擦れあう音が聞こえ悲鳴が上がった。


静かに近づき通路が左におれている場所に来ると先をのぞく、そこにはあの若者とゴブリンが数匹戦っていると言うか狩られていた。

装備が良い若者にゴブリンは粗末な武器で戦っており致命傷はなかなか追わせられないが、それを逆手にとって囲み疲れるのを待っているようだった。

後ろをふりかえり何もないのを確認してからマリーネに貰った眠り玉を取り出して火口から火をつけて投げる。

楽しんでいるゴブリンは気がつかず若者がよろめいた所を石槍で何度も何度も突き刺し、私は慌ててその場を立ち去った。

砂時計を3回落ちるのを確認して通路を戻る。途中で眠り込んでいるゴブリンがいたが気にせず先程の場所まで戻った。


若者は辛うじて生きてはいたがほとんど反応がないのでザックに放り込むと若者の武器を拾って走り出す。

すぐ先には来るときに通過したゴブリンの集団がそのまま寝ており横を通りすぎて階段をかけ上がった。

そこにはパーティーが2組ほど休憩しており私が息を切らしてかけ上がってくるとビックリして立ち上がった。

「すまない走って来たから」

そう言うと一人が階段をおりてゴブリンが来てないか確認してようやく落ち着いた。

「一人で駆け込んできてどうしたんだ」

リーダーと思われる戦士がマナー的には問題なので、

「依頼を完了して逃げてきたところだ」

それだけ言うと水を飲んで上へと目指した。


後二つ上がれば地上という所で気を抜いてしまいコボルト2匹に奇襲を受けてしまう。

群れから離れたはぐれであり浅い階層に住んでいる。粗末だが布の服を切り裂くには十分であり私の左腕は肘の上を切られて力が入らない、私は下がりながら貴族の坊っちゃんが持っていたロングソードを抜くと切りつけてきたショートソードをはねあげた。

「ペキン」

鈍い音がしてコボルトのショートソードが根元からへし折れてしまい動きが止まったもう一匹のコボルトに切り返して切りつけ武器ごと両断してしまった。

自分もだがコボルトも驚き慌てて逃げる。追いかけたくても左手が痛く避けた布の服で応急処置をして慎重に地上へと上がった。


三日目の朝方であり痛む左手をかばいながらギルドへと向かう、中にはいるとギルドの職員が大慌てで傷を処置してくれマーカスが知らせを受けて降りてきて、

「どうだった」

心配そうに聞いてきたのでバックを開いて中を見せた。

「教会に運ぶぞ、装備を取り外して輸送の準備を」

マーカスは職員に指示をして回収してきた冒険者を裸にすると板に乗せて運んでいく、

「よくやった、これで上に顔向けできるぞ」

私の肩を叩き薬草を煎じて作ったヒーリングポーションをただで飲ませてくれた。


好意に甘えて3日ほどギルド内の部屋で治療を受けてようやくベットから出た。金貨は通常の報酬プラス貴族からの特別報酬として出るが、貴族の坊っちゃんの装備をまるまま返すのが条件だった。

この白い握り部分があるロングソードの切れ味は得難い業物であり、成功報酬プラス金貨30枚と言う値段以上の物だと思い考えたがマーレスの、

「これはいわくつきだ、持っていれば厄介ごとに巻き込まれる可能性がある。手をうって恩を売っておくがいい」

そう言われて頷くしかなかった。


思った以上の大金が入り、半分はマジックザックの返済に、残りでマーカスにすすめられ装備を買い直すことにした。

他の冒険者の装備はそれほど良いとは言えず売り払ってしまい防具を選ぶ、今回の経験から音を出さず、防御もそこそこで動きやすいと言う物を選ぶことにしたが街では良いレザーアーマーかチェインメイルは売っておらずマーレスに相談をすることにした。

「確かに街なら良いのでも金貨3枚で手に入るが防御をあげると快適さと隠密が損なわれるからな、わかった紹介してやろう、と言うか例の執事経由で装備を整えろ値段も負けさせて少しはかりをかえさせればいい、と言うかこの仕事を続けると言うことなんだな」

私は頷き、

「先はどうなるかわからないが続けるよ」

そう言うと嬉しそうにガイドラインを作らないとなそう言いながら執事あてに手紙を書いて後日了承の返事を貰った。



生活費の銀貨を除く金貨を持ち出してマーカスと共に貴族が住むエリアへと向かう、一般の人々も行き来はできるが警備に引っ掛かれば面倒になろうと言うことでマーレスが随伴してくれた。

何度か衛兵に止められマーレスが書類を見せると通してくれる。ようやく一軒の邸に到着すると挨拶をして中へと入る。中は赤いふかふかの絨毯が敷き詰められ、壁には人の絵やどこかの風景画が飾ってあり貴族の執事のような男が現れ奥へと通してくれた。


希望の品を聞かれたのでレザーアーマーとロングソードがほしいと言うと先ずはレザーアーマーからとなる。街では見たことがないような光沢の放つアーマーが並べられ圧倒される。

予算はと言われ金貨10枚と何処から飛び降りるつもりで言うと、

「それでは足らないのですが、公爵からの推薦状もありますし私達のブランドを守っていただいたと言うことですので勉強させていただきます」

どれだけの価格なのかと驚きながらいくつか選んで並べてくれる。どれも素晴らしく装飾も入っており、どうやら付与された魔法があり自動修復と疲労軽減がついているようで、値段は聞かないことにして選ぶ、

レザーアーマーでもしなやかで硬いラズイックと言う極寒の地に生息している巨大な猛獣の毛革を使い表面の長い毛は固めることにより刃を流してしまうと言うことでさすが貴族が利用するお店と驚きながら武器を選ぶことにした。金貨10枚としたがそんな値段ではと言われ今度はここから向こうなら良いでしょうと言われ選ぶことになった。


順番に見ていくが儀礼用なのか装飾が施され軽い、重さが欲しいが良いものが見つからず徐々に奥へと向かう、ソードだけでなく奥には物珍しい武器もあったが使いこなせるはずもなく歩いていると湾曲をした武器のひとつに目が止まった。

「これは東方の遥か彼方の国の武器でカタナと言うものです」

亡くなったパーティー仲間で一番仲の良かったナレザスが装備していて物珍しさもあり簡単に手解きを受けた。

「物珍しさもありかなりを輸入しましたが使い方が違っていて売れずに残っております」

後ろから説明を受けながらことわってひとふりを持って抜いた。

足裁きを思い出しながら切りつける。ソードは重さと力で叩き切るが刀はふり下ろしながら手前に引いて切り落とす。

「ほ~中々ですな、扱いをご存じで」

「仲間が扱いを知っていたので基本的な形は習いました」

鞘にしまうと何れを選ぶかと言うことになり見ていると封印されたものがあり聞くと、

「返品になったものです。特になにかとは聞いていないのですが」

私は吸い寄せられるように掴むと封印は霞のように消えてしまい少しだけ抜くと鞘に納めた。

これをと言おうとしたが売るのを拒む、何度も頼むとここでこれを購入したことを口外しないという約束のもとなんと金貨1枚でという話で、

「返品時点で代金は返しておりません、それといわくつきだということで」

そう言って代金を受け取った。


「毎度ありがとうございます。レザーアーマーは調整をしてお渡しをします。大きく破損した場合はお持ちいただければ無償でサポートさせていただきます。ほかに何かありますか」

そう言われて残りの金貨で以前からほしかったものを聞いてみることにした。

「アズエルの複合弓で両端の弦止めに滑車をつけてもらい手元で弦を固定するのを作成してほしいのだけれども」

普通のお店ではアズエルの複合弓はまず手に入らないしそう言う加工も難しい、しかしこの店の伝ならと思い聞いてみるとどの様な効果があるのかと聞かれたので、

「滑車は伝える力を倍にしてくれる。もともと威力がある複合弓を短弓で長弓並みに威力をませないかと思いまして、普通のお店ではまず不可能と言われたので」

そう言うと何かを刺激されたのか私が簡単に記入した図を見て、

「これが物になれば国家級の武器になります。わかりました作成しましょう。ただし物になった場合はは我々が独占的に販売を行っても宜しいでしょうか、それなら代金はメンテナンスを含め金貨で一枚とさせていただきます」

私は思い付きがそんなことになるのかと驚きながら同意して書面にサインをした。


「しかし運が良いのかな、格安で装備を揃えられて」

マーカスが帰り道嬉しそうに言うのを、

「仲間がいるのと違って一人だからねこれを使うのは最後の手段ということだから」

「たしかにな、それで回収の依頼の内容を詰めよう、階層によって金貨の枚数が増えると言うことと失敗したときの違約金も失敗して当たり前は困るから高めにするがいいか」

「わかった。依頼中は地上に依頼者のからだの一部でも戻っていれば蘇生と再構成で生き返る事ができるからそれでいいよね」

「依頼を受けたらその者が専有する。ギルドからも破棄できない」

「依頼の日数は回数ごとで、時間短縮のため転位水晶を使わせてもらえることがある」

それを言うとマーカスは少しだけ考え同意した。

10階毎に設置されている転位水晶は国の管轄かであり通常は使えない、それを使えることにより救援と回収を効率良くできればこの上なく安全である。

ギルドにつくと早速契約を行い依頼がない場合は地上か比較的浅い階層で訓練を行い、そのなかにはお金を支払ってギルドのマスタークラスの技能を持つものに色々な技術を習った。



「音をたてるな、冒険者にも気がつかれないように歩け。足をあげすぎだから音が出るんだ摺り足で進む感覚を覚えろ」

私達の前にはTOPクラスの冒険者が進んでおりその後ろを気がつかれずにつかず離れずで尾行の訓練をしている。自分では音はそんなに出していないつもりでも金具同士が当たる音等を布で巻いて静かにしていった。

3ヶ月程依頼もなくひたすら訓練を行い残っていた金貨はマスターへの支払いで1枚しか残っていなかった。


ようやくギルドから呼び出されマーカスの元へ顔を出すと、

「浅い階層だが3つの新人パーティーが戻ってきてない」

「3つもですか」

私は驚きその理由を聞くと、

「新人と言っても他のところでそこそこ稼いでいたのだろう、4階まで楽勝で行きすぎ、さらに競いあうように下へとおりたらしい」

「らしいというのは」

「4パーティーだったがリーダーが途中でまともになって撤退してきたらしい、1週間程前だ」

「1週間て今更だと、骨が残っていれば御の字だと」

「だからだ、とにかく回収をしてきてくれ骨の1本でもあれば蘇生できるからな、そいつに請求すればいい」

そう言うと依頼書を出してきたのでサインをして準備を整えると迷宮へと出発した。


黒く染めたローブを頭からすっぽり被ると衛兵に挨拶をして下へと向かう、5階位までは敵と会うことはまれであり6階からが本番となる。

集団で行動してくることが多いが、臭いを発生しない限り暗がりで静かに隠れていれば目の前を通りすぎても気がつかれないことが多く順調に下っていくと最後に見られた階層へ到着した。

「さて食糧庫は何処かな」

地図はパーティーの時代のがあるので問題はないが何処に何がいるや食べ物として冒険者を貯蔵しておく場所がどこまでかは知らないのでしらみつぶしに歩くしかなかった。


「まいった」

階層の奥にはレッサーオークが住みかにしている部屋がありそこ以外はスモールアントの巣しかなくその部屋の奥にもうひとつの部屋があると地図では書いてあった。

眠り玉を取り出して火をつけようとしたが部屋から空気の流れがあることに気がつき風向きが変わるのを期待したが無駄だった。

名案が思い浮かばず1度地上に戻ろうときびすを返した。


上に上がると衛兵にどうだったかと聞かれ首をすくめマリーネの店に直行した。

「どうだいというか依頼を受けてる最中じゃなかったはずじゃないの」

店に入り私の顔を見るなり聞いてくる。私は下の状況を説明すると、

「運がないみたいだね空気の流れは迷宮が何百年かに1度か大幅に破壊された場合に修復するために動いてそのときに歪みができて空気の流れが出来るんだよ、しばらくは続くね」

運が悪いというのは自覚しているが何とかならないかと泣きつくと、

「しょうがないね、まああんたには稼いでもらわなくちゃならないからね命を担保にしているとはいえ」

そう言いながら戸棚からいくつか品物を並べてすり鉢で粗く擂り潰して水を加えると団子を渡してくれる。

「さっきの話でスモールアントがいるっていてたろ、これをレッサーオークの場所で火にくべてごらん、スモールアントにしかわからない臭いに引かれてやって来て争いが始まるからその間に何とかしな」

そう言って銀貨10枚を支払わせ微笑みながら見送るので破壊された理由を聞くと、

「とちくるったドラゴンが迷宮に入り込んだみたいだよ、まあまだあんたたちが入れる階層じゃないから安心し、まったくあばずれめなんできたのやら」

そう言いながら店の中へと戻っていった。


迷宮に戻るとなるべく急いで下りていく、他のパーティーの後ろを気取られないように追跡をしたりでようやくレッサーオークの住みかに到着した。

中をのぞくと寝ており静まり返っている。このまま抜けていけなくもないが見つかれば退路が無いのでマリーネから購入した練り玉をオークの真ん中にある消えかけた焚き火へと放り込んだ。

10分がたち1時間がたちしばらくするとレッサーオークが起きてきたが何も起きずマリーネに心のなかで文句をいいながら上へあがった安全地帯まで移動する。

何が悪かったのかと降りてきたところから思い出すが特に思い当たらず万事休すになり違約金をどうするかと途方にくれながら部屋の隅で悩んだ、


「大変だ、下の階層がスモールアントであふれかえっているぞ、襲っては来ないがあまりの多さに通り抜けできない」

いつの間にか寝てしまったようで階段を上がってきて騒いでる他のパーティーに起こされる。上からおりて休憩をとっていたパーティーは下におりられないと言われ慌てて出発をしたがすぐに戻ってきてしまった。

私は騒ぎの横をそ知らぬ顔で階段をおりていくと通路に中型犬の大きさをしたスモールアントがあふれておりレッサーオークの部屋の方向に向かっていく。私は試しに通路に出たが気にする様子もなく移動しているので意を決してスモールアントの中に入って向かった。


後もう少しと言う所で前が進まなくなりスモールアントは壁や天井に移動して前へと向かいしばらくすると前から津波のように左右の顎を前で擦りあわせ威嚇の音を出す。

不味いと思ったが下がろうにも動けず壁際で成行を見守るしかなくいつ終わると知れない耳障りな威嚇を聞いているしかなかった。

「つぶせ」

通路の奥からダミ声の声が聞こえ争う音が聞こえてきてスモールアントも前に動き始める。角を曲がり前を見るとレッサーオークとスモールアントが戦っているようでレッサーオークとはいえオークなので力が強く中型犬ほどのスモールアントを潰している。

しかし多勢に無勢、次第に周囲を囲まれ部屋の中へと退却していくレッサーオークをスモールアントは追っていった。

私の横を通り抜けては部屋に入っていくスモールアントにとてもじゃないが入ることが難しい、部屋の外から中を観察するしかなく、部屋の四方を埋め尽くされ赤い目だけが光っていた。


もう訳がわからないまま動かないスモールアントを部屋の入り口から見ていると不意に隣同士になったアントが争いを始め私は粗末なドアを慌てて閉めた。

静かにだが中では噛み砕く音だけが不気味に続いていて茫然と聞き続ける。

しばらくすると音が消えていきドアを少しだけ開けてなかを見ると死骸の向こうに大型犬程のスモールアントとその周囲に中型犬程のスモールアントが数匹が交尾をしているようだった。


ドアを明け死骸の間をぬけ壁沿いに進むと反対側のドアに到達する。中を開けるとレッサーオークが座り込んでおり私が姿を表すと驚き、次の瞬間横を通り抜けて行ってしまった。

中には怪我で事切れたレッサーオークや貯蔵庫だったのだろうか色々なものがおいてある。そうして一番奥に目的の物を見つけた。


装備は外され丸裸で折り重なるようにおいてありバックに入れていく、食用にされたのか欠損部分もあったが3パーティー18人が揃っており装備は横に山となっていたので回収を行いレッサーオークの貯めていたそんなに価値はないと思われる物も放り込むと戻ることにした。

部屋のドアをまた少しだけ開けると目の前にアントが集まって触角を動かしている。私は目の前にいることにビックリして硬直してしまった。

大型犬程のスモールアントは私を触角で触診しておりカタナを抜きたくても目の前で動くことができない、どのくらいの時間がたったのだろうかようやく終わったのち興味がなくなったのか部屋の中央へ戻っていった。


私は慎重に部屋を横断して通路へと出る。周囲を確認すると一目散に階段へと走りかけあがると一人の冒険者がいた。

「こんにちは、ギルドから依頼を受けたんだが下の階でスモールアントが大量に行軍したというのだが知らないか」

そう言われて自分がしでかしたと言えず、

「レッサーオークの住んでいた部屋に陣取っているようです」

地図で教えると、

「そうか、原因はなんだろうか、もう少し調査をするか」

挨拶をすると男はおりていった。私はマリーネに聞かないとと思いながら地上へと急ぎギルドにいかずにマリーネの店に向かった。


「おかえり、無事に回収できたようだね」

吸い込まれるような瞳と唇で出迎えてくれたが私はカウンターの前にいくと、

「あの練り玉は何ですか、直ぐにはなにも起きなかったんですがいきなりスモールアントが大移動して集まると共食いを始めたのは」

「ビックリしたかい、どうやら大騒ぎになってるみたいだねギルドでは、マーカスが聞きに来たからとぼけたけどね。あれは惚れ薬のようなものさフェロモンを流してメスを取り合いオスが戦うと言うことだけど、分量を間違えたかしらね」

そう言いながら嬉しそうに微笑み早めにその後ろの荷物を処理しなよとと言われ慌ててギルドへと向かった。


「なにかやったんだろ、マリーネは知らないといってるが」

入ってくるなりマーカスが私を見つけてかけよりそのまま引っ張っていく、バレバレなのだろうが首を横にふって必死に否定するとため息をはいて、

「今回は目をつぶるが無茶はしないでくれよ」

そう言いながらザックの中を確認すると教会へと職員をつれて向かった。


教会に入り礼拝堂の横の建物に入る。そこには大きなテーブルがあり神父が待っていてマーカスがザックから五体満足な冒険者をテーブルにのせると神父が詠唱を始めた。

テーブルが光を発してあたたかい感じに包まれ屋根を突き抜けて羽が8つある天使が降りてきてテーブルに寝かされている冒険者の額にキスをした。

冒険者は赤みをまして目をさます。体を起こすが目の前の天使は見えていないようでギルドの職員が椅子に座らせるとマーカスが冒険者をおいた。

同じように天使がキスをすると生気が戻り目をさましていくのを見つめ続け18人全員が生き返った。


蘇生が終わり天使が帰るのかと見ていると私の目線に気がついたのか天使がすべるようにこちらに来ると微笑みながらおでこにキスをしてくれる。

信心深くもない私はどうしたらいいのかと思っていると目の前にマーレスがいて、

「さっきから呼んでるのに始めてで呆けたかな、支払いをギルドで行うから来てくれ」

そう言うと部屋を出ていってしまった。

私も気を取り直して出ていこうとすると目の前に背丈の小さな年寄がおり挨拶をしながら横を抜けようとすると、

「守護天使が祝福を授けてくれるとは、感謝をせねば祝福あれ」

そう声をかけてくれたがなんと返事をしていいかわからずギルドへと向かった。


「金貨27枚だ3パーティー分で」

マーカスに金貨を渡されあまりの高額に動揺しながらしまう。依頼書にサインをもらいそれをそのまま渡すとなにも言う気もなくすぐにマリーネの店へと戻た。


「全部渡したら生活と必要なものが揃えられないよ」

先程の金貨の皮袋をそのままカウンターに置くとマリーネはあきれながら金貨を20枚取り出して後は返してきた。顔が赤くなるのを自覚しながら皮袋を受けとると必要と思ったものを色々相談して購入していったところで目が覚めた。


いつの間にか寝てしまったのかマーレスはおらず私は裏の納屋にいくと干し草の上で寝てしまった。

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