貴族
「被告人ドレークの審判を行う。」
そう言って始まった。
私を訴えたグロリアが裁判長であるバルアミア伯爵をはさんで反対側に立っている。
昨日説明したことををバルアミア伯爵が読み上げグロリアに同意を得ていく。
そして私には、
「被告人はこの事について何かあるか」
「はい裁判長、当然の権利である弁護人をつけさせていただいておりません。つきましては私の弁護人としてギルド長であるマーカス氏を召喚していただきたい。」
「弁護人については権利だがマーカスについては却下する。私が用意した弁護人をつけること」
「マーカス氏以外は選任いたしません。速やかにお願いします。」
「却下だ。被告人がもし選任を拒むなら弁護人無しでの審判とする。よろしいかな」
「そちらの用意した弁護人については私の仕事の専門性についての知識も持たないので拒否します。マーカス氏の召喚を再度願います。」
私が拒否をすると、余裕であった伯爵は苛立ちながら、
「書記官、被告人んが弁護人の選任を拒否したと記載しなさい。」
「それなら裁判長が私が選任をしたいマーカス氏の召喚を拒否したと記載していただきたい。」
「被告人の申し立ては拒否する。書記官記載しなくてよろしい。」
そう言われて当の書記官は困惑してしまうが伯爵が高圧的に言うと従わざる終えなかった。
「それでは審判を始める。被告人がゴブリン等と結託してパーティーを誘い込み不当な利益をむさぼっていたというのは事実か」
そう聞かれグロリアは同意する。
私は、
「この件については契約書の記載にそって当事者の申し立てはかならずギルドを通して行うことになっております。なので当事者たるグロリアが訴えること事態契約不履行でありこの審判が不当であることを物語っております。裁判長」
私は言っても伯爵が言うことを聞くとは思ってもないが、いやがらせと時間稼ぎをしようとそう発言する。
「この事については国の安全に関わるものであり、被告人が敵を地上に引き入れて争乱を起こそうと言う意思が明白、よって今回の審判は必要ということで何ら問題はない。」
「裁判長、この迷宮が発見され今まで迷宮のモンスターが地上にまで出てきたことはないと公式な報告書にも記載されております。」
「それは怠惰で怠慢な衛兵が見落としているか報告していないだけだ。被告人審判の邪魔をするなら欠席審判で進めていくぞ」
「それでは結託した証拠をお見せください。」
「証人グロリアが見たと言うことだ。」
「物的証拠もなく状況証拠のみでは信憑性に乏しいと、それにその場にいた他の2人が証人として召喚されていないのでそれを希望します。」
「被告人の申し立ては却下する。」
多分他の2人は先に言ったギルドからの召喚でないので証人として拒否したと言うことだろう。
「証人さえも却下する根拠を裁判長として示して頂きたい。」
先程からかなり時間が立っているのに遅々として進まない現状に伯爵は苛立ち、
「被告人に猿ぐつわと椅子にでも縛り付けておけ、度重なる裁判長に対する侮辱の数々許される物ではない。」
そう言うと裁判長の私兵なのか騎士が私を押さえつけて猿ぐつわをかまして椅子に縛り付けた。
バルアミア伯爵は満面の笑みを浮かべ、
「ここからは被告人が異議を申し立てなければ同意したと見なす。書記官いいな」
そう言って私の意思に関係なく進められ、
「本来は何度か審判を開かなければならないが証拠の正確さと被告人が異議を申し立てないのでここに結判する。」
そう言って勝ち誇ったように私を睨み付ける伯爵であった。
本格的に不味いことになり何かうてることは無いかと考えたが声も出せずましてや身動きもできないので伯爵を睨み付けるしか無かった。
「それでは今回の裁判についての・・・」
そうバルアミア伯爵が勝ち誇ったように言い始めていると後ろが騒がしくなる。
後ろに向きを変えたいが出来ず聞くことしか出来ない。
「お止めください、ただいま審判中でございます。」
誰かが強引に入ってきたらしく混乱で騒がしくなり、途中まで判決文を読んでいたバルアミア伯爵が怒りながら、
「神聖な審判に土足で踏み荒らすのは誰だ、侮辱罪として逮捕させるぞ」
そう私の後ろの騒ぎに叫ぶと、
「バルアミア伯爵、貴公が行っている審判について公式な書類が上がってこず行われているが、越権行為と判断してよろしいかな」
「クファームル伯爵、私の官職によりおこなっている。邪魔だから出ていってくれ」
「バルアミア男爵、国王陛下から色々お聞きしたいと言うことで宰相であるミュッケンベルガー公爵から直ちに公聴会を開くのでこのまま一緒に来ていただきたい。これは命令である。」
「クファームル男爵、何かの間違えであろうしかし国王陛下が呼ばれているなら出向かなければならないがこの服では不敬になろう、着替えをしに屋敷へ戻る。」
そう言って部屋を出ようとするバルアミア伯爵を、
「近衛騎士、バルアミア伯爵を逮捕せよ。」
そう言うと赤いマントをいにつけた騎士が前に現れバルアミア伯爵を拘束した。
「遅くなってすまない。」
そう言いながら私の視界前にマーカスが現れ私の猿ぐつわをはずしながら、
「何処に監禁されどこで審判が行われていたか全くわからなくて遅くなった。」
私はためていた不満を口にして、
「それにしては良いタイミング過ぎるな、何処かでスカウターに監視させてたのではないか」
そう言うと顔色も変えず無言で私とイスをむずびつけている縄を外してくれた。
「それとこれから一緒に王宮へ来てもらい今回の事について証言をしてもらう。」
そう言いながら青い顔をしているグロリアにマーカスは、
「この件についての申し開きは後程聞く」
そう言うとギルド職員に連れていかせた。
私はマーカスと共に馬車に乗り進む。
「流石にその格好では不味い、これを着てくれ」
マーカスが紺色の洋服を取り出し、私は髪をといて体を拭くと用意されていたものに着替えると馬車が止まっておりた。
ここは始めてくる王宮であり、私はおのぼりさんのようにマーカスに呼ばれるまで石造りの豪華な宮殿を見上げていた。
「いつまで呆けている。謁見だ礼節を忘れるなよ俺のやった通りで良いからな」
そう言って衛兵に連れられ大きな部屋に入る。謁見の間ではなく執務室の様なところらしく中にはクファームル男爵やバルアミア伯爵も数人の貴族と共にいる。
「ギルド長マーカス証人を連れて参上いたしました。」
そう言うと机に座っている横の男が、
「職務ご苦労、それでは始める。」
そう言って今回の事の経緯をそのまま話始め最後に、
「バルアミア伯爵、今回の事で申し開きはあるか」
「今回の事は書類の行き違いは有りましたが職務で行っていたこと、問題になるとは思えませんし、ましてや冒険者の言うことなど真実が有りましょうや」
そう言ってのらりくらりと回避する。
「そこの証人、何か言っておく事があるか」
私は一礼して進み出ると、
「今回の事はモレノ侯爵閣下からの指示でおこなっているとバルアミア伯爵から言われました。」
「ほう、そなたはモレノ侯爵閣下を誰かと心得ているか」
男は目を細目ながら私に言ってくる。私は以前にマーカスからこの様な事でもめたときに黒幕として聞かされていたがあえて始めて聞いた風を装い、
「存じません一介の冒険者が名前を知っていてもお金にはなりませんから」
そう彼らがいだく冒険者、金にならないなら動かないと言うのを後押しするように言うと皆が頷いた。
「もう良いぞ下がれ」
そう言われてマーカスと共に王宮を後にすることにした。
「これでバルアミア伯爵はとかげの尻尾切りだな、しかしあの名前を言うとは思わなかったぞ」
「最初の尋問の時にかまをかけたからな、あの伯爵は否定しなかったからしゃべっただけだ、しかし上の権力闘争にギルドが荷担するのは良いのか」
「ギルドも後ろ楯は必要であり、先代のギルド長のように私利私欲で運営されると困るだろう。」
そう言われ私のパーティーが全滅した頃はギルドはお金を徴収するだけであり、冒険者にたいして何の恩恵も与えず、マーカスが宰相の後ろ楯を得てひつくりかえすまで続いたことを思い出しながら同意した。
王宮の通用門を抜けようとすると、
「そこの冒険者マーカスだな」
そう言われて振り向くと白い刺繍の施された服と体に似合わない長剣を身に付けた少年が立っていた。
マーカスは膝まづき私もそれに習うと、
「ライネル様ご無沙汰をしております。元気で過ごされておりますでしょうか」
そう丁寧に言うと少年は少しだけすねたようにしながら、
「元気だが最近来てくれないのでつまらない、ここであったのもよいタイミングだ久しぶりに王宮の外に出るぞ」
そう言われてマーカスは慌てながら、
「ブルワース伯爵から怒られてしまいますぞ、改めてではいかがでしょうか探しておいででしょうし」
「ブルは隣国の外交使節団との話し合いで手が放せん、なので問題はない。」
そう言うと横を通りすぎて門の外へと歩き始め、マーカスは頭をかきながら後についていき私も遅れながらついていった。
なれたものなのかマーカスが手招きするとギルド専属の冒険者が現れさりげなく少年を護衛していく。
私は面倒は御免だと思い道を外れて宿へと戻った。
「おかえり、無事に帰ってきたようだな、しかし人間とは面倒だな今度王宮ごと吹き飛ばそうか」
そうさらりと言うアポロニアに感謝しながら私は酒を飲もうと女将が持ってきたジョッキを手に取ると目の前に少年が立っていた。
「おまえはさっきマーカスと歩いていた男だな色々聞きたいことがある。直接話すことを許すぞ」
そう言って私の前に座る。アポロニアは気にする様子もなく男達と酒を飲んでいた。
「ありがとうございます。と言うかマーカスと護衛の者はどうされましたか」
「まいてきた、それよりも最近噂になっているドラゴンと結婚したものがいると聞いたが本当か」
そう目を輝かせながら私に聞いてくる。横にいるのがドラゴンと言えず。
「その様に聞いております。」
「そうか、どこの誰だかなかなかすごいな」
そう嬉しそうにして、
「どこの誰かは知っておるか」
そう聞かれ苦笑しながら、
「そう言うことはマーカスに訪ねられたほうがよろしいかと、ギルドの長ですから」
「そうだなマーカスなら知っておろう」
そう言いながらアポロニアが一気に飲み干すのを見て驚き、
「しかしあの婦女子はすごいな男相手に酒を飲み干す。」
「私の妻にございます。」
「そちのか、さらに飲むのか王宮の男でもあそこまで飲むのはブルだけだな」
そう一人で頷いて飲み比べを続けているアポロニア見いっていた。
私はまともな食事を取っていなかったので食事を頼んでおり、それが出てきたので食べることにしたが、少年がこちらを黙って見ているので食べるにも食べられずいい加減にマーカス探しにこいと呟きながら、
「よろしければ食べられますか」
そう言うとパッと明るい笑顔で、
「そうか、部屋を抜け出してからおなかがすいていたからな、父上も市中の物事を体験しておくことを薦めていたからな、よかろう」
そう言いながらトレーごと持っていき食べ始め、私は仕方なく女将にもうひとつ頼んだ。
「なかなか辛いな、でもいつもの食事と違ってなかなか美味しいぞ、この肉はなんだ、野うさぎか少し固いが肉に甘味がある。」
そう言いながら食べつくし、私の分が来ると物足りなそうな顔をするのでそのまま差し出してもうひとつ追加した。
「すまない、普段は決まった量しか提供されないので物足りないのだ。」
そう言いながら嬉しそうに食べ始め、食べ尽くしてその場でウトウト船をこぎ始め寝てしまうとようやくマーカスが探し当ててきた。
「ドレークすまない食事代だ。」
そう言って銀貨を一枚渡され、
「油断していた。うちの連中がまかれるとは思わなくてな、ある意味一番安全な所だな」
そうアポロニアを見ながら答えた。
私は疲れからまだ飲んでいるアポロニアをおいて先に寝ることにした。
翌朝まだ寝ているアポロニアをおいてお礼の紅茶等をもって13階へおりる準備をして迷宮入り口へと向かう。
いくつかのパーティーが集合待ちをしているらしく数人は私に挨拶をしてくる。
私も挨拶早々に迷宮へともぐる。
今回は私用なのでテレポーターは使えず一つずつ降りていくことになり、気配を押さえながら戦わずに進む。
途中で数度後ろから誰かがついてきているようだったが、敵意はないのでほっておいて降りていくと7階のコボルトの階層で敵意を示さなければ戦いにならないコボルトの横を抜けて行くと後ろで悲鳴が上がる。
面倒は御免なのでそのまま行こうとするとコボルトの口笛が飛び次々とコボルトが私の横を抜けて後ろへ向かって行き、口笛が何度かやり取りしていると私の前にコボルトの戦士の中の戦士と呼ばれているマミヤが現れ、
「人間の冒険者、人間の子供が騒いでいる。」
それだけ言うと口下手なコボルトはついてこいとジェスチャーをして私は戻らざるおえなくなった。
戻るとかなりの数のコボルトが集まってきていたが、殺気立ってはおらずマミヤが口笛を吹くと皆が避けて私達を通してくれる。
最前列に出るとそこにはライネル少年がなぜかおり、泣いていてコボルトはなんとか慰めようとしていた。
「ライネル様なぜここに」
予測はしていたが聞いてみると、
「そちを追ってここまで来たのだ、途中は真似ていけば通り抜けられたのだがここはいきなりその方が通り抜けていき、私は慌てて行こうとして転んでそしてこのイヌに話しかけられたが訳がわからなくて」
そう言いながら安心したのか泣きながら私の胸に飛び込んでくる。
「ライネル様よくお聴きください、コボルト達はなまりはありますが聞き取れますよ」
そう言いながらマミヤに礼を言うと安心したのかニコニコしながら解散していった。
「しかしよくこられましたねその様な格好で」
そう言いながら淡いブルーの上着と白いズボン、昨日と同じ長剣を身に付けており金具がむき出しなので擦れて金属音がする。
「私は私用で13階へ行くのですが、ここなら悪さをしなければ安全ですのでお待ちいただければ急いで戻ってマーカスの救援をよこします。」
そう言うと私から離れ、
「よは聖騎士バルドフェルドの末裔である。いかなる困難からも逃げ出すことはない」
そう言って私をまっすぐ見る。
バルドフェルドとは旧国時代に襲った厄災に立ち向かい、この国の王となった英雄であり子供の頃に物語をよくお婆さんから聞かされたのを思い出しながらも、
「しかしこの先危険はいくらでも有ります。自分一人ならですがライネル様の安全は無理です。」
そう言うと腰の長剣を叩きながら、
「自分の身は自分で守る。」
そうさっきまで泣いていたのはどこへやらで歩き始めてしまう。
私はため息をつきながら、
「わかりました、このまま行くと言われるなら私の指示には従ってくださ」
そう言うと、
「頼むぞ」
そう言われて笑顔で返すとまずはコボルトの露天が並ぶ村へと向かった。
「冒険者と言うのは迷宮の怪物を倒して名声と富を得るのではないのか」
「一般的にはそうですが私は単独で行動するので戦わずに済まされるなら話し合いもします。ここのコボルトは元々好戦的ではなく冒険者が来れば口笛でお互いに知らせ隠れてしまいます。ここの村も一番奥にあり、なおかつ下の階層におりるには大きく道を外れるので来ることはほとんどありません。」
そう言いながら村に到着するとコボルトの戦士に挨拶をして中へとはいった。
この時期は出産の時季なので赤ん坊の泣き声が響き渡り賑やかである。
私は雑貨屋に向かい革の紐や薄汚れたローブを購入すると少年の金具の部分に革を巻いて音を消しローブを着せた。
「これが冒険者か」
そう頷きながらチェックしていると老コボルトが私の前に進み出てきて、
「マミヤからその方がいるときいて慌ててきたのだが、すまんが薬草などをわけてほしい産まれたばかりの赤ん坊の調子が悪くてな」
そう言われて単独行動をする私は薬草学も勉強していたので容体を見せてもらうことにした。
「これはファナ熱かな、脇に湿疹もあるし薬草ならここにあるから煎じて飲ませれば治りますよ」
私の知識でなんとかなりそうなのにホッとしながらバックパックから薬草を取り出すと口笛が飛びしばらくすると沢山の赤ん坊を抱えた母親達が集まって心配そうな顔で私を見ていた。
「あとこれしか薬草がないから、13階で入手できるから戻るときに持ってくるよ」
そう言うと老コボルトと母親達はホッとして感謝を伝えてくる。
私は少年を連れて急いで向かうことにして8階への階段へ向かった。
「その方あんなことまでするのか、それと薬草学までも」
「生きるためですお互いに、彼らにだって生活はありますから」
そう言いながら私は8階に下り一人なら気づかれずにだが少年には無理な時には弓を取り出して暗闇から大きな芋虫を倒していく。
「しかし色々武器を持っているんだな、その弓は普通に使っているのよりも威力があるがどうなっているのか」
そう聞かれたが企業秘密なので笑いながらごまかして矢と戦利品を回収して進んでいく。
12階までいつもより時間がかかりようやく到着して抜け道を使うか迷ったが安全が一番と思いそのまま向かった。
「ここを降りていくのか」
ロープに吊るされた縦穴をのぞきこむ少年に、
「安全ならここです。ロープでお互いを繋ぎますから」
そう言うと緊張した面持ちで頷くので腰にロープを巻いて固定する。
「す、すまないがさきにいってもらえるか」
そううわずった声でお願いをしてくるので頷いており始める。
上を見ると怯えながらもロープをつかんで降りてくるがおっかなびっくりで、私は悩みながらも降りてくるのを待っていると、
「きゃっ」
そうかわいい声が上がった瞬間、顔をあげた上に落ちてくる。
私は子供とはいえ顔で全体重を支えており、両足と右手で体を支えるとまずいかと少し躊躇したが左手で少年の腰をつかんでずらして私の前に向かい合うように下ろす。
目をつぶって怖さに耐えているようで、私は腰のロープを自分と少年に巻くと再度おり始めた。
倍以上の時間がかかりようやく降りてホッとすると、
「お前だったのか、足跡を追ってたら見つけたけどわざわざこんなところから」
そう言われて慌てて振り返るとドガギャクが立っており私を見下ろしている。
私がなにか言う前に少年が気がつき、音にならない押し殺した悲鳴をあげて気絶してしまい、私のお腹のした辺りが濡れ始めたので慌てて下ろした。
「なんか小さいのをつれてるがなんだ」
「この子はおまけというか迷宮で拾っただけだ、マーレスのところに行こうとしてただけだから」
「そうか、なら一緒にいくかどうせ戻るしお前に興味があるからな」
ドガギャクはニヤリとして私についてこいと歩き始め、私は少年を両手でかかえるとついてった。
「なんだい、あんた達は何時からつるむようになったんだい」
そう驚きもせず呆れた顔で私達を迎え入れてくれるマーレス。
「俺は途中であっただけで用事はないけどな」
そうドガギャクは箱の上に座り私は少年を下ろすと濡れたズボンを脱がして下着と共に洗おうとする処で手を止め、
「マーレス、すまないけどズボンと下着を脱がせて毛布でくるんでやってくれ」
「なんで私がしないといけないんだい」
「そりゃ同性だから、私がやれば問題になる。」
「昔は同姓の間違いだろう、うひひひひ」
ドガギャクが笑うと、
「バカだね今だって女だよ試してみるかい」
そう言いながら驚いた後に大笑いしているドガギャクをほっておいて、少年でなく少女であったライネル様を抱き上げると別の部屋に連れて行き、ドガギャクは相変わらず笑い転げており、隣の部屋では悲鳴が上がりまた静かになり2回目の気絶かなと思いながらも脱力感満載で椅子に座りこんだ
「いい加減いつまでバカな顔で笑っているのさ、あの子目をさまして私を見るなり悲鳴をあげてまた気絶しちまったよ。失礼な子だね」
そう言うとドガギャクはさらに笑い転げていた。
「ありがとう、それとこれお礼の品物です。紅茶もあるから」そう言いながらバックパックから大きな袋を取り出し渡すと、
「紅茶かい、すぐに入れるから何時までも笑い転げてないでお湯を沸かしとくれ」
そう言うとドガギャクは起き上がりかまどに火をくべてお湯を沸かし始めた。
「それと上の階層で流行り病が流行してこの草がほしいけどあるかな」
そうバックパックから草をとりだし渡すと、
「マイネリだね、在庫は少しだけだけどドガギャクこれを急いで集めさせておくれ、報酬はいつものとおりだよ」
そう言うと、
「マイネリ嫌いだ、苦くて子供の頃に飲まされた」
そう顔をしかめながら頷くと出ていった。
「待っている間に紅茶でも楽しもうかね」
そう言いながらお茶のいいかおりと共にカップを出してくれ、少し値は張ったがマーレスの嬉しい顔をみてホッとした。
「しかし相変わらず厄介ごとを持ってくるねあんたは」
「自覚してますけど、今回のは不可抗力です。」
マーレスは微笑みながら、
「まあいいさ美味しい紅茶を持ってきてくれるなら大歓迎さ」
そう言いながらお茶を飲んでいると足音がして私の背中に隠れる。
「ライネル様、お目覚めですか。」
私は軽くふりかえるとはずかしそうに立っているライネルが頷く。
「紹介します。私の友人であるマーレスです。コボルトの薬草を手配してもらってますので座って待っていてください。」
ライネルは頷くと椅子に座り、
「さっきは申し訳なかった驚いて悲鳴をあげてしまい。私はガイエスブルク帝国公女ライネル・イシュザークと申します。お見知りおきを」
マーレスは紅茶を入れたカップを差し出しながら、
「丁寧な挨拶だね、私はマーレスここで仲介者としてこいつと腐れ縁でつながっているものさ、敵意を持たなければ襲ったりしないから安心おし」
そう言われてライネルは頷くと紅茶を飲んでホッとした顔になった。
「手配してきだど、裏の納屋に入れとくように言っといた。」
そうドガギャクが入り口を狭そうに入ってくるとライネルは悲鳴をあげて私の後ろに隠れる。
「ノックぐらいおし、ただでさえ図体がでかくて凶暴な顔つきなんだからこの子が怖がるじゃないか」
そうマーレスがきつめに言うと、
「顔も体も生まれつきだからしかたないじゃんか」
そう珍しくドガギャクがすねて抗議している。
「改めて紹介する。ドガギャクだこの階層のゴブリンを束ねる王だ、ライネル公女だ上の国の王の娘だ。」
「おれっちはここの王だ、こないだも大勢の人間を退治したからな、何度でもこい受けてたつ」
そう偉そうに言うとライネルは何かつぼに入ったのか笑いを押さえながら、
「先程は失礼しました。ガイエスブルク帝国公女ライネル・イシュザークですお見知りおきを」
そう言って手を出すとドガギャクはドキマキしながら私を見たので、
「人間の挨拶だ、手を軽く握って友情を深める。」
そう言うと差し出された手をおっかなびっくり握り嬉しそうに笑って、
「これで俺、公女の友達になった。」
「はい、これから末長くよろしくお願いします。ドガギャク王」
「おう、何かあったら言えよ俺様が蹴散らしてやるからな」
そう言いながら少女と私の倍はあるホブゴブリンは嬉しそうに友好を深めていった。
「しかし上も大夫キナ臭いようだけど大丈夫なのかい」
私はマーレスが地上の事を知っているのに驚いていると、
「おまえさんだけじゃないんだよ上との繋がりは古いしね、それと連れてきたあの子も微妙なようだしね。」
「微妙って」
「上には3人の公女がいるんだけどね、たしか一番上がエリザベータ、次がマルガリータ、そしてあの子が多分末の子だね。上は大貴族がついているはずだけどあの子の後ろ楯は一昨年当主が亡くなり勢力が削られてるて言うはなしだよ、そんなことも知らないのかい」
「ただの一市民ですから、浮き世の話は縁がないですからね。」
そう言いながら大きいのと小さいのが楽しそうに話しているのを見てため息をつく。
「皇帝ももう歳だからね、跡継ぎを決め婿を取らなければならないんだけれどもすんなりうまくいかなくて一触即発のようだよ」
「それでか、前回地上に上がったときに訴えられて政治闘争に使われたらしく宮殿に始めていって顔を見たのが初めて」
そう言いながらライネルを見つめる。
「そりゃ、場合によってだけど恨まれる可能性もあるねきょうつけな、下手したら武力介入も有りうるようだし」
「ご忠告感謝するけど何に注意しなければならないのかなんてわからないし、いざとなれば迷宮に逃げ込んでほとぼりが覚めるまで待つしかないね」
私はため息をつくと地上に戻るために立ち上がり、ドガギャクはお名残惜しそうにライネルと別れを告げた。
納屋で山のような薬草をバックパックに詰めていき挨拶をすると出発をする。
「怖そうな王でしたがすごく優しい方だったんですね。」
そうライネルは嬉しそうに私の後についてきて何度か後ろを振り返り手を振る。
他のゴブリンに見つかってもドガギャクが何とかするだろうと思いながら帰りは通常の階段で上がり元気を取り戻したライネルを連れてコボルトの村に戻ってきた。
私はバックパックから薬草を取り出しては嬉しそうに頷くコボルトたちに渡していく。
「これだけの量済まないね、実は代金について相談したいのだが」
そう言うと、
「代金入らないです。よねドレークさん、困った人には手をさしのべないと」
そうライネルに言われてしまい、マーレスに払った銀貨を思い出しながらも頷くしかなかった。
コボルト達は喜び次々と私達に握手と礼をいい母親達は薬草を煎じはじめた。
村を出発すると、
「すいませんドレークさんでしゃばった真似をして、昔から甘いと言われるんですけど困った人を見捨てられなくて」
そう言いながら謝ってきたので、
「銀貨は痛いが良好な関係を気づくこともできたから良しとしよう。しかし帰ったら大目玉じゃないのかな」
そう言うと少ししょげたがいいことが多かったようですぐに元気を取り戻していた。