龍姫
「お帰りなさい、って言うかその臭いはきついですね」
ヘルネリアを衛兵経由で教会に呼び出してもらいようやく来たのだがいきなりいわれる。
「もう鼻が麻痺してわかんないんだけどやっぱりか」
教会の井戸で水浴びをしたのだが服などにもついているらしくさらに回収したパーティーひどい臭いであり神父も難色を示したがヘルネリアが割り増しで支払うと納得させてしまう、まあ払うのは蘇生させられる面々なのだが、
グラハム神父は何時ものように、
「我が父なる神よ天寿を全うせず父のもとへ向かおうとしているこの者の魂を呼び戻し、肉体の欠損をおぎないたまえ。」
6度唱え成功させる。
今回の請求は1人金貨10枚と銀貨4枚でギルドと税金で金貨2枚引かれ8枚かけるの6人とかなり良く起こされたマーグリス達はさすがはトップチーム、即金で支払いさらに装備も買い戻してくれ直ぐにでもなのだろうが蘇生させられた二人、そう焼かれた二人は蘇生が成功して意識が戻った瞬間から悲鳴をあげ精神崩壊を起こしてしまっておりパーティーとして成り立たなくなってしまっていた。
私はその足でマリーネに残金の支払いに向かった。
「これやるから小川でからだ洗ってきな、裏の井戸使うんじゃないよ、服も焼却してきな」
顔を出すなりマリーネはやな臭いを感じて棚から固形の塊とローブを渡すと追い出され、
「それ全部使い終わるまで来るんじゃないよいいね」
仕方無しに町外れの小川に到着すると全裸になり水を浴びて固形物を擦ると見事に泡立つ、王公貴族なら石鹸を使うが冒険者はワラを丸めたもので擦る位なのでだんだん嬉しくなり言われた通り夕方まで使いきり服を燃やしながら体を乾かしマリーネの元へ戻った。
「まだ少し臭うけどすぐに消えるだろう、しかしあの年増の臭いをさせるなんて巣にでももぐりこんだんだね」
私が頷き詳細を話すと厳しい顔で売り子の女の子にギルドに使いをいい、
「面倒なことになりそうだね、しかしお前さんの話だと年増じゃないね」
何が年増なのかと思いながら来てから話すよと言っているとヘルネリアとギルド長が慌てたやって来た。
「話を聞くとマーグリスて言う連中は逆鱗に触れちまったようだね、幸い地下迷宮の女王ではなくその妹みたいだけど」
マリーネの説明だとこの地下迷宮の主でドラゴンなのだが、
「私の知ってるのより若くて小さいみたいだからね、あのしわしわの年増じゃないみたいだから転送で来るとは思えないけど、多分20階のベースキャンプは壊滅、生態系も変わって面倒なことになりそうだね、ギルドとしてどうするんだい」
ギルド長の顔は真っ青通り越し真っ白でフリーズしておりヘルネリアが代わりに、
「20階の調査その周辺の階もまとめて調査をお願いできますか、報酬は金貨1枚で失敗しても違約金は必要ありません」
私にふってきたのであわてて、
「ギルド専任のレンジャーがいるじゃないですか、偵察なら私より能力高いでしょう」
少しだけ眉が動くヘルネリアは、
「そうなんだけどベースキャンプに飛ぶ転移装置の場所が場所だし、使わないで15階経由だと半日以上の遅れだから、非常事態と言うことで金貨1枚で」
命をなくす危険が有りすぎる依頼を受けるのは余程のバカのはずだが、この仕事を始めるにあたり世話になりすぎているヘルネリアに断れるはずもなく受ける代わりにここで購入して使用した品物の支払いを頼んだ。
「あの年増の嗅覚を誤魔化せるとは思わないけど、閃光虫希少価値よ、外から強い衝撃を与えると目も眩むほどの光を放つの直接見ると大変よ」
マリーネはギルドの支払いと聞き見たことも無い物を薦めてきており価格を聞いてギルド長の顔が引きつる。
「まあ追われたら最後こないだみたく運がなければアポンだから気を付けてね」
美しい顔で言うのだが私が戻らなければお金は支払ってもらえないと聞くと美しい笑いで、
「あんたなら使いまくって何がなんでも生きて戻ってくるよ、精霊の導きさ」
そう言って何かを唱え送り出してくれた。
「転送先がジャイアンアントであふれていたら一発死亡」
的確な助言いつもありがとうございますヘルネリア泣きそうになりながら、
「祈っておいてください」
「私の信仰している神、解放と自由と死を司るバミューダバンツでよろしいのでしたら」
なんであんなマイナーなと思いながらその無表情に納得してしまいながら転送した。
「酷いなこれは」
そう思わず口に出してしまいそうになるほどジャイアントアントの死骸が散乱しており全滅かと思いながら地面が見えないので死骸の上を歩きながらベースキャンプに向かった。
ベースキャンプが見えてくると火を起こしているのか煙がいくつか立ち上っており安堵しながら急いでいくが見えてくるなり伏せた。
リザードマンやワータイガーそしてワーウルフまでもおりガス達も姿が見えあわてて駆け寄った。
「さっきようやく下の階に消えてったと、生きているのが不思議だ」
疲れた顔で水などを怪我人に運んでおり私は状況を確認するので下へ向かうと言うと、
「頼む刺激だけはしないでくれ、原因はマグリース達なんだろうがあれが又来たら俺達気が狂ってしまうぞ」
そう言うと人種を越えて頷き震えてしまっておりかなりのトラウマだなと思いながら下の階へと下っていった。
23階へ誰とも会わずに到着してあの洞穴が見える場所に隠れて様子を見る。
寝ているので静かだが何が原因でこうなったのか調べなければならないがあの中にはいるのは御免だと思いながらドラゴンが出てくるのを待つことにした。
3日後、
寝ているのか出てこずされとて中にはいるのも危険だし眠り草でも効果は半分以下、とにかく洞穴へ近づこうと思い穴の上の岩に到着した。
だが中の様子はわからず何も出来ずに寝ていると目の前に炎が立ち上った。
悲鳴を圧し殺して岩影に飛び込む、どうやらドラゴンが入り口に出てきて外に向かって炎のブレスをはいているようで 、周辺の動物などもパニックで逃げ出しており自分も撤退と思っていると、
「何を吠えておる。細かいことで怒るな妹よ」
そんな声が聞こえ甘えた鳴き声が聞こえる。恐怖心よりもドラゴンの動きを止めた何かを見たい衝動が強くなり匍匐前進で岩の端に進むと下をのぞきこんだ。
ドラゴンは首を下にまげ何か人の姿に顔を押し付けて甘えた声を出している。
「これをやるから大人しくしておきなさい、近所迷惑なのだから」
そう言うと何かを咥え寂しそうに鼻声を出してドラゴンは戻っていった。
私は見つからないように又匍匐前進で岩影に向かう、妹と言っていたあの人らしき人物は誰なのか考えながら進んでいると何かに頭をぶつけた。
木とか岩とかは無かったはずと思っていると、
「その方も今回の原因の一旦があるようじゃがどうかな」
美しい声だが殺気が私の心臓を掴み悲鳴が出るのを圧し殺す。ゆっくりと顔をあげるが闇夜で黒いシルエットしかみえず死んだなと自覚をすると落ち着くことができた。
「原因の発端を回収しに来ただけで財宝など冒険者が集めた物は全て置いていきました」
シルエットに向け言うと、
「妹も取られたおもちゃは全て揃っていると話していた。しかし眠り草で眠らせたことは許さん」
そう言うと首筋に腕が延びてきて体を腕1本で持ち上げられる。
「それは恐怖からと遺体を回収したかっただけです」
吊り上げられたままどのくらいの時間か静けさが戻り私ももがくのをやめてその状態で暗闇を見つめる。
「その回収したパーティとかはどうした」
そう言われたので地上で生き返らせ4人は普通に戻ったが2人は恐怖で狂ってしまってると説明、ギルドに話して罪を償わせると言うと、
「償わせるかだがどうやって、それを聞きたいから私も上にいこう」
その提案に驚いて何も言えずにいると下ろされて案内しろと言われ拒否できる立場でもないので階段に向け歩き始める。
「しかし私が生まれ200年、妹が生まれ100年たつが人が増えて騒がしくなった。そうそう上には色々面白いものがあるときいた行くぞ」
勝手に発言しておりこのまま地上へ連れていっても良いのか自問自答しながら階段を上がり、色々打ち捨てられた物で金目の物を広いながら時々まだ喋り続けているドラゴンの姉を見てため息をはく、
「そうそう名前を聞いていなかった。アポロニアと呼ぶがよい」
「ドレークと呼んでください」
そう言うと色々聞いてくるのを答えながら20階へと戻った。
「なかなか暴れたようだがまだまだ、妹に注意しないとな」
地上につれていくのは不味いと確信しながらベースキャンプに到着した。
私が到着すると全員が私ではなくアポロニアを見ている。美しいから見とれているのかと考えていると人以外一斉に立ち上がり頭を下げた。
「久しぶりじゃな、元気そうで何より。妹はしばらく出てこないから家にもどれる」
そう言うと怪我人を助けながら亜人達は自分達の住みかへ一斉に移動を開始して気がつくと人だけが残った。
「ドレーク誰なんだ」
ガスに聞かれたのでドラゴンの姉アポロニアと答えると驚き顔を青くする。
隅へつれていかれどうするのかと聞かれたので地上へ連れて行かなければならないと言うとガスは引き付けを起こして倒れてしまい職員に連れていかれてしまった。
冒険者が集まりアポロニアを見ながらも怒りの元であるマーグリスに対する怨嗟が起こりまだギルドの処分も決まっていないと聞くや奴隷だ縛り首だいやいや生ぬるいドラゴンに生きたまま飲み込ませろと発言すると後ろのアポロニアが、
「いくら我らでも下手物は食わない、妹なら食べるやも知れんがな」
そう言うと把握できない冒険者はキョトンとしてその中の1人が、
「あんた誰なんだよ」
そう言うと嬉しそうにアポロニアが進み出て、
「こないだ暴れていたドラゴンの姉じゃ」
そう言われドラゴンとこの美しい女性が結び付かないのか思考が停止しているのか皆で集まり話始めており、アポロニアはその反応に不満そうに私を見るのでもう少し様子を見ていればと助言した。
懐疑的で未だに結びつけないと言うかドラゴンへの恐怖で結び付けたくない本能のなせる技なのだろうか、しかしある1人が亜人の行動を思い出しそれを話した瞬間冒険者全員が装備を整え気がつくと私とアポロニアそして今にも倒れそうな白くなった顔のギルド職員だけであった。
「早く上がれ、ベースキャンプの機能が果たせなくなるから」
ガスも今のを見て180度考えを変えたのか向かうように進めてくるので転移装置の場所へ向かった。
「アリが巣を作っていたとはな、しかし邪魔だな」
自分の妹が暴れてここまで悲惨な状況になったと言うのを忘れているのか気にしないのか邪魔なジャイアンアントを蹴り飛ばして進み到着する。
「これを知っているとは中々だな、行くか」
そういった瞬間、転移の石を使わずに飛んでしまい不意なので意識が飛び気がつくと暑かった。
「誰か使用したな歪みが出て最下層に飛んでしまった」
そう言うとさらに飛ぶ、何回飛んだかわからないが20階から上に行けないようで、
「だれ、勝手に使用して歪みを発生させて」
自分ですとも言えず黙って石を握りしめ、
「転移地上へ」
と言って飛んだ、当然アポロニアからは詰問されギルドの貸し出しといい、助かってますと礼を言うと何故かおさまり地上へと出ることができた。
「雑然としている美しくない」
地上に上がり街並みをみての感想、ギルドに行こうとしたが勝手に歩き始め行ってしまいあわてて追いかけた。
「ドラゴンと言うことはここでは面倒なことになるから、それとここにいるなら言うことを聞くこと」
「そうかドレークの言うことは聞こう」
それも困るがそれで大人しくなるならと納得して町を歩く、古いローブの下は話をしているとすっぽんぽん、本人は気にしていないが早めに服をと思いながら露店が並ぶ場所へ来ると老若男女関係なくアポロニアの顔をみて見とれており不味いと思いつつギルドへと誘導していった。