掃除屋
「おう今日もせいがでるな、今からかい」
そう迷宮の入り口で顔馴染みの衛兵に言われ黒いフードをかぶりながら、
「12階で帰ってこないパーティーがいると聞いたから」
「マグラスのところのだろ、三日前に降りていったっきりだからな、やつらもこれで借金もちか」
そう笑う横を迷宮へと入っていく。
ここら辺りまではモンスターは上がってくることは結界が張られているためできず、冒険者が仲間を待つために左右に座っている。
「けっ、ハイエナが今日も迷宮に潜って人の不幸で金稼ぎかよ」
そう壁に座っている戦士が唾をはきながら私をにらんでおり、
「カイトか、支払いに遅れないようにギルド職員が言ってたぞ」
そう私が返すと周囲の冒険者が笑いながら、
「借金もち、さっさと支払わないとギルドにけつの毛まで抜かれるぞ」
そう周囲に次々と笑われカイトは横を向いてしまう。
私はそのまま止まらずに一人迷宮へと入っていった。
「11階に到着、これからはしらみつぶしか」
そう私は呟きながら明かりもつけず暗い洞窟を進む。
しばらくいくとハイオークとオークが食事をしているらしく大きな声で喋っており、幸先いいかなと思いながら光が当たらないところからオーク達をのぞくと、からだが大きいハイオークと8人のオークが嬉しそうに肉に食らいついてる。
彼らの向こうには戦利品が積まれており、その向こうには彼らが食べている私の目標の物を確認した。
私は腰の道具入れから調合してもらった高価な薬をとりだし、左手で転がってる石を拾い戦利品に放物線で投げ、続けて右手で薬を焚き火に放り投げる。
戦利品に石が当たり音を出すとオークはそちらを見て、そのタイミングで焚き火に薬が入った。
私は急ぎその場を離れ11階の階段まで撤退すると砂時計を取り出して砂が落ちきるのを三度待ってからオークの居たところに戻る。
眠り薬が効いており寝ているが数が多い、そこには漁夫の利を得ようとしたのかパーティーがオークを倒している途中で寝てしまったのか転がっており、私は舌打ちしながらオークにとどめを刺すと目的の装備とその持ち主だったものを後ろの大きなザックに放りこんでいき、オークの荷物もいただく。
寝ている冒険者の一人を腰袋から取り出した実を取り出して割ると鼻につけて放り出し私は上へと上がる階段へと急いだ。
後ろでは悲鳴と苦悶の声が上がり、目が覚めたことに笑いをもらしながら階段へと到着して上へと目指す。
後ろのザックは大枚をはたいて購入したマジックザックで6人分の重さと装備の重さ、オークの戦利品を入れても鼻唄まじりで歩くことができ、途中でモンスターに闇のなかで遭遇しても後ろから近づいて口を塞ぎ喉をかき切ることができた。
あれから半日ほどで1階に到着すると夜になっておりあれほどいた冒険者はおらず、衛兵も眠い目を擦りながら私を無言で見送る。
大通りを抜けてギルドに到着すると、
「ヘルネリア、教会に頼む。」
そう言うと私は町の中心にある教会へと急いだ。
分厚いドアを何度も叩くと
「貴方ですか、どうぞお入りください。」
顔見知りのグラハム神父は疲れた顔で現れ奥へと通してくれる。
礼拝堂のさらに奥に白い台がおかれた場所に何時ものように通されると回収してきた冒険者を乗せる。
グラハム神父は準備を終えると息を切らして入ってきたヘルネリアを見ると儀式を始める。
「我が父なる神よ天寿を全うせず父のもとへ向かおうとしているこの者の魂を呼び戻し、肉体の欠損をおぎないたまえ。」
そう言うと白い台の上が光出す。私は横に並んだヘルネリアに彼の認識票を渡すと早速文面をしたため始める。
台の上には最初にのせたのと違い五体満足生まれたままの姿で横たわり私は横に寝かせるとザックの次の冒険者をのせた。
ようやく全ての蘇生が終わると神父は目覚めの呪文を唱え起こした。
「一人金貨2枚と銀貨1枚だって、合わせて12枚と6枚暴利だ。」
「そう言われましても蘇生代金が銀貨1枚と迷宮からの回収代金ですから、もし同意していただけなければ奴隷として暮らしていかなければなりません。」
そう言われ彼らは真っ青な顔をしたのち契約書にサインした。
「ドレーク殿今回の代金でございます。今回もご利用ありがとうございますまたのご利用をお待ちしてます。」
そう言って金髪のロングのほっそりとしたヘルネリアは美しいが感情を見せずに手数料を引いたお金を私と神父にわたすとギルドへと戻っていった。
私は神父に手をあげて挨拶すると自分の定宿であるオークスに戻った。
荷物と装備をチェストにしまうと酒場におりる。私はカウンターの一番奥に座ると食事と1杯のエールが出てきてそれを飲んで喉を潤す。
いつもと同じパンとソーセージとサラダを食べて騒がしい中で自室に戻り、武器を取り出して汚れを拭き取り点検を終えるとたらいの水で体を拭いて就寝した。
翌日少し遅く起きて定位置に座りいつもと変わらない朝食をとる。
「あんたも変わってるね相変わらず人助けをしているのに恨まれる事にしかならない因果だね。」
そう宿の女将が器を下げながらいつもの一言を言っていく。
「6人分の売上落ちたのが申し訳ない。」
私は言うと、「やだねあんたが悪いんじゃないよ、どうせ迷宮で死んでしまえばとりっぱくれるし、出ていってもらえる方が面倒がなくていいよ。」
そう言ってくれて少しほっとする。何れにしても借金を背負ったパーティーは寝るところも切りつめていかなければならず昨日助けたパーティーは定宿のここを引き払う他なかった。
私は食事を済ませ部屋に戻るとザックを担いで裏庭出て昨日の1度死んだ冒険者の装備を広げて汚れをおとしながら点検をしていく。
武器などは破損していないが防具は一部壊れており直せるものは修理していくと人影があり顔をあげると昨晩助けた冒険者だった。
「失礼かと思いますが装備を買い戻したいのですが」
「かまわないが支払いは現金の買取り価格で」
そう言うと顔をひきつらせ、
「買取り価格は良いのですが支払いは分割でお願いできませんでしょうか」
「それは無理だな、明日おも知れぬ冒険者でなおかつ借金もちに分割はできない。」
「そこをなんとか、助けると思ってお願いします。」
「わるいが慈善事業でしているわけではない、あそこまで無理して潜った自分達の認識の甘さを悔いればいい、装備なら最低限なら持ち合わせで買うこともできるはず。」
そう言いきると、
「やはりごうつくばりのハイエナに頼むのは無駄だったようだな、覚えておけかならず浮かび上がって見返してやる。」
そう言い捨てると裏庭から出ていった。
私は毎回の事なのですぐに忘れて修理を午前中に終わらせると装備をザックに入れて店へと向かった。
「いらっしゃいませ、ドレークさんこんにちは、買取りなら今なら誰もいないのですぐにできますよ。」
そう看板娘のミミさんが奥の扉を開けてくれ私は中へと入る。
「バスタードソードとロングソード、ショートソードが2本とメイスとロッドですね。バスタードソードとロングソードは先週こちらから購入したものですのでそのまま買わせて頂きます。残りの武器に関してもよい値で買い取らせていただきますが、防具は一部損傷がひどく減額ですね」
そう言って売り渡し書に金額を記入して私に差し出しサインをして返すと銀貨と銅貨をを数枚渡してくれた。
「それと頼まれた特注の武器が出来上がったので確認をお願いします。」
そう言って横の扉から裏の倉庫に入ると頼んでいた弓と矢を渡され、
「しかし珍しいというか始めてみますこんな弓の形は」
そういって黒く塗られた滑車付きの弓と矢を渡してくる。
倉庫の奥に板を立て掛けて一番端100m程の距離から矢を放つ、思ったところに突き刺さり私は納得すると銀貨数枚を支払い装備屋を出るともう1つの場所に向かう。
ノックをすると「お入り」そう言われて建物の中へ入る。相変わらず色々なマジックアイテムや素材がところかしこに並べられており一番奥まで行くと年齢は不詳だが、三桁はいってると言われている年齢のはずだが時が止まっているのか未だに魂を捕まれそうなその美貌を見ながら懐から稼いだばかりの金貨10枚をテーブルにのせる。
「相変わらず稼いでいるようだね、私としては支払ってくれる上客は何時でも歓迎だよ。」
そう言いながらわざとなのか胸を強調しながら金貨を1枚1枚をゆっくり回収していく。
「後10枚、しかし提案されて金貨200枚と吹っ掛けてみたけど払いきるとはねえ、失言しちゃった。」
そう言われ、
「たしかに普通のマジックザックの20倍の容量を頼んだから、まあ自分自身が納得しているからその値段に。」
「だがもし失言なら眠り薬を1セットとあれを貰えれば良心が痛まないと思いますけど。」
目を細目微笑みながら見透かしたかのようにカウンターの下から袋を取り出して置いたのを私はゆっくりと受け取った。
「しかし貴方の力なら最前線のパーティーでも十分勤まると思うけどね。」
「それはもう過去で懲りましたよマリーネ、あなたと同じ神秘的に生きられればと思っています。」
そう言いながら店を出て宿へと戻った。
「情報よ、マーグリスのパーティーがどうやら22階で何かあったらしく同位の階に潜っていたパーティーからの情報よ」
ヘルネリアが座って何時の様に私が座ると話しかけてくる。
「わかった。あそこはリザードマンの住みかのはずだが目ざといマーグリ何かを見つけたと言うことかな、テレポーターを使わせてもらう。20階が見つかっていれば直ぐなんだけど、15階に降りるから使用許可を」
そういうやいなやクリスタルアイズと言う異名を持つ冷徹な表情のヘルネリアはテレポーターの許可書を渡してくれた。
「朗報を待つわ、20階を越えるなんて久しぶりでしょそれも単独では始めてかしら」
そう言われ少し昔を思い出しながら、
「そうだね、しかしそちらの利益もかなりだろう回収できれば、ギルド長は皮算用かな」
そう言うと珍しく少しだけ眉をひそめ、
「ドレークさんギルドとしては無事に依頼を終えることを第一に考えております。その様なことは思っておりません。」
「すまない、口が過ぎた。」
そう言って謝ると部屋に戻り、装備を整えてくるとヘルネリアが同行してくれて迷宮の入り口へと向かう。
「了解した。ベーネよテレポーターの封印を解け。」
そう言って普段入室さえもできない入り口横の転送室にはいり魔方陣の中へと入りテレポーターが作動する。
力が抜けていき浮いたような感覚が一瞬あり次の瞬間重さで意識が引き戻され、何時もの迷宮の固い岩盤の床を確認しながら15階へと降り立った。
戻り用のレッドアイズと言う宝石を確認して胸から下げて中へしまうと黒いフードをかぶって廊下へと出た。
遺跡を出ると地下なのだがジャングルが広がり16階への階段へ向かった。
途中でホブゴブリンと戦っているパーティーを横目で見ながらジャングルを通り抜け進む、16階への階段の場所に到着したがそこはホブゴブリンがなぜか陣取っており近づく事も困難であった。
もう数時間で日は暮れるので待つことにして木の上から様子を見ていると反対側から気配がしてくる。
私はその気配に緊張しながら見ていると先程のパーティーであり、どうやら他のパーティーとの合同作戦らしく3パーティーでここにいるホブゴブリンを倒そうとしているらしかった。
私は気がつかずに真下を通りすぎるパーティーに一抹の不安を覚えながら通りすぎた後気からおりて大きく回り込んでいく。
ホブゴブリンの野営地に近づくと幾重にも警報ようのワイヤーが張り巡らされており避けながら階段近くの茂みに潜り込むことができた。
夕闇の中進もうと思っていると鳴子が響きわたりテントからホブゴブリンが装備を整えて出てくると争いの音が響き渡る。
パーティーは奇襲に失敗したようで「撤退」と叫んでおり私はその隙をついて階段に近づき下からの冒険者に警戒しているホブゴブリンを矢で2匹とも倒し矢を回収すると16階の階段を下りた。
16階はトラップの嵐だが場所についてはギルドからの情報でさんざん頭にいれており、通路を黒いフードをかぶり進む。
途中オーガが単体で歩き回るのを通路の端で息を殺して気配を消し通りすぎるのを待った。
争うこともなく17階そして18階と重ねて20階にようやく到着する。
ここからはまだ情報は少なく、さらにこの階は巨大な空洞であり荒れ地が続いており昆虫系のモンスターが徘徊しており私も緊張しながら目的の場所へ急いだ。
ジャイアンアントのタワーのような巣を見上げながら警戒範囲に入り込まないように地面の足跡を確認しながら、洞窟の中心にある古代遺跡の後にある最前線キャンプを訪れた。
「ほう、珍しいなこんな深部に現れるとは。そうかマーグリスか」
そう言うと私に座るように促す。
ここは遺跡の力なのか昆虫系のモンスターが近寄らない場所であり最前線のキャンプとして機能しており私も数回利用したことがある。
この男はガスといいここの管理人のような男でギルドと契約してここにおり、私等の冒険者を支援してくれており、目下地上へのテレポーター捜索に力をいれている。
「ギルドからの依頼で捜索と回収に来た。」
「そうか、何か見つけたらしくマーグリスのやつ出ていったが欲をかきすぎたということだな」
そう言って新しい情報を教えてもらうとゆっくりと就寝した。
翌日、
「22階は何かあったらしくパーティーも次々とここに戻ってきている。彼らいわく敵が居なくなったと」
そう言われ強いモンスターが現れそこにいたモンスターが逃げ隠れしているのかと思いながらガスに挨拶をして出発をする。
21階への階段には地面の亀裂沿いに向かえばジャイアンアントにも会わずに向かうことが冒険者によって調べられているので通り抜けて階段へと到着する。
ここからはワーウルフやワータイガーが住んでいると言うことで体に臭い消しの水をかけて階段を下りた。
回廊が続き分岐点に到着すると5つの方向に別れており1つは来た道、二つは巣につながり1つは最短だがモンスターが多く、もう一つはかなり迂回しているが少ないということでこの道を進むことにした。
道を進むと綺麗な石畳ではなく土がむき出しの坑道を進む、途中ワータイガーにあったが臭いを消しているお陰で坑道の窪地に丸まってやり過ごしていく。
十数回ほどやり過ごしてようやく石畳にでると階段へと続く通路を進む、暗闇の中進んでいくと遠くに光が見えており階段付近で誰かがいるということでパーティーかなと思って進むとリザードマンが待避しているのか十数匹が待機している。
これはさすがに回避することもできずに暗がりで思案することになる。眠り薬を焚き火に入れられれば問題はないが遠すぎる。
しばらく考えているとワータイガーが偵察なのか時々現れては戻っていく。
私はこれを利用しようと思い次に来るのを待っているとワータイガーが偵察に来た。
暗闇から弓を引き絞りワータイガーに狙いを定め放つと突き刺さりもんどりうって倒れこむ、すぐに立ち上がり威嚇の声をあげると急いで戻っていった。
しばらくすると多数の足跡が聞こえてくる。私は弓を引き絞り矢を今度はリザードマンに向けて放つと命中せず壁に当たって驚かせ戦闘準備をし始める。
私はフードをかぶり小さく石畳の端に丸まり、しばらくすると軽やかな足音の集団が横を過ぎていった。
怒号と叫び声と共に争いが始まっており、私はゆっくりと顔をあげて見てみるとリザードマンとワータイガーそしてワーウルフが争っており私は小さな煙玉を取り出すと口火で火をつけて投てきする。
少しだけ視界を妨げるくらいの煙だが私にとっては通り抜けるには十分であり、争っている間を通り抜けて22階への階段を一気に下った。
階段を下り終え周囲を確認して危険性がないので息を整えて進む。
ここはそんなに大きくはないが地下空洞であり、ジャングルを進むとリザードマンの住みかだが今は空き家の集落である沼地を抜けていく。
地面の足跡を見てみたが、逃げ惑う様子があり混乱の様子がわかりその中にさらに大きな足跡が歩き回っておりそれをたどってみる事にした。
沼地から広葉樹の林をぬけて小川を越えていき、さらに荒れ地に入って続くので周囲の様子を確かめながら進まなくてはならず疲労をおぼえてしまう。
ようやく空洞内の壁に到達するとそこには4m程の高さの穴が開いており地下へと続いているようで23階に続いているのかと思いながら休憩を取ることにした。
穴の上はテラスのように岩が飛び出しておりそこに登って食事と仮眠をとる。
うとうとし始めた瞬間に吠える声にたたき起こされ反射的に伏せると、目の前に頭が伸びてきて林の方へと動き始める。
私はテラスの先まで移動してみてみると小さいながらもドラゴンであり、これが冒険者たちとリザードマンの原因と認識した。
私はすぐに穴の捜索を主のいない間に行おうと思い下っていく。予想道理に23階に下っておりそこのボスモンスターのねぐらに直接おりられる側坑であり途中小さな道が別れていたが大きな洞穴と寝ぐららしい苔のはえた場所と、冒険者が掠め取ったであろうお宝の残りがあった。
ドラゴンの寝ぐらの臭いは独特であり、犬と同じマーキングをして認識しているので当然宝にもその臭いがついており、中々強烈であった。
もう一つの穴に向かい歩いていると、横穴が無数に開いておりワームの類いがいるものと予想される。しばらく行くと血の後と争った後があり、宝を奪ったパーティーはこちらへ逃げてきたと言うことかと思いながらも、なんでドラゴンは反対の方へ上がっているのかと思いなが進んでいくと穴から出る。
そこには何時もの事なのかそれともドラゴンが暴れているだけなのかわからないが見渡すかぎりのワームがのたうちまわり私は思わず顔をひきつらせながらしばらく様子を見ていた。
これではこちら側には逃げることが出来ないと言うことがわかりもと来た道を引き返してまた住みかに戻る。ドラゴンが何時もどって来るかもしれない恐怖もあり、戻っていこうとする途中でドラゴンの唸る声と誰かの悲鳴がこだまする。
舌打ちしながら悲鳴の方へ上っていくといくつかの側穴が開いている場所にドラゴンが陣取って中へとブレスを吐いて中を焼いてしまっているようで、次第に悲鳴も聞こえなくなっていく。
ドラゴンは他の側穴にもブレスを吐いていき、中々の怒りで尻尾を岩に叩きつけて粉々に砕いていく。
私も実際に遭遇するのは始めてで、吠えるたびに心臓を締め付けられる感じがして疲労がたまっていっており、切り抜けるには気をそらすしか無いかと思いドラゴンの寝ぐらへ戻ると少量だが爆薬を仕掛け花火のように音を出させる細工と、眠り薬が燃えるようにセットしておく。
目の前の財宝は残り物でも価値はありそうだが臭いを消している時間はなく、そのうちと思いながらも導火線に火をつけて眠り薬が効くように祈りながら坑道をドラゴンの方へとかけあがった。
しばらくすると後方で乾いた音で何度か爆発音がしてきて、私は最初の側穴に飛び込み身を隠すと、入れ違いに吠えながらドラゴンが下っていく。
私はすぐに移動をして最初にドラゴンを見た側溝に入り中にはいると焼け焦げた臭いと共に黒く焼かれたパーティーを見つけることができた。
臭いで吐きたくなるのを我慢しながら、すぐにザックに装備ごと入れると4体しかない。
後2体を探すことになり坑道にでるとあれだけ吠えていたドラゴンも静かであり、眠り薬が効いたのだとおもいほっとしながら側穴を確認していく。4つ目で戦士と盗賊と思われる焼け焦げた男女が見つかり、背中にはドラゴンのお宝を積めたのかザックがパンパンに膨らんでおり、これがドラゴンの怒りをかった原因かと思いながらザックを下ろして入れる準備をする。
臭いが凄まじく、宝は後日と思いながらザックは転がして二人をザックに回収した。
私はザックから落ちた金貨と指輪を臭い消しの水で洗ってドラゴンの臭いを消そうとしたが三回洗ってもまだまだ臭いは残っており、次回に大量に臭い消しを持ってくればと思いながらその場に放棄すると22階へと駆け足で戻る。
荒れ地を下り小川をわたり林をぬけて沼地へ到着すると後方でドラゴンの吠える声が聞こえ、通常のモンスターの半分くらいしか効いていないのかと思いながら急いで21階の階段に向けて駆ける。
ようやく到着したのだが、どうやらワータイガーとの戦いに負けたのか階段からリザードマンが降りてきておりドラゴンの吠える声と戦いのせいで興奮状態が緊張に変わっていく。
私は階段に続く入り口にこっそり近づけ無いかと思ったが無理であり、多分他の沼地からも逃げてきたリザードマンがいるようで3倍くらいに膨れ上がって騒いでいる。
ドラゴンの吠える声は徐々に近づいてきており、しばらくすると意を決したようにリザードマンは上の階へと逃げ延びるための戦いに向かっていったようで雄叫びをあげ次々に階段へと消えていき、私も時間の無いのでその後を上がり始めた。
先程は負けたようだが人数が増えたのと後ろに迫るドラゴンの恐怖で次々とワータイガーやワーウルフを蹴散らしていき突き進む。私はその混乱の中を走り抜けて遠回りの坑道にはいると潜む。
近道の方からはワーウルフ等の援軍が次々と到着しているがリザードマンの勢いい負けており次々と駆逐されていった。
私は戦いが離れていくのを確認すると、迂回の道をただひたすら走り抜けていき五差路に戻ってきたが、そこではワータイガーとワーウルフがリザードマンを迎撃するつもりなのかバリケードを築いて通行を妨害していた。
どうにか突破したいと思ったが数も多く危険であり、回収の目的は果たせたので無理をせず坑道の途中にある岩の間に体をいれて待つことにした。
眠ることがかなわず眠気覚ましに渋くて酸っぱいが疲れがとれるミグの実を食べながら過ごしていると喧騒でなく悲鳴があがりワーウルフやワータイガーだけでなくリザードマンも団子状態で五差路に逃げてきてバリケードの向こうへと逃げていく。
私もこのタイミングでと思いながら立ち上がり駆け込むと丁度ドラゴンが顔を出してきたところで、私は悲鳴を圧し殺してバリケードをのぼり下るとそのまま通路へ逃げ込みひたすら走った。
モンスターの中に混じり一気にかけ上がるとその上の階層では逃げてきたモンスターであふれかえっており、ジャイアンアントが周囲で警戒の顎を擦り合わせた音を発している。
通路から聞こえる唸り声を聞いた集団がさらに混乱したので、それに乗じてすぐに裂け目におりて急ぎ前線キャンプのある遺跡へと走った。
ガスが何事かと言う顔で私を迎え入れてくれ、
「ドレーク、何をやらかした全てのジャイアンアントが警戒の音をならしているぞ」
そう言って水を渡してくれ私は一気にのみほすと背負ってるザックを指差し、
「連中がドラゴンの逆鱗に触れたらしく、23階の主が22階のリザードマンそして21階のワーウルフとワータイガーを追いたててこっちへ上がってきてる。大きさは大したことないがなんせドラゴンだから、すまないがすぐに15階まで駆け抜ける。」
汗だくで疲労が限界まできていたが私は遺跡からでると一気に走る。ジャイアンアントは私を発見してもそれ以上の脅威を感じているのか動こうとせず私は一気に19階の階段までたどり着くと一息つき後ろをみると遠くで土煙があがりドラゴンがとうとう20階へ上がったことがわかった。
私は水を飲むと階段をかけ上がっていく途中で目の前の状態に唖然とする。19階のところにはバーバリアンの住みかなのだが普段は特になにもしなければ大人しく通り抜けできるはずだが、20階の混乱が伝わったのか野生の勘でも働いたのかこちらにこん棒を向けて威嚇してきており、私は追い立てられるように20階に戻るしかなかった。
ここ以外には上がることができず事実上袋小路に入ってしまい遠くに上がる土煙にめまいを起こしそうになりながら遺跡へと走り始める。
遺跡に戻ってくると大騒ぎになっており、
「ガス、19階は無理だバーバリアンにふさがれて逃げられない」
そう言うと混乱に拍車がかかり皆でパニックになる。
「ドレーク、その臭いだろう何とかしろ」
そう言われ皆で私を睨み付けどうにかしろと次々と言うので、
「わかった」
そう言って遺跡をでるとジャイアンアントの巣である巨大なタワーに向けて走り始める。
ドラゴンのいる方向からはリザードマンやワータイガーが必死に逃げてきておりジャイアンアントが飛ばされたのか土煙と共に次々と空へ上がっておりそのまま落ちてきて危険きわまりなく、その間もこちらに近づいてくるドラゴン。
ジャイアンアントも巣の危険が迫っていると感じているのか何百と言う数がドラゴンに向けて進軍を開始しており顎で擦り合わせ発生させた音を出しながら土煙が上がる場所へと走り去る。
私は何も考え無しにここまで来たものの、どうすればこの状況から逃げられるか不明であり次第に近づく土煙に逃げ出すためにタワーの方へと追いやられていった。
流石に近づきすぎたのかさらに巨大なジャイアンアントが立ちふさがり威嚇の音を鳴らす。
その瞬間ドラゴンの吠える声と共に上から撥ね飛ばされたジャイアンアントがいくつも落ちてきて私は慌てて頭を抱えて座り込むと、目の前にいたジャイアンアントが私の横を通り抜けていく。
私はすぐに起き上がるとそのまま巣の中へと入り土でできた通路を抜けるとタワーの中心にでる。
上まで空洞なのだがその真ん中にはなんとテレポーターが設置されており、私は慌てて胸から転送用の宝石を取り出すと真ん中において、
「転送、地上へ」
そう言うと体が軽くなり見慣れた一階へと戻ってきて、室内のヒモを引っ張るとやがて開かれ衛兵が顔を出した。
「流石に22階はドレークでもきつかったと見える。しかし渡したのと色が違うと言うことはひょっとしてひょっとするか」
そう言われ持っていた宝石を見ると何時ものと違うことがわかり疲れながらも、
「20階のテレポーターを見つけたがモンスターの巣の中だ残念だけど」
衛兵は頷き、
「それにしてもごくろうさん、無事に帰ってきた事だし」
そう言われ首をふり、
「無事じゃないんだよな、詳細はギルドからのまわってくればわかりますけど、それじゃあギルドに行きます。」
そう言ってまだ朝になったばかりの町を走り抜けてギルドへと入った。