第1話
少年はふと、肩に乗った花びらに気付いた。そのまま視線を上に向けると、満開の桜が目に入った。
「桜か、…………観るのは五年ぶりだな」
少年ことシュオンは懐かしげに呟き、そのまま数分間桜を見続けたが、突然顔を横に向けた。シュオンが顔を向けた先には、1人の女子がこちらに走って来ていた。その体にはシュオンと同じデザインの制服があった。少女は急いでいるのかシュオンに気付かないで行きそうになるが、疲れたのかシュオンの傍で止まってしまう。
「はぁ、はぁ、い、急がなくちゃ、はぁ、はぁ、遅刻しちゃう。はぁ、はぁ、はぁ」
シュオンは何をそんなに急いでいるのか気になり少女に話しかけた。
「おい、何をそんなに急いでいるんだ?」
「きゃぁっ!?えっと、その、ってあれ?だ、誰ですか?」
少女は行きなり話しかけられ驚き、問いかけてきた。シュオンは何を言っているんだこの子は、といった顔をしたが、直ぐに少女が言った言葉の意味を覚った。
「あー、ごめんごめん、俺はシュオン・ランブレス。君は?」
「あ、はい!私は霜田花梨と言います。今日、エントス学園に入学し……ま………す」
花梨は顔を青ざめ慌て出した。
「や、ヤバイです。ランブレスさん!!このままだと遅刻してしまいます!」
オロオロし始めた花梨にシュオンは落ち着かせる様に言った。
「落ち着け霜田。今、7時だぞ。まだ入学式まで、1時間あるから慌てるな」
すると花梨はえっ?といった顔をしると、慌てて携帯端末を取り出して時間を確認して顔を上げた。
「よ、良かった〜。ありがとうございますランブレスさん。朝起きたら時計が、8時5分だったから慌てて家を出たから。でも、遅刻しなくて良かったです」
「時計、直しといた方が良いよ。後、俺も今日入学するから敬語使わなく良いよ」
「えっ?本当ですか?じゃ、じゃあ、これからよろしくね、シュオン君」
花梨はシュオンに笑いかけると、シュオンが軽く微笑した。花梨はシュオンの微笑を見て顔を軽く赤らめた。
「どうした?顔、赤いぞ」
シュオンが不思議に思い問いかけると花梨はあたふたしながら言った。
「な、何でもないよ!?え、えっと、そ、そうだ!学園まで一緒に行こうよシュオン君」
花梨は誤魔化すようにそう言い学園の方に歩き出した。シュオンも花梨の慌て振りに疑問を懐いたが、肩をすくめただけで花梨に続いて歩き出した。暫くお互いに黙ったままだったが、その沈黙に耐えきれなくなったのか、花梨が話始めた。
「ところでシュオン君は何処のクラス?私は実技でドジってDクラスなんだけど………」
「ん?ああ、俺も筆記試験は良かったけど実技がダメだったからDクラスだよ(まぁ、本当はわざと失敗したんだけどな)」
シュオンは花梨の質問に答えながらも心の中で愚痴を言っていた。
「えっ!?シュオン君もDクラスなの!?シュオン君はSクラスだと思ったんだけど……」
「何でそう思うのか気になるけど、そう言ってくれるだけで嬉しいよ。っと、もう学園か」
シュオンと花梨は、話しているうちに学園についた。エントス学園は広くなっていて寮もあり消滅者を教育するには充実し過ぎだとシュオンは感じていた。
「ん?お前達は新入生か?式の1時間前に来るとは、関心だな」
シュオンが考えに耽っていると若い女性が話しかけきた。シュオンは直ぐに考えを切り上げ態度を変えた。
「はい。自分はシュオン・ランブレスと言います。早く起きたので、学園に言った方がいいと思ったので学園に来ました」
「えっと、私は霜田花梨です。私も早く起きたから来ました」
シュオンにつられて花梨も女性に返事をした。すると女性が笑いながら、
「ハッハッハッ、そうか、早く起きたか。ならもう席取りでもしてろ。式はまだ1時間あるが、会場は開いているからな。ああ、地図はこれだ。迷うなよ?」
「ありがとうございます。では、また後で会いましょう、先生」
シュオンは女性に礼を言い、花梨を連れて入学式が開かれる講堂に向かっていった。
「ふっ、Dクラス所属シュオン・ランブレスか………。何処が出来損ないだ。あの立ち振舞いといい、目の動きといい、ただ者ではないな」
シュオンは花梨を連れて講堂まで行き生徒手帳のIDパスで講堂に入った。講堂の中は、外見と同じようにしっかりしていて頑丈に出来ている。シュオンは後ろの席に行こうとして花梨に話しかけた。
「花梨。席は後ろの方でいいか?(って言うか後ろにしたい)」
しかし、花梨はシュオンの話を聞かずにさっさと前の席を取ろうとして、
「シュオン君、前の方の席が空いてるよ。そこにしようか」
そう言って花梨はさっさと前の席を取ろうとして、歩き出し、シュオンは溜め息を吐き、花梨の後をついて前の方の席に行こうとした。が、シュオン達が席に着く前に金色の刺繍が付いた制服を着た、男子生徒が行く手を遮った。
「Dクラスの屑どもは後ろの席でも使ってろ」
開口一番に男子生徒が言ったのは2人に対する侮蔑の言葉だった。シュオンは花梨を背にして後ろの席に行こうとしたが、男子生徒の言葉にイラッと来た花梨、が男子生徒に言い返した。
「粋なりなんですか貴方は!!初対面の人間に向かってそんな言葉遣い謝りなさい!!」
花梨の怒った声を聞いた、男子生徒は鼻で笑い言い放った。
「ふんっ!何故、貴様らに謝らなきゃいけない。貴様ら屑がSクラスの座る席に座ろとした方が許しがたい。許して欲しければ、土下座しろ!!」
男子生徒の理不尽な言葉に怒った花梨は言い返そうとするが、シュオンが今度は止めるのに間に合い、花梨の視界から男子生徒を隠し、そのまま振り返り花梨に(大丈夫と意味を込めて)微笑んだ。すると花梨は怒っている事を忘れ、顔を赤く染めた。シュオンは花梨が落ち着いたのを見て、後ろの席に移動を開始した。
「おい!貴様ら!!土下座して詫び……………」
男子生徒がシュオン達に土下座するよう命令しようとするが、シュオンに見られて何も言えなくなった。シュオンは男子生徒が黙ったのを見ると、花梨を連れて後ろの席に移動した。
「まったく、あの男子、態度が悪いったらありませんね!それに、シュオン君も何で止めたんですか?」
花梨は少し落ち着いたのか、文句を言いながらも、シュオンに問いかけた。
「ああいう奴等に関わると、ろくな事が無いから止めた。それと、花梨って怒ると言葉遣い変わるんだな」
「さ、さっきのは忘れてよ!シュオン君!」
花梨は顔を真っ赤に染めて慌てだした。シュオンは、そんな花梨を見て心の中で面白いなと思っていた。花梨はシュオンにからかわれて、頬を膨らませそっぽを向いた。そんな風に不貞腐れている花梨にシュオンは、話しかけた。
「悪い花梨、花梨の反応が面白くってな、っと早いな。まだ式まで30分はあるぞ。いったい何があった?」
いつの間にか周りがざわめいている。シュオンと花梨はもう式が始まるのかと思ったが、よく見るとざわめいている生徒達が講堂の舞台ではなく入口の方を見ていることに気付き、シュオン達も生徒達が見ている方を見た。そこには金色の刺繍が付いている制服を着た美少女がいた。
「おい、あれって………」
「ああ、かの有名なギルバート・アレハンドレの孫娘…………」
「何て美しく、気品あるたたずまいなんだ………」
周りの生徒達は少女に見とれたり、憧れの視線を向けているが、シュオンは警戒する眼差しにほんの少しだけ変わった。
「き、綺麗だねあの人。シュオン君もそう思う?って、人の話聞いてるの?シュオン君?」
シュオンは花梨の話も聞かず警戒したまま、少女の方を見続けた。
色々と時間が過ぎ式の時間になった。周りが式が始まる事で興奮しているのか、ざわめいていたが舞台に一人の女性が現れたのと同時に、静まって行った。シュオンは舞台に現れた女性が校門の前で会った教師であることに気付いた。
「私の名は水沢花。このエントス学園の教師をしている。そして、入学式の進行係でもある。これより、エントス学園入学式を始める!まずは、理事長の挨拶がある」
水沢花がそう言うと見た目が40代中頃の男性が舞台の上に上がった。
「はじめまして諸君。まずは入学おめでとう。私がこのエントス学園の理事長だ。諸君には今日より消滅者になるために必要な事を学んで貰う事になる。すでに消滅者になっている者もいると思うが、この学園ではその肩書きは関係ない。では諸君3年間頑張ってくれたまえ」
理事長の話が終わり理事長が舞台から降りると再び水沢花が舞台に上がり
「では続いてホープ日本支部支部長神崎弘樹様の話がある。しっかりと聴くように」
水沢花の話を聞くと同時にシュオンは驚いて硬直してしまった。
(あのバカ何をしているんだ?暇なのか?)
シュオンが心の中で疑問に思っている間にも式は進み神崎弘樹支部長が舞台上に現れていた。
「諸君、私が神崎弘樹だ。諸君は3年後この学園を卒業し世界中の人々をテラーの手から守るために戦う事になる。故にしっかりと勉学に励むように。先ほど理事長も言ったと思うがもうすでに消滅者になっている者も必要ないと言って勉学を疎かにしないように。そして遅くなったが、諸君入学おめでとう。消滅者になるために頑張りたまえ。私の話は以上だ」
神崎支部長の話を聞きシュオンは少し感心した。
(なんだ何時もとは態度が違うな。まあ、当たり前か)
「それでは、新入生を代表してアリス・アレハンドレに挨拶をしてもらう」
シュオンが感心している間に式は進み、新入生代表の挨拶へと進んでいた。そして、一人の生徒が壇上へと上がった。先程、シュオンと花梨が見た少女だった。
「始めまして、私はアリス・アレハンドレです。私たちは今日エントス学園に入学します。みんなで競いあってより強い消滅者になっていきましょう」
アリスの話を聞き生徒達は頷いたりしているが、
「しかし今日、エントス学園に入学するにあたって入学するのにふさわしくない生徒がいます」
この言葉を聞き周りの生徒達がざわめき出したが、Sクラスの生徒達は当たり前のように、頷いたりしている。
「この学園に入学するのにふさわしくない生徒はDクラスの生徒達です」
これを聞き、水沢は壇上へと上ろうしたが理事長に止められた。
「なぜ止めるのですか!?理事長!?」
「今は様子を観るんだ。これ以上Dクラスの生徒達を侮辱する様なら止めてもいい」
「しかし!!彼女は「それに、彼女がこれ以上Dクラスの生徒達を侮辱するならあいつがキレる」はっ?あいつ?」
神崎支部長の言葉を聞き水沢は止まり支部長の言ったあいつは誰なのか考えてしまった。
「なぜDクラスの生徒達かと言いますと彼らは学園で強くはなれないからです。彼らは入学ギリギリの点数て学園に入学しています。そんな劣等生の彼らが強くなれるはずがありません。だから自主退学する前に入学を取り消した方がいいと私は思います。これは侮辱ではなく彼らの為を思っていっているのです。ですから、彼らに入学する資格はないと思います。私の話は以上で……」
「「いい加減にしろ!!!!!!!!!」」
突然上がった怒鳴り声にアリスも他の生徒達も教師達も怒鳴り声のした方を見た。
「え、えっ?し、シュオン君!?いきなりどうしたの!?」
「し、支部長⁉︎いきなりどうされたのですか⁉︎」
怒鳴り声を上げて立ち上がったのはシュオンと神崎だった。シュオンは花梨に返事をしないでアリスを睨み、神崎は声をかけてきた教師を無視して舞台に上がった。
「支部長、勝手な事は困ります!おい‼︎そこの生徒もさっさと座れ‼︎さあ、支部長、席にお戻り「黙れ」なあ⁉︎」
神崎を席に戻るよう説得していた教師は神崎の一言で黙ってしまった。
「其処の少年、君の気持ちは解るが此処で君が文句を言えば問題になる。此処は私が変わりに言おう。さて、アリス・アレハンドレ貴様、何様のつもりだ」
「何様と言われましても支部長私は、ただ本当の事を言っただけですが問題でもありましたか?」
アリスは本当に解らないと言う顔で神崎に聞き返した。
「簡単な話だ。アレハンドレお前がさっき言った入学試験だがあれはホープ本部の基本的なトレーニングを試験化した物だ。そして筆記試験は現時点でテラーについて何処まで知っているか調べるための試験だ。つまり筆記試験は合否には関係無い」
ホープ日本支部の支部長である神崎の発言により周りの教師と生徒が騒ぎ始めるが、
「静まれ、話はまだある」
神崎の一言で一斉に静まり返る。
「さて、その筆記試験だが合否に関係していればSクラスの半分はB~Cクラスに入っていたぞ。そして、現在Dクラスにいる者のうち三分の一はB~Aクラス、そしてごく僅かだがSクラスに入っていた者もいる。それでもDクラスと言う理由だけで他者を見下すのか?」
神崎に聞き返されたアリスは表情を変えずに、
「確かにその考えも間違っていないかもしれません。しかしそれがどうしたというのですか?そんな物は関係有りません。支部長の話は筆記試験が入っていた時の場合です。しかし筆記試験は合否には関係無く実技試験しかテストの結果に反映されていなかった。つまり彼らDクラスの生徒は知識は合っても力は無い。やはりこの学園には相応しく無いと思われます」
平然と神崎の言った事を否定して言い返した。否定された神崎は愕然としながら、
「本気でそう、思っているのか?」
そうアリスに問うと、
「本気で思っていますよ。それに先ほど支部長のおっしゃった実技試験は簡単なトレーニングを試験化した物と言いました。つまり彼らDクラスの生徒はそんな簡単なトレーニングですらギリギリでクリア。そんな彼らを必要だと思いますか?」
「この学園で生活をしていれば彼らも強くなれるさ」
神崎の言葉はしかしアリスは否定する。
「強くなれませんよ支部長、彼らは。あの様な試験すら手こずり力も無い。戦場に出てもどうせすぐに死ぬだけです。そうなる前に彼らの入学を取り消した方が良いと思いま「もう黙れよ、お前」あなたは?」
アリスの言葉を遮ったのは、今まで神崎に‘‘命令’’されて黙っていたシュオンであった。
「誰でもいいだろ。それよりも、さっきから聞いていれば彼らが強くなれないなんて誰が決めたんだ?俺は他人を見下すお前達の方が強くなれないと思うが?」
シュオンはその身に強い怒りを秘めて冷静にアリスに自分の考えを言うが、
「それこそ有り得ません。入学した時点であなた達Dクラスと私達Sクラスには覆す事の出来ない差があるのですから」
アリスは何を言われ様とも、自分の言っている事が正しいと思っているのか他人を見下したまま、自分の意見だけを押し付ける様に言う。そんなアリスをシュオンは冷めた目で見ていたが突如、何かを思いついたのか冷めた目でアリスを見ながら微笑を浮かべ、
「なら、試してみるか?」
「何をですか?」
シュオンの突然の発言にアリスは自分の感じた疑問をそのままシュオンに聞く。シュオンはそんなアリスに微笑を浮かべたまま、
「聞こえなかったのか?ならもう一度言ってやる。試してみるかと言ったんだ。丁度五月の初めにクラス対抗戦があるんだ。俺達Dクラスがお前達Sクラスに対抗戦で勝てばDクラスが弱いだなんて言えなくなるだろう?」
そう言い切った。それを聞いていた周りは、バカにして大笑いをしていたが、神崎が「静まれ」と言ったのとアリスが喋りだそうとするのを見て再び静まり返り、
「あなたはバカなんですね。その様なくだらないことをわざわざやる必要性を感じません」
アリスはもう話は終わりだと言う様にシュオンから目をそらして神崎にもういいかと聞こうとして
「逃げるのか?」
「今なんて言いましたか?」
シュオンの挑発にアリスはその瞳に怒気を込めてシュオンへと振り返る。
「逃げるのかと聞いた。どうせ怖いんだろ?俺達Dクラスに負けるのが。負けるかもしれないからそう言った自分の理屈を並べて、逃げるんだろう?」
その言葉を聞きアリスは頭に血が上り、怒りのままに
「いいでしょう。クラス対抗戦で実力の差を見せつけてあげます。私が勝てば、あなたには退学してもらいます」
「ああ、いいぞ。なら俺がお前に勝ったら、お前がDクラスに入れ」
この瞬間、五月のクラス対抗戦でのSクラスとDクラスの対戦が決まりアリスとシュオンはお互いに睨み合い指を向け
「「叩き潰す‼︎‼︎‼︎‼︎‼︎」」
そう宣言し合う二人はそのまま視線お互いに外し、シュオンはそのまま神崎に向かって
「神崎支部長、申し訳有りませんが此処にいるとイライラするので失礼します」
シュオンはそう言うと神崎の言葉を待たずにさっさと講堂から立ち去った。その立ち去って行くシュオンを殺気混じりの目で睨みつける入学式前にシュオンと花梨を見下した少年がいたことには誰も気づかなかった。
「もう!なんであんなことをするのかなシュオン君は!ビックリしたんだから!」
入学式が終わり講堂から出てきた花梨はそのまま講堂の外に居たシュオンに文句を言ってきた。
「花梨。でもあいつが劣等生と言う理由だけでDクラスの生徒達をバカにしたからつい………」
「ついじゃなーい!!」
シュオンは花梨に説教されたままDクラスの教室まで歩いていた。
(まあ、仕方ないか。にしてもあいつ‘‘3年前’’から何も成長していないな)
花梨に説教されながら心の中で考えていたシュオンだが、後ろから感じた気配に考え事を中断し、後ろを振り向こうとするが、
「やあ、君‼︎さっきはかっこよかったよ!」
いきなり話しかけてきたのは同じDクラスの制服を着た少年だった。花梨は少年に邪魔するなといった目をして、
「なんなんですかあなたは?私は今、シュオン君と話しているんです。邪魔しないでください」
「え?あ、あ〜あ、ごめんごめん。と言うより君シュオンっていうんだ。っと僕は龍崎永戸っていうんだ。夢は神宝のメカニックだよ。宜しくね!」
しかし少年……………龍崎永戸は、マイペースに花梨の視線スルーし自己紹介をした。
「へぇ〜、もう夢が決まってるのか。すごいなお前。」
シュオンが感心して呟くと花梨も負けじと喋り出す。
「わ、私の夢は消滅者になることです!!」
そんな花梨にシュオンと永戸は顔を見合わせて笑いだし、花梨はそんな2人の態度に頬を膨らませ、
「何で笑うの!シュオン君も龍崎君もひどいよ!」
「いや、だってな?その夢は殆どの生徒が思っている事だと思うぞ?」
「そうそう。シュオンのゆうとうりだと僕も思うよ?」
と2人に言われ花梨は顔をきょとんとさせたが、直ぐに顔を真っ赤にした。そんな花梨を見て2人はまた笑いだしたが、今度は花梨も誤魔化すように笑いだし、暫し笑い声が廊下に響いた。数分がたち、シュオン達は笑い止み教室に向けて歩きだした。HRが始まるまでもう時間も少ないので喋らず黙々と歩き続けDクラスの教室の近くまで着た所で歩みを緩めた。
「それにしても、何でDクラスの教室って講堂からこんなにも遠いんだろうね?そこんところどう思うシュオン?」
「俺に聞くな。そんなことより、早く教室に入るぞ」
シュオンは永戸の質問に答えずさっさと教室に入っていき、続いて花梨も教室に入っていった。永戸は一瞬ポカンとしたが、慌ててシュオン達に続いて教室に入っていった。シュオン達が教室に入ると皆シュオン達の方を見て、
「さっきはありがとな‼︎」
「かっこよかった!」
「俺達の分まで怒ってくれてありがとな!」
など、その他にもたくさんお礼をクラスメート達から言われ
「でも、本当に勝てるのかな?」
そう不安そうな声を上げるクラスメートに対してシュオンは
「勝てるさ。それに悔しいだろう?だから教えてやろう。自分達のしてきた事は無駄なんかじゃ無いって、あの頭の硬い奴にさ」
シュオンに言われクラス全体が士気を上げて大声で声を上げる。
「ああ、そうだよな。見ても無いのに無駄なんて言わせねえぜ!」
「そうだよ‼︎Sクラスなんかみんなで力を合わせて倒そうよ‼︎」
そうみんなで騒いでる内に鐘が鳴りHRの時間になりDクラスの生徒は皆急いで席に着きはじめた。最後の1人が席についたその瞬間に狙いすましたかのように担任が教室に入ってきた。
「諸君、入学式ご苦労だった。私がこのDクラスの担任の水沢花だ。先生と確りと呼ぶように。先程の新入生代表の挨拶は気にしなくていい。しかし、授業は真面目に受けろよ。さて、今日はこの後校内見学がある。自分達が過ごす学舎を確りと観てこい」
「「「はい、水沢先生!!」」」
Dクラスの生徒は元気良く花に返事をした。しかしシュオンはなにかを考えている顔をしていて返事をしなかった。花はその事に気付かずに、
「では、これから校内見学に行きたいやつはいってもいいぞ。ただし、単独で行動はするなよ?」
花の言葉が終わると同時に生徒達が動き出した。
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