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序章
◇◇◇◇◇◇
空気も凍えるような冬の日の朝。ある町の神社に一人の少年がいた。
(**大学に、合格でき、ますように……亜神、零、っと)
キュキュッ
「うん、我ながらきれいに書けたな。これなら合格間違いなしだろう」
カランッ
たくさんの絵馬が掛けられている掲示板のような場所に、今書いた自分の絵馬も同じように掛ける。
「さて、とっとと帰って受験勉強頑張りますか」
黒のコートのポケットから英語の単語帳を出しながら、家に帰るために無駄に広い神社の敷地を入り口に向かって歩き出す。
(―─insist、~を要求する、主張する。display、~を展示する、……?)
単語帳を持って下を向きながら入り口にある階段を気にしつつ歩いていた。
(おかしいな。確かに広い場所だとは思っていたが、階段はまだか?)
しかし、いつまで経っても終わりにたどり着かない神社の敷地に違和感を感じ、単語帳から顔を上げた。
それにより、一気に広がった視界に映りこんできた光景は、見渡す限りの木だった。
◇◇◇◇◇◇