5.村の支援
夜中に馬走らせるのが上手い兵士に手紙を持たせて送り出した翌日。
朝っぱらから罠にかかってた兎を村人と回収。
なぜか大人がこちらに兎を渡してくるので突き返す。
「罠作ったのはこの村の子供なのにその成果を奪うつもりは無いんだけど?」
「え、いや。でも、……しかし」
子供は自分の仕掛けた罠にかかった兎を見て、茫然としていた。
その手に大人の持つ兎を渡す。
「よかったね。ちゃんと捕れた」
「……ぼくの罠?」
「うん、そうだよ」
「ぼくが捕った?これ、ぼくの?」
「そう」
「〜っ!!」
足をジタバタとさせて唸る子供は可愛いな。
まあ俺も分類的には子供なのだが、俺にこの可愛げは無い。
さすがに前世の大人の記憶が可愛げを無くさせてしまった。ちょっと羨ましい。
「この兎、どうしたら食べれる!?」
「あっちに持っていったら解体教えてくれるよ。そしたら肉と皮にする方法がわかる」
「あっち!?行ってくる!!」
兎を持って解体を教えている兵士の元に駆けていくのを見送った。
「お貴族様に失礼な物言いを……」
「子供が元気なのは良いことだ。そこまで狭量では無いよ」
「ありがとうございます……久しぶりにあんなに嬉しそうな顔を見たかもしれません……」
この村の人って単純に全員被害者というか生き餌というか、いや、生き餌は言い方よくないな。
まあ、ホルツ男爵に利用された哀れな人たちなんだ。
昨日は俺にまで上手く使われていたし、根が素直で善良な人ばっかりなんだろう。
昨日見た小さい子供が薬草を持って、どこかに走っていく。
「……昨日のあの子たちは、その、父親がこの村に来てしばらくして病気にかかり亡くなってしまい、母親もあの下の子を産んでから弱ってしまっていて……なるべく助けようとは考えているのですが」
俺の視線に気付いた大人が子供の境遇について話してくる。
「子供2人を俺の視界から隠して移動させてたしね」
大人たちが子供を囲んだのは俺から見えないようにする為の方法だったのはなんとなく気付いていた。
痛めつけるフリしてたんだろうな。
身体を震わせた村人に気にするなと手を振る。
「俺はそれに関して強く咎めようとは思わない。だが、他の貴族はそうではないことは覚えていてくれ」
「はい、ニーエベルグ男爵家の方が格別に優しいことは知っています。……本当は、何度かニーエベルグ男爵領に逃げようと話は出たのです。それでも、優しい貴方たちにご迷惑をかけるようなことは出来ないと……」
ポロリと溢された言葉に肩を竦める。
この村がニーエベルグ領に逃げてこずに、ギリギリを耐えてくれたおかげで他所の貴族の悪意に遅くはなったけれど気付けた。こちらだけが削られ不利な状況にはならなくなった。
それは感謝を伝えるべきことだと俺は思うんだけど、まあそんなことを貴族とはいえ子供に言われても微妙かな。
父様がもっと早く気付いてくれたらよかったんだろうが、これから戦地に向かうから支援や話を聞きとることもなかなか出来なかっただろうし、父様としてはその代わりとして肉と破格の代金な金貨を渡していたんだろう。
さすがに田舎暮らしの基本すら知らないとは思いつかないだろうしな。だって俺たちには当然の知識だから。
そもそも今やってることも男爵代理の子供が言い始めたわがままを解消する為に村人を使っている。みたいな名目になってる。
向こうがスレスレ狙うならこっちもスレスレで対応してやんぞ。
「俺たちは表だって支援も出来ないし保護も出来ない。けど、本当にもう無理だ! ってなったなら遠慮しないで逃げてきなよ。ウチはいつでも人手不足なんだからさ」
「……はい、ありがとうございます」
目元を擦る大人は子供の俺には視点が高すぎて見えないということにしておく。
肉の保存食を教えて、逆に穀物や野菜の保存食を教えてもらう。
普段は狩人の兵士が簡単な森の知識を話す。
村人はギリギリの日常を保たせることに精一杯で、思考が回らなくなっていたのかもしれない。
今日は何で気付かなかったんだろうと不思議そうにしたり悔しそうにしたり喜んだりしている。
うん、この領のままだとしても交流とかならしてもいいんじゃないかな。
俺たちの領側でこの村の近くに交流場所作ってそこで交易っぽいこととかしたっていいだろうし。
この村の人たち野菜やパンを俺が知ってる範囲基準ではかなり美味しく作っていたので、正直ウチの領に作り方布教して欲しい。
父様に手紙書いとこ。




