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貴族次男は書類偽装で戦場へ行く〜家族の為に頑張るぞ〜  作者: 糸魚樋


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2.馬車に揺られて


 ゴトゴトと馬車が進む。

 向かう先は我がニーエベルグ男爵領から1週間かかる辺境だ。

 着いた先で起こるのは隣国との小競り合い。

 コレが本当に小競り合いで、なんとこの時期に毎年やっている。マジで止めろ。

 兵士集めて備品類を揃える金、領から辺境を往復にかかる金、いったいいくらかかると思ってるんだ。

 貧乏領地を呼び出さないで欲しい。

 いちおう辺境伯と、実質的トップになる侯爵様から褒美のお金は出るらしいが、収支見せてもらったらほぼトントン。クソが。


「いちおう良い点もあるんですよ」


 マルクスが苦笑いをしつつフォローのような発言をする。


「ほう」

「定期的に装備類を新しく入れ替え出来てます」

「他に?」

「古い保存食を行き帰りで消化、あと兵士の大規模な戦闘での連携訓練ですね」


 うーん。在庫や消耗品の定期入れ替えは確かに利点。

 大規模戦闘もうちの領地じゃなかなか出来ないことではある。


「でも毎年は嫌だろ」

「まあ面倒ですが、この時にしか会わない他領の騎士と情報交換とかもしてますよ」


 やっぱり面倒だよな。

 せめて2年とか4年に1回にしてほしい。オリンピックを見習ってくれ。


「そもそもなんで毎年やってんの?」

「隣国の辺境伯が戦闘狂、且つ何故かリベリオン侯爵様をライバル視されているらしいですね」

「なんか因縁とかあったり?」

「リベリオン侯爵様が初陣に出られた時にいらっしゃって、それから名指しで絡まれてるらしいですよ」


 リベリオン侯爵が厄介ストーカーの被害にあってるのか。可哀想すぎる。

 一度出された宣戦布告を無視したら、本当に攻めてきた上に領地を分捕ってそこで延々と暴れ回るという迷惑行為をして、更に面倒なことになったので仕方なく毎年受けているらしい。

 なんて傍迷惑なジジイだ。

 何年やってるのか聞くと16年間欠かすことなく行われているとか。

 ……何かいっそ毎年そんなこと出来るって平和なのかもしれないな。


「今の辺境伯が亡くなるか次代に変われば無くなる可能性は高いですね。向こうとしても無駄な出費ですし、この時期以外は普通に辺境同士で交流もしているそうなので」


 それは辺境伯以外は茶番というか単に模擬訓練みたいになってない?

 現在、向こうの辺境伯は御年63歳で毎年元気に最前線で喚いているらしい。


「お年の割にはとても良いお声をしていらっしゃるんですよ」

「その情報いる?」


 声が良かろうと俺の中での印象は戦闘狂老害で既に固定されている。

 馬車で尻を痛めながら向かう先が迷惑おじいちゃんだけが喜ぶ戦場なのとても嫌なんだが。行く気が失せる。


「明日は村に泊まりますよ」

「ウチの領からはもうそろそろ抜けるから隣領の村だよな?」

「そうですね。ホルツ男爵領です。毎年泊まっているので泊まる用の家を置いてくれていますよ」


 騎士4人と村から有志の兵士10人、後は例年なら男爵の父様で総勢15名か……んで、泊まる時に食べ物とか水とか用意してもらって、金貨2枚の支払い。

 ……うーん、これいくらなんでも高くないか?

 マルクスに問い詰めるとまたもや苦笑い。


「一応、男爵家として金払い良くみせないといけないんですよ」

「んー……それで出されるメシがマトモなメシならギリ許すかな」

「坊っちゃん意外と食べ物にうるさいですよねえ」

「食は大事」


 虫除けと時間を計るために馬車の中で焚いている香が消えているのに気付く。


「香切れてる」

「おや、ではそろそろ一度休憩ですね」

「場所ある?」

「無いので道のど真ん中に止めます」

「邪魔じゃない?」

「この道を馬車で通る人間なんてほぼいませんよ」


 そりゃそう。

 なんせこの道の先にあるのはウチの領だけだし、着いた先は山しかない。

 山を通り抜ける道はニーエベルグ男爵領にはない。

 領の奥にある雪山はなかなか美しい見た目なので前世なら観光地になったかもしれないが、この世界じゃ厄介な通れない山というだけ。

 ずっと雪を被ったままの雪山だが、冬の時期にはたまに何かの鳴き声が聴こえる。

 村の老人たち曰く、雪山の主である竜の鳴き声だとか。そのまま呼び名は竜雪山となっている。国の中ではトップレベルに高い山らしい。

 まだ後ろに見える雪山を見上げてため息を吐いた。

 流石にホームシックには早すぎるけど、もう帰りたい。

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