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[COORDINATE 0015] Night on the Elysium Plains

# Flashes_of_Inspiration:


グリフォンだった半ば炭化した肉塊が、重い音を立てて地面に叩きつけられる。

勢いが余ったルナリアは、遥か向こうまでそのまま飛んでいった……。


――空中で前方に三回転半し、軽やかに着地を決めている。

俺はもう突っ込まないぞ。


「か、勝った……。はぁぁぁ……」


今回は、上位魔物を相手に、何の備えもないまま始まった遭遇戦だった。

しかも、他の人間までいた。俺たちが勝てなければ、全員の命はなかっただろう。

普段は背負い慣れない重圧から解放され、俺はその場に腰を下ろした。


いつもなら真っ先にルナリアのもとへ駆け寄る。だが、今回ばかりは少し休みが必要だ。


一日に二度も戦闘をこなし、その二戦目がこの重圧だ。

精神的に摩耗した俺は、星切を杖代わりにしようとして……思い止まり、静かに鞘へ収める。

ユーリからの大切な贈り物だ。粗末に扱うわけにはいかない。


「あー、今回は疲れたなぁ……」


両手を後ろについて空を見上げると、そこには吸い込まれそうな満天の星空が広がっていた。


「アルスさん! 助かった、ご助力に感謝する!」


遠くからヴァレリーさんの叫び声が聞こえる。だが、もう声を張り上げる元気も残っていない。

俺は右手の拳を軽く突き上げるだけで応え、彼の視線が馬車の負傷者や雇い主の方へ向くのを見送った。

フェリスさんはこちらに深く一礼すると、すぐに罠の回収を始めている。


「……! アルス!」


月明かりに照らされたその少女は、汚れを知らぬもののように美しい。

だが、その透き通るはずの赤紅色の瞳は、いまや泥濘めいた熱に濁りきっていた。


「アルス、アルス……っ。わたし、……ちゃんと、できた……?」


駆け寄る勢いのまま、ルナリアは距離を測る素振りすら見せず、俺の胸元へと飛び込んできた。

柔らかな質量がぶつかり、ウェーブがかった金色の髪から立ち昇る甘い石鹸の香りと、焦げつくような汗の匂いが混じり合って俺の鼻腔をくすぐる。

戦いの余熱を帯びた彼女の異様な高体温と、早鐘のように打ち鳴らされる心臓の鼓動が、その生命の熱を直に伝えてきた。


彼女は俺にすがりついたまま、ふにゃりとした笑みを向けてくる。

正面から抱きしめられる格好になった俺は、その美しい相貌と揺蕩う赤い瞳から目を離せなくなった。


その力が入らず閉じきれていない、熱い吐息の漏れる、やわらかく潤んだ唇からは、

俺からの褒め言葉をねだるような甘い声が零れた。


「……ねぇ、見てて、くれた……?」


見上げてくる赤色の瞳は、ひどく熱っぽく潤んで焦点が定まっていない。


「わたし、外さなかったよ……。えへへ……。跳んじゃった……。ちゃんと、倒したよ……。頑張った、よね……?」


「ああ。よくやった、ルナリア。すごかったぞ」


……理性が飛んでるな。でも本当に今回はすごかった。それにルナリアはいつも頑張っている。心の底からそう思う。

そんな気持ちを込めて、俺は労うようによしよしと金色の髪を撫でた。

そして空いた腕で、彼女の背をそっと抱き寄せる。

すると、限界まで張り詰めていた彼女の身体からふっと力が抜け、俺の胸へ全体重を預けるようにして、一瞬だけ安堵に頬を緩めた。


俺はルナリアを撫でながら一息ついて、疲労から深く息を吐き出す。


――その瞬間、彼女の身体がびくりと硬直する。

俺を見上げたその瞳からは安堵の色が引き、瞳に潤みを湛えたままに自らの至らなさを責めるような焦燥が走った。


(……アルスが、……わたしのご主人様が、疲れている。……わたしが幸せにしてもらうだけじゃ駄目!

ど、どうしよう……。こ、これでどうかな……?アルス、好き……だよね?)


「……えいっ。んっ……。これで、少しは楽になる……?」


掠れた声と共に、彼女は俺の左腕に両腕を絡ませ、自らの胸をぎゅうっと強く押し付けてきた。

戦闘でボロボロに裂けたネイビーブルーの生地は、もはや何の障壁にもなっていない。

Fカップの豊かな質量が、明確な重力感を伴って俺の腕の形に合わせてぐにゃりと変形する。


ひどく熱い体温と、それを伝える柔らかさが俺の脳髄に電気を走らせる。


あぁ……。柔らかい……。いや、今のルナリアに流されては駄目だ。

向こうでヴァレリーさんたちが後片付けをしている。俺が自重しないといけない。


でも……。ルナリアはいい匂いがする……。何もかも忘れてこのまま溺れたい……。


いや駄目だ俺。思い出せ。あのリッチ戦の翌日のルナリアを。

あの精神が死んでいたルナリアを。可愛そうだったろう?……いや、でも本人もなんやかんや嬉しそうだった気も……。


俺が男の子の葛藤で硬直している様子を、彼女はこれではまだ足りないと受け取ったらしい。


もっと直接的に彼を癒やさなければ――そんな使命感を美しくも濁りきった瞳に宿す。

彼女の喉が、唾を飲み込みごくりと鳴る。その柔らかな唇を少し開く。

甘い汗の匂いが極限まで近づいた直後、俺の首筋を、ひどく熱くて湿った舌先が這い上がった。


「……っ、……んっ……、ちゅ……。ちろり……」


背筋を駆け抜けるような甘い痺れ俺を支配する。


「っ……! こら、ルナリア」


突然の甘い刺激で、逆に少しだけ冷静になった俺は少しだけ身体を引いて彼女の肩を掴む。


「……こほん。近くに人がいるんだから、舐めるのはやめなさい」


嗜めるようにそう告げると、ルナリアは動きを止める。

潤んだ赤い瞳からには零れ落ちそうな涙がたまり始めた。


(……こんな、ちょっと舐めるだけじゃ、駄目だ。……こんなのじゃ、アルスのことを癒せない……。

……やっぱり、わたしが決めたことじゃだめなんだ。……ぜんぶご主人様に決めてもらわなくちゃ……わたしの全部……)


(そうだ!……わたしが決めるから駄目なんだ!)


俺はルナリアが涙ぐむのを見て狼狽え、どう言ってなだめるべきか思案していた。

困り果てながらその瞳を見つめていると、数年前――彼女が初めて奥義を放った時に見た、あの強烈な閃きがふいに宿る。


だが、だらしなく開いた熱い唇から漏れたのは、あまりにも淫靡だった。


「……あ。……そっか。……全部、決めてもらえばいいんだ……」


ルナリアはそう言うと、自らの言葉にさらに熱を帯びていった。


「ねぇ……わたしの使い方、ぜんぶきみに決めてほしいな……? わたしはきみを癒やしたい……。

でも、どうしたらいいのか、わからないの……。舐めるのが駄目なら、どうしたらいいかな……? どんなふうに使ってもいいよ……?」


俺はいよいよ抗えなくなってくる。

なぜお前は、そういうことをいつも戦闘直後に言うんだ。

一緒に生活していても、普段はそんなこと一度も言ったことがないだろうが。


星空の綺麗な夜に、宿屋への帰り道で言えよ!!


熱い吐息が、俺の首筋を撫でる。

彼女は俺の右手を両手で包み込むように掴むと、そのまま自らの胸元へ引き寄せた。


「わたしはね……。アルスの剣で、所有物になりたいの……。だから、この身体をどう使うかも……どれだけ価値があるかも……全部、きみに決めてほしい……。

わたし……女の子としては自信、ないけど……きみの命令なら、なんでも聞くから……。……ね?」


俺の掌を胸に押し当てたまま、彼女は潤んだ赤紅色の瞳で俺を真っ直ぐに射抜いてくる。

微笑を浮かべたルナリアの瞳から、一雫の涙がこぼれ落ちた。

そこには一切の羞恥はない。ただ俺に全てを譲り渡したい――そんな危険な純粋さだけがあった。


駄目だ。ルナリアのその柔らかな胸のふくらみは、完全に俺特効だ……。防御できない……。

……もういいか! いいよな! よし、ヴァレリーさんに一声かけて、馬車に乗り込んでしまおう。

そこでルナリアでおうまさんごっこだ。いいね!


…おうまさん?



――その言葉が、俺に天啓をもたらした。


俺は全霊をもって、下半身へ集まりかけていた血流を無理やり脳へ引き戻す。

どうにか知性を取り戻した目で、ルナリアを真っ直ぐに見つめた。


「……ルナリア。聞いてくれ」


口を半開きにし、焦点も合わぬまま熱に濁りきった赤い瞳。

それでもなお、その輝きは宝石のように美しかった。


「……なぁに? えへへ……。あ、そっかぁ……。ここで、裸に、なったほうがいい?」


ならなくていい。


「俺は確かに疲れている。非常に疲れている。あそこで怯えているお馬さんたちが心配で仕方ないんだ。だから疲れている」


「……え? お馬さん……?」


涙ぐんだままのルナリアが、きょとんと瞬きをする。

俺は彼女の両肩をしっかり掴み、真っ直ぐに目を見て言葉を重ねた。


「ああ。だからお前がお馬さんたちのところへ行って、しっかり撫でて世話をしてきてくれれば……俺の疲れも、きっとすっきり取れる」


「……! うんっ、わかった! わたし、お馬さんたち、綺麗にしてくるね……!」


俺の言葉を至上の命令として受け取ったルナリアは、一転して使命感に満ちた表情になると、ふらつく足取りながらも一直線に、馬たちの繋がれた馬車の方へと駆けていった。


すまない、ブラウン、ブルー。

お前たちがルナリアを怖がっているのを知りながら押し付けた俺を、どうか赦してくれ……。


「ルナリアー! ちゃんと飼い葉もやっといてくれよー!」


「うんっ! まかせておいてー!」


……ヴァレリーさんたちの様子を見に行くか。

俺は立ち上がってズボンについた砂埃を払い、今度こそ全てが片付いたことに安堵しながら、大きく息を吐き出す。



# Words_with_a_Comrade:


平原はすっかり夜の静けさを取り戻し、時折、草むらから穏やかな虫の音が聞こえてくる。

戦闘で火照った顔に涼やかな夜風を受けながら、俺はヴァレリーさんたちの馬車へと歩み寄った。


ヴァレリーさんが、商人らしき人物と話しているのが見える。

馬車の隣にはフェリスさんが立っていた。


足音に気づいたヴァレリーさんが、こちらへ真っ直ぐに振り向いた。

俺はもう戦闘が終わったこともあり、いつもの調子で声をかける。


「お疲れ様でした。お互い無事でなによりです。お連れの方は、命に別状ありませんか?」


彼は一瞬きょとんとした後、人の良さそうな微笑を浮かべた。


「ああ、ありがとう。君の応急処置のおかげで大事はない。今は馬車の中で休ませている。

……それにしても、戦闘時とえらく口調が違うな、アルス殿」


俺は目上の人には丁寧に接する主義だ。

じいちゃんに厳しく躾けられているからな。


「さっきは切羽詰まってましたしね。少し言葉遣いが乱暴でした。すみません」


俺が肩をすくめると、ヴァレリーさんは苦笑しながら首を振った。


「やめてくれ、アルス殿。君たちがいなければ、俺たちはどうなっていたか分からない。それに、さっきの戦闘も、ほとんど君たちだけで倒したようなものだ。

そんな君にそういう態度でいられると、こちらの立つ瀬がないぞ」


俺は少し意地悪な顔を作って返す。


「でも、ヴァレリーさんも、殿はないんじゃないですか? 親子くらい歳が離れてますよ。アルス君が普通では?」


俺とヴァレリーさんは視線を交わし、どちらからともなく小さく吹き出した。


「はっはっは。そうだな、アルス君。まあ、俺たちは平民の戦士同士だ。

一緒に死線を潜った仲だしな。気軽にいこうか。フェリスもそれでいいな?」


「……こくり」


フェリスさんは本当に寡黙だな……。これでは男女の区別もつかない。

まあ、体格や身のこなしからして女性だろうか。


「そうだな。じゃあ、気軽にさせてもらおう。でも俺はヴァレリーさんと呼ぶよ。

年上を呼び捨てになんかしたら、じいちゃんに怒られるからな」


「ああ、そうしてくれ。しかし、アルス君の支援魔法も見事だったが、お仲間の剣士さんは凄まじいな。

見たところ、王国の冒険者かい? もしかして、Sランクというやつなのか?」


「いや、最近Aランクになったばっかりだ。ヴァレリーさんも、やっぱり冒険者なのか?」


「いや、俺は共和国の出身だからな。冒険者ではないよ」


ん? どういうことだろう?


俺がその言葉の意味を測りかねていると、上質な衣服に身を包んだ商人風の男が、横から勢いよく声をかけてきた。


「この度はご助力、誠にありがとうございます、神官どの! アルス殿でよろしかったですかな!

わたくしめはガストンと申します。ぜひとも、お礼をさせてください!」


五十代半ばほどだろうか。戦士のような体つきではないが、身のこなしからそれなりに旅慣れていることがうかがえる。

俺はガストンさんを改めて観察しつつ、答えた。


「いえ、こういう旅路で助け合うのは、冒険者として当然のことです。

それに、ヴァレリーさんやフェリスさんがいなければ、俺たちもやられていたかもしれませんし」


感心したように目を輝かせたガストンさんが、さらに言う。


「このまま街道を進まれるのでしょうか? この先の街に、私の商店の支部がございます。

そこで今回のお礼を、きちんとお支払いさせていただければと!」


なるほど。さすがは商人だ、抜け目がない。

つまり、その街までの道中は、俺たちに実質的な護衛も兼ねてほしいということか。

まあ、どのみち俺たちの目指していた街ではある。


「ありがとうございます。長旅の途中ですので、助かります」


俺が頷くと、ヴァレリーさんがガストンさんに声をかけた。


「ガストンの旦那、護衛の身でありながら馬車を占領しちまってすまない。

マルクの容態は安定している。かなりの深手だと思ったが……あの神官殿のおかげだ」


ガストンさんはヴァレリーさんに気さくに答えた。


「いやいや、構わないよ。あんな襲撃は予定になかった。護衛を放り出して逃げていてもおかしくなかった状況だ。

職務を遂行した上での負傷だ、仕方ないだろう。まあ、私も最近は腹が出ていることを娘にいじられるのでね。

しばらく外を一緒に歩くとしよう」


ガストンさんは快活に笑いながら、自分の立派な腹をぽんと叩いた。


「ではガストンさん、今日はここで野営をして、明日の朝に出立ということでいいですか?

連れは激しい戦闘の後だと、少し精神が不安定になることがありまして。本当は一緒に火を囲みたいところですが、今晩は自分たちの馬車で休みます」


俺がそう申し出ると、ヴァレリーさんは深く頷きながら答えた。


「あのような魔法を自在に操り、火の神の如き剣閃で上級魔物を一刀両断したのだ。

精神が張り詰めたまま戻らないのも仕方あるまい。ゆっくり休んでくれ」


張り詰めているのではなくて、溶けきっているんだけどな。

方向が真逆なだけで、概ね理解は間違っていない。


「戦士どのの負荷は、わたしなぞには到底測れないものでしょうなあ。……そういえばアルス殿は、肉と魚、どちらがお好みですかな?」


「魚! あ、いや、魚が好きですね。漁師の出なもので」


ガストンさんはフェリスさんに何やら目配せをする。

すると、フェリスさんが馬車からいくつかの包みを持ってきた。


「では、これを今晩の食事にどうぞ。近隣の都市で仕入れた、良い品です」


「ありがとうございます。こういう旅では新鮮な食材はなかなか口にできないので、本当に嬉しいです」


おお、ありがたい。干し肉や塩漬けにはすっかり飽き飽きしていたところだ。

俺はガストンさんに深く一礼し、ヴァレリーさんに軽く手を上げた後、ルナリアの待つ自分たちの馬車へと戻った。


馬車に戻ると、異様な光景が目に入った。

俺たちの馬であるブラウンとブルーが、微動だにせず、ルナリアによって執拗な毛づくろいをされている。

その大きな瞳は、完全に圧倒的強者の圧にびびりきっていた。俺の姿をちらりと見た二頭が、助けを求めるように俺の方へ擦り寄ろうとする。


「ルナリア、ありがとう。今晩の食事をもらってきたよ」


俺が声をかけると、ルナリアは弾かれたように振り返り、花が咲いたような、それでいてひどく熱っぽい笑顔で駆け寄ってきた。


「あ……おかえりっ! ……えへへ。お馬さんたち、ピッカピカだよっ。この子たち、すっごくいい子だから、ブラッシングもすぐだったのっ! ご飯も、ちゃんとお腹いっぱいあげておいたよっ」


早口でまくしたてながら、彼女は俺の身体に無意識にすり寄ってくる。

ぼろぼろに裂けたネイビーブルーのバトルドレスの隙間から、戦闘の余熱と、甘い石鹸、そして生々しい汗の匂いが混ざり合った、強烈に甘い匂いが立ち昇る。


「……ねぇ、アルス、元気になった……? …………まだ、……疲れてるんじゃ、ない……かな?」


心配そうな声を出しながら、彼女の震える指先が、俺の胸板から腰のあたりまでを執拗にまさぐり始める。

密着したFカップの柔肉が、戦闘で裂けた布越しに生々しい弾力と高体温を伴って、俺の腕にぐにゅりと押し付けられた。


「こら、報告しながら、俺をまさぐるのはやめなさい」


俺が軽く嗜めると、彼女はハッとして手を止めたが、その赤い瞳は潤んだまま俺をねっとりと見上げてくる。


「ルナリア、火を起こしてくれ。腹が減った」


「……んっ、わかった! すぐに準備するね……っ」


いそいそと立ち働き始めたルナリアだが、衣服を整える気もないのか、短いスカートの裾がめくれ上っている。

白く肉感的な太ももから純白の下着のラインまでが無防備に晒されたままだ。


俺はため息をつき、すっと手を伸ばして彼女のスカートの裾を直してやった。


その瞬間、俺の指が太ももに触れたことで、彼女の肩がびくりと大きく跳ねた。


「……んぅっ! あ……ごめん、ね……。スカート……邪魔、だよね……。うん、今、捨てちゃうね……っ」


彼女は熱い吐息を漏らしながら、なんの躊躇いもなく自らのスカートの留め具に手をかけ、本当にその場で脱ぎ捨てようとする。

俺が肌に触れるのに衣服が邪魔だということなんだろうか。


ここで捨てて、明日からどうするんだよ。


「スカートは捨てるな。とりあえず、まずご飯だ。お腹が空いて、俺は元気がなくなりそうだぞ」


「……っ、うん。うんっ……! わたし、きみのために、美味しいの焼くね……っ」


――しばらくして、アルスたちの馬車からは魚の焼ける香ばしい匂いが漂い始めた。

その横では、ルナリアがぴたりと寄り添い、甲斐甲斐しく世話を焼いている。

どうやらアルスは、食事ひとつ自分ではさせてもらえないようだ。


彼らは今、セレスティア王国の国境付近にいた。

共和国の領土までは、もうあと少しである。



# COORDINATE 0015 END

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