大死霊術師「バーン」
プロローグ
1998年1月5日 19:44
六本木・東京
森タワーの頂上に、灰色の髪の裸の男が立つ。
頭に赤い茨の冠、夜に燃える紅い瞳。
背後には四つの異形──
水神、イマちゃん、長すぎるヤツ、黒鴉静間。
原始鬼たち。
「災厄を始めよう」
男が跳ぶ。
車が真っ二つに割れ、特別区は瞬く間に業火に包まれる。
誰も止められない。
彼こそが魔王。
一年後、政府が告げる。
「人類の21%は鬼の血を引いている」
六本木は永遠の警告として残された。
──24年後。
白髪に緑の瞳、14歳の高村カイ。
オカルト好きの友人コナとロコと一緒に、古い封印を見つけてしまう。
好奇心で解いた瞬間、
鬼が目を覚まし、二人は喰われ始める。
黒髪の侍・赤毛レンが現れ、黒い刀を振るう。
共闘で鬼を倒すが、
全ての魔力がカイの中へ流れ込む。
絶叫。瞳が紅く染まり、首に鬼の紋様が浮かぶ。
そこに、緑がかった金髪と電撃のような笑顔の男がしゃがみ込む。
「おい、坊主……侍になりたくないか?」
カイの目が輝いた。
「なりたい!!!」
翌日、白と青の羽織を着せられ、
レンはいつもの仏頂面で横に立ち、
電車から降りてきた灰髪白まつ毛の少女が全員に抱きつく。
「よろしくね同僚たち! 国見ミラだよ!」
魔王と四体の原始鬼の影が今も世界を覆う中で、
侍王になることを誓った少年の物語が始まる
カイは抱擁から離れ、レンも離れる。
「わあ、嬉しい! 新しい仲間だ!」
ミラはクニを見ながら、耳から耳まで笑顔を広げる。
「もちろん、カイ!」
首をレンに向ける。
「レンは?」
レンはムッとした顔で視線を逸らす。
雷電はニコニコしながら見守っている。
「さて、君たちに浅草で任務がある。理事会の都合で俺は行けないんだ」
カイは赤い瞳でじっと見て、
「了解です、柏木先生!」
雷電は笑ってカイの髪をくしゃくしゃに撸る。
「雷電でいいって言っただろ、バカ」
カイも笑う。
「じゃあ了解、雷電先生!」
レンは雷電を見て頭を下げ、丁寧に一礼。
「了解しました、柏木先生」
ミラは立ち上がって雷電に抱きつく。
「頑張ってきます、雷電先生! 幸運を祈っててください!」
──数時間後──
電車の中、カイは席で気持ちよさそうに眠っている。
レンが小声で言う。
「起きろ、歩く遅刻魔」
カイはビクッと跳ね起きて、三人で街を歩き出す。
人々で賑わう明るい街並みの中、レンは恥ずかしそうにラーメンを買って食べながら歩き、廃屋にたどり着く。
一階建てだが、奥行きが異様に長く、全体が真っ暗。
レンは怖がらずに懐中電灯を持って先頭を歩く。一方、カイとミラはガタガタ震えている。
レンはため息まじりに恥ずかしそうに呟く。
最初の鬼が現れ、レンに向かって突進してくる。
「火の呼吸・燃える棘!」
刀が地面から無数の燃える棘に変わり、鬼を貫いて瞬殺。
ミラが興奮してレンに駆け寄る。
「すごいよレン! それ教えて!」
レンは鼻を鳴らして拒絶。
「うるさい」
カイは考える間もなく前方へダッシュ。
「おい! 何やってんだこの馬鹿!」とレンが叫ぶ。
カイは廃屋の奥にあった滝へ飛び込み、滑り落ちそうだった半鬼半人の少年を間一髪で救う。
落下は数十メートル。カイは岩に腹を貫かれ、血を吐きながらも耐える。瀕死。
ミラが駆け寄り、
「呼吸法・風の吐息!」
口から放たれた風がカイの貫通傷を癒していく。
ミラのポケットの黄色い魔導書が光りながら術を支える。
治療が終わると同時にミラは息が切れ、魔力を使い果たして膝をつく。
レンがやってきて、カイの傷に手早く包帯を巻く。カイはすでに立ち上がる。
「ごめん、ミラ、レン……」
レンは呆れたように言う。
「鬼を助けるなんて頭おかしいだろ。お前、本当にピエロだな」
カイは眉を吊り上げる。
「あの子は鬼じゃない、馬鹿」
レンがカイの胸を突く。
「俺は赤い肌まで見えたぞ。お前、現実見えてない主人公気取りか?」
カイが殴りかかろうとするが、ミラが二人を割って入る。
「もうやめて! 二人とも馬鹿みたい! いい加減にしなさい!」
ミラは珍しく本気で怒り、震える少年に近づく。
「呼吸法・風の吐息。
少年の鬼化が解け、人間に戻る。
少年は立ち上がり、感謝の言葉を呟く。
ミラはその直後、魔力枯渇で倒れる。
レンが素早く抱きとめる。
「この術……とんでもない魔力を食うんだな……
カイは羽織を脱ぎ、上半身裸になる。
右側にいたのは、身長2メートル12センチ、赤髪白目の鬼──バーン。
人を殺し、死体を操る自称大死霊術師。
バーンは滝の奥の隠し牢から人々を引きずり出し、次々と殺していく。
「やめろ!!」
カイが怒りに燃えて叫ぶと、ポケットの黒い魔導書が現れる。
バーンが嘲笑う。
「はっ、ガキが侍の真似事か?」
カイは刀を握りしめ、叫ぶ。
「俺は侍王になる! 侍の制約を変えて、みんなが平和に暮らせるようにする!!」
レンがわずかに驚いた顔をする。
カイが飛び込む。バーンも刀を抜く。
刀と刀がぶつかり、火花と甲高い音が響く。
カイが下段蹴りを入れるが、バーンは跳んでかわし、レンが横から斬りで割り込む。
二人でバーンを突き刺そうとするが、バーンが光爆を発動、二人を吹き飛ばす。
カイは飛ばされた先でゾンビに殴られ、再びバーンに叩きつけられ、壁に激突。
ミラが目を覚ます頃、レンがバーンと戦っていた。
「火の呼吸・烈火粉爆!」
レンから巨大な爆発が迸り、バーンを遠くへ吹き飛ばし、軽く焦がす。
「ぐっ……くそ、痛てぇ……」
レンは胸を押さえ、自分の胸が真っ黒に焦げている。
バーンがニヤリと笑う。
「魔導書から胸を通って外に放つタイプか。なるほどね」
レンが睨む。
「おお、今度は専門家ぶる?」
「いや、痛めつけるのは専門だけどな。実演してやろうか?」
レンの魔導書が輝く。
「火の呼吸・炎の天使!」
巨大な炎の天使が実体化し、バーンへ突進。
バーンはそれを弾き、レンを殴り飛ばす。
カイが意識を取り戻し、ミラに支えられる。
レンは刀を折られながらも全力で立ち回る。
「レン、頑張れ!」
バーンがレンの足を掴み、壁に叩きつけ、気絶させる。
近づいて蹴りを入れる。
カイの赤い瞳が怒りで充血。
「てめぇ……」
鬼の紋様が腕まで這い上がり、歯が鋭くなり、肌が黄ばむ。
瞬間移動のようにバーンの前に現れ、刀の柄で顎を砕く勢いで殴る。
気絶したレンを抱き上げ、低く唸る。
バーンはゆっくり立ち上がり、胸に深い傷。
「おお……」
言葉を最後まで言わせず、カイが突進。
腕を深く斬り、首を掴んで柄で腹を殴り、顔面に蹴りを叩き込む。
壁にめり込ませ、最後に両足蹴り。
「くらえ!!」
バーン気絶。
小鬼たちが群がってくるが、カイは全て片っ端から殴り倒す。
戦いが終わると同時に鬼の紋様が消え、カイも力尽きて倒れる。
ミラが二人を抱き上げ、
「呼吸法・風の吐息」
で応急処置をし、
「風の術・疾風小鬼」
二体の小さな風の精霊が現れ、カイとレンを抱える。
滝を登るのは大変だったが、ふと思い立ち、
「風の術・軽やか雲!」
大きな雲が現れ、三人を乗せて滝の上まで運ぶ。
なんとか脱出。
ミラは二人を医務室まで運んだ。
──翌日──
カイがゆっくり目を開ける。
「おはよう、寝坊助」
雷電が笑顔で言う。
レンはもう起きていて、ラーメンをすすりながら包帯だらけ。
「雷電先生……任務、どうだったんですか? 頭が痛くて全然覚えてなくて……」
雷電がニヤリ。
「君たちは大活躍。一つ、上級侍がくれる星を獲得した。ちなみに俺も上級侍だ」
と得意げに胸を張る。
カイは目を白黒させる。
「はあ……」
ミラがニコニコ近づいてくる。
「試験、準備できた?」
カイが首を傾げる。
「どんな試験?」
ミラが想像のメガネをクイッと上げて、
「侍王になるには三段階あるよ。今は俺たち基本級、新入り。
今日受けるのが上級への昇格試験。
その上には先生みたいな最上級がある」
カイ「鬼にもランクってあるの?」
ミラ「もちろん! 基本→上級→最上級→不明級」
カイ「不明級ってどんな?」
ミラ「侍王よりちょっと下くらいの強さ」
カイ「じゃあ不明じゃないじゃん」
誰も笑わない。雷電だけ爆笑して涙を流す。
カイは気まずそうにミラを見る。
「さて子供たち、訓練だ。カイも魔導書手に入れたし、ちょうどいい」
──数分後、晴天のグラウンド──
「魔導書が何か、ちゃんと分かってるな?」
レンが白、ミラが青、カイが黒の魔導書を出す。
「まずはレン」
レン「アカデミーで教わるのは、
魔導書を読む→練習→魔導書なしで発動できるようになる、
レベルが上がると新ページが解放される、って流れです」
カイとミラが大げさに拍手。
三人で練習開始。
カイの属性は水。
「水の術・水牢!」
水が棺の形になって対象を閉じ込める強力技。
ミラは風、レンは火。
雷電「ちなみに属性は使い込み次第で進化する可能性もある。
詳しくは俺も知らんけどな」
カイ「先生の属性は?」
雷電がサングラスをキメ顔でかけ、
「雷だ!!」
カイ「めっちゃ速そう!」
雷電が子供のようにはしゃぐ。
「そうだろうそうだろう!!!」
レンが頭を抱える。
「バカばっかり……」
雷電「じゃあ俺は行くわ。3時間後に上級試験開始な、頑張れよ」
──2023年3月2日 17:30──
スタジアムは大歓声。
カイは外でアイスを頬張り、幸せそうな顔。
赤い羽織に義務の侍鎧。
ミラ「準備できた? 日本中が見てるよ」
カイ「分かってるって、大丈夫」
アイスの包みを捨ててスタジアムへ。
「試験開始!!
観客「オオオオー!!」
司会「それでは生徒を呼びます!
グループ1──高村カイ!」
カイが進むが、誰も歓声なし、無名。
「赤毛レン!」
大歓声。
「国見ミラ!」
ミラがポーズを決めようとするが、逆にブーイング。
ムキになってカイの横に並ぶ。
グループ2
「一色ケンジ!」 空色髪・緑眼・土属性・入学試験トップ。拍手喝采。
「綱地ハナコ」 黒髪ピンク瞳・虫魔法・学園一の美少女と噂。大絶叫。
「松嶼ケンゾー」 紫灰髪・金属魔法。キスを投げて歓声。
グループ3
「柏木ケンタロー!」
震えながら進む→雷電を見て気絶。会場「うわあ……」
黄色い救急隊員が担架で運ぶ。
「次、宇井ヒナ!」
光属性・黒髪黒眼・モデル歩きで登場。写真撮られまくり。
遠くで見てるミラの顎がギュッと締まる。ヒナが舌を出す。カイがなだめる。
「宇井ミズキ!」
砂属性・黒短髪黒フード・メガネ。恥ずかしそうにゆっくり歩く。
姉のヒナに近づき小声で「姉さん、あんまり目立つのやめて……母さん怒るよ」
ヒナ「もういいのよ。親が欲しいのは金でしょ? 私たちが綺麗に見えれば。
いい、私たち鬼を全部倒して、好きなように生きようね」
ミズキ「……うん、姉さん」
グループ4
「宗方サオリ」 結晶・茶髪橙瞳・無表情。
「飯牟羅エイコ」 砂。
「稲葉ヒロシ」 雪
「東京のグループは以上! 12月5日銀座にて本戦、お疲れ様でした!」
カイが髪をオールバック気味に整え、ミラがストレッチ、レンが魔導書をチラ見。
──2023年3月3日 13:40──
カイ一人、自宅。
「親は13年前の今日、3月3日に鬼に殺された……俺の誕生日だ」
写真を見る。
白髪灰目の父と、灰髪緑目の母が、白髪緑目の赤ん坊──カイを抱いている。
「それ以来、親も保護者もいない」
カイは荷物をまとめ、5日の遠征に備える。
──2日後──
カイが猛ダッシュで電車に飛び乗る。
レン、ミラ、雷電が待っている。レンは寝ぼけ顔。
雷電「もうちょっと遅れてくれても良かったのに」
カイ「へへ、遅刻よりマシだろ?」
電車に乗り、夜空と月を見ながら、カイは眠りに落ちる。
次回エピソード:
「進級試験編」
このエピソードを楽しんでいただけたなら嬉しいです!
1話目から数日空いてしまって本当にごめんなさい、ちょっとバタバタしてました(汗)
次のエピソードでお会いしましょう!
ではでは~
Inso-kunより ;V




