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スピカ  作者: 白苺
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第一話「謎の空間と異形達」

今日はとても良い天気でした。 雲一つない澄んだ青い空で、陽は心地よく、モンシロチョウがツツジの花に止まっています。外出するには丁度いい穏やかな日でした。


ふと、私の後ろから大きな影がやってきて、辺りを包みました。大きな雲が流れて来たのかと思い空を見上げると、先ほどまで明るかった空がまるで絵の具に塗りつぶされるかのように、黒く染まっていきます。


太陽が何かに遮られて見えなくなると、あっという間に辺りは夜のように真っ暗になりました。 何が起きているのか分からず、しばらくキョロキョロと周りを見渡して、それから慌ててスマホをポケットから取り出してニュースアプリを開きました。


このことについて何か書かれているかと思ったのですがまだ何もありません。 不安に思い、家に帰ろうとすると、足元から何かがせり上がるような感覚に襲われて、体がふわっと浮き上がりました。


体が地面から離れるにつれて、景色は急速に遠ざかっていきます。すると突然、目の前が真っ白に光って、思わず目を瞑ると……足がゆっくり、地面に付いていく感覚がありました。 恐る恐る目を開けると、目の前には広いクリーム色の空間が広がっていました。


何が起きたのか、頭が追いつきませんでした。ほんの数秒前まで歩いていたアスファルトの硬さも、遠くで聞こえていた車の音も消えています。


代わりにあったのは遠くに見えるクリーム色の高い壁と、大勢の人達です。男性、女性、子供……私と同じようにここに来てしまったのか、戸惑っていたり、泣いていたり、それを励ましていたりしています。


何かを叩く音が聞こえました。見ると、遠くで人が何人か集まっています。その人たちの前には大きなドアがあって、そのドアを強く叩いているようです。壁を見渡すと、4つのドアが見えました。他のドアもびくともしないようで、諦めてその前に座っている人もいれば、体当たりをしている人達も居ました。


「あの、ここはどこなんでしょうか?」1人の女性が私に話しかけて来ました。ここがどこなのかなんて、私にも分かりません。


ですがその女性がとても不安そうな顔をしているので、なんとか彼女の負担を減らそうと笑顔を努めました。 どうやってここに来たのか話し合っていると、周りで次々と人が現れ始めました。


遠くにいた人達が私達のところまで来たという意味ではありません。突然現れた無数の光の粒が集まって、一瞬で人の形になったのです。 皆が呆然とした表情で、辺りを見回しています。そして私たちに「ここは何ですか?あなた達は?」と聞くのです。 その光景は恐ろしいというよりもただ非現実的で、私は自分が夢の中にいるのだと思いました。


すると、空間の中央にゆっくりと何かが現れました。 最初は空気が揺れているだけのように見えましたが、次第に人の形をした何かが浮かび上がってきます。その姿は人間に似ていましたが、どこか違和感があります。肌は透き通るように白く、目は深い灰色で、まるで感情を持たない彫像のようでした。


「ようこそ」その存在は言いました。声は穏やかで、耳に心地よく響きます。 けれど、その言葉の裏に、何か冷たいものを感じました。


「ここは、あなた方の文化を理解するための交流空間です。恐れる必要はありません」 そう言いながら、その存在は私たちを見渡しました。


交流?文化?一体何を言っているのか分かりません。あれが私達をここに連れてきたのでしょうか?


私はそっと、隣にいた女性に目を向けました。彼女はその存在を見つめながら、唇を噛んでいました。


私はふと、視線を感じて壁の上に視線を向けました。 クリーム色の壁は思った以上に高く、上部には階のようなフロアが張り出していました。


そこに奇妙なモノが並んでいるのが見えました。

一瞬人間の形をしているようでしたが、すぐに違うことが分かりました。


腕が複数ある者、目が顔の周囲をぐるりと囲む者、まるで植物のような者が無言でただじっと、こちらを見下ろしていました。 私達を囲うように立ち並び、視線を送ってきます。私は背筋が冷たくなるのを感じて、後退りをしました。


すると、人に似た何かがまた口を開きました。


「これより、選定を開始致します。皆様は順に識別され、適切な区分へと移動されます」 その声は穏やかでしたが、言葉の意味は冷酷でした。


周囲の人々がざわめき始めます。


「選定って何?」「区分ってどういうこと?」 誰もが不安に駆られ、ドアの前に集まろうとしますが、ドアは依然として開かず逃げ場はありません。


そのとき、壁の上にいた異形達の間で何かが始まりました。 目を凝らして見ると、彼らの間に光のパネルが浮かび上がり、そこに人の姿が次々と映し出されていきます。 年齢、性別、体格、表情……まるで商品を並べるように、情報が整理されていきます。


私はその光景を見て、やっと理解しました。 これはオークションなのだ。 人間たちは、彼らにとって資源であり、商品なのだと。


人々の頭の上に文字が浮かび上がり始めました。

見たことがない文字です。1人、また1人と頭の上に文字が浮かんで、それからすぐに体が白く光り、その場から粒子が分散するようにして消えていきます。


あちこちから動揺の声や叫び声が聞こえます。すぐ隣に居た女性の頭にも文字が浮かび、怯えた顔でこちらに腕を伸ばしてきます。その腕を掴めないまま、彼女は消えてしまいました。


私にも文字が浮かんだのでしょう。目の前が真っ白になり、また体が浮かびました。


… …気がつくと、私のすぐ目の前に異形の化け物がいました。頭がギザギザと尖ったクリスタルのような形をしていて、その下には金属の触手を数本束ねて下に垂らしている化け物です。化け物の前には光のパネルがあり、そこには私の姿と見たことがない文字が映し出されていました。


私は、この化け物に買われてしまったようです。 逃げろと頭の中に何度も警告が流れますが、足がすくんで動きません。


化け物から目を離せずそのまま固まっていると、触手が1本こちらに伸びて来ました。 咄嗟に目を瞑って腕をクロスしてガードしました。手に何かが触れて来ます。触手なのでしょう、冷たくて、金属のような硬い感触に鳥肌が立ちました。


しばらくそのままじっとしていましたが、触手は私の手をずっと触って来ます。逆に言うとそれだけなので、恐る恐る目を開けると、私の手に持っているスマホに触手で触って来ているようでした。


そういえば、ずっと手にスマホを持っていました。これに興味があるようです。手を広げると、化け物はスマホを取りました。 化け物に目のような物はありませんが、スマホを見ているようです。


その様子をどきどきしながら見ていると、こちらにスマホを差し出して来ました。ロック画面が映っています。 ロックを解くように……そう伝っているようです。


迷いましたが、言う通りにしないと何をされるか分かりません。数字を打ち込んでロックを解除すると、化け物はまたスマホを見て何か操作を始めました。


……私は周りを観察することにしました。周りにはベッドやテーブルなどといった家具や、壁には絵画のような物があります。キッチンもあります。どうやらワンルームの部屋のようです。私以外に人はいません。


この化け物の大きさに合わせているのか、大きいものばかりです。埃っぽい匂いがして、何かの機械があちこちに無造作に置かれています。ベットのシーツもぐちゃぐちゃです。 この部屋はどうやら、化け物が使っているようです。


しかし、家具があまりにも人間が使う物に酷使しています。何故ここまで似ているのか分からず、生活感がある様子が不気味です。 先程、謎の空間で人の形をした何かが言っていた「文化を理解するため」という言葉を思い出しましたが、これがどういう意味なのかまだ分かりません。


外を歩いていたらあの空間に、そしてあの空間からここに瞬時に移動したことから、明らかに地球のものとは違う何かの力があるようですが…この部屋にあるものを見ると、少しだけ私達人間の暮らしと似ているようです。


化け物の後ろに窓が見えました。窓の外は夜のように暗く、星のような白い粒が散らばっています。そして私の後ろにはドアがありましたが、今ここから逃げてもこの部屋の外がどうなっているのか分かりません。


部屋の観察が終わると、化け物もスマホを見終わったようです。そして、スマホをクリスタルのすぐ下にある触手を束ねているところに入れてしまいました……返しては、くれないようです……

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