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38話 繋がる想い


絶対的な絶望が、戦場を氷のように凍てつかせた、その時だった。絶望のノイズの隙間を縫うように、か細く、しかし凛とした歌声が響き始めた。それは、艦の隅で傷つきながらも、必死に声を振り絞るリョーコの歌だった。

誰に頼まれたわけでもない。ただ、アキトのあの絶望に満ちた背中を見たくなかった。仲間たちが倒れていくのを見ていたくなかった。その一心で、彼女は歌い始めたのだ。

最初は、ゾラスが発する絶望の波動に掻き消されそうになる。だが、その歌声に最初に気づいたのは、地に膝をついていたアキトだった。彼の心に、リョーコの歌声が温かい光を灯す。その光の中に、母リアーナの優しい幻影が浮かび上がり、彼に微笑みかけた気がした。

アキトが顔を上げる。カーラの焦燥が癒される。クライブの乱れた呼吸が整う。エルザの瞳に、再び闘志の炎が宿る。キールやシエル、カイルたちが、リョーコの歌は、一人、また一人と仲間たちの心を繋ぎ、戦場全体を包み込む希望の旋律へと変わっていった。

「……まだだ。まだ、終われない!」

満身創痍の黒龍号の艦橋で、クライブが血を拭いながらコンソールを叩いていた。

「ゾラスのエネルギー放出には、僅かだが周期性がある!次の最大放出の直後、コンマ数秒だけ、防御が極端に低下するポイントが存在する!」

その冷静な分析に、カーラが即座に反応する。

「そこを叩くんだな!でも、どうやって?」

「この船で、道をこじ開ける」

その声の主は、エルザだった。彼女の表情は、船長として、愛する船とクルーを最大の危険に晒す、苦渋に満ちていた。

「クライブ!全エネルギーを艦首に集中!タイミングは任せる!生き残ったクルーは、衝撃に備えろ!」

エルザの決断に、誰も異論を唱えなかった。これは、無謀な特攻ではない。仲間が繋いだ希望を、未来へ届けるための、唯一の戦術だった。黒龍号は、残された最後の力を振り絞り、不死鳥のようにゾラスへと向かっていく。


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