1話 星の導き 予言
僕は父さんの書斎が好きだった。天文学者である父さんの部屋には望遠鏡、星図、見たことのない星の数々。まさに僕にとっては宝の山だった。いつか星に行ってみたいと夢想する日々。最近は夢の中でも星図を見てる。そんな18歳の誕生日。僕は父さんに呼ばれていた。
「アキト、誕生日おめでとう。少し、話したいことがある。」
父さんは、いつになく真剣な表情で僕を書斎へと促した。僕は、戸惑いながらも、父さんの言葉に耳を傾けた。
父さんの書斎は、長年かけて集めた星に関する書籍や資料で埋め尽くされていた。その中心にある重厚な机の上には、僕が夢の中で見た、あの星図が置かれていた。
「君が生まれた日、私たち夫婦は君を託された。君は、普通の子供ではなかった。スーパーマンって言ったほうがいいのかな。どこか遠くから来たということだけは分かる。君は、光の輪をくぐって私たち夫婦の前に現れたんだ。このペンダントと一緒に。」
父さんは、僕が実の子どもではないことをこんなにあっさり語るとは。ずいぶんドライじゃないか。いや、ドライって言葉で片付けていいのだろうか?
(一体、どういうことなんだ…?)
僕は、混乱しながらも、なぜか父さんの言葉に耳を傾けていた。
「君は、星海文明の知識と力を受け継ぎ、異世界を救う運命にある。君が星図に触れた時、それは君を異世界へと導く鍵となったんだ。」
父さんは、僕に夢の中で見た星図を手渡した。
「この星図は、君を異世界へと導く扉だ。君がこの星図に触れた時、君は異世界へと転送されるだろう。」
僕は、星図を手に取り、その表面に触れた。その瞬間、眩い光が僕を包み込み、意識を失った。
(光…星々…まるで、自分が星になったみたいだ…)
光の中で、僕はまるで宇宙空間を漂っているかのような感覚を覚えた。無数の星々が、まるで意思を持つかのように、僕の周りを飛び交い、煌めいていた。その光景は、僕がこれまで見てきたどの星空よりも美しく、神秘的だった。
僕が再び意識を取り戻した時、そこは見慣れない場所だった。天井には、星空を模した美しい装飾が施され、壁には、見たこともない奇妙な模様が描かれている。窓の外には、巨大な天文台を中心に発展した都市「星都」の壮大な風景が広がっていた。
「ここは…一体…?」
僕は、戸惑いながらも、異世界での冒険が始まったことを悟った。その時、部屋の扉が開き、一人の女性が入ってきた。
「目覚められましたか、アキト様。私は記録官のイリスと申します。」
彼女は、僕に恭しく頭を下げた。暁王国のこと、古代の予言のこと、そして、僕がこの世界を救う可能性があることを丁寧に説明してくれた。
僕はイリスに連れられ、星都の中心部にある天文台へと向かった。
天文台は、星都で最も古く、最も神聖な場所とされていた。そこには、星都の歴史と未来を記録する、記録官の長老アウレリウスが住んでいた。
天文台の最上階、星々が輝く観測室で、僕はアウレリウスと対面した。アウレリウスは、白髭を蓄えた老齢の男性だったが、その瞳には、星々のように深い知識と叡智が宿っていた。
「ようこそ、星都へ。そして、予言の子よ。」
アウレリウスは、僕に優しく微笑みかけた。
「予言の子…?」
僕は、アウレリウスの言葉に戸惑いを隠せなかった。
「古代の予言によれば、星の心臓が再び闇に染まるとき、星詠みの異邦人が現れ、闇を払い、暁の空に希望の光を灯すとされている。君は、その星詠みの異邦人なのだ。」
「もうひとつ、君には三英雄の物語を話さねばなるまい。」